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SZR~surround zone readers~」(2008/01/25 (金) 12:58:38) の最新版変更点

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「急げェェェ急げェェェ事態は一刻を争っているのだァァァ!! 」 戦車のように猛然と走るサイボーグ、ルドル・フォン・シュトロハイム。 噴上裕也とリキエルから『戦略的撤退』をとった彼は全速力で杜王町を走っていた。 戦のしんがりを務め、全てを託してくれたジョナサン・ジョースターの仇をとるために。 そして、あの二人を倒すうえで必要な戦力と仲間を探すために。 今、この状況で即戦力になりうるは……自分が最初に出会った一癖も二癖もあるジャップの漫画家、岸辺露伴。 彼も噴上達と同じく『スタンド使い』。餅は餅屋の理屈で彼の自宅を目指すことを決めた。 地図と支給品を置き去りにして道に迷った時はどうなることかと思ったが、 彼の自宅を目指すのなら元来た道を辿ればいいだけのこと。 なんとか無事であればいいのだが―― 『えー皆聞こえているかな? それじゃあただいまから一回目の放送を行いま~す』 悪魔の点呼が始まった。おどけた男の声が自分の怒りの波を掻き立てる。 これから耳にするであろう現実は、既に自分にとってわかりきったことだからだ。 それは紳士ジョナサン・ジョースターの偉大なる死。 万が一を願っていた己の心をあざ笑うかのような現実。、耳を塞いでも鼓膜に突き刺さるようかの事実。 しかし放送はさらに思わぬ人物の名も口にした。 柱の男の消滅のために手を組んだ石油王―-ロバート・E・O・スピードワゴン。 柱の男の長たる象徴であり、諸悪の根源である化け物――カーズ。 柱の男の恐怖など全く寄せ付けない機転と才知に溢れた、いまいましいイギリス人――ジョセフ・ジョースター。 シュトロハイムは呆然とする。 何気なく自分の耳をいじり、機能を確認する。どうやら誤作動は起こしていないようだ。 つまり、事実。石油王の死も、化け物の死も、そして……いまいましいイギリス人の死も全て真実なのである。 「なんたる醜態だJOJO! 見損なったぞッ! 貴様という奴は……貴様という奴は……おめおめと死んどる場合かーッ!! 」 一体いかなる手段で奴らは死に至ったのだろうか。 我がナチスに勝る……いやほぼ互角の破壊力を持つ兵器を装備した者がいるのだろうか。 あるいは、『スタンド使い』なる者による討伐を受けたのか。 考えるだけで、怒髪天を衝きそうだ。 しかし愕然としていたシュトロハイムは、知らず知らずの内にゆっくりと右手だったモノを天に向かって差し出した。まるでスポーツ選手が宣誓をするかのように。 そう、これぞナチスドイツ流“敬礼”の方式。 それはジョジョに出会い、ジョジョに出会えなかった軍人による、 誇り高き男たちへの追悼と惜別の念を込めたささやかなるハナムケであり、謝罪であった。 日光に照らされた彼の右目レンズが、キラリと光る。 今日は涙のせいか、いつもよりいっそう輝いて見えた。 ※  ※  ※ 吉良吉影とギアッチョが死闘を演じた線路沿いに佇む一組の男女の影。 毅然と立つ女の名はリサリサといい、失望のあまり座り込む男の名はツェペリといった。 放送手段に驚きはしたものの、それ以上の衝撃が二人を襲っていた。 男の悲しみは尋常ではなく、体内で反響し脳髄から過去の記憶を浮かびあがらせていた。 『ツェペリさん、あなたとぼくは共通点がある。似た過去がある。教えてください波紋の使い方を!!どんな苦しみにも耐えます。どんな試練も克服します』 『なぁ! ツェペリのおっさんよォ おれにもよぉその「波紋法」とやらは可能か?やってみたいんだ !おせーて! おせーてくれよ! おれもあんたらの力になりてえんだよ!  この町のどこかにディオのやつがいると思うと! あの野郎だけはゆるせん!おれは物は盗むがあいつは命を盗むッ!! 』 『初めまして。ストレイツォと申します。あなたも肉体の鍛錬のために「波紋法」を学びに?……なるほど、石仮面の謎を調べるためにやって来たのですか。 あなたは自分の運命を受け入れることのできる、誇り高き信念をお持ちのようですね』 血気盛んで有望な若者ほど蝉のように短命で、生き残るのは自分のような老いぼればかり。 これが師・トンペティから告げられた予言――死への宿命だというのか。 自分の『運命』はうら若き青年達に未来を託すためだとばかり思っていたが、、 待ち受けていたものはその期待をことごとく裏切る現実だった。 だが、仮に本当に自分が死んだ後に蘇っているのならば……この状況こそが蘇った自分の新たなる『宿命』なのかもしれない。 「ミスターツェペリ、心の整理はついたかしら」 女の問いで我に返る。彼女の姿は自分の目にたまる水でぼやけるせいかよく見えないが、態度は極めて冷酷だ。 親しき者達との別れに悲しい素振りも見せず、涙も流さず、喘声もあげない。 だが、本当に悲しくないはずがない。気丈にふるまおうとしているだけなのだ。 自分に声をかけたかと思えば、いつの間にやら先へ先へと歩いていた。 一時の感情に流されず、自分の目的を確実にこなそうとする姿勢。なんと立派な波紋戦士であろうか。 ※  ※  ※ 「な……何が起こったというのだァーッ!!」 確かに同じ道を引き返したはずだったのだ。 少々契機の調子が不完全とはいえ、家宅と周りの風景を見間違えるほど我が頭脳は劣悪ではない。 とはいえ……未だに信じられない事態になっている。 そう、岸辺露伴の家の崩壊。 ヴァニラ・アイスの襲撃でやぐくなった建物は自ら崩れ落ちたのだが、そんなことをシュトロハイム自身は知る由も無い。 シュトロハイムは焦った。 先ほどの放送では生存者の名はよばれなかったが、生死の境を迷っている人間がいる可能性はある。 つまり露伴は……この建物に生き埋めになっているのかもしれないのだ。 