少年の置き土産

79話 少年の置き土産


「どにもいないな」
「何でかは知らないけど、あのガキ裏から逃げたみたいだねぇ」

ピタゴラスとドーラ・システィールは、保護した眼鏡の少年を寝かせていた部屋に来ていた。
だがそこには眼鏡少年の姿はなく、代わりに開いた窓とベッドの上にノートパソコンが
残されているのみだった。
外に少年を捜しに行っていたエルザ・ウェイバー、久保遼平、ガーゴイル、アレックスの四人が
二人の元に戻り、成果を報告する。

「駄目、いなかった」
「いません」
「右に同じ」
「……いなかったけど、灯台に最近撃ち殺された死体があったよ」

アレックスによれば、ガーゴイルと共に自分がかつてジン達と立ち寄った灯台、
その敷地内に恐らく今から一、二時間以内に殺害されたと思われる男の死体があったとの事。

――アレックスは死体となっていた男に見覚えがあった。
あの時は夜の闇でよくは見えなかったが、間違いなく、
自分の親友ブライアンを目の前で殺害した男だった。
いい気味だ、とはアレックスは思えなかった。できる事なら自分の手で、
殺すまではいかなくても、一発でもいい、殴り飛ばして罪を償わせたかった。

ちなみに、灯台で発見した死体となった男が、自分の親友を殺した男という事は、
ドーラ達には話してはいなかった。

最初、眼鏡少年と同行し、アレックスの二人の仲間を殺害した狐の少女の犯行と思われたが、
男の死亡推定時刻と、少女が逃げ去った時刻が離れている事から可能性は低い。

「そう言えば、あの小僧も銃を持っていたねぇ」
「まさか……」
「どういう理由かは知らないけど、窓から逃げた後、灯台辺りを通り掛かって、
そこにいた男を撃ち殺した……そう考えるのが妥当じゃないかい?」

ドーラ以外の五人はそう考えたくはなかったが少年がいなくなった時刻と、
アレックスとガーゴイルが発見した男の死体の死亡推定時刻はかなり近い。
可能性は否定できなかった。

「いやでも、それなら何で……」

遼平がドーラに尋ねる。

「んー……今まで仲間だと思ってた奴に裏切られて目の前で二人も殺されて、
それで誰も信じられなくなったんじゃないの? いや、もしかしたらここに来るまでに
相当大変な思いしてたのかもねぇ」

有り得ない理由ではない。この殺し合いの中、少年の心は
酷く消耗していたとしてもおかしくはない。そこに仲間だと思っていた者の
裏切り行為、しかもそれが原因で目の前で二人も参加者が死亡したとなれば、
人間不信に陥るのも無理はないだろう。

「それじゃ、その子は私達も自分を殺しに来ると思って……?」

エルザがややショックを受けた様子で言うと、ガーゴイルが返事を返す。

「……だろうな。もしかしたら俺達が見付けた男の代わりに、
俺達の誰かが殺されていたかもしれん。不幸中の幸い……という言い方も変か」
「とにかくだ、あの眼鏡の子供を追うのは危険だろう。
それに、放送の時間も近付いている。無闇に動くのは危険だ」
「そんな、放っておくって言うのか?」

ピタゴラスが眼鏡の少年の捜索打ち切りを提言すると、アレックスがそれに噛み付いた。
眼鏡の少年が殺し合いという状況で我を忘れ、誰も信じられなくなったというのなら、
尚更放っておけなかったのである。

「アレックス、気持ちは分かるが、どこに行ったかも分からない上に、
近付いたら発砲される恐れのある少年を捜索するのは危な過ぎる」
「だけど、灯台の男を殺したのがあの子だって決まった訳じゃ……」
「……もう何も言うな。放送の時間も近い。まだここを動く訳にはいかないんだ」
「く……」

ピタゴラスが諭し、アレックスはおとなしく従う事にした。
本当はピタゴラス自身もあの少年の事は心配であったが、
禁止エリアなどの重要な情報が含まれる放送も非常に大事だった。

