62話 Is it hope or despair?
豪華な暖炉のある広い居間で、ドーラ、ガーゴイル、エルザ、ピタゴラス、遼平の五人は、
先の第一回定時放送の内容を纏めていた。
死者として呼ばれた14人の中には、ドーラがこの殺し合いで最初に遭遇した参加者であり、
放送前に死亡を確認した少女フォナ・アンシュッツ、
ガーゴイルと敵対関係にあるという亜美という少女、
同じ帝国軍のデビルであるガルムの名前も呼ばれた。
禁止エリアはいずれも、現在位置であるエリアH-3豪邸から離れた場所だった。
「まぁこんな所かねぇ。それで、ピタゴラスとエルザ、何か収穫は有ったかい?」
ドーラがフォナから剥ぎ取った参加者の首輪の調査を依頼していた、
狼獣人ピタゴラスと白髪頭の女エルザ・ウェイバーに成果の程を尋ねる。
すると、二人は顔を見合わせた後、ピタゴラスが自分のデイパックから
メモ帳と筆記用具のペンを取り出し、何かを書いてそれをドーラ他全員に見せた。
そこには「これからは筆談で」とだけ書かれていた。
ドーラ、ガーゴイル、遼平の三人には何故そんな事をする必要があるのか分からなかったが、
きっと重要な事なのだろうと思い、大人しくピタゴラスに従いそれぞれメモ帳と筆記用具を取り出した。
〔急に筆談などと言い出してすまない。俺とエルザで首輪を調べた結果、
興味深い事が色々と分かった〕
〔興味深い事って何ですか、ピタゴラスさん、エルザさん?〕
〔どうも、首輪に盗聴器が仕掛けられてるみたいなの〕
エルザが書き出したその一文に、ドーラ、ガーゴイル、遼平の三人が驚きの色を見せる。
〔本当なのか?〕
〔間違いなさそうだ。首輪の裏にマイクらしきものが仕込まれている。
どうやら、運営側には俺達の会話も筒抜けになっているらしい〕
〔成程、それで筆談って訳かい。確かに、盗聴されてるんじゃ滅多な事言わない方がいいねぇ〕
運営側に参加者間の会話が傍受されているとなると、
その会話の内容によっては運営側がその参加者をゲーム遂行の障害になると判断し、
最悪の場合首輪の爆破という強制排除手段に打って出るかもしれない。
そうでなくとも、何らかの妨害工作は仕掛けてくるだろう。
ピタゴラスとエルザが筆談を要請した理由が、ドーラ達三人には理解できた。
〔あの、お二人共、それで首輪の解除については……?〕
遼平がやや遠慮気味にそう書いた自分のメモ帳をピタゴラスとエルザの二人に見せる。
〔……結論から言うと、解除できない事はないかもしれない〕
そう書かれたメモ帳をピタゴラスがドーラ達に見せた時、
度合いは違えど、それぞれの目に希望の色が浮かんだ。
〔だけど、まだ内部構造を正確に観察できていないのよ。
もう少し調べてみる必要があるわ〕
まだ確実に解除できると決まった訳ではないので、過剰な期待は控えるようにと、
エルザが文面越しに三人に釘を刺す。
しかしそれでも、特に遼平は期待せずにはいられない。
首にはめられた、殺し合いを強要するための爆弾内蔵の死の首輪。
これが外せるかもしれないのだから。
但し、仮に外せたとしても、それで生きて帰れる保証はない、という事は、遼平も分かってはいた。
筆談終了後、ピタゴラスとエルザは再び二階へ首輪の調査に戻った。
ドーラは二階の海側の部屋で、窓から海の方を眺める。
ガーゴイルは居間の本棚に入っていた官能小説を興味深そうに読んでいた。
表紙は黄色で、タイトルは黒字で「14歳の女の子と愛犬、イケナイ交わり」とある。
遼平はカーテンの隙間から外の様子をたまに見ていたり、ソファーに座ってぼんやりしている事が多かった。
ドーラはこの殺し合いの唯一の知人、シェリー・ラクソマーコスの事を思い出す。
自分の上司の元愛人の、剣の腕が立つウルフリングの女性。
先の放送では名前は呼ばれなかったが、当然と言えば当然だろう。
そんな簡単にやられるような女性ではない。少なくともドーラが知っている限りでは。
別段、仲が良い訳でもないので捜索するつもりはない。
だが、一応、共に戦った仲間として現在の動向は気にはなった。
ガーゴイルは、今自分が呼んでいる本の内容にやや衝撃を受けていた。
軍人気質の彼は、官能小説といった類の単行本など読んだ事がなかった。
その本の内容は、性に興味を持ちながらも、見栄を張って友達には全く興味がないように
振舞っている14歳の中学生の少女が、愛犬の雄のハスキー犬を可愛がっている内、
エスカレートし両親のいない夜に自室に連れ込み一線を越え、以来それにのめり込むという、
獣姦モノの官能小説だった。
(ほう……人間とは違う種族でも愛を育めるのだな……。
そういえば俺もご無沙汰だな……たまにはバステト辺りと一発やりたいもんだ)
妙な所で感心しつつ、ガーゴイルはソファーに寝転がりながらその小説を読み進めていく。
久保遼平は、僅かに見え始めた脱出への希望を膨らませながらも、