しかしこの瓦礫の山から人一人を見つけるのは至難の技。 いくらサイボーグの身体を持つ男でも片腕がない状態では半日はかかってしまうだろう。 ここで無駄な体力を使ってはせっかく命を賭したジョナサンに申し訳が立たない。 「ええい! 迷っとる場合かァーッ!! 」 が、シュトロハイムは自慢の鋼鉄の肉体を動かしていた。 左手の指と掌の力、左腕の力、左肩の力を使って破片を取り除いていく。 どれほどの器かまるで分からないほどの短い付き合いのはずなのだが、 もしこのまま彼を見捨ててしまったら、潰えてしまう気がしたのだ。『希望』という光が潰えてしまう気がしたのだ。 ……そしてシュトロハイムが数十分この行為を行った結果彼自身が、この行動が徒労に終わることを悟り始めたころ、 「彼ら」は現われた。 「久しぶり……と言ったほうがいいのかしら。随分と荒っぽい再会ね、ルドル・フォン・シュトロハイム」 シュトロハイムの救出作業は力任せに行われていた為、あたりに騒音を撒き散らしていた。 そのため、近くを歩いていた人間を呼び寄せることとなり……結果的に、彼は『希望』を招いたのだ。 ※  ※  ※ 「オマエはJOJOの師匠である、波紋使いリサリサ!! そしてそっちの男は……貴様の知り合いか? 」「“ミスター”ウィル・A・ツェペリ。あなたも知ってる私の弟子、シーザー・アントニオ・ツェペリの祖父にあたり、 ジョセフ・ジョースターの祖父、ジョナサン・ジョースターの波紋の師匠にあたる」 「ツ、ツェペリだと!? ならば貴様はジョナサンの言っていた屍生人だという事か! 」 「馬鹿モン! 屍生人なら早朝の外で無事なわけがなかろう。正真正銘の人間じゃよ。 お主は信じてくれんだろーが……ん、お主ジョジョを知っているのか!? 」 「あ……ああ……話すと長くなりそうだ。だが今は手が離せないんだ。 この瓦礫に生き埋めになっているかもしれないオレの仲間を見つけるのが先だ」 「それならワシらにまかせんかい。この瓦礫全体に『波紋』をながして生命反応を調べてやるからそこで指をくわえて待っちょれ」 ツェペリ達が波紋を流した結果、生命反応は瓦礫からは感じとれなかったらしく、 それを聞いたシュトロハイムは安堵の息を漏らした。 そして3人は、互いがここで体験した情報の交換を行った。 シュトロハイムがジョナサン・ジョースターの勇姿を語れば 「フッ……『ツェペリさん仕込みの究極!深仙脈疾走(ディーパスオーバードライブ)』か…… ジョジョの奴、最後の最後までカッコよく散りおって……」 と、ツェペリが再び涙を流し、 また、岸辺露伴から受けたスタンド使いのレクチャーを話せば 「それが本当なら荒木の能力が死人を蘇らせること、という私達の仮説も大いに修正の必要があるわね。 しかしミスターツェペリをはじめとした私たちにとっての“死者”が存在しているのは確かなのは間違いないのだけれど。そして岸辺露伴……あなたに自分の能力を話さない所をみるとかなりキレる男のようね」 と、首を捻る。 議論の進展もさほど進まず、話題も収束しかけたときにツェペリは何気ない質問をした。 「お主たちの生きている時代で、誰が死者なのか教えてほしい」と。 ところが、この質問は3人にある結論を導き出した。 リサリサの指した死者はシュトロハイムよりも多かったのだ。 この謎の種明かしは実に単純である。 シュトロハイムは柱の男討伐、及びエイジャの赤石奪還のためにスイスに赴く時代から、 リサリサは柱の男たちとの因縁が決着した時代から、それぞれやってきたのであった。 つまり、シュトロハイムにとってシーザー、柱の男達はまだ死んでいないことになる。 同じ時代に生きていたはずの二人がここでは互いに記憶の間で生じる若干の時の「ズレ」があったのだ。 この「ズレ」こそ……荒木の能力の最大のヒントと成りえる物だったようだ。 「これで荒木が死者を蘇らせる能力を持っている可能性はほぼゼロということかしら……? どう決着がつくかはあえて具体的に話さないことにするわ。 しかし私の存在していた時代では柱の男たちとの決着がつく前に、あなたが死ぬことは有り得ない」 「つまり荒木は……例えるなら時空を超えて私たちをこの場に集めることが能力に近いものをもっているということか? ナチスでそんな超絶技術をやろうとしてたアホ共がいたが……しかし奴はなぜこんなまどろっこしいことを……?  貴様とオレが知り合う前の時代で生きていた時代から呼び寄せたほうがより円滑にこの殺し合い進められたのではないか? 」 「何かあるんじゃよ。そうしたかった、もしくはそうせざるをえなかった何かが……」 こうして、荒木の能力をスタンド能力に近いものと仮定したうえでの議論は終了し、これからの指針について話すことになった。 まず、この町と荒木やスタンド能力への更なる調査。 次にシュトロハイムの本来の目的である噴上裕也とリキエルのいる病院への襲撃。 この二つのこともふまえて、3人とも意見は一致した。 「もっと仲間を増やそう」と。 波紋戦士として一万人にひとりの適性を持つジョナサン・ジョースターを倒すほど、スタンドの性質には底知れぬ凶悪さがある。 よって当面の目標は荒木に反逆の意思を持つスタンド使いの仲間を増やし、この状況への更なる理解。 そして戦力が十分になった後、あらためて病院へ向かう作戦を実行することになった。 特に、シュトロハイムが出会った岸辺露伴という男の捜索は最優先事項。 彼は荒木への反逆の意思を見せていた。つまり露伴の仲間なら同様の考えを持つ者がいる可能性が高い。 そして一刻も早く、さらなるスタンド使いの情報を彼から得なければならない。 そして3人にはもうひとつの結論が出来ていた。それは―― ※  ※  ※ 「待っていろォォォォォ岸辺露伴ンンンン噴上裕也ァァァリキエルゥゥゥ!!! 」 岸辺露伴の家から少し南に進んだ住宅街。ツェペリ達から譲り受けた余りのデイバッグを担ぎ、シュトロハイムは再び走り続ける。 仲間を探すため、増やすため、旅の再開である。 身体の調子も依然良好。