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私達が乗った吸血馬が駅に着いた数分後、東の空からすがすがしい太陽が昇ってきました。 私の指の傷は駅に入る直前にタルカスとワムウに見えない角度でティッシュを使い抑えていたのでもう出血していません。 私は橋の所での二人の会話を思い出しました。太陽を嫌っていた節がある二人にとっては危機一髪だったのではないでしょうか。 私は横目で二人をそっと眺めてみました。 案の定、タルカスは冷や汗をかいていました。彼とは対照的に、ワムウはそれほど慌てた様子は見せませんでした。 先ほどの二人の会話からして彼らは太陽が苦手なはずです。 どれくらい苦手なのかはわかりませんが、二人はわざわざ杜王駅まで避難しに来ました。『相当』苦手……のようです。 ではなぜワムウはあんなに落ち着いていたのでしょう。ますます疑念が深まります。 私がこの謎についての適当な答えを探そうと思考を始めた時、声が聞こえてきました。どこから聞こえてきたか、それはわかりません。 とにかく私の周り全方位から荒木の声が聞こえてきたのです。 荒木の声は、少し前の、この殺し合いが始まる前の杜王町を思い出させるかのような静かで、のんびりとした響きを持っていました。  *  *  * 「じゃあ、おおむねそうゆうことでよろしくね―――」 放送が終わりました。地球人は野蛮なものです。この六時間でなんと十三人もの参加者が尊い命を散らしてしまいました。 私の知り合いで死んだのは、ジョセフ・ジョースターさんと山岸由花子さんの二人。 私は彼らと特別な親交があったわけではありません。会話をしたことなんてほとんどありません。 私にとって二人は友人と言うよりはむしろ、他人に近かったのではないでしょうか……。 ですが、二人の死という事実は私の心に想像以上の衝撃を与えました。知り合いの死、私は216年間生きてきて何度か体験してきました。 ……しかし、いくら経験してもこの悲しみからは逃れられないようです。 ワムウとタルカスは放送が始まるころにはチャリオットから降りて駅内の探索を始めていました。 放送が始まると二人は動きを止め、周りを見渡し音源を捜し始めました。 しかし、荒木が死者を読み上げ始めると、(おそらく知り合いの名が呼ばれたのでしょう)二人は捜すのを止め放送に耳を傾けていました。 放送が終わり、禁止エリアをメモした後も、彼らのすることは変わりません。ひたすら無言で探索です。 しかし私は見逃しませんでした。 黒騎士ブラフォード、という名が呼ばれた瞬間、タルカスが一瞬、ぴたりと動きを止めた事を。 カーズ、ジョセフ・ジョースターの名が呼ばれた時のワムウのなんとも言えぬ悲哀に満ちた表情を。 私は見逃しませんでした。 ワムウとジョセフさんは親しい仲だったのでしょうか……。橋での出来事からしてワムウは紛れも無い悪です。ゲームに乗っています。 そんな悪と、あの評判いいジョセフさんが親しくなるものでしょうか。むしろジョセフさんはワムウを退治しようするのでは。 ……私はしばらく思考していたのですが、いつまでたっても適当な答えを自分の心の中に作り出す事が出来ません。 まあ仕方の無い事です。もともと無理だったのです。私はジョセフさんやワムウについてあまりにも無知です。 ワムウに関係する疑問はこれで二つ目、別にそれ程大切な疑問というわけではありませんが……機会があれば解明したいですね。 「ワムウ様。放送の事で少し聞きたいことがあるのですが」  タルカスは駅内の探索という機械的な動作を一時中断して、申し訳なさそうに話しました。  タルカスに背を向けていたワムウは無言で振り向きます。 「ワムウ様。お知り合いの名前を呼ばれましたか?」 「……おまえはどうなんだ?」 「黒騎士ブラフォード……わしの戦友です……情けない事に少し心を乱されてしまって」  二人の間に再び沈黙が訪れます。ワムウはタルカスに対して何と答えるのでしょうか。  紛れも無い極悪人の二人ですが彼らは(少なくともタルカスは)知り合いの死について悲しみを感じているようです。  ワムウが話し始めました。 「俺の知り合いも死んだ。しかし気にする事は無い。悲しみなんぞに参っているようでは真の強者にはなれないのだタルカス。  乗り越えるのだ。悲しみを越えてこそ真の強さがある。そもそも死んでいった者達を悲しんではいけないのだ。彼らは何かの死闘のはてに死んだ。  彼らには敬意を払えッ!悲しみを越えるほどの敬意をッ!」 「敬意……悲しみではなく敬意……ですか」 「くだらん話はもう終わりだ。さっさと駅を調べろ。何者かが潜んでいるかもしれん」  ワムウがそう言うとタルカスはすぐに、申し訳ありません、というような事を言い、私が今いるチャリオットの位置からは見えない所へ行ってしまいました。 『悲しみではなく敬意』、私はこの言葉を心の中で数回呟きました。確かにそういう考えもあります。 しかし、私達には決してできない考え方。人間達や私達は親しい人が死んだ時は長い時間ずっと悲しむのが普通です。 というより、悲しむ事しかできないと思います。悲しまずに敬意を払うなんて考え方、生き物をぶっちぎりで超越しているかのような何かを感じます。 