須牙巡査の病院探索

66話 須牙巡査の病院探索

調達した車、ホワイトカラーの430グロリアを運転し、
エリアG-8の病院に到着した狼獣人の警官、須牙襲禅は、玄関を通った先の惨状に驚いた。

「何だこりゃ。どうやらここでドンパチやらかしたみてぇだな」

受付ホール奥にガラスで仕切られた小さな喫煙室があるのだが、
そのガラスが粉々に砕け散り、その向こうの喫煙室の壁に無数の小さな穴が空いている。
他にも、柱や合成革張りの長椅子、果ては天井にも同様の穴が数え切れない程空いており、
また、床に空の薬莢――恐らく.45ACP弾の物――が大量に転がっている事から、
この病院のロビーにて銃撃戦が有った事は疑いようがない。

最も被害が大きい喫煙室の周辺を調べるが、蜂の巣にされた死体も、血の跡もない。
状況から推測するに、恐らく柱の影に隠れた人物を玄関付近の人物が一方的に銃撃したものと思われる。
これだけ大量の弾痕や、空薬莢が存在するという事は短機関銃或いは機関拳銃などの、
フルオート射撃が可能な銃器を使った可能性が高い。
拳銃弾の中でも口径が大きい.45ACP弾を使う短機関銃は、
トンプソン、M3グリースガン、イングラムなどが考えられる。

「ん……」

調査していた襲禅の、人間より何倍も嗅覚に優れた鼻に嫌な臭いが届いた。
それは血の、いや、警官である彼も何度か嗅いだ事のある臭い。
その臭いのする方向に歩いて行ってみる。

「……こりゃまた」

廊下の途中に、首と胴体が分かれた惨殺死体が転がっていた。
清潔な病院の床に広がる血溜まりは黒く変色し乾燥し切っている事から、
この死体の主が死亡してからかなり時間が経っている事が分かる。
先程の臭いは、この死体から発せられる死臭だったのだ。
元々は、露出が多い衣装や悪魔のような尻尾に翼、身体付きから、
恐らくはサキュバスなどの悪魔っ娘の類の女性だったのだろうが、
すっかり血の気の失せた肌は白く変色し腐敗を始め、見開かれたままの目は濁っていた。
かつての美貌、おおよそ想像もつくが、見る影もない。
傍にこの悪魔っ娘の物と思われるデイパックも転がっていたが目ぼしいものは何も残っていない。
殺害者が持ち去ったのだろう。

玄関ロビーで戦闘を行っていたのはこの悪魔っ娘と、その殺害者なのだろうか。

「ご愁傷様、と」

もっとも、それは襲禅にとっては少し推測してみただけで大して気になる事でもなかったのだが。
何も使えそうな物がない事が分かると、襲禅は死体には興味を失い、
病院一階の探索を開始した。



診察室、事務室、院長室、厨房、トイレ……どこにも人の姿は見当たらない。

「二階に行ってみるか」

一階の探索を切り上げ、襲禅は病院二階に上がるため階段を目指した。
エレベーターもあったが、機能が停止しており使用できない。
右手に自動拳銃・ブローニングハイパワーを持ち警戒しながら階段を上がって行く。

「ん……またか?」

ここで、再び襲禅は死臭を嗅ぎ付ける。
どうやら二階にも死体があるらしい。
階段を上がり、二階に到達した襲禅は臭いの元があると思われる方向へ歩いて行った。

「こいつは……あん時のガキじゃねぇか」

死臭が示した通り、二階にも一人の死体が転がっていた。
休憩用のホールと思しき広間に、学生服姿の少年の死体が横たわっている。
襲禅はその死体に見覚えがあった。
それは、この殺し合いが始まって襲禅が初めて遭遇、襲い掛かった少年であった。

「くたばりやがったのか、呆気ねぇな」

血塗れで床に倒れる少年の死体を見下ろしながら襲禅が嘲った。
例によって少年の物と思われるデイパックが近くに落ちていたが、やはり何も使えそうな物は残っていない。

「死体ばかりじゃなくて生きてる奴に会いたいもんだ……」

役場にて銀髪の女性と交戦して以来、かなり長い事生きた人間と遭遇していない。
死体ばかりに遭遇する現状に襲禅は愚痴をこぼす。
少年の死体の周辺にも目ぼしい物は落ちていない事を確認すると、
襲禅は二階の探索を開始した――。



【一日目午前/G-8病院】

【須牙襲禅@俺オリロワリピーター組】
[状態]:右脇腹に散弾二発被弾(処置済)
[装備]:FNブローニングハイパワー(13/13)
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、FNブローニングハイパワーのリロードマガジン(13×4)
[思考]:
0:殺し合いに乗る。人を撃ちたい。
1:病院内の探索。
2:銃はあってあり過ぎる事はないのでもっと欲しい。
3:銀髪の女(日宮まどか)は次に会ったら絶対に殺す。
※俺オリロワ開始前からの参戦です。
※日宮まどか(名前は知らない)の容姿を記憶しました。既に死亡していますがその事を知りません。
※銀鏖院水晶には気付いていません。





帰れない、帰らない 時系列順 血風の狂詩曲
帰れない、帰らない 投下順 血風の狂詩曲

奇妙なすれ違い 須牙襲禅

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2010年05月29日 02:43
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。