「……所で、こんな物が残されていたんだけどね」
「それは……ノートパソコン?」

ドーラがベッドの上に置かれていた銀色のノートパソコンを手に取り、皆に見せる。
恐らく眼鏡の少年が置いていった物と思われた。

「パソコン……ドーラ、ちょっと貸してくれるか?」
「ん? ああ……」

パソコンと聞いて何かを思い出したアレックスがドーラからパソコンを借り、
側面を調べ、ある事を確認した。

「よし、USBに対応してる。これなら……」
「どうした? アレックス」
「ドーラ、このパソコン、借りてていいか?」
「いいけど……どうする気だい? それ」

パソコンという物を知らないドーラとガーゴイルは
アレックスがこれから何をしようとしているのか皆目見当も付かなかった。
アレックスはノートパソコンを居間に持って行き、コードを繋ぎ、
側面の差し込み口に自分の支給品の一つであるUSBメモリをセットした。
そしてノートパソコンの電源スイッチを入れ起動させる。

ドーラ達五人はアレックスの周囲に集まり、ノートパソコンの画面を凝視した。
特にドーラとガーゴイルの二人は見た事もない機械が動く様子を興味津々といった
様子でじっくりと見詰めた。

やがて完全にノートパソコンが起動し、アレックスはUSBメモリのフォルダを開いた。
そして、画面に表示された「それ」に、アレックス達は驚愕し、言葉を失う。

「こ、これは……!?」

そこまで言い掛けた遼平の口を傍にいたエルザが塞ぎ、
口元に人差指を立て静かにするよう遼平に促した。
USBメモリの中に入っていた情報は口に出せばここにいる全員、
いや、この殺し合いの参加者全員の命が危うくなる危険がある程重要な代物だったのだ。
アレックスが自分のデイパックからメモ帳を取り、そこにペンを走らせ、
これからしばらく筆談え会話するよう、ドーラ達に命じた。

ノートパソコンの画面に映し出されていたUSBメモリの中身。

それは、この殺し合いの参加者全員の首にはめられた、首輪の設計図であった。

一体なぜ、この殺し合いを根底から破綻させかねない物が、
支給品として参加者の手に渡っているのか。
設計図は偽物で、主催者が用意した罠とも考えられた。
確かにそう考えるのが一番妥当かもしれないが、遼平は別の可能性を示唆した。

〔もしかしたら、主催者側の人間の中に、この殺し合いに反対している人がいるのかも〕

つまり、首輪の設計図を手に入れられ、なおかつ主催者に気付かれる事なく、
その設計図を支給品の中に忍び込ませられる、恐らく側近クラスの者が、
この殺し合いを不満に思い、潰そうとしてこのような事をしたのではないか。
もしそれが本当だとすれば、この設計図入手は首輪解除への大きな橋頭堡となり、
更に上手くすればその「主催者側の造反者」と協力する事も可能になる。

だが、慎重を期し、最終的な判断は首輪を解析しているピタゴラスとエルザの二人に
任せられた。

〔このパソコンとUSB、借りてもいいか?〕

ピタゴラスがアレックスに尋ねる。

〔この設計図と、俺達が分解している首輪の内部構造が一致するかどうか調べたい〕
〔ああ。お願いするよ〕

アレックスは承諾し、ノートパソコンとUSBメモリをピタゴラスとエルザの二人に手渡した。



(あのガキ、もしかしたら良い意味でとんでもない置き土産を残してくれたのかもねぇ)

ピタゴラスとエルザが再び、アレックスから受け取った首輪の設計図入りの
USBメモリとノートパソコンと共に二階へ首輪解析に戻った後、
ドーラはリビングで水を飲みながら考える。
もしあの眼鏡の少年がノートパソコンとやらを置いて行かず、
持って行ってしまっていたら、あのUSBメモリという物の中身を見る機会は
永遠に失われていたかもしれないからだ。

(まぁ、細かい事はピタゴラスとエルザの二人に任せるとしようかね。
アタイは機械に関しちゃ何も分からないから……)

ふと自分の懐中時計に目をやり、第二回目の放送が迫っている事を確認する。
自分と同じくこの殺し合いに呼ばれたシェリー・ラクソマーコスは今、どこで何をしているのか。
簡単に死ぬとは思えないが、案外既に死亡しているかもしれない。

「……正直、どっちでも良いんだけどねぇ」

ドーラは椅子に座りながら、大きく背伸びをした。



【一日目昼/H-3豪邸】

【アレックス@VIPRPG】
[状態]:全身にダメージ(軽度)、右腕上腕に裂傷(処置済)
[装備]:サバイバルナイフ
[持物]:基本支給品一式(食糧二食分消費)
[思考]:
0:仲間を集めて殺し合いを潰す。そして脱出する。
1:ドーラ達と行動する。放送を待つ。
2:元の世界の仲間と合流?
3:首輪も何とかしたい。
4:ムシャ……どうしたんだ?
5:眼鏡の少年(野比のび太)の事が少し心配。
※襲撃者(高野雅行)の死亡を確認しました。
※ミーウの名前と容姿を記憶しました。
※首輪による盗聴の可能性に気付きました。