ワムウ……彼は超越している。普通ではない。 ふと、チャリオットから駅の様子を眺めてみるとそこにはもう誰もいませんでした。私は周りをゆっくりと警戒しながら見回しました。 誰もいません。ワムウもタルカスもいません。吸血馬さえも今は眠っているようです。 私のちょうど真正面にはさんさんと日の光を受けている駅の出入り口があります。ここからそれ程離れていません。 これは……もしかしてここから逃げ出すチャンスなのでしょうか。ここから全力で走って日光の当たる所へ行きさえすれば良いのです。二人は今いません。 しかし、あまりにもあっさりしています。何ていうのでしょうか……。逆に怪しく感じます。罠ではないのでしょうか。 このまま隠れていればブチャラティさん達が助けに来てくれるかもしれませんし……。 それに日光の下に行ったとしても彼らはまだ追いかけてくるかもしれません。 見つかってしまっては何の言い訳もできません。一瞬で私は八つ裂きにされるでしょう。戦ってもたぶん勝ち目はありません。 それに相手は二人います。どちらかが私を視野の端で捉えさえすれば、私はもう終わりなのです。 なんだか不安要素ばかりあるような気がします。成功する可能性なんてあるのでしょうか。 再び周りを見渡します。さっきよりも注意深く……。 やはり、いません。逃げるチャンスです。駅から出た後は私が残してきた血痕を辿ればたぶんブチャラティさん達と合流できるでしょう。 やはりこのチャンスを活かすべきです。どれだけ可能性が低かろうと……それは決してゼロではない。 私は変身を解き鎖から元の体に戻りました。そしてゆっくりと、猫のようなしなやかで静かな動作で慎重にチャリオットから下ります。 下りた私はひとまずチャリオットの陰に隠れ辺りを見渡します。ここからならチャリオットの上にいた時は見えなかった所も見る事が出来ます。 ……ワムウもタルカスもいない。 大丈夫です。この脱出は成功します。後は素早くあの出口へと走るだけ。 私は覚悟を決め杜王駅の出口へと走り出しました。 私の靴と地面がぶつかる事によって生じる音。私の衣服がこすれる音。その他いろいろな物音。 物音なんて気にしません。ただ私は全力で走ればいいのです。 あと少し、あと少しで、太陽の下へッ! あと少し、あと少しで、逃げられるッ! ブチャラティさん達の所へ行けるッ!後数メート……ッ まずいッ!ヤバイッ!殺されるッ!心臓が破裂するほどの衝撃ッ! 突然、ワムウが現れたのですッ!何も無いところから急に。まるで透明人間が急に姿を現すかのように。 私に背を向けているのでまだ見つかってはいませんが今にもッ! ワムウは何かしらの気配を感じ取ったのでしょう。素早く振り返るッ (やばいィ~どうすればッ!どうすればいいんだあ~~~) 私は急いでもう止血できていた指を再び噛みました。血が一滴だけ出るくらいにできるだけ柔らかく噛みました。 冷たい金属音ッ!ワムウが振り返って見た物。それは私ではありません、地面に落ちる鎖、唯一つッ!  *  *  * ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ワムウは何一つ言葉を発さずに私(今は鎖ですけど)を睨み続ています。 沈黙……。疑わしそうに私を睨む。私の頭は緊張と恐怖でどうかしてしまいそうです。 ワムウは今、こう思っているのでしょう。 なぜここに鎖がある。誰が持ち出したのだ。俺は落ちる瞬間を見た。そこに落ちているの見たのではなく落ちていく瞬間を見たのだ。これはどういうことだ。 怪しい。怪しいぞこの鎖。タルカスには悪いが……  破壊させてもらおう。 そして今目の前にいるワムウも私の心の中のワムウと同じように、鎖をゆっくりと掴み持ち上げたのです。 (ヒィエエエエエエエッ!まずいッ!破壊されてしまうゥッ!せめて、せめて『アレ』に気づいてくれえッ!) 「タルカスッ!来いッ!」  ワムウはいきなり凄まじい大音量でタルカスを呼びました。あまりに大きな音だったので、私はさらに慌てました。  今、私はあの仗助さんとの協力サイコロの時のように、岸部露伴さんにばれそうになった時のように、冷や汗をかいてしまっているかもしれません。  案の定、鎖は私の汗によってうっすらと濡れていました。 「どうかしましたかッ!ワムウ様ッ!」 「お前、鎖を俺に向かって投げたか?」  タルカスは言っている意味がわからないかのような顔をしています。 「いえ、投げていません。何かあったのですか」 「この鎖がここで、チャリオットからは何メートルもあるこの場所で落ちているのを見た。おまえの仕業ではないとしたら……いったい誰の仕業だ。  何のためにこんなことをしたのだ」 「我々以外の誰かがこの鎖を盗ろうとしたのでは?」  ワムウは鎖を睨みます。今のところはまだ汗には気づかれてはいません。 「たしかにそうかもしれない。それも可能性の一つ。だが俺は鎖が落ちているのを見たのではなく落ちていく瞬間を見たのだ。  つまり、鎖のすぐ近くに落とした者がいたはずなのだ。  鎖を手から離し地面に着くまでの間にその場から素早く離れ俺から見つからないような所に隠れられる身体能力を持った奴はそうはいまい」 「さっきワムウ様が言ったように誰かがチャリオットから鎖を投げたのではないでしょうか?」 