Triple axel

34話 Triple axel

エリアE-4、森の中の開けた場所に立っている朽ちた鉄塔。
上へ登るための鉄製の階段は錆び、腐食し、とても登れる状態ではない。

親友であり仲間であったブライアンを失った悲しみを引きずりつつ、
アレックスは懐中電灯で前を照らしながら鉄塔に辿り着いた。
顔を上げて鉄塔を見上げると、かなりの高さがある事が分かる。
恐らく元々は送電用、或いは通信用に使っていたのだろうが、鉄塔の鉄骨の傷み具合から推測するに、
放棄されてかなりの年月が経っているようだ。

「おい、誰かいるのか?」
「!!」

不意に声を掛けられ、もう手遅れとは思いつつも、アレックスは懐中電灯のスイッチを切り物陰に隠れた。

「俺達は殺し合いをする気はない。そっちもそうなら出てきてくれないか」

今度は先程とは別の声色である。
一度目はやや高めの少年、二度目は低めの青年の声に聞こえた。
相手側は少なくとも二人いるようだ。

(二人いるのか…? もし殺し合いに乗っているとすれば、
わざわざ徒党を組んだりするのは考えにくいな。信じても良さそう…か?)

「分かった。今、そっちに行くよ」

どうするか少し迷ったが、結局アレックスは素直に出て行く事にした。
しかし万が一の時のために、自分の武装であるサバイバルナイフをいつでも抜き出せるようにした。

「……」

そこにいたのは赤と白を基調とした服に身を包んだツンツン頭の少年と、
灰色ブレザーの学生風の格好をした青い狼獣人の青年の二人。
少年は細い刀身を持ったナイフ、青狼青年はリボルバー拳銃を、それぞれ所持している。
二人の表情から、まだ自分は警戒されているとアレックスは感じた。
念のために、アレックスが再び二人に確認を取る。

「本当に殺し合う気はないのか?」
「ああ。勿論だ。殺し合いなんかしないさ」
「俺もだ。そう言うアンタはどうなんだ?」
「俺も、殺し合いをする気なんてないよ。何とかして、このゲームを潰したいと思っている」

アレックスは語気に力を込めて殺し合いを否定する。
その様子を見て、少年と青狼青年は目の前の白い鉢巻をした男が嘘は言っていないと判断した。

「俺達、一緒の考えみたいだ。俺、ジン」
「俺は石川昭武だ」
「ジンに、昭武、か。俺はアレックスだ」

互いに緊張が解れた所で、アレックスとジン、昭武は軽く自己紹介の挨拶を交わした。


鉄塔の根元部分で三人は情報交換を行う事にした。

アレックスはまず、先刻起こった友人の死の事を二人に話した。

「そんな事があったのか…」

自分も大切な仲間が二人、この殺し合いに呼ばれているジンは、
アレックスに対し同情の念を禁じえなかった。
早く仲間――アキラと亜美の二人と合流したい、という思いがジンの中で強くなった。
昭武はこの殺し合いには一人も知り合いは呼ばれてはいなかったが、
それでもアレックスの心情を察する事はできた。

「…目の前で大切な親友が殺されたのに、俺は何もできなかった。
それが悔しくてたまらない」

悔恨の表情を浮かべながらアレックスが言う。

「……襲ってきた奴、どんな奴だったか覚えているか?」

酷だとは思いつつも、昭武がアレックスに襲撃者の特徴について訊く。

「よく見えなかったけど…白いカッターシャツを着た…人間の男、だったと思う。
暗かったし、突然の事だったから、それくらいしか分からないんだ」
「うーん、そうか……でも一応覚えておこう」

これから先、危険人物に関する情報が重要になってくる。
できればもう少し詳しく特徴を聞いておきたかった昭武だったが、
アレックスの心情も考慮ししつこく追及するのはやめる事にした。


次にそれぞれの知人についての情報交換が始まった。
最初はアレックスが、名簿を取り出し先刻殺害されたブライアンを除く、
6人の知人一人一人のおおまかな特徴をジンと昭武の二人に説明していく。

「…こんな所だ。みんな、こんな理不尽な殺し合いゲームに乗るような奴じゃない。
そう、思いたいけど……分からないな」
「とりあえず、アレックスの仲間だって言う、ゴメスとヘレンを中心に捜せばいいんじゃないか?
この…ドラゴナス、死神五世、ムシャ、デスシープの四人は、一応敵対関係らしいし」

