BIG HOUSE

46話 BIG HOUSE


首がなくなった少女の死体の衣服で、刀身に付着した血を拭き取るドーラ。
血と脂が十分拭えた後、刀――九五式軍刀を腰に差した鞘に戻した。
そしてテーブルの上に置かれた、少女の死体から回収した首輪を手に取り、
デイパックの中に押し込む。

「それにしてもこいつだったとはね……」

先刻仲間に加えたエルザ・ウェイバーからガソリンスタンドで
自分を殺そうとした参加者を返り討ちにして殺したと聞き、
首輪のサンプル回収のためにガソリンスタンドまでやってきたドーラだったが、
その死体には見覚えがあった。

青い髪に、白い丈の短いローブを着た少女。
確か「フォナ・アンシュッツ」と名乗っていた。
この殺し合いにおいて最初に出会った参加者で、エルザと同じように、
自分もこの少女に危うく殺されそうになったが、逆に気絶させて難を逃れた。
あの時は気絶していただけだったが……。

「何となく長生きしないなとは思っていたけどやっぱりね。気の毒に」

フォナが生前言っていた「死にたくないから殺し合いに乗る」という言葉を思い出し、
それでも屍と化してしまったフォナを少々気の毒に思いつつ、
首輪の回収という当初の目的を果たしたドーラは仲間の待つ豪邸への帰途についた。



「…ん?」

豪邸へと近付いたドーラは、玄関付近に見知らぬ二人の人物がいる事に気付く。
もっとよく見てみれば、玄関からは仲間であるエルザとガーゴイルが出て応対している。
いや、見知らぬ二人は両方とも両手を上げた格好になっているようだ。
ドーラはデイパックの中から散弾銃であるイサカM37を取り出し、豪邸へ急いだ。



「あの、すいません、もうホントに下ろして貰えないでしょうか。
僕達ホントに殺し合う気なんてないんですって。マジなんです」

狼獣人・ピタゴラスの脇にいる青年・久保遼平が上擦った声で訴える。
灯台でしばらく過ごした後、明るくなったのですぐ近くにあった豪邸を訪ねてみれば、
中から出てきた、嫌に露出の高い、言ってしまえばとてもエロい格好をした女性と、
青い竜のような巨大な怪物に武器を向けられ両手を上げざるを得なくなった。
しかも、女性が持っている小型の拳銃ならまだしも、竜のような怪物は、
ロケット砲らしきものを構えていた。
両名とも警戒の眼差しで自分達の方を見ている。下手な事をすれば間違いなく殺される。
まさか自分の人生の中でロケット砲を向けられる日が来るとは夢にも思っていなかった。

「ちょ、もう、勘弁してくれませんかね」
「……エルザ。どうする?」
「うーん、信じても良さそうかな……でもドーラの意見も聞きたいから、
ドーラ帰ってくるの待とうかガーゴイル」
「…もう一人仲間がいるのか?」

エルザとガーゴイルの会話を聞いていたピタゴラスが話に割り込む。

「ん? ああ、もう一人いるんだが今はちょっと用があって留守でな」
「いいのガーゴイル? 言っちゃって」
「信じても良さそうって言ったのはお前だぞ」
「まぁ、そうか…あ、ドーラ!」

遼平とピタゴラスが両手を上げたまま後ろに振り向くと、
散弾銃らしき物を自分達に向けた、これまた露出の高い格好の狐獣人の女性が立っていた。

「エルザ。ガーゴイル。こいつら何だい?」
「何って言われても、さっきここにやってきた人達、としか言えないけど」
「それよりドーラ、戻ってきたという事は……」
「ああ。バッチリ回収したよ。まぁ、ここで立ち話も何だから、
中に入ろうじゃないか。ああ、そこの二人も一緒に」
「え? いいんですか?」

