It is a nightmare inside even if awaking.

39話 It is a nightmare inside even if awaking.


「ふぅ…とりあえず、これで良いか」

保健室から隣の職員室まで、死臭を発し始めている猫獣人の少年の死体を引き摺り、
そして今、少年が着ていたと思われる衣類を、職員室奥の床に横たえた死体の上に被せ、
一通りの運搬作業を終えたドラゴナス。
せめてもう少しマシな弔い方はないのだろうかと自分自身に問い掛けるが、
自分の命もいつ危機に晒されるか分からない現状では、
これぐらいしかできないと自身に言い聞かせた。

保健室でベッドに寝かせている狐顔の少年の様子が気になり、
ドラゴナスは保健室に向かうため、職員室の引き戸を開け、廊下に出た。

「!! お前は…」

そこでドラゴナスは自分もよく知る人物と対面する事となる。
廊下の奥、数メートル先に、自分にライフルと思しき銃の銃口を向ける、
金髪のロングヘアのエルフの少女。

「貴方は…魔王軍のドラゴナスだったかしら。女体化してるみたいだけど」
「そういうお前は確かヘレンだったか? アレックスの仲間の」

エルフの少女――ヘレンは腰だめに構えた三八式歩兵銃の銃口をドラゴナスに向けたまま、
ゆっくりとその距離を詰め始めた。
ドラゴナスは動くに動けない。様子を見る限り、ヘレンはこちらに対し殺気を放っている。
下手に動けば間違いなくヘレンは銃の引き金を引くだろう。

「……一体いつからこの学校に?」

ヘレンの目を見据えながらドラゴナスが質問する。

「ついさっきかな。通用口から入ったんだけど、何だか音がするなと思って来てみれば、
貴方がいたって訳」

学校のあるエリアF-5の西側隣、エリアF-4にて一人の参加者を襲ったが、
結局仕留める事に失敗したヘレンは、東方向に存在する小中学校を次の目的地とし、
森の中を歩き続けた。そして小中学校に辿り着き、現在、ドラゴナスと対峙するに至る。

床に残る血の後、ドラゴナスの両手と身体に付着した血痕を見付け、
今度はヘレンがドラゴナスに質問する。

「ねぇ、貴方の身体と床に付いてるその血はどうしたの?」
「こ、これは……」

状況を説明しようとしてドラゴナスが躊躇する。
保健室で死体を発見しそれを隣の職員室まで引き摺った、それをヘレンに話せば、
なぜわざわざそのような事をしたのか理由を聞かれるだろう。
保健室に気絶させた少年を寝かせてあるため、と答えれば、
下手をすればその少年に危険が及ぶ可能性がある。
今のヘレンからは、明らかに平和的な匂いが感じられなかった。
だが、ここでしっかり説明しなければ、あらぬ疑いを掛けられる可能性がある。
正直に話すべきか、それとも。

「もしかして、貴方、誰かを殺したの?」
「! ち、違う! 俺は誰も殺してなんていない!」
「それじゃあその血は何? ちゃんと説明して欲しいな」
「くっ……」

ヘレンがこの殺し合いをする気でいるのかどうかはともかく、
やはり正直に話すべきだとドラゴナスは感じ始める。
そして、保健室で死体を発見した事を話そうとした時だった。

「…まぁ、貴方が誰か殺したかどうかなんて、ぶっちゃけどうでもいいんだけど」
「……何だって? それはどういう意味、だ?」

突然ヘレンが言い放った言葉に困惑するドラゴナス。
だが、すぐに先程自分が考えていた推測と今のヘレンの発言を結び付け、
その意味を察した。

「何にしたって、私は、みんなを殺すだけだからね」
「――ッ!!」

次の瞬間、ドラゴナスは職員室の中へ逃げ込んでいた。
数瞬前まで、ドラゴナスがいた空間を、三八式歩兵銃から放たれた銃弾が突き抜けた。

「逃げたって無駄よ! 観念し――」

いざドラゴナスを追撃しようとヘレンが一歩踏み出した。


ダダダダダダダダダダダッ!!