最初の6時間で、14人もの人命が失われた事に恐怖を覚えた。
半日にも満たない時間で14人も死亡したとは、それだけ殺し合いをやる気になっている
者が大勢いるという事だろうか。
自分が最初に襲われた狙撃手はどうなったのだろう。
もしかしたら既に先の放送で名前が呼ばれたのかもしれない。
(そうであってくれると嬉しいんだけど……)
人の死が嬉しいとはいささか不謹慎な気もしたが、そんな事を言っていては
この先、自分は生きていけないだろう。
まだ死にたくはなかった。もっと生きたい。
遼平が願うのは、ただそれだけである。
ピタゴラスとエルザは二階の寝室の一つで首輪の調査を続けていた。
今の所分かっているのは、首輪には盗聴器が仕掛けられ、会話が運営側に
筒抜けになっているという事と、想像以上の高い技術が首輪には使われているという事。
更に詳しく解析してみなければ何とも言えないが、
自分達でこの首輪が解除できるかどうか、まだ不明瞭であった。
盗聴されている事を知っているので、二人は核心に迫るような事は筆談で済ませる事にしていた。
〔こいつは厄介な代物だな……〕
〔まあ、主催者も簡単に外れるような首輪なんてはめないわよね。
でも、ちょっと考えが甘かったかな……これ……はっきり言って難解よ〕
ピタゴラスもエルザも首輪の予想以上の内部構造の複雑さにやや辟易していた。
〔だが、やるしかあるまい。今ここにいるメンバーで首輪をどうにかできそうなのは、
俺と、エルザ、お前だけだ〕
〔そうね……やれるだけやってみましょ。前向きに考えなきゃね〕
後ろ向きにばかり考えていても仕方ない、とにかく調べるだけ調べようと、
再びピタゴラスとエルザは机の上に置いた首輪を調べ始めた。
【一日目朝方/H-3豪邸】
【ドーラ・システィール@FEDA】
[状態]:健康
[装備]:イサカM37(4/4)
[持物]:基本支給品一式、12ゲージショットシェル(30)、防弾チョッキ
[思考]:
0:今の所殺し合いをする気はない。
1:ガーゴイル、エルザ、久保遼平、ピタゴラスと行動。
2:シェリーについては保留。
3:首輪を外したい。
※参戦時期は少なくともコバルトを倒した後です。
※ガーゴイルの知人(ジン、アキラ)のおおよその特徴を把握しました。
※ガーゴイルの言葉の一部が理解できず気になっています。
※久保遼平、ピタゴラスと情報交換をしました。
【エルザ・ウェイバー@オリキャラ】
[状態]:腹部に二発被弾(処置済)
[装備]:九五式軍刀
[持物]:基本支給品一式、レミントン デリンジャー(0/2)、.41リムファイアー弾(30)、
首輪探知機、フォナ・アンシュッツの首輪(分解中)、雄獣人エロ写真詰め合わせ
[思考]:
0:殺し合いを潰す。脱出手段の模索。
1:ピタゴラスと共に首輪を調べる。
2:ドーラ、ガーゴイル、久保遼平、ピタゴラスと行動する。仲間を集めたい。
※久保遼平、ピタゴラスと情報交換をしました。
【ガーゴイル@真・女神転生デビルチルドレンライト&ダーク】
[状態]:健康、官能小説読書中
[装備]:RPG7(1/1)
[持物]:基本支給品一式、官能小説「14歳の女の子と愛犬、イケナイ交わり」(調達品)、
85㎜対戦車擲弾(3)
[思考]:
0:殺し合いからの脱出。首輪の解除方法の模索。
1:エルザとピタゴラスに首輪の調査を任せる。
2:ドーラ、エルザ、久保遼平、ピタゴラスと行動。しばらく豪邸に留まる。
3:元世界の知人(ジン、アキラ)については保留。
4:襲われたら説得を試みる。駄目ならば戦うか逃げる。
※ドーラの知人(シェリー・ラクソマーコス)のおおよその特徴を把握しました。
※ドーラの言葉の一部が理解できず気になっています。
※久保遼平、ピタゴラスと情報交換をしました。
【ピタゴラス@オリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康
[装備]:コルトM1911A1(7/7)
[持物]:基本支給品一式、コルト ガバメントのリロードマガジン(7×5)
[思考]:
0:殺し合いには乗らない。首輪を外したい。
1:エルザと共に首輪を調べる。
2:久保遼平、ドーラ、エルザ、ガーゴイルと行動する。
3:襲われたら戦う。
※参戦時期は本編死亡後です。
※毛皮の色は作者の想像です。
※自分が以前別のバトルロワイアルに参加していた事を久保遼平に話していません。
※ドーラ、エルザ、ガーゴイルと情報交換をしました。
【久保遼平@オリキャラ】
[状態]:健康
[装備]:ハンティングナイフ
[持物]:基本支給品一式(食糧一食分消費)、トランジスタラジオ
[思考]:
0:殺し合いはしたくない。生き残りたい。
1:ピタゴラス、ドーラ、エルザ、ガーゴイルと行動する。基本的に四人には従うつもり。
※ドーラ、エルザ、ガーゴイルと情報交換をしました。
最終更新:2010年06月06日 00:23