思いがけないドーラの言葉に遼平が目を丸くする。

「殺し合いに乗っている奴が複数で行動してるってのも変だからねぇ。
それに……アンタら弱そうだし。何かあってもすぐ始末できそうだからね」
「「……」」

ドーラの言葉に絶句する遼平とピタゴラスだった。



豪邸内へと入ったドーラ、エルザ、ガーゴイルの三人は、
居間で新しくこの豪邸にやってきた久保遼平とピタゴラスの二人と
情報を交換する事になった。

定例の自己紹介の後、ピタゴラスと遼平は自分の支給品を三人に見せる。

「お、俺は、このナイフと、ラジオです」
「俺はこの銃と、予備の弾倉だ」
「ナイフと銃は分かるがラジオとは……主催者の考えが分からないな。
エルザが持っていたあの写真といい」
「あ、あれは違うから! 私のじゃないから!」

エルザが顔を赤らめて何かを必死に否定する。
何の話か分からなかったが、ドーラはとりあえず保留にし、
ピタゴラスと遼平にこの豪邸に来るまでの経緯を訊く。
二人は不審がられないようにできるだけ詳細に三人に説明した。

「成程ねぇ。ライフル持った奴に襲われたのかい、災難だったね。
んで、逃げてる途中でピタゴラスと出会ってそれ以来行動を共にしてると。
大体そんなトコかい?」
「は、はい……」

おおよその経緯は把握できたので、今度はドーラ、エルザ、ガーゴイルの三人が、
この豪邸に集まるまでにどんな事があったのか話した。

「……という感じだね」
「え? ドーラ、最初に襲われた女の子って、もしかして…」
「ああそうさね。アンタが返り討ちにした子だよ。それで…こいつが」

ドーラはデイパックから、若干血が付着した参加者用の首輪を取り出し、
テーブルの上に置いた。

「その子の死体から取ってきた、首輪さね」
「え…取ってきたって、えと、ドーラさん、一体どうやって?
確か絶対に外れないんじゃ……」

そう、この首輪は解除する事はできないと主催者が言っていた。
死体からとは言え、どうやって首輪を回収できたのか、遼平が気になってドーラに尋ねる。
するとその質問に答えたのはドーラ本人ではなくガーゴイルだった。

「それはお前、決まっているだろ。首を切り落としたんだ。なぁ、ドーラ?」
「それ以外に方法なんてないからねぇ」

聞かなければ良かったと、遼平は後悔した。
その光景を想像しただけで、吐き気が遼平を襲った。

「首輪か……」

しかし遼平の横のピタゴラスは何ら気分を悪くする事もなく、
テーブルの上に置かれたその首輪を興味深そうに見詰める。
それを見たエルザがピタゴラスに話し掛けた。

「ピタゴラス、だったっけ? 貴方も首輪を外す方法を?」
「ああ。その口振りからするとお前もか? エルザ、だったかな」
「首輪を色々調べてみれば、何か分かるんじゃないかと思って。
だからドーラに首輪を取りに行って貰ったんだけど……」
「なら話は早い、俺も協力させてくれないか。
一人より二人の方が発見も多くなるかもしれん」
「そう? それじゃ一緒に首輪調べるとしようか。いいよねドーラ、ガーゴイル?」

ピタゴラスの申し出を承諾するかどうかエルザがドーラとガーゴイルに意見を求めるが、
二人共異論はないようなので、エルザはピタゴラスと一緒に首輪を調べる事になった。



ピタゴラスとエルザの二人が二階へ首輪を調べに行った後、
ドーラはトイレに向かい、居間には遼平とガーゴイルの二人がいた。
ソファーに座って自分の食糧であるカレーパンを食べる遼平だったが、
前方にいる青い翼が生えた竜のような生き物がどうしても気になるのか、
どこか居心地が悪そうな表情だった。

当のガーゴイルはどこかから持ってきた雑誌らしき物を読み耽っている。
表紙には雌のドラゴンのセクシーポーズの写真が載っているので、
どういう内容かは想像がついた。

(声とか聞く限りじゃ軍人気質の真面目そうな感じだけど…。
ああいうのも読むんだな……意外)

「何だ?」

遼平の視線に気付いたのか、ガーゴイルが赤い瞳の鋭い視線を遼平に向けた。

「い、いえ! 何でも! 何でもないです!!」

殺されると思い、遼平は必死に弁解する。

「……」

ガーゴイルは再び雑誌に目を通し始めた。

(……大丈夫かな、俺)