「見知らぬ者が近づいてくるのだ。吸血馬が黙っていないだろう」  吸血馬は眠っているはず、と思い私は視野の端に映っている吸血馬を注視しました。  起きています。もしかして眠っている時の方が珍しいのでしょうか。ああ、運がいいのか悪いのか…… 「俺の手下の吸血鬼に手がドアノブそっくりの奴がいた。くだらんことだがそれが奴の能力の一つだ」 「はあ。でもそれがいったい……」 「つまり俺が言いたい事はッ!」  まずい。この流れは非常にやばいです……。このままでは。 「誰かが妙な能力でこの鎖に変身しているッ!」  ああ、気づかれたッ!  ワムウが鎖の両端を掴み引きちぎろうと力を込めます。  凄まじいパワー。ああ私はここまでなのでしょうか……。私はただ地球に来ただけなのにこんなわけの分からないゲームに参加させられて……。  こんな所で死ぬのでしょうか。ああ黙ってブチャラティさんを待っていればよかった……。  体が、熱い、千切れる、痛い。しかしッ声を出すわけにはいきませんッ!ぐうううううぁあぁぁああぁあああああッ!痛いッイタイッ! 「この鎖を引きちぎってみればわかる。本物の鎖ならこのままただ千切れるだけだッ!」  駄目だ。もう限界だ……。仗助さん、億康さんどうか生き残ってください。 「待ってくれッ!その鎖は本物です。間違いありません」  タルカスが叫びました。すっと、ワムウの力が緩みます。 「なぜそう言える。根拠はあるのか?」 「わしは長年鎖を愛用の武器として使ってきた。だから分かります。その鎖は本物です。その質感、音。偽者のわけが無いッ!」 「下らん事を……おまえはこの鎖を破壊されたくないからそう言っているだけじゃないのか?」  この問いかけにタルカスは少しの間、黙りました。頑張ってくださいタルカス。私の命はあなたにかかっています。  ああせめてどちらかが『アレ』に気づいてくれれば……。 「確かにそうです。わしは鎖を壊されたくない。だから言っています。しかしその鎖は本物です。  その鎖さえあればわしはもっとワムウ様の役に立つ事が出来るッ!」 「元より貴様なんぞに何の期待もしておらんわ。おまえはただ俺の身の回りの雑事をこなしておれば良い」  そんな……バカな。ひょっとして、タルカスのおかげで助かると思ったのに……。  再び私の体に耐え難い痛みが走ります。ワムウは少しずつ力を強くしていきます。私に変身を解く隙を与えているのでしょう。  早く変身を解かないとどんどん痛くなっていくよ、と私を脅しているのです。  変身を解くわけにはいかない。もしワムウかタルカスが『アレ』に気づいた時私は鎖でなければならないのです。  しかし……もう。 「そんな、ワムウ様。どうか考え直してくださいッ!」 「考え直すことなど何もな……」  急に、急にです。突然、ワムウが力を抜きました。ふっと、力が弱くなったのです。  ワムウは私から目を離し地面を睨んでいます。そうか。ついに、ついに『アレ』を見つけたんだ。 「ワムウ様?どう……したんですか?」  沈黙に耐えかねたタルカスがワムウにそっと問いかけました。  ワムウは鎖を捨て、地面にしゃがみました。何かを凝視しています。 「タルカス見ろ。血痕がある。鎖が落ちていた場所の近くに血痕がある。血はまだ乾ききっていないぞ。ついさっき、という感じだ」  そう、私がワムウに見つかる寸前に残しておいた血痕。 「外を見てみろ。血痕がずっと続いている。この駅に向かって、続いている。いやこの鎖に向けてと考えたほうが正しいか……  つまり……ついさっき、何者かがこの鎖を奪いに来た。我々の目を掻い潜り、盗もうとしたのだ」 「なるほどッ!そしてワムウ様に見つかりかけたから、鎖をおとりに使い急いで隠れた」 「その通りだ。おまえが始めに言っていた通りだったな。  つまり、奴はこの鎖を盗ろうとした泥棒は一瞬で隠れられる身体能力、または特殊能力を持っているという事だな。  しかし、盗人め。どこかを怪我をしているらしいな。怪我した体で来るほどこの鎖が大事なのか、それともただ単にまぬけなだけか」 「ワムウ様、この鎖は……どうなさるのですか?」  タルカスが申し訳なさそうに聞きます。 「俺が引きちぎろうとしてもこの鎖は何の反応も示さなかった。おそらくこれは本物の鎖なのだろう」 「ではそれはわしにくださいますか?」 「しかし、盗人は無理をしてまで、血を流してまでこの鎖を奪いに来ているのだ。この鎖には普通の鎖とは違う何かがあるような気がする。  一応、破壊しておいた方がいいだろう」 「えっ!」  ……しまったアッ!声だしてしまったぁぁッ!もう助かると思って安心してしまったああああああああッ!    沈黙、長い長い沈黙。タルカスがキョロキョロと周りを見ています。幸いな事に、私の出した声はずいぶんと小さかったようです。  彼らは、少なくともタルカスは音源に気づいていない。 「フフフ、マヌケめ。この鎖を破壊されるのがそんなに嫌か。いいだろう。壊さないでおいてやる。いつでも、どのタイミングでもいいぞ。  奪いに来い。返り討ちにしてやろう」  良かった~。ワムウも音源には気づいていないようです。ワムウは鎖をタルカスに投げ歩き始めました。 