【ドーラ・システィール@FEDA】
[状態]:健康
[装備]:イサカM37(4/4)
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、12ゲージショットシェル(30)、防弾チョッキ
[思考]:
0:今の所殺し合いをする気はない。
2:ガーゴイル、エルザ、久保遼平、ピタゴラス、アレックスと行動。放送を待つ。
3:シェリーについては保留。
4:首輪を外したい。
※参戦時期は少なくともコバルトを倒した後です。
※ガーゴイルの知人(ジン、アキラ)のおおよその特徴を把握しました。
※ガーゴイルの言葉の一部が理解できず気になっています。
※首輪による盗聴の可能性に気付きました。


【ガーゴイル@真・女神転生デビルチルドレンライト&ダーク】
[状態]:健康
[装備]:RPG7(1/1)
[持物]:基本支給品一式、官能小説「14歳の女の子と愛犬、イケナイ交わり」(調達品)、
85㎜対戦車擲弾(3)
[思考]:
0:殺し合いからの脱出。首輪の解除方法の模索。
1:エルザとピタゴラスに首輪の調査を任せる。
2:ドーラ、エルザ、久保遼平、ピタゴラス、アレックスと行動。しばらく豪邸に留まる。
3:元世界の知人(アキラ)については保留。
4:襲われたら説得を試みる。駄目ならば戦うか逃げる。
※ドーラの知人(シェリー・ラクソマーコス)のおおよその特徴を把握しました。
※ドーラの言葉の一部が理解できず気になっています。
※首輪による盗聴の可能性に気付きました。
※ジンの死亡を確認しました。


【エルザ・ウェイバー@オリキャラ】
[状態]:腹部に二発被弾(処置済)
[装備]:九五式軍刀
[持物]:基本支給品一式、レミントン デリンジャー(0/2)、.41リムファイアー弾(30)、
首輪探知機、フォナ・アンシュッツの首輪(分解中)、雄獣人エロ写真詰め合わせ
[思考]:
0:殺し合いを潰す。脱出手段の模索。
1:ピタゴラスと共に首輪を調べる。
2:ドーラ、ガーゴイル、久保遼平、ピタゴラス、アレックスと行動する。仲間を集めたい。
※首輪による盗聴の可能性に気付きました。


【ピタゴラス@オリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康
[装備]:コルトM1911A1(7/7)
[持物]:基本支給品一式、コルト ガバメントのリロードマガジン(7×5)、
ノートパソコン(USBメモリ装着)
[思考]:
0:殺し合いには乗らない。首輪を外したい。
1:エルザと共に首輪を調べる。首輪設計図の真偽を確認する。
2:久保遼平、ドーラ、エルザ、ガーゴイル、アレックスと行動する。
3:襲われたら戦う。
4:眼鏡の少年(野比のび太)の事が少し心配。
※参戦時期は本編死亡後です。
※毛皮の色は作者の想像です。
※自分が以前別のバトルロワイアルに参加していた事を久保遼平に話していません。
※ドーラ、エルザ、ガーゴイルと情報交換をしました。
※首輪による盗聴の可能性に気付きました。


【久保遼平@オリキャラ】
[状態]:健康
[装備]:ハンティングナイフ
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、トランジスタラジオ
[思考]:
0:殺し合いはしたくない。生き残りたい。
1:ピタゴラス、ドーラ、エルザ、ガーゴイル、アレックスと行動する。基本的に五人には従うつもり。
※首輪による盗聴の可能性に気付きました。



※USBメモリの中身は首輪の設計図です。但し真偽は定かではありません。



地雷を踏んだらサヨウナラ 時系列順 第二回放送
地雷を踏んだらサヨウナラ 投下順 第二回放送

DEAD OR ALIVE THE ALEX アレックス 導きの先にあるもの
DEAD OR ALIVE THE ALEX ドーラ・システィール 導きの先にあるもの
DEAD OR ALIVE THE ALEX ガーゴイル 導きの先にあるもの
Is it hope or despair? エルザ・ウェイバー 導きの先にあるもの
血風の狂詩曲 ピタゴラス 導きの先にあるもの
DEAD OR ALIVE THE ALEX 久保遼平 導きの先にあるもの

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最終更新:2010年06月10日 00:52
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