「―――ぎっ、あ――?」

機関銃の音と同時にヘレンの身体に、
背中から無数の9㎜パラベラム弾が食い込み、幾つかが貫通した。
背中や足に感じる灼熱、そして喉の奥から込み上げ口から流れ出る鉄錆の味をした液体。
脱力する身体を気力で支え、ヘレンが背後を振り向くと。

そこには自分に向け、銃口から煙を噴く短機関銃と思しき銃を構えた、
頭に迷彩色のバンダナを巻いた紫色の犬獣人の姿が。
その瞬間ヘレンは察する。自分は銃撃されたのだと。

犬獣人が口元を歪め、笑った。

「…嘘、でしょ……?」



ダダダダダダダダダダダッ!!



それがヘレンが見た最期の光景となった。



短機関銃、ウージーのマガジンを交換しながら、犬獣人――ガルムは、
青い髪をした竜人娘の逃げ込んだ職員室へと向かう。
エリアE-5の森にて、取り逃がした、あの時の竜人娘に違いないと、ガルムは確信していた。

(まさかこんな所で会えるとはな…今度こそ仕留めてやるぜ)

獲物を見付けた獣ようなぎらぎらとした目をしながら舌舐めずりをし、
職員室に足を踏み入れたガルムだったが、見る限り、
あるのは事務机や書類を収める戸棚だけで人の姿は見当たらない。

「どこに行った?」

ウージーを携えながら、職員室内を見て回るガルム。

「あ? 何だこりゃ……」

その過程で、床に横たえられた猫獣人の少年の死体を発見するが、
特に気にも留めず、再び竜人娘の捜索を続けた。
一つ一つの事務机の下や、戸棚の中、更には清掃用具入れの中に至るまで見て回る。
しかし、竜人娘の姿は見当たらない。

「窓から逃げたか? いや、開いた様子もないが…」

カーテンの閉められた窓へと近付くガルムだったが、
その時、背後で何か金属音が聞こえた。

「!!」

振り向いた瞬間、職員室入口で仁王立ちをした竜人娘を発見した。
だが、ガルムがウージーの引き金を引く前に。


ダァン!!


「グハッ…!!」

竜人娘が構えたライフルの引き金を引いた。
放たれた銃弾はガルムの左胸に直撃し、空いた穴からドクドクと赤い液体が流れ、
職員室の木造の床の上に滴り落ちる。

「く、くそっ」

急いでガルムはウージーの銃口を竜人娘に向けようとしたが、
それよりも竜人娘がライフルのボルトを操作し、再び発砲する方が早かった。


ダァン!!


「ガァ……ア………ッ」

今度の弾丸はガルムの心臓を正確に撃ち抜いていた。
いかに生命力において人間の比ではないデビルであるガルムと言えど、
心臓にライフル弾を貫かれ、生存する事はできない。
持っていたウージーを床に落とし、ガックリと両膝を突いたガルムは、
徐々に意識が遠退いていくのを自覚し、自分が間もなく死ぬ事を悟った。

(終わりかよ………くそっ…………)

心の中で悔しげに呟き、直後にガルムの身体は崩れ落ち、そして永遠に動かなくなった。



「ハァ、ハァ、ハァ……」

竜人娘――ドラゴナスが、息を荒げながら、ヘレンの死体から奪った三八式歩兵銃を携え、
たった今殺害した紫色の犬獣人の死体に近付き、生死を確認する。
脈はなく、瞳孔も何の反応も示さない。犬獣人の肉体が完全に活動を停止している事は明白だった。

職員室に逃げ込んだ際、ドラゴナスは事務机の陰に隠れた。
そして気付かれないように、職員室の入口の方を覗き、犬獣人が入ってきた事を確認すると、
犬獣人の死角となるように並べられた事務机の陰を這って移動し、
上手く背後に周り、ヘレンの持っていた三八式歩兵銃を使い攻撃を仕掛けた。