「タルカス、この鎖を持って盗人が駅の中にいるかどうか徹底的に調べるのだ。盗人がそいつを奪いにくるかもしれん。何者かを見つけたら俺を呼べ。  俺が盗人に死を与えてやろう」 「ワムウ様、鎖をくださるのですか?ワムウ様が持っていた方が……」  歩いていたワムウは歩を止め振り返ります。 「フフフ、確かに鎖を持っていた方が盗人に会えそうだな。だがおまえを試してやる。  鎖を持っているおまえは本当に役に立つかをな。だが注意しろ、その鎖には何かあるような気がする」  そう言うとワムウは駅を徹底的に調べに歩き始めました。 「感謝します。ワムウ様……」  タルカスがそう言うころにはワムウはさらに歩いて行き、私達のいる所からは見えなくなっていました。  はあ。良かった。助かったあ……。私をほっと安堵しました。  しかし安心したのもつかの間、私はタルカスによって彼の顔の辺りにまで持ち上げられました。タルカスが鎖をじっと見ています。  どうしたんでしょう。まさか疑っているのでしょうか。この人は鎖が必要なはずです。まさか、まさかさっきのワムウみたいな事はしないですよね。  長い間、鎖を見ていた彼はそっと呟きました。 「これは盗人の血か?鎖に微かだが血がついている」  なんだ。そんな事ですか。もうその傷は心配ないでしょう。もう出血する事は無いでしょう。ほとんど治癒していま……  べろり (ひっヒェェエエエエェエエエッ!舐められたぁッ!指をッ!私の指をッ!この人、どうして私の指を舐めるんですか~ッ!)    べろり (何回舐めるんですかぁッ!) 「全然足りんな。もっと血がほしい」  そう言うとタルカスは鎖を肩にかけ歩き始めました。  鳥肌が立つなんてレベルではありません。恐ろしく気持ち悪かったです。なんとか声を出さずにすみましたが、これからもこんなことがあるのでしょうか。  ああ、ブチャラティさん、形兆さん早く助けてください~~。 【闇の重戦士チーム 宇宙人添え】 【杜王駅 (E-03) 1日目 朝~午前】 【ワムウ】 [モード]:『風』 [時間軸]:首だけになり、ジョセフが腕を振り下ろした瞬間 [状態]:服が少し焦げている [装備]:手榴弾×9 [道具]:支給品一式 [思考・状況]  1) 駅の中を調べて盗人を捜す  2) 鎖(ミキタカ)を少しだけ怪しく思っている  3) 戦いを楽しみつつ、優勝を目指す。ただ深追いはしない。  4) 従者として、しばらくはタルカスを従えておく。 【タルカス】 [種族]:屍生人(ゾンビ) [時間軸]:ジョナサンたちとの戦いの直前。ディオに呼ばれジョナサンたちと初めて対面する前。 [状態]:無傷。 [装備]:【ミキタカが化けたフック付きの長い鎖】。 [道具]:支給品一式 [思考・状況]:   1)駅の中を調べて盗人を捜す。   2)ワムウへの絶対的な忠誠。   3)ワムウと共に戦う。戦いの愉悦を彼の下で楽しむ。   4)取り逃した虹村形兆、ブチャラティ、ミキタカへの僅かな執着心(ワムウの命に背いてまで追う気はないが) 【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】 [スタンド?]:『アース・ウィンド・アンド・ファイアー』 [時間軸]: 鋼田一戦後 [状態]:【フック付きの長い鎖】に化けた状態。タルカスに片手で握られ、肩に掛けられている。千切られそうになったので体全体が痛い [装備]:なし [道具]:ポケットティッシュ (支給品一式はブチャラティが持っています) [思考]:  1) タルカスたちには絶対に気付かれたくない。そのため、当面はただの鎖のフリを続ける。  2) タルカスたちに気付かれないうちにこっそり逃げ出したい。  3) 脱出後、ブチャラティたちとの合流を図る  4) 味方を集めて多くの人を救いたい。 [備考]:ミキタカは形兆のことを「ゾンビのようなもの」だと思っています。 [備考]:タルカスもワムウも、タルカスが手にしている鎖がミキタカであることにまだ気付いていません。しかしワムウは怪しいと感じています。 [備考]:ミキタカは自ら道路に血を垂らし、ブチャラティたちが追う手がかりを残しています。     彼らが通った道には、点々と血の跡が続いています。ワムウ達はもう気づいています。 [備考]:ワムウとタルカスは鎖を盗もうとしている参加者が近くにいると勘違いしています。そして駅につづいている血痕もその参加者のものだと思い込んで います。 [備考]:ミキタカの冷や汗は結局気づかれませんでした。 [備考]:吸血馬1頭+チャリオットは駅の中に置いています。 *投下順で読む [[前へ>逃亡]] [[戻る>1日目 第2回放送まで]] [[次へ>ディオ・ブランドー]] *時系列順で読む [[前へ>『真っ直ぐに』]] [[戻る>1日目(時系列順)]] [[次へ>フライト・コードなし!去るD-2は向かえ]] *キャラを追って読む |49:[[承太郎と哀れな下僕]]||ワムウ| :[[]]| |49:[[承太郎と哀れな下僕]]||タルカス| :[[]]| |49:[[承太郎と哀れな下僕]]||ヌ・ミキタカゾ・ンシ| :[[]]|
