シリアルキラーツクール

54話 シリアルキラーツクール


役場二階の会議室にて放送を聞いた私は、荷物を纏めて出発の準備を始めた。
死者の数は全部で14人。残り人数は自分を含め33人になった。
思ったよりもペースが速いわね。

私が最初に殺害したケトル君の名前も当然呼ばれた。
今思うと、可愛かったな~やっぱり猫獣人のケモショタっていいわね。
しかも童貞と来たら、もうちょっと遊んであげても良かったかな。

禁止エリアはいずれも今私がいるエリアF-6の島役場からは離れた場所。
だけど午前8時、今から約2時間後の午前8時に禁止エリアになるエリアD-2、
今から約3時間後の午前9時に禁止エリアになるエリアE-8は、島の北部の市街地への
アクセス手段である東西の海岸沿い幹線道路が通っている場所だ。
ここが侵入不可になったら、北部市街地へ行くには中央部に広がる森、
小高い山を突っ切る以外になくなる。

でも、まだ南部の市街地の病院とか、回っていない所もあるから、当分は南へ行く予定はないけど。

武器であるレミントンM870に予備の弾を込め、座っていた椅子から立ち上がる。
一応、怪我の手当ても、ついでに食事も済ませたし、そろそろ、他の参加者探しに行きますか。

階段を下りて一階へ。そういえば、一階で戦ったあの狼獣人の警官はどうしてるのかしら。
名前聞いてないからもしかしたらさっきの放送で名前呼ばれたかもしれない。
一応、私の散弾食らってたっぽいし、そうであってくれるならそれでいいんだけど。

あら……玄関の所に人影が……ッ!?


ダダダダダダダダダダダダダダッ!!


「うっ……!?」

私が壁の陰に隠れるのとほぼ同時に機関銃の音が響き、ついさっきまで私が立っていた場所を
無数の弾丸が突き抜け、その軌道上の先にあった壁と窓を蜂の巣にした。
よくは見えなかったけど、多分、相手は少年。どうやらやる気になってるみたいね。


ダダダダダダダダダダダダダダッ!!


マズイなぁ、私が持っている散弾銃と向こうが持っている機関銃(多分サブマシンガン)
では、連射性で完全に向こうが勝っている。正面から行っても弾幕にやられるだけね。

あれだけ連射が利くなら弾切れになり易いはず。その隙を突けば……。


ダダダダダダダッ!! カチッ、カチッ……。


(! 弾が切れた? ……なら反撃ね!)

向こうの機関銃が弾切れを起こした事を察知した私は、弾を装填される前に、
相手に散弾を食らわせるべく壁の陰からレミントンM870を構え、飛び出した。


ダァン! ダァン!


「……なっ……!?」

だけど、その前に私の腹と胸に二つの穴が空く方が早かった。
穴からは真っ赤な鮮血が噴き出し、同時に足から、いや身体から力が抜ける。
床にレミントンM870を落とし、私は床に跪いてしまった。
一体何が起きたの? 弾切れを起こしたんじゃ――!?

「……お姉さん、弾切れを起こしたと思った? そう、確かにサブマシンガンは弾切れしたよ。
でも、ね……」

私はとんだ思い違いをしていたみたい。相手――狐顔の小学校高学年ぐらいの少年――の、
持っている武器は、床に投げ捨てられているサブマシンガンだけじゃなかった。
少年の右手にはリボルバー拳銃が握られ、銃口から煙を噴いていた。

「そ、そう……咄嗟に銃を持ち替えたって、訳、ね……げほっ!!
……やられた、一杯食わされたって……この事ね、全く」

完全にはめられたって訳ね、ああ、こんな子供に負けるなんて。
どうやら当たり所が悪かったみたい、血が止まりそうにないし意識も薄れてきちゃった。
参ったな、こんな終わり方、なんて……そうだ、せめて死ぬ前に……。