「こいつは、あの時の犬獣人…?」

身体的特徴や使っていた武器などから、ドラゴナスはこの犬獣人が、
先刻自分と、出会ったばかりの剛田武と名乗った少年を襲った者と同一人物であると確信する。
剛田武少年は自分が上空に飛び上がって難を逃れた後、
この犬獣人による機関銃掃射により命を落としてしまった。

期せずして、あの少年の仇討ちをしたという事になる。

(少年……そういえばあの狐顔の少年は大丈夫だろうか)

突然の戦闘によりすっかり保健室の少年の存在を忘れていたドラゴナスは、
立ち上がり、保健室に向か――――う事はできなかった。


ドスッ


「…………ぁ…あ?」

保健室でベッドに横になっていたはずの少年が、自分の懐に潜り込んで、
自分の腹部にコンバットナイフを押し当てていたからだ。
ぐいっ、と、少年がコンバットナイフを突き上げるようにして、傷口を抉る。
ドラゴナスの喉の奥から熱い液体が込み上げ、口から溢れた。
少年がドラゴナスの身体から離れた。だが、ドラゴナスの腹からは、
コンバットナイフの柄が生えたままになっている。
無論、それは生えているのではなく、刀身が身体の中、腸をズタズタにして潜り込んでいるのだという事は理解していた。
ふらふらと後ずさりした後、ドラゴナスはゆっくりと、仰向けに、既に床に倒れている、
犬獣人――ガルムの死体の上へと倒れていった。


(――――ハーたん、ハーナス、ハー妹――――)

頭の中に、自分の愛する家族の顔が浮かぶ。
良妻賢母のハーたんことハーピー。
自慢の才色兼備の娘、ハーナス。
居候の上にニートだがどこか憎めないハー妹。
自分の最愛の、そして大切な家族。

多分、いや、もう自分は、家族の元には帰れない。

(――――魔王様、嫁様、娘様、ムシャ、ニンニン、ダーエロ、死神五世、
魔王城のみんな――――)

そして、魔物達を統べる長として、そして自分と同じ夫として父親として、
敬慕いていた魔王とその家族、同じ四天王の仲間達の顔も。

ムシャと死神五世、そしてデスシープはこの殺し合いに参加させられている。
死にゆく者として彼らの身を案じずにはいられなかった。



(……俺………は……………)



ドラゴナスの身体が、ガルムの死体の上に倒れ込んだ時。

その時にはもうドラゴナスの意識はなくなっていた。




骨川スネ夫は、二人目の殺人を犯した後、しばらくその場に立ち尽くしていた。
だが、数分後、スネ夫はどこか、魂の抜けたような表情のまま、
散らばった武装の回収を始めた。

悪夢に苛まれていたスネ夫を目覚めさせたのは、銃声。
目を開けた時、自分がいたのは、内装からして保健室の中。
なぜ保健室で、しかもベッドの上で眠っていたのか思案したが、
保健室の外から機関銃と思しき銃声が響き、その思考は中断された。

僅かに保健室の扉を開いて様子を窺うと、
奥に二足歩行の犬のような人間が立っており、床には金髪の女性が血塗れで倒れていた。
多分、と言うより間違いなく女性は息絶えていた。
そして犬人間がすぐ近くの部屋――表示から職員室だと分かった――に、
短機関銃らしき武器を携え入っていった。

その後、しばらくスネ夫はそのまま扉の陰から様子を見守っていた。
今思えばなぜその隙に逃げ出したりしなかったのか、自分でも分からなかった。

しばらく静寂が続いたが、突如事態は急転する。
職員室の入口から、自分が意識を失う前に戦った青髪の翼と尻尾を持った女性が飛び出し、
金髪の女性の死体の辺りから何やらライフルらしき物を拾い上げると、
すぐに職員室の方に戻って行った。スネ夫には気付かずに。

その後、二発の銃声が響き、そして静かになった。

スネ夫は考える。自分がなぜ、学校の保健室で眠っていたのか。
眠る前の記憶は、小中学校の校庭で、翼と尻尾を持った青髪女性を襲った事。

(…そうだ、僕は、あの女の人に気絶させられたんだ……って事は、
僕を保健室のベッドに寝かせてくれたのもあの人?)