そして今回は頼もしい道具も新たに手に入った。 不思議な矢の形をしているが、説明書曰く参加者の首輪探知機らしい。首輪に反応するとその方角を向くという物らしい。 リサリサ達が自分を発見できたのはこの道具のおかげらしく、なんとも便利な支給品である。 なんとしても約束の時までには間に合わせてみせると祖国の誇りに掛けて誓うと決めた。 あの病院の二人を打倒する戦力を、この手に掴むために走る!!  「確か第4放送までに病院前で集合だったなァァァァ! まずは南東に向かってゼンソクゼンシィィィィン!!」   ※  ※  ※ 岸辺露伴の家だった瓦礫の前でウィル・A・ツェペリは一人、シュトロハイムが去った後のリサリサとの会話を思い出す。 ――フーッ 暑苦しい男だったわい。だがとても若さと情熱に満ち溢れておる。 ジョジョも自分の遺志があのような男に受継がれているのなら本望じゃろうて―― ――……それじゃあ私達もここで別れましょう。予定通りに―― ――本当にいいのか? 我々3人がそれぞれ別行動をとるなんて……単独行動は自殺行為じゃぞ?  ワシやあんたはある程度、波紋で周りを探知可能じゃから奇襲を受けることはないと思うが、あの男はどーかのう―― ――だからあの支給品を彼に渡したのです。私達が持つよりは彼が持つほうがいい。 ジョナサン・ジョースターが全く太刀打ち出来なかったスタンド使いに、我々が束になってかかったところで勝算はよくて五分でしょう。 他のスタンド使いもおそらく同等の力を持っていると考えるのが妥当。あれは私達の波紋とは別の次元の力です。 私はスタンド使いからもっと直接話しを聞くべきだと思うわ。 だから後の病院の襲撃のための仲間の収集……なるだけ多くの同志を募る為の効率を優先すべきと判断したまで―― そう言って去っていく彼女の後ろ姿は、相変わらず“冷酷”の空気を帯びていた。 最後の最後まであくまで弟子の死に動じていないフリをするつもりだったのだろう。 事実、シュトロハイムもツェペリもジョセフ・ジョースターの死亡を話題に上げてはいない。 「話すな」と言わんばかりの彼女のオーラがサングラスの奥から湧き出ていたためである。 だから3人別々に行動をするという提案が彼女から出たとき、ツェペリ達は快くそれに賛同した。 理由は当然、単独行動による能率の良さもあるが……ツェぺリ達はリサリサに「人によっては一人の時にしか出来ない行動」を是非してもらいたかったのだ。 このまま自分達が一緒にいては決してすることのないであろう行動を。 「ん……これはなんじゃ? 」 一人、岸部露伴邸のポストにもたれていたツェペリは、ポストの中からカサカサとなる音を聞き取った。 おそるおそるポストの蓋を開けると、そこには置き手紙があった。 早速手紙を読んでみると、そこには男の不満がたらたらと書かれていた。 『フン! この手紙を見つけたあんたはそーとーの暇人のようだなッ!! この手紙が何かの役にたつとでも思ってポストを開けたのかい?  違うだろう。どーせグチャグチャになった僕の家を野次馬根性で見る為にここに来て、 たまたまこの手紙を見つけたんだろう? さあ笑えよ!!  改装したばかりで新築同然なのにまた自宅をボロボロにされたこの僕を!! 変に情けをかけてもらう位ならいっそ笑ってくれたほうが百倍マシだからなッ! どうだ、スッキリしたかい? スッキリしただろうッ! ……まぁ、その、なんだ。 万が一誰かがここに来た時に瓦礫をこれ以上ひっかいて、まわされるのも困るしな。 それで人を呼び寄せでもしたらさらに野次馬が増えるだろう。それは僕も嫌だ。 万が一、僕の知り合いがこの手紙を読んだ時のことを考えて、書いておこう。 僕は無事だ。 だが、よけいな情けはいらないぞ。怪我もしていないし、この通りピンピンしてる。 もしも僕の家をひっかきまわした後この手紙を読んだアホへ、ざまあみろ。 そんな野次馬根性だから損をするのさッ! ただ……ここで悪態をついてもしょうがないからな 一応、一応だが「心配してくれてありがとう」と、言っておく。あくまで社交辞令だがね』                                                             ――岸辺露伴―― 結局、最後にお礼を述べているこの手紙の主にツェペリは思わず笑ってしまった。 この岸辺露伴という男は実に自分本位で、トンチキで、奇妙な男らしい。 「……ちょいと興味が湧いてきたわい」 ツェペリは露伴の手紙を懐にしまうと、瓦礫の山を後にした。 ※  ※  ※ 私、リサリサ(エリザベス・ジョースター)はあの崩壊した家宅から南に進んでいる。 3人の間で決まった約束「第四回放送までに仲間を集めて、病院前に集合する。それまでは各自単独行動」を遂行するために。 もう悲しみからも大分立ち直ってきた。戦士たるもの、常に仲間との別れはつきものであり、常識。 悲しみで涙する余裕があるならば、より密度のある波紋を練るために集中するべきだ。 例え、赤ん坊だった自分をあの船の事故から救ってくれた命の恩人であるジョナサン・ジョースターと死別したとしても。 例え、その赤ん坊だった自分を立派に育て上げてくれた狂気の波紋戦士ストレイツォと死別したとしても。 例え、死んだ夫の復讐に走った私を財団の総力を尽くしてかくまってくれた恩人、スピードワゴンと死別したとしても。 そして例え、波紋戦士としての才能も申し分なく、才知と勇気に溢れていた自慢の弟子であり………… 『ちくしょうーーッ!! てめーーッ! なに様のつもりだ! ゆるせねえ! 美人なだけになおさら怒りがこみあげるぜ! 』 自慢の…………弟子で……あり………… 『先生―ッ かっ……感動したぜッ! はっ早く次の修行にうつってくれ! おっ俺はなんでも乗り越えてみせるぜッ! 』 ………自慢の…………息子でも………………あり………… 『てめーッ 今 おれのことバカモノっていったなァァ~~? ん?  ギャにィィーッ なんでおれの名が墓に刻んであるんだ!? ま……まさか! この葬式は!? オーーノォーー信じらんねーッ!! 