夜明けは悪夢の終わりではない

50話 夜明けは悪夢の終わりではない


「もうすぐ放送ね……」

時刻は午前5時45分。第一回放送まで残り15分を切った。
障子戸から差し込む日の光も益々強くなってきている。
殺し合いが始まってから初めての日の出だ。

エリアG-6の市街地の一角にある民家の中で、赤髪のグラマーな女性、稲垣葉月は、
所々に染みがついた布団の上に座り、懐中時計を見ながらコップに入った白く濁った液を口に運ぶ。
生臭く、粘り気もあるその液はお世辞にも美味いとは言えない代物だったが、
今の葉月にとってはカルピスよりもファンタよりも美味しく、心落ち着く飲み物だった。

「美味しい…?」

甘えたような口調で言いながら、黒い巨大な狼、レックスが葉月に近付き
膝の上に上半身を乗せ、葉月の顔を見上げるような体勢を取った。

「うん、美味しい……凄く生臭いけど、それがいいの」

葉月は少し微笑みながらレックスに言った。

「そう言ってくれると、嬉しいなぁ。もっと一杯出してあげるからね。下のお口に」
「やだぁ、もうレックスったらエッチなんだから。でも、もうすぐ放送があるから、
放送が終わった後にまた……ね」
「うん。ああ、そうか……放送か。もうそんな時間になるんだ」

その時刻までの新たな犠牲者及びに入ると首輪が作動する禁止エリアを発表するという定時放送。
葉月もレックスも知り合いは誰一人この殺し合いには呼ばれてはいなかったが、
禁止エリアの情報は少なくとも聞いておく必要があった。
もし、今自分達がいるエリアが指定されれば、移動する必要が出てくるためである。
うっかり聞き逃してしまい、行為に夢中で禁止エリアになり首輪が爆発して死亡、
という余りに無様な死に方は二人ともしたくはなかった。

「ハヅキ…お尻、もう大丈夫? ごめんよ、本当に……」
「うん。何とか血は止まったから……気にしなくていいよ」

レックスが心配するのは葉月の後門。
先刻、自分のせいで後門と直腸を負傷した葉月は大量に出血してしまった。
どうにか血は止まったので良かったが一歩間違えれば葉月の命に関わるかもしれなかった。
レックスはその事を気に病んでいたのだ。

「後ろの門は封鎖だけど、前の門はいつでも大歓迎だから、レックス」
「そう言ってくれると嬉しいよ、葉月。放送が終わったら……もっと色々、やってみようよ」

黒い狼が悪戯っ子のような目で葉月を見る。

「勿論…貴方にならいくら汚されてもいいよ。レックス……」
「葉月~…」

お互いに、相手に対する深い愛情を感じた葉月とレックスは、
寄り添い、体温を感じ合った。




女と黒狼が乳繰り合っている民家から、北へ少し離れたエリアF-6の、
役場周辺の住宅街、その一角にある小さなアパート。
一階の右端の部屋で、骨川スネ夫は放送を待つため、
一旦他参加者の捜索を切り上げ休息を取っていた。

居間のテーブルの上に地図と参加者名簿、メモ帳、筆記用具を用意し、
放送を聞く準備は万全にしてある。

「後、10分か……」

懐中時計が指し示す時刻は午前5時50分。
殺し合いに生き残る事が第一の目的であるスネ夫にとっては、
参加者が何人死に、後残り何人残っているのかを知る事は重要だった。
だが、一抹の不安が彼の心の中にはあった。それは殺し合いに呼ばれている自分の友達。
彼らの名前が呼ばれれば、自分は彼らを手に掛けなくて済む。
だが、大切な友達である事に変わりはない。本当に死んだと分かった時、
自分は果たして冷静でいられるだろうか。

数時間前、小中学校で青い髪の翼と尻尾を持った女性に襲い掛かって返り討ちに遭い、
気絶させられた時に見た悪夢の事を思い出す。
夢の中には変わり果てた姿の友達二人――剛田武、源しずかが出てきた。
悪夢の中ではとても恐ろしい出来事だったが、覚めてしまえば単なる夢である。
だがスネ夫はあの夢がどうしてもただの悪夢のようには思えなかった。

「虫の知らせ」という言葉をスネ夫は思い出す。
何度か考えたが、もしかしたら、剛田武と源しずかは既に死亡しているのではないか。
あの夢の通りだとするならば、しずかは首を切断され、剛田武は身体中を蜂の巣にされ――。

「ハァ……もうやめよう。もうすぐ分かるし」

何にせよ、もうすぐ始まる第一回目の定時放送ではっきりする事だ。

スネ夫は支給品の水を飲みながら、放送の時刻を待ち続けた。




【一日目早朝/G-6市街地:垣内家二階和室】

【稲垣葉月@俺オリロワリピーター組】
[状態]:下半身丸出し、肛門及び直腸裂傷(血は止まり治癒が始まっている)、
レックスに対する特殊な感情
[装備]:なし
[持物]:基本支給品一式(食糧を少し消費)、AK-47(30/30)、AK-47のリロードマガジン(30×10)
[思考]:
0:死にたくない。レックスと一緒にいる。
1:放送を待つ。
2:襲われたらどうする……?
※下半身の衣類は和室内に放置されています。
※レックスに対し特殊な感情が芽生え始めているようです。


【レックス@オリキャラ】
[状態]:健康、稲垣葉月に対する罪悪感、及び特殊な感情
[装備]:なし
[持物]:基本支給品一式、ダマスカスソード
[思考]:
0:とりあえず死にたくはない。
1:ハヅキを死なせない。
2:放送を待つ。
3:最悪の場合(ハヅキが死亡した場合も含む)、自害する。
※稲垣葉月に対し特殊な感情が芽生え始めているようです。


【一日目早朝/F-6市街地:アパート一階101号室居間】

【骨川スネ夫@ドラえもん】
[状態]:健康
[装備]:IMIウージー(32/32)
[持物]:基本支給品一式(水消費中)、IMIウージーのリロードマガジン(32×8)、三八式歩兵銃(2/5)、
6.5㎜×50R弾(25)、コルト トルーパー(6/6)、.357マグナム弾(30)、コンバットナイフ、
水と食糧(4人分)、消毒用エタノール、ジッポーライター、焼酎
[思考]:
0:生き残るために殺し合いに乗る。
1:放送を待つ。
2:のび太達とは会いたくない。
※悪夢の内容から、剛田武と源しずかの二人はもう死んでいるのではないかと思い始めています。




※G-6市街地:垣内家二階和室が血で汚れています。




フラッシュバック――記憶の欠片 時系列順 第一回放送
フラッシュバック――記憶の欠片 投下順 第一回放送

殺し合いそっちのけで何やってんだ 稲垣葉月 焼け付く想いは憂い募らせる
殺し合いそっちのけで何やってんだ レックス 焼け付く想いは憂い募らせる
It is a nightmare inside even if awaking. 骨川スネ夫 シリアルキラーツクール

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最終更新:2010年05月24日 23:43
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