自分の推測が正しいとすれば、少なくともあの女性は殺し合いをする気はないと思われた。
意識を失う前にも、殺し合いをやめるよう説得していた事からも間違いない。
殺す気で襲い掛かった自分を、わざわざ保護してくれたというのか。

(あの人、いい人なんだな……)

自分の命すらも危ういこの殺し合いという状況下で他人の、しかも自分の命を奪おうとした人物を、
保護ししかも比較的安全な場所に安置してくれるとは。
あの翼と尻尾を持った女性は、間違いなく善人の部類に入る存在だと、
この殺し合いを拒絶する者にとっては頼りになるであろう存在だとスネ夫は思った。


もっとも。


生き残るために殺し合いをする気でいるスネ夫にとっては、そんな事はどうでも良かったのだが。



不思議と、二人目の殺人の時は、最初の時程抵抗感がなかった。
あの悪夢を見て、恐怖や罪悪感といった感情が麻痺してしまったのだろうか。

「……夢……」

スネ夫は、夢の中に出てきた、この殺し合いにも呼ばれている友達二人の事を考える。

「あの夢……もしかしたら、ジャイアンとしずかちゃんはもう……」

虫の知らせという言葉もある。二人が夢の中であのような姿で登場した事、
更に殺し合いという状況を考えれば、二人の身に何かあったと考えられた。
それも、恐らくは、最悪の結末。

まだそうなったのかと確定している訳でもないが、
できる事ならそうなって欲しいともスネ夫は思っていた。

何故なら―――自分の手では友達を殺したくなかったから。

だが、今の心情なら、友達を手に掛ける事も容易い、とまでスネ夫は思い始めていた。



数十分後、スネ夫は学校の昇降口から外へ出た。
その手には犬人間が持っていた短機関銃、ウージーが。
そして肩から提げたデイパックには、翼と尻尾の女性、金髪の女性、
犬人間の三人の死体から奪い取った装備や食糧が入っていた。

そしてスネ夫はまだ暗闇に包まれている市街地に向かい歩き出す。

その瞳には、どこか暗い、暗澹とした何かが宿っているようだった。



【ヘレン@VIPRPG  死亡確認】
【ガルム@真・女神転生デビルチルドレンライト&ダーク  死亡確認】
【ドラゴナス@VIPRPG  死亡確認】
【残り34人】



【一日目黎明/F-5小中学校:校庭】

【骨川スネ夫@ドラえもん】
[状態]:健康
[装備]:IMIウージー(32/32)
[持物]:基本支給品一式、IMIウージーのリロードマガジン(32×8)、三八式歩兵銃(2/5)、
6.5㎜×50R弾(25)、コルト トルーパー(6/6)、.357マグナム弾(30)、コンバットナイフ、
水と食糧(4人分)、消毒用エタノール、ジッポーライター、焼酎
[思考]:
0:生き残るために殺し合いに乗る。
1:のび太達とは会いたくない。
※悪夢の内容から、剛田武と源しずかの二人はもう死んでいるのではないかと思い始めています。



※F-5一帯に銃声が響きました。
※F-5小中学校内にヘレン、ガルム、ドラゴナス、ケトルの死体と、
それぞれのデイパック(水と食糧抜きの基本支給品一式入り)が放置されています。





殺し合いそっちのけで何やってんだ 時系列順 死体損壊なんてよくある事
殺し合いそっちのけで何やってんだ 投下順 死体損壊なんてよくある事

覚められない悪夢 ドラゴナス 死亡
DEATHGAME OF HELEN ヘレン 死亡
ジャイアニズムの終焉 ガルム 死亡
覚められない悪夢 骨川スネ夫 夜明けは悪夢の終わりではない

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最終更新:2010年05月13日 00:42
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