』 …………息……………………子で……………………………………………… 『死亡したのは……ジョセフ・ジョースター――』 「そんなハズがないッ!! 」 声をあげて私は叫ぶ。自分の人生でもおそらく最初で最大の呼吸量。 腹の底からありったけの気を込めて、広がる空に向かって解き放つ! この目で自分は何度も見たのだ。自分の息子の類まれない才能によって生み出された数多くの奇跡。 2千年続いた石仮面と波紋の歴史に決着をつけた男が死ぬはずがない 我が息子の運命は、プッツリと断ち切れる細い糸のような脆い運命じゃあない。 息子はきっと生きている。この目でこの手で確認するまでは……たとえ何があろうと信じない。 ツェペリ達はおそらく私が気丈に振舞っているフリをしていると考えたゆえに、一人になる事を許してくれたのだろう。 一人にならないと、息子を失った悲しみを……自分の本当の気持ちを思う存分吐き出せないと気づかってくれたのだろう。 荒木は私の大切な人の死を語って私の動揺を誘おうと企んだのであろうか。 これしきのことでこの私が動じると思っているのだろうか。 否、否、否、否、否、否、否、否、否、否!!! 私の脳は一秒間に十回否定した。 まだ、涙を流す必要はない。これは、まやかしなのだ。ジョセフはきっと生きている。 きっとあっと驚く手段で死んだフリをしているに違いない。あの子には自信を持ってそう言い切れる。 私は波紋の達人。しかし冷静ではない。 ここまで私達の誇り高き運命をコケにするのなら……容赦はしない。 荒木だろうと、噴上裕也だろうと、リキエルだろうと。 そしてジョセフの死を肯定しようとする者なら……誰であろうと!! 最も……そんな奴らでも病院襲撃の時までは私たちの手駒として動いてもらおうかしら。 私のよーな転んでもタダで起きないタイプの人間は、そのくらいの欲張りは許してもらいたいわね。 さて、私の独り言はこれで終わり。さっさと先へ進むことにするわ。 【ぶどうヶ丘病院襲撃隊S(シュトロハイム)班(チーム名はあくまで仮称)】 【住宅街 (D-4)から南東に進行中/一日目/朝】 【シュトロハイム】 [能力]:サイボーグ [状態]:右腕喪失(だが痛みはない)。生身部分、『波紋』によって完全回復済み(むしろパワーアップ?) [装備]:ゲルマン民族の誇りである自らの肉体 [道具]: 支給品一式、『矢の形をした首輪探知機』(ギアッチョの支給品) [思考・状況] 1) ジョナサンの仇を取る(その為に信頼できる仲間を探す) 2) ツェペリ、リサリサと第4回放送時に病院(C-4)の前で集合する。 3) 露伴、シーザー、ツェペリとリサリサの知り合いを最有力候補として合流を図る 。 4) ジョースター卿とDIOに出会った時、二人を倒すかどうかは保留。 5) もちろんワムウ、荒木には警戒する。 ※シュトロハイムの持っている矢の外見は、スタンド能力を発動させる矢にそっくりですが別物です。 あくまで首輪のある方向を指し示してくれるだけで、それ以外はただの矢です。(方位磁石のようなもの) 【ぶどうヶ丘病院襲撃隊Z(ツェペリ)班(チーム名はあくまで仮称)】 【岸辺露伴の家の前(D-4)/一日目/朝】 【ウィル・A・ツェペリ】 [能力]:波紋 [時間軸]:双首竜の間で、天地来蛇殺の鎖に捕らえられた瞬間。胴体を両断される直前。 [状態]:左肩に小さな傷があるが治療済み。 ジョナサン達を失ったことへの悲しみ。 [装備]:ショットグラス×2、 水入りペットボトル(共通支給品だが、波紋カッターや波紋センサーに利用可能) [道具]: 支給品一式×2、拡声器(スポーツ・マックスの支給品) 、薬草少々(ツェペリと分けました)、 岸辺露伴の手紙 [思考・状況] 1)第4回放送までに病院(C-4)襲撃の為の仲間を探す。 特に岸辺露伴、リサリサの知り合い。 2)参加者の中にいる吸血鬼・屍生人を倒す。 3)ジョースター卿が屍生人になっているかどうかを確かめる。もしかしたら違う?   4)未知の技術『スタンド』についてさらなる検証を重ねる  [備考]:ツェペリは、荒木が『時空』に関わる力を持っているのかも、と考えましたが自信ゼロ。       スタンド能力の大原則はシュトロハイムから聞きました。 【ぶどうヶ丘病院襲撃隊R(リサリサ)班(チーム名はあくまで仮称。というか意識してない)】 【岸辺露伴の家(D-4)から南へ進行中/一日目/朝】 【リサリサ】 [能力]:波紋 [時間軸]:第二部終了後。ジョセフとの母子関係を明かしアメリカ移住を決めた頃 [状態]:右脛に小さな傷があるが治療済み。 冷酷に振舞っているが、冷静ではない。 [装備]: アメリカンクラッカー×2 [道具]: 支給品一式、薬草少々(ツェペリと公平に分けました) [思考・状況] 1) ジョセフの死はこの目で見るまでは信じない。他の死者に関しては保留。 2) 第4回放送までに病院(C-4)襲撃の為の仲間を探す。 特にシーザー、岸辺露伴。 3)ジョセフの死を肯定するものは信頼しない。あくまで病院襲撃の手駒として利用するまで。 4)もちろんワムウ、荒木には警戒する。 5)未知の技術『スタンド』についてさらなる検証を重ねる [備考]:リサリサは、結局『柱の男』についてツェペリに説明しそびれています。 [備考]:リサリサは、荒木が『時空』に関わる力を持っているのかも、と考えましたが自信ゼロ。       スタンド能力の大原則はシュトロハイムから聞きました。 *投下順で読む [[前へ>暴走する男達]] [[戻る>1日目 第2回放送まで]] [[次へ>その石の秘密と、希望]] *時系列順で読む [[前へ>暴走する男達]] [[戻る>1日目(時系列順)]] [[次へ>その石の秘密と、希望]] *キャラを追って読む |41:[[《運命》の使徒]]||シュトロハイム|100:[[ヒトとハトのコンビネーション]]| |48:[[見知らぬ遺言、見知らぬ魔法]]||ウィル・A・ツェペリ|88:[[意気投合]]| |48:[[見知らぬ遺言、見知らぬ魔法]]||リサリサ|82:[[邂逅、曾祖母と曾孫]]|