私達が乗った吸血馬が駅に着いた数分後、東の空からすがすがしい太陽が昇ってきました。 私の指の傷は駅に入る直前にタルカスとワムウに見えない角度でティッシュを使い抑えていたのでもう出血していません。 私は橋の所での二人の会話を思い出しました。太陽を嫌っていた節がある二人にとっては危機一髪だったのではないでしょうか。 私は横目で二人をそっと眺めてみました。 案の定、タルカスは冷や汗をかいていました。彼とは対照的に、ワムウはそれほど慌てた様子は見せませんでした。 先ほどの二人の会話からして彼らは太陽が苦手なはずです。 どれくらい苦手なのかはわかりませんが、二人はわざわざ杜王駅まで避難しに来ました。『相当』苦手……のようです。 ではなぜワムウはあんなに落ち着いていたのでしょう。ますます疑念が深まります。 私がこの謎についての適当な答えを探そうと思考を始めた時、声が聞こえてきました。どこから聞こえてきたか、それはわかりません。 とにかく私の周り全方位から荒木の声が聞こえてきたのです。 荒木の声は、少し前の、この殺し合いが始まる前の杜王町を思い出させるかのような静かで、のんびりとした響きを持っていました。  *  *  * 「じゃあ、おおむねそうゆうことでよろしくね―――」 放送が終わりました。地球人は野蛮なものです。この六時間でなんと十三人もの参加者が尊い命を散らしてしまいました。 私の知り合いで死んだのは、ジョセフ・ジョースターさんと山岸由花子さんの二人。 私は彼らと特別な親交があったわけではありません。会話をしたことなんてほとんどありません。 私にとって二人は友人と言うよりはむしろ、他人に近かったのではないでしょうか……。 ですが、二人の死という事実は私の心に想像以上の衝撃を与えました。知り合いの死、私は216年間生きてきて何度か体験してきました。 ……しかし、いくら経験してもこの悲しみからは逃れられないようです。 ワムウとタルカスは放送が始まるころにはチャリオットから降りて駅内の探索を始めていました。 放送が始まると二人は動きを止め、周りを見渡し音源を捜し始めました。 しかし、荒木が死者を読み上げ始めると、(おそらく知り合いの名が呼ばれたのでしょう)二人は捜すのを止め放送に耳を傾けていました。 放送が終わり、禁止エリアをメモした後も、彼らのすることは変わりません。ひたすら無言で探索です。 しかし私は見逃しませんでした。 黒騎士ブラフォード、という名が呼ばれた瞬間、タルカスが一瞬、ぴたりと動きを止めた事を。 カーズ、ジョセフ・ジョースターの名が呼ばれた時のワムウのなんとも言えぬ悲哀に満ちた表情を。 私は見逃しませんでした。 ワムウとジョセフさんは親しい仲だったのでしょうか……。橋での出来事からしてワムウは紛れも無い悪です。ゲームに乗っています。 そんな悪と、あの評判いいジョセフさんが親しくなるものでしょうか。むしろジョセフさんはワムウを退治しようするのでは。 ……私はしばらく思考していたのですが、いつまでたっても適当な答えを自分の心の中に作り出す事が出来ません。 まあ仕方の無い事です。もともと無理だったのです。私はジョセフさんやワムウについてあまりにも無知です。 ワムウに関係する疑問はこれで二つ目、別にそれ程大切な疑問というわけではありませんが……機会があれば解明したいですね。 「ワムウ様。放送の事で少し聞きたいことがあるのですが」  タルカスは駅内の探索という機械的な動作を一時中断して、申し訳なさそうに話しました。  タルカスに背を向けていたワムウは無言で振り向きます。 「ワムウ様。お知り合いの名前を呼ばれましたか?」 「……おまえはどうなんだ?」 「黒騎士ブラフォード……わしの戦友です……情けない事に少し心を乱されてしまって」  二人の間に再び沈黙が訪れます。ワムウはタルカスに対して何と答えるのでしょうか。  紛れも無い極悪人の二人ですが彼らは(少なくともタルカスは)知り合いの死について悲しみを感じているようです。  ワムウが話し始めました。 「俺の知り合いも死んだ。しかし気にする事は無い。悲しみなんぞに参っているようでは真の強者にはなれないのだタルカス。  乗り越えるのだ。悲しみを越えてこそ真の強さがある。そもそも死んでいった者達を悲しんではいけないのだ。彼らは何かの死闘のはてに死んだ。  彼らには敬意を払えッ!悲しみを越えるほどの敬意をッ!」 「敬意……悲しみではなく敬意……ですか」 「くだらん話はもう終わりだ。さっさと駅を調べろ。何者かが潜んでいるかもしれん」  ワムウがそう言うとタルカスはすぐに、申し訳ありません、というような事を言い、私が今いるチャリオットの位置からは見えない所へ行ってしまいました。 『悲しみではなく敬意』、私はこの言葉を心の中で数回呟きました。確かにそういう考えもあります。 しかし、私達には決してできない考え方。人間達や私達は親しい人が死んだ時は長い時間ずっと悲しむのが普通です。 というより、悲しむ事しかできないと思います。悲しまずに敬意を払うなんて考え方、生き物をぶっちぎりで超越しているかのような何かを感じます。 ワムウ……彼は超越している。普通ではない。 ふと、チャリオットから駅の様子を眺めてみるとそこにはもう誰もいませんでした。