「ねぇ、ボク……私は、日宮まどかって、言うんだけど、ごほっ!
……あな、たの、名前……聞かせてくれ、る?」
「骨川スネ夫って言うんだ」
「……何それ、本名?」
「ほ、本名だよ……」
「ふぅ、ん……スネ夫、君、ねぇ……貴方は、この殺し合いに乗っている、の?」

私の問いに、スネ夫君は無言で頷いた。
こんな子供でも殺し合いに乗るのね。本当、怖いもんね人間て。
その気になればあっさり一線を越えちゃうんだから……。

「そ……う…………ま、ぁ……精々……頑張っ、て…………ね」

ドサ。

それだけ言うと、銀髪の美女、日宮まどかは床に崩れ落ち、血だまりを作って動かなくなった。


◆◆◆


僕は、三人目の殺人を犯した。
だけどもう何も、罪悪感みたいなものは感じなくなってきていた。
感覚が麻痺している――今の僕を顕わす言葉があるなら正にそれ。
小学生で、三人を殺害……実際なら、多分、いや間違いなく補導で済むレベルじゃない。

「……」

最期に自分の名前を名乗ったその銀髪の若い女の人、日宮まどかさんの死体に近付き、
まどかさんが持っていた猟銃と思しき銃を拾い、デイパックの中を漁る。

数分前、役場近くのアパートで僕は第一回目の放送を聞いた。
小中学校で見た悪夢から感じた予感は、的中していた。
しずかちゃんとジャイアンの二人は死んでいた。
あの夢の通りに、しずかちゃんは首を切断されて、ジャイアンは身体を蜂の巣にされて死んだのかな。
想像したくもないけど。
のび太はまだ生きているらしい。あいつ、確かに弱虫で臆病に見えて結構精神的に強い部分があるからな。
あと、確か銃の名手だったっけ。それもあるんだろう。

だけど、ドラえもんが目の前で殺された上に今度は一気に二人の友達を失い、
最後に生き残った僕はもう三人を殺害した殺人鬼。
今頃あいつ、狂ってるんじゃないか?

しずかちゃんとジャイアン、大事な友達だったから死んでしまったのは悲しいけど、
これで僕は、二人を手に掛ける事はなくなった。後はのび太だけ。
できれば、のび太も僕の知らない所で死んで欲しい。そうすれば僕は、
のび太を殺さなくて済む。

――甘えだろうか? 今更友達を殺したくないなんて。
もう三人もこの手で殺したって言うのに、それでもなお、自分の友達とは会いたくない、
戦いたくない、殺したくない、というのは僕の我儘であり、甘えに他ならないかもしれない。

でも、それでも、僕は友達は手に掛けたくはない。

だけど、やむを得ない状況になった時は――。



こうして少年は階段を上って行く。

冷徹な殺人鬼としての階段を。



【日宮まどか@オリキャラ  死亡確認】
【残り32人】



【一日目朝方/F-6島役場】

【骨川スネ夫@ドラえもん】
[状態]:健康、至って冷静、日宮まどかの持物を回収中
[装備]:コルト トルーパー(4/6).、IMIウージー(0/32)
[持物]:基本支給品一式(水消費中)、IMIウージーのリロードマガジン(32×8)、三八式歩兵銃(2/5)、
6.5㎜×50R弾(25)、357マグナム弾(30)、コンバットナイフ、 水と食糧(4人分)、消毒用エタノール、
ジッポーライター、焼酎
[思考]:
0:生き残るために殺し合いに乗る。
1:日宮まどかの持物の中から目ぼしい物を回収する。
2:のび太とは会いたくない。



※F-6島役場周辺に銃声が響きました。
※F-6島役場に日宮まどかの死体が放置されています。また、日宮まどかの持物を
骨川スネ夫が漁っています。



侍は踊る 時系列順 運という不確定なものも時には必要
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Reply of bullet 日宮まどか 死亡
夜明けは悪夢の終わりではない 骨川スネ夫 とある二人の殺人者の動向

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最終更新:2010年05月30日 11:07
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