「急げェェェ急げェェェ事態は一刻を争っているのだァァァ!! 」 戦車のように猛然と走るサイボーグ、ルドル・フォン・シュトロハイム。 噴上裕也とリキエルから『戦略的撤退』をとった彼は全速力で杜王町を走っていた。 戦のしんがりを務め、全てを託してくれたジョナサン・ジョースターの仇をとるために。 そして、あの二人を倒すうえで必要な戦力と仲間を探すために。 今、この状況で即戦力になりうるは……自分が最初に出会った一癖も二癖もあるジャップの漫画家、岸辺露伴。 彼も噴上達と同じく『スタンド使い』。餅は餅屋の理屈で彼の自宅を目指すことを決めた。 地図と支給品を置き去りにして道に迷った時はどうなることかと思ったが、 彼の自宅を目指すのなら元来た道を辿ればいいだけのこと。 なんとか無事であればいいのだが―― 『えー皆聞こえているかな? それじゃあただいまから一回目の放送を行いま~す』 悪魔の点呼が始まった。おどけた男の声が自分の怒りの波を掻き立てる。 これから耳にするであろう現実は、既に自分にとってわかりきったことだからだ。 それは紳士ジョナサン・ジョースターの偉大なる死。 万が一を願っていた己の心をあざ笑うかのような現実。、耳を塞いでも鼓膜に突き刺さるようかの事実。 しかし放送はさらに思わぬ人物の名も口にした。 柱の男の消滅のために手を組んだ石油王―-ロバート・E・O・スピードワゴン。 柱の男の長たる象徴であり、諸悪の根源である化け物――カーズ。 柱の男の恐怖など全く寄せ付けない機転と才知に溢れた、いまいましいイギリス人――ジョセフ・ジョースター。 シュトロハイムは呆然とする。 何気なく自分の耳をいじり、機能を確認する。どうやら誤作動は起こしていないようだ。 つまり、事実。石油王の死も、化け物の死も、そして……いまいましいイギリス人の死も全て真実なのである。 「なんたる醜態だJOJO! 見損なったぞッ! 貴様という奴は……貴様という奴は……おめおめと死んどる場合かーッ!! 」 一体いかなる手段で奴らは死に至ったのだろうか。 我がナチスに勝る……いやほぼ互角の破壊力を持つ兵器を装備した者がいるのだろうか。 あるいは、『スタンド使い』なる者による討伐を受けたのか。 考えるだけで、怒髪天を衝きそうだ。 しかし愕然としていたシュトロハイムは、知らず知らずの内にゆっくりと右手だったモノを天に向かって差し出した。まるでスポーツ選手が宣誓をするかのように。 そう、これぞナチスドイツ流“敬礼”の方式。 それはジョジョに出会い、ジョジョに出会えなかった軍人による、 誇り高き男たちへの追悼と惜別の念を込めたささやかなるハナムケであり、謝罪であった。 日光に照らされた彼の右目レンズが、キラリと光る。 今日は涙のせいか、いつもよりいっそう輝いて見えた。 ※  ※  ※ 吉良吉影とギアッチョが死闘を演じた線路沿いに佇む一組の男女の影。 毅然と立つ女の名はリサリサといい、失望のあまり座り込む男の名はツェペリといった。 放送手段に驚きはしたものの、それ以上の衝撃が二人を襲っていた。 男の悲しみは尋常ではなく、体内で反響し脳髄から過去の記憶を浮かびあがらせていた。 『ツェペリさん、あなたとぼくは共通点がある。似た過去がある。教えてください波紋の使い方を!!どんな苦しみにも耐えます。どんな試練も克服します』 『なぁ! ツェペリのおっさんよォ おれにもよぉその「波紋法」とやらは可能か?やってみたいんだ !おせーて! おせーてくれよ! おれもあんたらの力になりてえんだよ!  この町のどこかにディオのやつがいると思うと! あの野郎だけはゆるせん!おれは物は盗むがあいつは命を盗むッ!! 』 『初めまして。ストレイツォと申します。あなたも肉体の鍛錬のために「波紋法」を学びに?……なるほど、石仮面の謎を調べるためにやって来たのですか。 あなたは自分の運命を受け入れることのできる、誇り高き信念をお持ちのようですね』 血気盛んで有望な若者ほど蝉のように短命で、生き残るのは自分のような老いぼればかり。 これが師・トンペティから告げられた予言――死への宿命だというのか。 自分の『運命』はうら若き青年達に未来を託すためだとばかり思っていたが、、 待ち受けていたものはその期待をことごとく裏切る現実だった。 だが、仮に本当に自分が死んだ後に蘇っているのならば……この状況こそが蘇った自分の新たなる『宿命』なのかもしれない。 「ミスターツェペリ、心の整理はついたかしら」 女の問いで我に返る。彼女の姿は自分の目にたまる水でぼやけるせいかよく見えないが、態度は極めて冷酷だ。 親しき者達との別れに悲しい素振りも見せず、涙も流さず、喘声もあげない。 だが、本当に悲しくないはずがない。気丈にふるまおうとしているだけなのだ。 自分に声をかけたかと思えば、いつの間にやら先へ先へと歩いていた。 一時の感情に流されず、自分の目的を確実にこなそうとする姿勢。なんと立派な波紋戦士であろうか。 ※  ※  ※ 「な……何が起こったというのだァーッ!!」 確かに同じ道を引き返したはずだったのだ。 少々契機の調子が不完全とはいえ、家宅と周りの風景を見間違えるほど我が頭脳は劣悪ではない。 とはいえ……未だに信じられない事態になっている。 そう、岸辺露伴の家の崩壊。 ヴァニラ・アイスの襲撃でやぐくなった建物は自ら崩れ落ちたのだが、そんなことをシュトロハイム自身は知る由も無い。 シュトロハイムは焦った。 先ほどの放送では生存者の名はよばれなかったが、生死の境を迷っている人間がいる可能性はある。 つまり露伴は……この建物に生き埋めになっているのかもしれないのだ。 しかしこの瓦礫の山から人一人を見つけるのは至難の技。 いくらサイボーグの身体を持つ男でも片腕がない状態では半日はかかってしまうだろう。 ここで無駄な体力を使ってはせっかく命を賭したジョナサンに申し訳が立たない。 「ええい! 