私は周りをゆっくりと警戒しながら見回しました。 誰もいません。ワムウもタルカスもいません。吸血馬さえも今は眠っているようです。 私のちょうど真正面にはさんさんと日の光を受けている駅の出入り口があります。ここからそれ程離れていません。 これは……もしかしてここから逃げ出すチャンスなのでしょうか。ここから全力で走って日光の当たる所へ行きさえすれば良いのです。二人は今いません。 しかし、あまりにもあっさりしています。何ていうのでしょうか……。逆に怪しく感じます。罠ではないのでしょうか。 このまま隠れていればブチャラティさん達が助けに来てくれるかもしれませんし……。 それに日光の下に行ったとしても彼らはまだ追いかけてくるかもしれません。 見つかってしまっては何の言い訳もできません。一瞬で私は八つ裂きにされるでしょう。戦ってもたぶん勝ち目はありません。 それに相手は二人います。どちらかが私を視野の端で捉えさえすれば、私はもう終わりなのです。 なんだか不安要素ばかりあるような気がします。成功する可能性なんてあるのでしょうか。 再び周りを見渡します。さっきよりも注意深く……。 やはり、いません。逃げるチャンスです。駅から出た後は私が残してきた血痕を辿ればたぶんブチャラティさん達と合流できるでしょう。 やはりこのチャンスを活かすべきです。どれだけ可能性が低かろうと……それは決してゼロではない。 私は変身を解き鎖から元の体に戻りました。そしてゆっくりと、猫のようなしなやかで静かな動作で慎重にチャリオットから下ります。 下りた私はひとまずチャリオットの陰に隠れ辺りを見渡します。ここからならチャリオットの上にいた時は見えなかった所も見る事が出来ます。 ……ワムウもタルカスもいない。 大丈夫です。この脱出は成功します。後は素早くあの出口へと走るだけ。 私は覚悟を決め杜王駅の出口へと走り出しました。 私の靴と地面がぶつかる事によって生じる音。私の衣服がこすれる音。その他いろいろな物音。 物音なんて気にしません。ただ私は全力で走ればいいのです。 あと少し、あと少しで、太陽の下へッ! あと少し、あと少しで、逃げられるッ! ブチャラティさん達の所へ行けるッ!後数メート……ッ まずいッ!ヤバイッ!殺されるッ!心臓が破裂するほどの衝撃ッ! 突然、ワムウが現れたのですッ!何も無いところから急に。まるで透明人間が急に姿を現すかのように。 私に背を向けているのでまだ見つかってはいませんが今にもッ! ワムウは何かしらの気配を感じ取ったのでしょう。素早く振り返るッ (やばいィ~どうすればッ!どうすればいいんだあ~~~) 私は急いでもう止血できていた指を再び噛みました。血が一滴だけ出るくらいにできるだけ柔らかく噛みました。 冷たい金属音ッ!ワムウが振り返って見た物。それは私ではありません、地面に落ちる鎖、唯一つッ!  *  *  * ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ワムウは何一つ言葉を発さずに私(今は鎖ですけど)を睨み続ています。 沈黙……。疑わしそうに私を睨む。私の頭は緊張と恐怖でどうかしてしまいそうです。 ワムウは今、こう思っているのでしょう。 なぜここに鎖がある。誰が持ち出したのだ。俺は落ちる瞬間を見た。そこに落ちているの見たのではなく落ちていく瞬間を見たのだ。これはどういうことだ。 怪しい。怪しいぞこの鎖。タルカスには悪いが……  破壊させてもらおう。 そして今目の前にいるワムウも私の心の中のワムウと同じように、鎖をゆっくりと掴み持ち上げたのです。 (ヒィエエエエエエエッ!まずいッ!破壊されてしまうゥッ!せめて、せめて『アレ』に気づいてくれえッ!) 「タルカスッ!来いッ!」  ワムウはいきなり凄まじい大音量でタルカスを呼びました。あまりに大きな音だったので、私はさらに慌てました。  今、私はあの仗助さんとの協力サイコロの時のように、岸部露伴さんにばれそうになった時のように、冷や汗をかいてしまっているかもしれません。  案の定、鎖は私の汗によってうっすらと濡れていました。 「どうかしましたかッ!ワムウ様ッ!」 「お前、鎖を俺に向かって投げたか?」  タルカスは言っている意味がわからないかのような顔をしています。 「いえ、投げていません。何かあったのですか」 「この鎖がここで、チャリオットからは何メートルもあるこの場所で落ちているのを見た。おまえの仕業ではないとしたら……いったい誰の仕業だ。  何のためにこんなことをしたのだ」 「我々以外の誰かがこの鎖を盗ろうとしたのでは?」  ワムウは鎖を睨みます。今のところはまだ汗には気づかれてはいません。 「たしかにそうかもしれない。それも可能性の一つ。だが俺は鎖が落ちているのを見たのではなく落ちていく瞬間を見たのだ。  つまり、鎖のすぐ近くに落とした者がいたはずなのだ。  鎖を手から離し地面に着くまでの間にその場から素早く離れ俺から見つからないような所に隠れられる身体能力を持った奴はそうはいまい」 「さっきワムウ様が言ったように誰かがチャリオットから鎖を投げたのではないでしょうか?」 「見知らぬ者が近づいてくるのだ。吸血馬が黙っていないだろう」  吸血馬は眠っているはず、と思い私は視野の端に映っている吸血馬を注視しました。  