帰れない、帰らない

65話 帰れない、帰らない


なぜ、なぜこんな事になってしまったのか。
自分はただ、仲間を守りたかっただけなのに。

放送で、仲間の一人であるドラゴナスの死を知り、悲しみに暮れながらも、
残った二人の仲間、死神五世とデスシープは何としても生き残らせると心に決めた。
そして、偶然にも、三人の同行者を引き連れた死神五世と、ムシャは再会した。

再会できた事はとても嬉しかった。だが、仲間のためとは言え、
自分は殺し合いのルールに則り、既に一人殺害してしまっていた。
しかしその事を知るはずもない五世は自分を心から信じ、仲間になってくれと頼んできた。

だが、罪もない少女を手に掛けた自分にその資格などないと、ムシャは考えた。
そして芝居を打った。自分が私怨でこの殺し合いに乗り、優勝を目指していると思わせるために。
五世の連れている三人を殺し、五世を気絶させ、距離を置くつもりだった。

しかし――――そう上手く物事は行かなかった。

五世の連れの一人、バニーガールの女性の首を刎ね、
詰め寄ってきた五世に虚勢を張る所までは良かった。
そして次に、眼鏡の少年に斬り掛かった。

だが。

ムシャの刃が斬り裂いたのは、眼鏡の少年ではなく、見慣れた仲間の身体だった。

眼鏡の少年を庇い、五世が少年とムシャの間に割って出たのだ。
身体を袈裟に斬られ、ドクドクと大量の血を流しながら、崩れ落ちる五世は、
その目から涙を流しながら、最期にムシャに言った。

「ごめん」と。




(違う……)

行く宛てもないまま、ただひたすらに走り続けながら、ムシャは様々な感情が入り乱れ、
ぐちゃぐちゃになった頭の中で必死に、五世に対し弁明と謝罪を繰り返していた。

(違う、違う、違う、違う。違うんだ、五世……!
俺は本当はそんな事、思っちゃいなかった。空気キャラがどうとかなんて、
本当はどうだって良かったんだ。ただ、ただ、お前らを、お前らを……。
すまねぇ、すまねぇ、すまねぇ、本当にすまねぇ……!!)

当然、許されるとは思っていない。許される訳がない。
だが、それでも謝らなければ、自我がいよいよ保てなくなる気がした。
普段のムシャを知っている者ならば、今の彼は全くの別人に見えただろう。
魔王城の影の番人と言われた鎧武者の姿はどこにもなく、
今海沿いの道を息を乱し走り続けるのは、和風の鎧を着た錯乱する男だった。



「あれ?」

灯台を出発し豪邸へ向かい始めたアレックス、ジン、石川昭武の三人。
ジンが、遠方から自分達の方に向かって走ってくる人影を確認した。

「どうした? ジン」
「アレックス、あれ……誰か来るぜ」

ジンが指差す方にアレックスが目を向けると、和風の鎧に身を包んだ男が走って近付いてくる。
見覚えのある姿に、アレックスは目を見張った。

「あ、あれは……」
「知っているのか、アレックス?」

アレックスに心当たりがあると見た昭武が訊く。

「ああ。あいつは確か、魔王軍四天王の一人――――え?」
「どけええええええええ!!!」

鎧武者――ムシャは行く手を阻む三人を、目にも見えない太刀筋で斬り裂いた。

「ぐあ!?」
「あああああ!!」
「ううっ」

ただ幸運だったのが、ムシャが冷静さを失っていたせいでその剣の精度が
普段よりかなり落ちており、三人とも傷は浅かった。
そして、ムシャは三人の生死を確認する事もせず、そのまま市街地方面へ走り去って行った。

「痛ててて……おい、大丈夫か二人共?」

右上腕に傷を負ってしまったアレックスが、左手の甲を斬られたジン、
浅いものの腹に斬り傷を負わされた昭武を心配する。

「な、何とか……いってぇ……」
「ちっくしょう……何なんだよアイツは? アレックス、知ってるんだろ?」
「あいつは魔王軍四天王の一人、ムシャだ。
でも、何だかいつものあいつじゃないみたいだったな……」