自分のこれからに不安を感じつつ、遼平は残っていたパンの欠片を口に放り込み、
同じく支給品の水を飲み始めた。



【一日目早朝/H-3豪邸】

【ドーラ・システィール@FEDA】
[状態]:健康
[装備]:イサカM37(4/4)
[持物]:基本支給品一式、12ゲージショットシェル(30)、防弾チョッキ
[思考]:
0:今の所殺し合いをする気はない。
1:ガーゴイル、エルザ、久保遼平、ピタゴラスと行動。
2:シェリーについては保留。
3:首輪を外したい。
※参戦時期は少なくともコバルトを倒した後です。
※ガーゴイルの知人(ジン、アキラ、亜美、ガルム)のおおよその特徴を把握しました。
※ガーゴイルの言葉の一部が理解できず気になっています。
※久保遼平、ピタゴラスと情報交換をしました。
※フォナ・アンシュッツが死亡した事を知りました。


【エルザ・ウェイバー@オリキャラ】
[状態]:腹部に二発被弾(処置済)
[装備]:九五式軍刀
[持物]:基本支給品一式、レミントン デリンジャー(0/2)、.41リムファイアー弾(30)、
首輪探知機、フォナ・アンシュッツの首輪、雄獣人エロ写真詰め合わせ
[思考]:
0:殺し合いを潰す。脱出手段の模索。
1:ピタゴラスと共に首輪を調べる。
2:ドーラ、ガーゴイル、久保遼平、ピタゴラスと行動する。仲間を集めたい。
※久保遼平、ピタゴラスと情報交換をしました。



【ガーゴイル@真・女神転生デビルチルドレンライト&ダーク】
[状態]:健康
[装備]:RPG7(1/1)
[持物]:基本支給品一式、85㎜対戦車擲弾(3)
[思考]:
0:殺し合いからの脱出。首輪の解除方法の模索。
1:エルザとピタゴラスに首輪の調査を任せる。
2:ドーラ、エルザ、久保遼平、ピタゴラスと行動。しばらく豪邸に留まる。
3:元世界の知人(ジン、アキラ、亜美、ガルム)については保留。
4:襲われたら説得を試みる。駄目ならば戦うか逃げる。
※ドーラの知人(シェリー・ラクソマーコス)のおおよその特徴を把握しました。
※ドーラの言葉の一部が理解できず気になっています。
※久保遼平、ピタゴラスと情報交換をしました。


【ピタゴラス@オリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康
[装備]:コルトM1911A1(7/7)
[持物]:基本支給品一式、コルト ガバメントのリロードマガジン(7×5)
[思考]:
0:殺し合いには乗らない。首輪を外したい。
1:エルザと共に首輪を調べる。
2:久保遼平、ドーラ、エルザ、ガーゴイルと行動する。
3:襲われたら戦う。
※参戦時期は本編死亡後です。
※毛皮の色は作者の想像です。
※自分が以前別のバトルロワイアルに参加していた事を久保遼平に話していません。
※ドーラ、エルザ、ガーゴイルと情報交換をしました。


【久保遼平@オリキャラ】
[状態]:健康、食事中
[装備]:ハンティングナイフ
[持物]:基本支給品一式(食糧消費中)、トランジスタラジオ
[思考]:
0:殺し合いはしたくない。生き残りたい。
1:ピタゴラス、ドーラ、エルザ、ガーゴイルと行動する。基本的に四人には従うつもり。
※ドーラ、エルザ、ガーゴイルと情報交換をしました。



※G-2ガソリンスタンド内部のフォナ・アンシュッツの死体は首が切断されました。




その思いは正義をも砕く 時系列順 妄想だけならタダ
その思いは正義をも砕く 投下順 妄想だけならタダ

死体損壊なんてよくある事 ドーラ・システィール Is it hope or despair?
死体損壊なんてよくある事 エルザ・ウェイバー Is it hope or despair?
死体損壊なんてよくある事 ガーゴイル Is it hope or despair?
二度目の生で成すべき事 ピタゴラス Is it hope or despair?
二度目の生で成すべき事 久保遼平 Is it hope or despair?

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最終更新:2010年05月23日 17:33
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