起きています。もしかして眠っている時の方が珍しいのでしょうか。ああ、運がいいのか悪いのか…… 「俺の手下の吸血鬼に手がドアノブそっくりの奴がいた。くだらんことだがそれが奴の能力の一つだ」 「はあ。でもそれがいったい……」 「つまり俺が言いたい事はッ!」  まずい。この流れは非常にやばいです……。このままでは。 「誰かが妙な能力でこの鎖に変身しているッ!」  ああ、気づかれたッ!  ワムウが鎖の両端を掴み引きちぎろうと力を込めます。  凄まじいパワー。ああ私はここまでなのでしょうか……。私はただ地球に来ただけなのにこんなわけの分からないゲームに参加させられて……。  こんな所で死ぬのでしょうか。ああ黙ってブチャラティさんを待っていればよかった……。  体が、熱い、千切れる、痛い。しかしッ声を出すわけにはいきませんッ!ぐうううううぁあぁぁああぁあああああッ!痛いッイタイッ! 「この鎖を引きちぎってみればわかる。本物の鎖ならこのままただ千切れるだけだッ!」  駄目だ。もう限界だ……。仗助さん、億康さんどうか生き残ってください。 「待ってくれッ!その鎖は本物です。間違いありません」  タルカスが叫びました。すっと、ワムウの力が緩みます。 「なぜそう言える。根拠はあるのか?」 「わしは長年鎖を愛用の武器として使ってきた。だから分かります。その鎖は本物です。その質感、音。偽者のわけが無いッ!」 「下らん事を……おまえはこの鎖を破壊されたくないからそう言っているだけじゃないのか?」  この問いかけにタルカスは少しの間、黙りました。頑張ってくださいタルカス。私の命はあなたにかかっています。  ああせめてどちらかが『アレ』に気づいてくれれば……。 「確かにそうです。わしは鎖を壊されたくない。だから言っています。しかしその鎖は本物です。  その鎖さえあればわしはもっとワムウ様の役に立つ事が出来るッ!」 「元より貴様なんぞに何の期待もしておらんわ。おまえはただ俺の身の回りの雑事をこなしておれば良い」  そんな……バカな。ひょっとして、タルカスのおかげで助かると思ったのに……。  再び私の体に耐え難い痛みが走ります。ワムウは少しずつ力を強くしていきます。私に変身を解く隙を与えているのでしょう。  早く変身を解かないとどんどん痛くなっていくよ、と私を脅しているのです。  変身を解くわけにはいかない。もしワムウかタルカスが『アレ』に気づいた時私は鎖でなければならないのです。  しかし……もう。 「そんな、ワムウ様。どうか考え直してくださいッ!」 「考え直すことなど何もな……」  急に、急にです。突然、ワムウが力を抜きました。ふっと、力が弱くなったのです。  ワムウは私から目を離し地面を睨んでいます。そうか。ついに、ついに『アレ』を見つけたんだ。 「ワムウ様?どう……したんですか?」  沈黙に耐えかねたタルカスがワムウにそっと問いかけました。  ワムウは鎖を捨て、地面にしゃがみました。何かを凝視しています。 「タルカス見ろ。血痕がある。鎖が落ちていた場所の近くに血痕がある。血はまだ乾ききっていないぞ。ついさっき、という感じだ」  そう、私がワムウに見つかる寸前に残しておいた血痕。 「外を見てみろ。血痕がずっと続いている。この駅に向かって、続いている。いやこの鎖に向けてと考えたほうが正しいか……  つまり……ついさっき、何者かがこの鎖を奪いに来た。我々の目を掻い潜り、盗もうとしたのだ」 「なるほどッ!そしてワムウ様に見つかりかけたから、鎖をおとりに使い急いで隠れた」 「その通りだ。おまえが始めに言っていた通りだったな。  つまり、奴はこの鎖を盗ろうとした泥棒は一瞬で隠れられる身体能力、または特殊能力を持っているという事だな。  しかし、盗人め。どこかを怪我をしているらしいな。怪我した体で来るほどこの鎖が大事なのか、それともただ単にまぬけなだけか」 「ワムウ様、この鎖は……どうなさるのですか?」  タルカスが申し訳なさそうに聞きます。 「俺が引きちぎろうとしてもこの鎖は何の反応も示さなかった。おそらくこれは本物の鎖なのだろう」 「ではそれはわしにくださいますか?」 「しかし、盗人は無理をしてまで、血を流してまでこの鎖を奪いに来ているのだ。この鎖には普通の鎖とは違う何かがあるような気がする。  一応、破壊しておいた方がいいだろう」 「えっ!」  ……しまったアッ!声だしてしまったぁぁッ!もう助かると思って安心してしまったああああああああッ!    沈黙、長い長い沈黙。タルカスがキョロキョロと周りを見ています。幸いな事に、私の出した声はずいぶんと小さかったようです。  彼らは、少なくともタルカスは音源に気づいていない。 「フフフ、マヌケめ。この鎖を破壊されるのがそんなに嫌か。いいだろう。壊さないでおいてやる。いつでも、どのタイミングでもいいぞ。  奪いに来い。返り討ちにしてやろう」  良かった~。ワムウも音源には気づいていないようです。ワムウは鎖をタルカスに投げ歩き始めました。 「タルカス、この鎖を持って盗人が駅の中にいるかどうか徹底的に調べるのだ。盗人がそいつを奪いにくるかもしれん。何者かを見つけたら俺を呼べ。  