アレックスは自分の知るムシャとついさっき遭遇したムシャを照合し、
その違いがとても気になっていた。
先程のムシャは明らかに冷静さを欠いていた。
精神力に関しては四天王でも随一の彼が、この殺し合いの恐怖でああなったとは考えにくい。
何か、余程の事があったのだろう。それが何なのかは想像が付かない上、
本人から聞こうにも当のムシャは既に走り去ってしまい、また、
あの様子ではまともに会話も成立しない可能性が高い。
いきなり斬り掛かられたのは釈然としないが、今は放っておくしかなさそうだ。

三人共、致命傷ではないにしろ、決して少なくない量の出血を伴う怪我を負ってしまったが、
応急手当をしようにも、傷口に巻けるような包帯、或いは包帯の代わりになりそうな物もない。
傷の処置のためにも早く目的地である豪邸を目指した方が良いとアレックスは判断した。

「ジン、昭武。歩けるか?」
「ああ」
「何とかな……」
「きっと、俺達が向かおうとしている豪邸なら、何かしら傷の手当てができる物があると思う。
だからそれまで……頑張れるか?」
「へへ、これぐらい、何て事……いってぇ!」
「無理するなジン……心配すんな。歩くぐらいなら問題ねぇ」

傷の痛みに顔を歪めながらも、ジンと昭武はアレックスに色良い返事を返した。

「分かった……それじゃ行こう」

血の滴る傷口を庇いながら、三人は再び豪邸を目指し歩き始めた。



【一日目朝方/G-4平原】

【アレックス@VIPRPG】
[状態]:全身にダメージ(軽度)、右腕上腕に裂傷
[装備]:サバイバルナイフ
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、USBメモリ
[思考]:
0:仲間を集めて殺し合いを潰す。そして脱出する。
1:ジン、石川昭武と行動。豪邸へ向かう。
2:元の世界の仲間と合流?
3:首輪も何とかしたい。
4:USBメモリの中身が気になる。
5:ガーゴイルには一応警戒しておく。
6:ムシャ……どうしたんだ?
※襲撃者(高野雅行)の容姿を記憶しました。
※ジン、石川昭武と情報交換をしました。


【ジン@真・女神転生デビルチルドレンライト&ダーク】
[状態]:左手甲に裂傷
[装備]:スティレット
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、スタングレネード(3)
[思考]:
0:殺し合いはしない。アキラの捜索及び仲間集め。
1:石川昭武、アレックスと行動。豪邸へ向かう。
2:死神五世、ムシャ、デスシープ、ガーゴイルには注意。
3:襲われたら戦う?
4:USBメモリの中身が気になる。
※参戦時期はレミエル打倒後、元の世界へ帰還した直後です。
※アレックスと情報交換をしました。


【石川昭武@オリキャラ】
[状態]:腹部裂傷(傷は浅い)
[装備]:エンフィールドNo.2(6/6)
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、.380エンフィールド弾(30)
[思考]:
0:殺し合いからの脱出。
1:ジン、アレックスと行動。豪邸へ向かう。
2:首輪を何とかしたい。
3:死神五世、ムシャ、デスシープ、ガーゴイルには注意。
4:USBメモリの中身が気になる。
※アレックスと情報交換をしました。


【ムシャ@VIPRPG】
[状態]:身体中にダメージ(小)、錯乱、疾走
[装備]:直刀(血痕付着)
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)
[思考]:
0:あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!
1:五世、すまねぇ……。
※高野雅行の名前と容姿を記憶しました。また、大宮正悳(名前は知らない)の容姿を記憶しました。
※錯乱し前後不覚に陥っています。 どこへ走っているのか自分でも分かっていません。





曉血殺傷 時系列順 須牙巡査の病院探索
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灯台下、明るし アレックス 血風の狂詩曲
灯台下、明るし ジン 血風の狂詩曲
灯台下、明るし 石川昭武 血風の狂詩曲
曉血殺傷 ムシャ 仮初めの光求め呑んで候

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最終更新:2010年08月24日 01:15
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