迷っとる場合かァーッ!! 」 が、シュトロハイムは自慢の鋼鉄の肉体を動かしていた。 左手の指と掌の力、左腕の力、左肩の力を使って破片を取り除いていく。 どれほどの器かまるで分からないほどの短い付き合いのはずなのだが、 もしこのまま彼を見捨ててしまったら、潰えてしまう気がしたのだ。『希望』という光が潰えてしまう気がしたのだ。 ……そしてシュトロハイムが数十分この行為を行った結果彼自身が、この行動が徒労に終わることを悟り始めたころ、 「彼ら」は現われた。 「久しぶり……と言ったほうがいいのかしら。随分と荒っぽい再会ね、ルドル・フォン・シュトロハイム」 シュトロハイムの救出作業は力任せに行われていた為、あたりに騒音を撒き散らしていた。 そのため、近くを歩いていた人間を呼び寄せることとなり……結果的に、彼は『希望』を招いたのだ。 ※  ※  ※ 「オマエはJOJOの師匠である、波紋使いリサリサ!! そしてそっちの男は……貴様の知り合いか? 」「“ミスター”ウィル・A・ツェペリ。あなたも知ってる私の弟子、シーザー・アントニオ・ツェペリの祖父にあたり、 ジョセフ・ジョースターの祖父、ジョナサン・ジョースターの波紋の師匠にあたる」 「ツ、ツェペリだと!? ならば貴様はジョナサンの言っていた屍生人だという事か! 」 「馬鹿モン! 屍生人なら早朝の外で無事なわけがなかろう。正真正銘の人間じゃよ。 お主は信じてくれんだろーが……ん、お主ジョジョを知っているのか!? 」 「あ……ああ……話すと長くなりそうだ。だが今は手が離せないんだ。 この瓦礫に生き埋めになっているかもしれないオレの仲間を見つけるのが先だ」 「それならワシらにまかせんかい。この瓦礫全体に『波紋』をながして生命反応を調べてやるからそこで指をくわえて待っちょれ」 ツェペリ達が波紋を流した結果、生命反応は瓦礫からは感じとれなかったらしく、 それを聞いたシュトロハイムは安堵の息を漏らした。 そして3人は、互いがここで体験した情報の交換を行った。 シュトロハイムがジョナサン・ジョースターの勇姿を語れば 「フッ……『ツェペリさん仕込みの究極!深仙脈疾走(ディーパスオーバードライブ)』か…… ジョジョの奴、最後の最後までカッコよく散りおって……」 と、ツェペリが再び涙を流し、 また、岸辺露伴から受けたスタンド使いのレクチャーを話せば 「それが本当なら荒木の能力が死人を蘇らせること、という私達の仮説も大いに修正の必要があるわね。 しかしミスターツェペリをはじめとした私たちにとっての“死者”が存在しているのは確かなのは間違いないのだけれど。そして岸辺露伴……あなたに自分の能力を話さない所をみるとかなりキレる男のようね」 と、首を捻る。 議論の進展もさほど進まず、話題も収束しかけたときにツェペリは何気ない質問をした。 「お主たちの生きている時代で、誰が死者なのか教えてほしい」と。 ところが、この質問は3人にある結論を導き出した。 リサリサの指した死者はシュトロハイムよりも多かったのだ。 この謎の種明かしは実に単純である。 シュトロハイムは柱の男討伐、及びエイジャの赤石奪還のためにスイスに赴く時代から、 リサリサは柱の男たちとの因縁が決着した時代から、それぞれやってきたのであった。 つまり、シュトロハイムにとってシーザー、柱の男達はまだ死んでいないことになる。 同じ時代に生きていたはずの二人がここでは互いに記憶の間で生じる若干の時の「ズレ」があったのだ。 この「ズレ」こそ……荒木の能力の最大のヒントと成りえる物だったようだ。 「これで荒木が死者を蘇らせる能力を持っている可能性はほぼゼロということかしら……? どう決着がつくかはあえて具体的に話さないことにするわ。 しかし私の存在していた時代では柱の男たちとの決着がつく前に、あなたが死ぬことは有り得ない」 「つまり荒木は……例えるなら時空を超えて私たちをこの場に集めることが能力に近いものをもっているということか? ナチスでそんな超絶技術をやろうとしてたアホ共がいたが……しかし奴はなぜこんなまどろっこしいことを……?  貴様とオレが知り合う前の時代で生きていた時代から呼び寄せたほうがより円滑にこの殺し合い進められたのではないか? 」 「何かあるんじゃよ。そうしたかった、もしくはそうせざるをえなかった何かが……」 こうして、荒木の能力をスタンド能力に近いものと仮定したうえでの議論は終了し、これからの指針について話すことになった。 まず、この町と荒木やスタンド能力への更なる調査。 次にシュトロハイムの本来の目的である噴上裕也とリキエルのいる病院への襲撃。 この二つのこともふまえて、3人とも意見は一致した。 「もっと仲間を増やそう」と。 波紋戦士として一万人にひとりの適性を持つジョナサン・ジョースターを倒すほど、スタンドの性質には底知れぬ凶悪さがある。 よって当面の目標は荒木に反逆の意思を持つスタンド使いの仲間を増やし、この状況への更なる理解。 そして戦力が十分になった後、あらためて病院へ向かう作戦を実行することになった。 特に、シュトロハイムが出会った岸辺露伴という男の捜索は最優先事項。 彼は荒木への反逆の意思を見せていた。つまり露伴の仲間なら同様の考えを持つ者がいる可能性が高い。 そして一刻も早く、さらなるスタンド使いの情報を彼から得なければならない。 そして3人にはもうひとつの結論が出来ていた。それは―― ※  ※  ※ 「待っていろォォォォォ岸辺露伴ンンンン噴上裕也ァァァリキエルゥゥゥ!!! 」 岸辺露伴の家から少し南に進んだ住宅街。ツェペリ達から譲り受けた余りのデイバッグを担ぎ、シュトロハイムは再び走り続ける。 仲間を探すため、増やすため、旅の再開である。 身体の調子も依然良好。そして今回は頼もしい道具も新たに手に入った。 不思議な矢の形をしているが、説明書曰く参加者の首輪探知機らしい。首輪に反応するとその方角を向くという物らしい。 リサリサ達が自分を発見できたのはこの道具のおかげらしく、なんとも便利な支給品である。 