俺が盗人に死を与えてやろう」 「ワムウ様、鎖をくださるのですか?ワムウ様が持っていた方が……」  歩いていたワムウは歩を止め振り返ります。 「フフフ、確かに鎖を持っていた方が盗人に会えそうだな。だがおまえを試してやる。  鎖を持っているおまえは本当に役に立つかをな。だが注意しろ、その鎖には何かあるような気がする」  そう言うとワムウは駅を徹底的に調べに歩き始めました。 「感謝します。ワムウ様……」  タルカスがそう言うころにはワムウはさらに歩いて行き、私達のいる所からは見えなくなっていました。  はあ。良かった。助かったあ……。私をほっと安堵しました。  しかし安心したのもつかの間、私はタルカスによって彼の顔の辺りにまで持ち上げられました。タルカスが鎖をじっと見ています。  どうしたんでしょう。まさか疑っているのでしょうか。この人は鎖が必要なはずです。まさか、まさかさっきのワムウみたいな事はしないですよね。  長い間、鎖を見ていた彼はそっと呟きました。 「これは盗人の血か?鎖に微かだが血がついている」  なんだ。そんな事ですか。もうその傷は心配ないでしょう。もう出血する事は無いでしょう。ほとんど治癒していま……  べろり (ひっヒェェエエエエェエエエッ!舐められたぁッ!指をッ!私の指をッ!この人、どうして私の指を舐めるんですか~ッ!)    べろり (何回舐めるんですかぁッ!) 「全然足りんな。もっと血がほしい」  そう言うとタルカスは鎖を肩にかけ歩き始めました。  鳥肌が立つなんてレベルではありません。恐ろしく気持ち悪かったです。なんとか声を出さずにすみましたが、これからもこんなことがあるのでしょうか。  ああ、ブチャラティさん、形兆さん早く助けてください~~。 【闇の重戦士チーム 宇宙人添え】 【杜王駅 (E-03) 1日目 朝~午前】 【ワムウ】 [モード]:『風』 [時間軸]:首だけになり、ジョセフが腕を振り下ろした瞬間 [状態]:服が少し焦げている [装備]:手榴弾×9 [道具]:支給品一式 [思考・状況]  1) 駅の中を調べて盗人を捜す  2) 鎖(ミキタカ)を少しだけ怪しく思っている  3) 戦いを楽しみつつ、優勝を目指す。ただ深追いはしない。  4) 従者として、しばらくはタルカスを従えておく。 【タルカス】 [種族]:屍生人(ゾンビ) [時間軸]:ジョナサンたちとの戦いの直前。ディオに呼ばれジョナサンたちと初めて対面する前。 [状態]:無傷。 [装備]:【ミキタカが化けたフック付きの長い鎖】。 [道具]:支給品一式 [思考・状況]:   1)駅の中を調べて盗人を捜す。   2)ワムウへの絶対的な忠誠。   3)ワムウと共に戦う。戦いの愉悦を彼の下で楽しむ。   4)取り逃した虹村形兆、ブチャラティ、ミキタカへの僅かな執着心(ワムウの命に背いてまで追う気はないが) 【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】 [スタンド?]:『アース・ウィンド・アンド・ファイアー』 [時間軸]: 鋼田一戦後 [状態]:【フック付きの長い鎖】に化けた状態。タルカスに片手で握られ、肩に掛けられている。千切られそうになったので体全体が痛い [装備]:なし [道具]:ポケットティッシュ (支給品一式はブチャラティが持っています) [思考]:  1) タルカスたちには絶対に気付かれたくない。そのため、当面はただの鎖のフリを続ける。  2) タルカスたちに気付かれないうちにこっそり逃げ出したい。  3) 脱出後、ブチャラティたちとの合流を図る  4) 味方を集めて多くの人を救いたい。 [備考]:ミキタカは形兆のことを「ゾンビのようなもの」だと思っています。 [備考]:タルカスもワムウも、タルカスが手にしている鎖がミキタカであることにまだ気付いていません。しかしワムウは怪しいと感じています。 [備考]:ミキタカは自ら道路に血を垂らし、ブチャラティたちが追う手がかりを残しています。     彼らが通った道には、点々と血の跡が続いています。ワムウ達はもう気づいています。 [備考]:ワムウとタルカスは鎖を盗もうとしている参加者が近くにいると勘違いしています。そして駅につづいている血痕もその参加者のものだと思い込んで います。 [備考]:ミキタカの冷や汗は結局気づかれませんでした。 [備考]:吸血馬1頭+チャリオットは駅の中に置いています。 *投下順で読む [[前へ>逃亡]] [[戻る>1日目 第2回放送まで]] [[次へ>ディオ・ブランドー]] *時系列順で読む [[前へ>『真っ直ぐに』]] [[戻る>1日目(時系列順)]] [[次へ>フライト・コードなし!去るD-2は向かえ]] *キャラを追って読む |49:[[承太郎と哀れな下僕]]||ワムウ|70:[[Excuse Me!考え中]]| |49:[[承太郎と哀れな下僕]]||タルカス|70:[[Excuse Me!考え中]]| |49:[[承太郎と哀れな下僕]]||ヌ・ミキタカゾ・ンシ|70:[[Excuse Me!考え中]]|

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