君との思い出

77話 君との思い出

ズルズル、ズルズルと、黒い巨躯の狼が銀髪の少女の死体を、
役場裏の森の中まで足を咥えながら引き摺る。
そして、同じ銀髪の女性の死体を引き摺った場所まで持っていき、
傍に置く形で放棄した。

「ふぅ……」

役場に戻る黒狼レックスの表情はとても暗い。
先に森の仲間で引き摺った二人の内、少女の方は自分が殺害した。
大切な仲間であり、もはや愛人にも等しい存在になっていた女性を傷付けられた腹いせに。
もっとも、元はと言えば、自分がその少女を強姦した事が原因なのだが。
だから本来なら自分に少女に激怒したり、憎悪する資格なんてない。
だがしかし、それでも、許す事ができなかった。

役場一階に戻ったレックスはすっかり冷たくなった稲垣葉月の死体に寄りそう。
致命傷を負った葉月は自分に「殺してくれ」「私の死体を食べてくれ」と言った。

「ハヅキ、やっぱり、君を食べるなんてできないよ……」

しかし止めを刺す事はできても、愛する葉月を食べる事は、
いかに本人の願いと言えど、レックスにはできそうもなかった。
レックスは葉月の死体を背負い、落とさないようにバランスを取りながら森の方へと運んだ。

銀髪の女二人の死体を運んだ場所とは別の位置の森の中。
レックスは葉月を埋葬するための穴を掘り始めた。
犬のように前足を使って勢い良く地面を削り、かなりの短時間で、
必要なだけの深さを持った穴を掘った。

その穴の中にそっと葉月の死体を入れ、土を掛けていく。

土を掛けていく途中、レックスの頭の中には葉月との思い出が蘇っていた。

最初に出会った時、葉月も自分もお互いに殺し合いという状況の中、
誰か傍に居てくれる者の存在を求めていた。
そして一緒になった二人は何度も何度も激しく交わり合った。
お互いのぬくもりを直に感じ合った。

自然と、レックスの目から光る物が溢れ出る。

「……っ……ハヅキ……」

レックスは泣きながら、土を掛け続けた。

そして、葉月の死体が完全に埋まり、土が盛り上がった場所ができあがると、
レックスは適当な石を見付け、簡単な墓石を立ててやった。
そして、しばらくその場に座り、目を閉じて祈りを捧げると、
再び島役場へと戻り始める。

「俺……どうしよう……これから……」

最愛の人物を失い、また、共に過ごしてくれる相手もいなくなり、
レックスは孤独感に襲われ途方に暮れる。
葉月と出会う前は、出会った女性を片っ端から性的な意味で食べていくつもりだったが、
今はもうそんな気分になれない。

元々、この殺し合いに乗る気もない。先程の銀髪少女の例は別として、
進んで誰かを殺しに行く気にもなれなかった。

それに、葉月と同じように全身を撃たれたというのに、なぜ自分はこうも、
平気で動く事ができるのか。
傷口は痛むが、それだけだ。死ぬ事はないだろう。
だが、これならば、葉月と一緒に死にたかった。
レックスはそう思っていた。

「……疲れた。役場に戻って、ちょっと休もうかな」

既に昼の放送時刻も迫ってきているので、レックスは一旦役場に戻り休息を取る事にした。



エリアG-5にある民家に身を潜める狐獣人の少女、ミーウは、
壁に掛けられた時計に目をやり、昼の第二回目の放送が近付いている事を確認する。

「行動するのは放送の後でも良いかな。
何が起きるか分からないし」

無理して出歩いても、何らかのアクシデント――例えば襲撃を受け、
逃げ回るハメになるなど――が起き、放送を聞く余裕がなくなる事も有り得る。
死者の発表や禁止エリアの指定など何かと重要な情報が流れる放送なので、
しっかりと聞いておきたい所。

「で……放送の後はどうしようか……」

卓袱台の上に地図を広げ、放送後の行き先についてミーウは考える。
現在自分がいると思われるエリアG-5の周囲には、
小中学校、島役場、病院、港といった重要そうな施設が多い。
どれも、地図上に目印のように目立って記されているため、他参加者が集まり易そうだ。
考えた末、ミーウが出した結論は。

「ちょっと遠いけど、役場にでも行ってみようかな」

エリアF-6に存在する島役場を次の行き先に決定した。




【一日目昼/F-6島役場周辺の森】

【レックス@オリキャラ】
[状態]:疲労(肉体的、精神的共に大)、全身被弾(命に別条なし)、
身体中血塗れ、深い悲しみ
[装備]:なし
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、ダマスカスソード
[思考]:
0:とりあえず放送を待つ。その後は……。


【一日目昼/G-5市街地:大城家一階和室】

【ミーウ@オリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:肉体的疲労(大)、潮風の影響で毛皮にベタつき
[装備]:H&K G3(10/20)
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、H&K G3のリロードマガジン(20×9)、
脇差、トマホーク(3)、水と食糧(二人分)
[思考]:
0:殺し合いに乗る。
1:しばらく休む。放送を待つ。
2:可愛い子(女の子優先)がいたら…フフフ。
※参戦時期は本編死亡後です。
※名簿に書かれた主催者と同姓の二人が気になっています。
※トマホークの血痕は拭き取られたようです。
※アレックス、ムシャの名前と容姿を記憶しました。



※稲垣葉月の死体はF-6島役場周辺の森に埋葬されました。
また、日宮まどか、銀鏖院水晶の二人の死体は同じ森の中に放置されています。
※稲垣葉月、日宮まどか、銀鏖院水晶の三人の所持品は、
F-6島役場一階ロビーに放置されています。



線路は続くがどこに続くかは分からない 時系列順 地雷を踏んだらサヨウナラ
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WOLF'S RAIN レックス 消えない想いよ天届け
血風の狂詩曲 ミーウ 消えない想いよ天届け

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最終更新:2010年06月07日 22:55
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