なんとしても約束の時までには間に合わせてみせると祖国の誇りに掛けて誓うと決めた。 あの病院の二人を打倒する戦力を、この手に掴むために走る!!  「確か第4放送までに病院前で集合だったなァァァァ! まずは南東に向かってゼンソクゼンシィィィィン!!」   ※  ※  ※ 岸辺露伴の家だった瓦礫の前でウィル・A・ツェペリは一人、シュトロハイムが去った後のリサリサとの会話を思い出す。 ――フーッ 暑苦しい男だったわい。だがとても若さと情熱に満ち溢れておる。 ジョジョも自分の遺志があのような男に受継がれているのなら本望じゃろうて―― ――……それじゃあ私達もここで別れましょう。予定通りに―― ――本当にいいのか? 我々3人がそれぞれ別行動をとるなんて……単独行動は自殺行為じゃぞ?  ワシやあんたはある程度、波紋で周りを探知可能じゃから奇襲を受けることはないと思うが、あの男はどーかのう―― ――だからあの支給品を彼に渡したのです。私達が持つよりは彼が持つほうがいい。 ジョナサン・ジョースターが全く太刀打ち出来なかったスタンド使いに、我々が束になってかかったところで勝算はよくて五分でしょう。 他のスタンド使いもおそらく同等の力を持っていると考えるのが妥当。あれは私達の波紋とは別の次元の力です。 私はスタンド使いからもっと直接話しを聞くべきだと思うわ。 だから後の病院の襲撃のための仲間の収集……なるだけ多くの同志を募る為の効率を優先すべきと判断したまで―― そう言って去っていく彼女の後ろ姿は、相変わらず“冷酷”の空気を帯びていた。 最後の最後まであくまで弟子の死に動じていないフリをするつもりだったのだろう。 事実、シュトロハイムもツェペリもジョセフ・ジョースターの死亡を話題に上げてはいない。 「話すな」と言わんばかりの彼女のオーラがサングラスの奥から湧き出ていたためである。 だから3人別々に行動をするという提案が彼女から出たとき、ツェペリ達は快くそれに賛同した。 理由は当然、単独行動による能率の良さもあるが……ツェぺリ達はリサリサに「人によっては一人の時にしか出来ない行動」を是非してもらいたかったのだ。 このまま自分達が一緒にいては決してすることのないであろう行動を。 「ん……これはなんじゃ? 」 一人、岸部露伴邸のポストにもたれていたツェペリは、ポストの中からカサカサとなる音を聞き取った。 おそるおそるポストの蓋を開けると、そこには置き手紙があった。 早速手紙を読んでみると、そこには男の不満がたらたらと書かれていた。 『フン! この手紙を見つけたあんたはそーとーの暇人のようだなッ!! この手紙が何かの役にたつとでも思ってポストを開けたのかい?  違うだろう。どーせグチャグチャになった僕の家を野次馬根性で見る為にここに来て、 たまたまこの手紙を見つけたんだろう? さあ笑えよ!!  改装したばかりで新築同然なのにまた自宅をボロボロにされたこの僕を!! 変に情けをかけてもらう位ならいっそ笑ってくれたほうが百倍マシだからなッ! どうだ、スッキリしたかい? スッキリしただろうッ! ……まぁ、その、なんだ。 万が一誰かがここに来た時に瓦礫をこれ以上ひっかいて、まわされるのも困るしな。 それで人を呼び寄せでもしたらさらに野次馬が増えるだろう。それは僕も嫌だ。 万が一、僕の知り合いがこの手紙を読んだ時のことを考えて、書いておこう。 僕は無事だ。 だが、よけいな情けはいらないぞ。怪我もしていないし、この通りピンピンしてる。 もしも僕の家をひっかきまわした後この手紙を読んだアホへ、ざまあみろ。 そんな野次馬根性だから損をするのさッ! ただ……ここで悪態をついてもしょうがないからな 一応、一応だが「心配してくれてありがとう」と、言っておく。あくまで社交辞令だがね』                                                             ――岸辺露伴―― 結局、最後にお礼を述べているこの手紙の主にツェペリは思わず笑ってしまった。 この岸辺露伴という男は実に自分本位で、トンチキで、奇妙な男らしい。 「……ちょいと興味が湧いてきたわい」 ツェペリは露伴の手紙を懐にしまうと、瓦礫の山を後にした。 ※  ※  ※ 私、リサリサ(エリザベス・ジョースター)はあの崩壊した家宅から南に進んでいる。 3人の間で決まった約束「第四回放送までに仲間を集めて、病院前に集合する。それまでは各自単独行動」を遂行するために。 もう悲しみからも大分立ち直ってきた。戦士たるもの、常に仲間との別れはつきものであり、常識。 悲しみで涙する余裕があるならば、より密度のある波紋を練るために集中するべきだ。 例え、赤ん坊だった自分をあの船の事故から救ってくれた命の恩人であるジョナサン・ジョースターと死別したとしても。 例え、その赤ん坊だった自分を立派に育て上げてくれた狂気の波紋戦士ストレイツォと死別したとしても。 例え、死んだ夫の復讐に走った私を財団の総力を尽くしてかくまってくれた恩人、スピードワゴンと死別したとしても。 そして例え、波紋戦士としての才能も申し分なく、才知と勇気に溢れていた自慢の弟子であり………… 『ちくしょうーーッ!! てめーーッ! なに様のつもりだ! ゆるせねえ! 美人なだけになおさら怒りがこみあげるぜ! 』 自慢の…………弟子で……あり………… 『先生―ッ かっ……感動したぜッ! はっ早く次の修行にうつってくれ! おっ俺はなんでも乗り越えてみせるぜッ! 』 ………自慢の…………息子でも………………あり………… 『てめーッ 今 おれのことバカモノっていったなァァ~~? ん?  ギャにィィーッ なんでおれの名が墓に刻んであるんだ!? ま……まさか! この葬式は!? オーーノォーー信じらんねーッ!! 』 …………息……………………子で……………………………………………… 『死亡したのは……ジョセフ・ジョースター――』 「そんなハズがないッ!! 」 声をあげて私は叫ぶ。