昭武がアレックスに進言する。

「そうだな……とりあえず、当面はそうしよう」
「それじゃあ次、俺、いいかな」
「ああ」

続いてジンが自分の仲間と、敵対している帝国軍のデビルの事をアレックスに説明する。
途中「帝国軍」「ヴァルハラ」といった聞き慣れない単語があったが、
アレックスは特に深く追求したりはしなかった。

「ジンと亜美は絶対殺し合いなんかしない。そんな事できる奴じゃねぇ」
「その二人は信用できるとして…後の二人、ガーゴイルとガルムは、
殺し合いに乗っている可能性が高い、と、そう言いたいんだな?」
「ああ……もしかしたら、俺達と同じ考えを持ってるかもしれないけど、
実際に会ってみない限り分からない」

アレックスとジンの話を聞いていた昭武が、二人の知り合いの情報を大まかに纏める。

「総合すると…アレックスとジンの知り合いで、信用できそうな奴は、
ゴメス、ヘレン、アキラ、亜美の四人。一応警戒すべしなのは、ドラゴナス、死神五世、
ムシャ、デスシープの四人。そして注意すべしなのはガーゴイル、ガルムの二人。こんな所か?」

アレックスとジン、どちらも異論は唱えない。

「分かった。とりあえず、信用できそうな四人を中心に捜して行こう。
そして同時進行で、仲間を集める。できる事なら、警戒、注意すべしな奴も、
協力を仰げるなら仰げる。こんな感じか?」
「そうだな……」

これからの行動方針について大まかな指標が立った所で、今度は支給品の確認に移る。
アレックスがサバイバルナイフ、USBメモリ。
ジンが刺突短剣・スティレットといわゆる閃光手榴弾・スタングレネード。
石川昭武がリボルバー拳銃・エンフィールドNo.2とその予備弾。
これらの支給品の中で、三人が最も興味を示した物は、アレックスの支給品の一つである、
外部取付型記憶端末、USBメモリであった。

「これがちょっと気になってるんだよな、USBメモリ。中に何のデータが入ってるのか……」
「空なんじゃないか?」
「そうかもしれない。だけど、見てみる価値はあるだろ?」

中身は気になったが、何にせよパソコンがない現状では何もできないので、
USBメモリに関しては保留とする事にした。


情報交換、支給品の確認も終え、いよいよ三人はこれからの行き先を決めに入る。
地図とコンパスを見ながら三人が協議した結果、一旦北に向かい森を抜ける事となった。
それからの行き先は、森を抜けた時に決める事にし、まずは閉塞感の漂う、
この森から抜ける事を最優先としたのである。

「それじゃ行こうか。よろしくな、ジンに、昭武」
「おう! こちらこそよろしくな、アレックス!」
「一緒に頑張ろうぜ」

三人は手を取り合い、この殺し合いを潰すために協力し合う事を誓い合った。



【一日目黎明/E-4鉄塔】

【アレックス@VIPRPG】
[状態]:全身にダメージ(軽度)
[装備]:サバイバルナイフ
[持物]:基本支給品一式、USBメモリ
[思考]:
0:仲間を集めて殺し合いを潰す。そして脱出する。
1:ジン、石川昭武と行動。まずは森を抜ける。
2:元の世界の仲間と合流?
3:首輪も何とかしたい。
4:USBメモリの中身が気になる。
5:ガルム、ガーゴイルには一応警戒しておく。
※襲撃者(高野雅行)の容姿を記憶しました。
※ジン、石川昭武と情報交換をしました。

【ジン@真・女神転生デビルチルドレンライト&ダーク】
[状態]:健康
[装備]:スティレット
[持物]:基本支給品一式、スタングレネード(3)
[思考]:
0:殺し合いはしない。アキラ達の捜索及び仲間集め。
1:石川昭武、アレックスと行動。まずは森を抜ける。
2:ドラゴナス、死神五世、ムシャ、デスシープ、ガーゴイル、ガルムには注意。
3:襲われたら戦う?
4:USBメモリの中身が気になる。
※参戦時期はレミエル打倒後、元の世界へ帰還した直後です。
※アレックスと情報交換をしました。

【石川昭武@オリキャラ】
[状態]:健康
[装備]:エンフィールドNo.2(6/6)
[持物]:基本支給品一式、.380エンフィールド弾(30)
[思考]:
0:殺し合いからの脱出。
1:ジン、アレックスと行動。まずは森を抜ける。
2:首輪を何とかしたい。
3:ドラゴナス、死神五世、ムシャ、デスシープ、ガーゴイル、ガルムには注意。
4:USBメモリの中身が気になる。
※アレックスと情報交換をしました。




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最終更新:2010年04月29日 21:44
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