自分の人生でもおそらく最初で最大の呼吸量。 腹の底からありったけの気を込めて、広がる空に向かって解き放つ! この目で自分は何度も見たのだ。自分の息子の類まれない才能によって生み出された数多くの奇跡。 2千年続いた石仮面と波紋の歴史に決着をつけた男が死ぬはずがない 我が息子の運命は、プッツリと断ち切れる細い糸のような脆い運命じゃあない。 息子はきっと生きている。この目でこの手で確認するまでは……たとえ何があろうと信じない。 ツェペリ達はおそらく私が気丈に振舞っているフリをしていると考えたゆえに、一人になる事を許してくれたのだろう。 一人にならないと、息子を失った悲しみを……自分の本当の気持ちを思う存分吐き出せないと気づかってくれたのだろう。 荒木は私の大切な人の死を語って私の動揺を誘おうと企んだのであろうか。 これしきのことでこの私が動じると思っているのだろうか。 否、否、否、否、否、否、否、否、否、否!!! 私の脳は一秒間に十回否定した。 まだ、涙を流す必要はない。これは、まやかしなのだ。ジョセフはきっと生きている。 きっとあっと驚く手段で死んだフリをしているに違いない。あの子には自信を持ってそう言い切れる。 私は波紋の達人。しかし冷静ではない。 ここまで私達の誇り高き運命をコケにするのなら……容赦はしない。 荒木だろうと、噴上裕也だろうと、リキエルだろうと。 そしてジョセフの死を肯定しようとする者なら……誰であろうと!! 最も……そんな奴らでも病院襲撃の時までは私たちの手駒として動いてもらおうかしら。 私のよーな転んでもタダで起きないタイプの人間は、そのくらいの欲張りは許してもらいたいわね。 さて、私の独り言はこれで終わり。さっさと先へ進むことにするわ。 【ぶどうヶ丘病院襲撃隊S(シュトロハイム)班(チーム名はあくまで仮称)】 【住宅街 (D-4)から南東に進行中/一日目/朝】 【シュトロハイム】 [能力]:サイボーグ [状態]:右腕喪失(だが痛みはない)。生身部分、『波紋』によって完全回復済み(むしろパワーアップ?) [装備]:ゲルマン民族の誇りである自らの肉体 [道具]: 支給品一式、『矢の形をした首輪探知機』(ギアッチョの支給品) [思考・状況] 1) ジョナサンの仇を取る(その為に信頼できる仲間を探す) 2) ツェペリ、リサリサと第4回放送時に病院(C-4)の前で集合する。 3) 露伴、シーザー、ツェペリとリサリサの知り合いを最有力候補として合流を図る 。 4) ジョースター卿とディオに出会った時、二人を倒すかどうかは保留。 5) もちろんワムウ、荒木には警戒する。 ※シュトロハイムの持っている矢の外見は、スタンド能力を発動させる矢にそっくりですが別物です。 あくまで首輪のある方向を指し示してくれるだけで、それ以外はただの矢です。(方位磁石のようなもの) 【ぶどうヶ丘病院襲撃隊Z(ツェペリ)班(チーム名はあくまで仮称)】 【岸辺露伴の家の前(D-4)/一日目/朝】 【ウィル・A・ツェペリ】 [能力]:波紋 [時間軸]:双首竜の間で、天地来蛇殺の鎖に捕らえられた瞬間。胴体を両断される直前。 [状態]:左肩に小さな傷があるが治療済み。 ジョナサン達を失ったことへの悲しみ。 [装備]:ショットグラス×2、 水入りペットボトル(共通支給品だが、波紋カッターや波紋センサーに利用可能) [道具]: 支給品一式×2、拡声器(スポーツ・マックスの支給品) 、薬草少々(ツェペリと分けました)、 岸辺露伴の手紙 [思考・状況] 1)第4回放送までに病院(C-4)襲撃の為の仲間を探す。 特に岸辺露伴、リサリサの知り合い。 2)参加者の中にいる吸血鬼・屍生人を倒す。 3)ジョースター卿が屍生人になっているかどうかを確かめる。もしかしたら違う?   4)未知の技術『スタンド』についてさらなる検証を重ねる  [備考]:ツェペリは、荒木が『時空』に関わる力を持っているのかも、と考えましたが自信ゼロ。       スタンド能力の大原則はシュトロハイムから聞きました。 【ぶどうヶ丘病院襲撃隊R(リサリサ)班(チーム名はあくまで仮称。というか意識してない)】 【岸辺露伴の家(D-4)から南へ進行中/一日目/朝】 【リサリサ】 [能力]:波紋 [時間軸]:第二部終了後。ジョセフとの母子関係を明かしアメリカ移住を決めた頃 [状態]:右脛に小さな傷があるが治療済み。 冷酷に振舞っているが、冷静ではない。 [装備]: アメリカンクラッカー×2 [道具]: 支給品一式、薬草少々(ツェペリと公平に分けました) [思考・状況] 1) ジョセフの死はこの目で見るまでは信じない。他の死者に関しては保留。 2) 第4回放送までに病院(C-4)襲撃の為の仲間を探す。 特にシーザー、岸辺露伴。 3)ジョセフの死を肯定するものは信頼しない。あくまで病院襲撃の手駒として利用するまで。 4)もちろんワムウ、荒木には警戒する。 5)未知の技術『スタンド』についてさらなる検証を重ねる [備考]:リサリサは、結局『柱の男』についてツェペリに説明しそびれています。 [備考]:リサリサは、荒木が『時空』に関わる力を持っているのかも、と考えましたが自信ゼロ。       スタンド能力の大原則はシュトロハイムから聞きました。 *投下順で読む [[前へ>暴走する男達]] [[戻る>1日目 第2回放送まで]] [[次へ>その石の秘密と、希望]] *時系列順で読む [[前へ>暴走する男達]] [[戻る>1日目(時系列順)]] [[次へ>その石の秘密と、希望]] *キャラを追って読む |41:[[《運命》の使徒]]||シュトロハイム|100:[[ヒトとハトのコンビネーション]]| |48:[[見知らぬ遺言、見知らぬ魔法]]||ウィル・A・ツェペリ|88:[[意気投合]]| |48:[[見知らぬ遺言、見知らぬ魔法]]||リサリサ|82:[[邂逅、曾祖母と曾孫]]|

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