声が届いた、届いた人はどう動く?

27話 声が届いた、届いた人はどう動く?

「潮風は嫌ね…毛皮がベタついて」

海岸沿いの幹線道路を、吹き抜ける潮風をその身に受けながら、
突撃銃――H&K G3を携えた狐獣人の少女、ミーウは歩いていた。
数時間前に自分に襲撃を仕掛けてきた緑色の竜を殺害し、
その竜が持っていたG3と水・食糧を奪い取ってから、ミーウは幹線道路を南下していた。
現在の所、まだ他参加者とは遭遇していなかった。

「ん…?」

アスファルトの上を歩くミーウが足を止める。
先端の色が濃い狐の耳がピクピクと動く。
海の方向から聞こえる波の音、反対側の森の方向から聞こえる葉が擦れ合う音、
そして吹き抜ける潮風の音の他に、ミーウの気を引く音が聞こえ始めていたからだ。

『…………のび太と言います! 今、エリアE-1………座礁した船…甲板にい……!
この放送を………いる人、もし殺し合いをする気…なかったら、
お……です! どうかE-1の………まで来て……い!』

自分から見て前方から、微かだが確かに聞こえる何者かの放送。
当然だがまだ定時放送の時刻ではない、だとするならあれは参加者の誰かが、
恐らく拡声器か何かを使って流しているものと思われる。

「のび太…? そういえば名簿にそんな名前があったわね」

放送主のものと思われる「のび太」という名前は名簿に書かれていた、
「野比のび太」と同一であると考えて良さそうだ。
声色からしてまだ少年だろうか、この殺し合いの中、放送で仲間を集うつもりなのだろう。

だが――と、ミーウはのび太なる人物の行動を愚かだと感じる。

「あれじゃ、わざわざ『僕はここにいます、殺しにきて下さい』って言っているようなもんじゃない」

そう、この殺し合いの中で大声を出して自分の存在をアピールするという事は、
正に自殺行為に等しい、軽率かつ浅慮な行動である。
もっともそんな事を分かっているのならあのような事はしないだろうが。
それとも、獲物を誘き出すためにその事を承知の上であえて放送を行っているのか。
だが、どちらにしても、ミーウの取る行動はただ一つ。

「いいわ、行ってあげる。今からね。のび太君とやら…フフフ」

不敵な笑みをこぼしながらミーウが放送の聞こえる方向へと歩き始める。



桃髪ツインテールのセーラー服姿の少女、
永倉萌はE-3の森の中に捨てられていた廃車の中に身を潜めていた。

『…………の…………いま…! 今、エリ………………………した…………にい……!
こ………を………いる人、もし殺し…………る気…なかったら、
………です! どうか………の………まで……………!』

「え? 何…?」

突然、どこか遠くから少年のものと思しき声が響いてきた事に萌が驚いた。
スピーカーか何かの放送機器越しに喋っているのかくぐもった音質の上に、
かなり遠い所から発せられているらしくほとんど何を言っているのか聞き取れない。
そのため辛うじて聞き取れた断片的な単語を全て繋ぎ合わせ、

考え得る限り補完し意味を考えていたが、やはりそれが明確になる事はない。
放送の主が何て言っていたのか少し気になったが、
それが今の萌にとっては行動を起こす理由とはならなかったようだ。

「何て言ってたんだろ。まぁいいや…」

これ以上気にする事もないと判断した萌は、限界まで背もたれを倒した座席に仰向けになり、
部分部分黒ずんでしまっている天井を眺めた。
かれこれ2時間程、こうしてたまたま見付けたこの廃車の中で、
萌は何もせずじっとしていた。
とてつもなく退屈で、だが寝込みを襲われるのを恐れ眠りにつく事もできない。
だが、下手に動き回るより絶対安全だと考えていた。

ふと、窓ガラスの割れた窓から夜空を覗けば満天の星空。

「あ、綺麗」

思えば星空を見上げた事なんて久し振りだと、萌は思った。



『僕は野比のび太と言います! 今、エリアE-1にある座礁した船の甲板にいます!
この放送を聞いている人、もし殺し合いをする気がなかったら、
お願いです! どうかE-1の座礁船まで来て下さい!
僕はこの殺し合いから脱出しようと思っています! みんなで協力すれば、
きっと何とかなるはずです!!』

「な、何だ!? あの船からか…?」

廃精神病院を後にした死神五世は、しばらく南下しエリアE-2の北端辺りで、
非常に鮮明に聞こえる放送を耳にした。

「あの船か…?」

五世の視線の先には暗闇に僅かに浮かび上がる座礁客船。
先程の放送はあの船のある方向から聞こえてきた。

『どうか、僕達を信じて下さい!』

今度は間違いない。座礁客船から何かしらの放送器具を使って、
仲間を集めるため、不戦を呼び掛けるための演説を行っている者がいる。
死神五世が苦い顔をする。一見、良策に思えるがとんでもない。
わざわざ自分の居場所を大っぴらに知らせる危険極まりない行為に他ならない。
放送主――野比のび太、声から察するにまだ少年――は、その事に気付いていないのか、
それとも分かってて、危険を承知の上で行っているのかは不明だが、このまま見過ごす訳にもいかない。

「あんな大きな声出していたら絶好の的になっちまうぞ。
…仕方ねぇな、くそっ」

やむを得ず死神五世は放送主がいると思われる座礁客船を足を進め始めた。



【一日目黎明/D-1平野:幹線道路】

【ミーウ@オリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康、潮風の影響で毛皮にベタつき、E-1座礁客船へ移動中
[装備]:H&K G3(20/20)
[持物]:基本支給品一式、H&K G3のリロードマガジン(20×10)、
トマホーク(3、内2本に血痕付着)、ニコライの水と食糧
[思考]:
0:殺し合いに乗る。
1:E-1座礁客船に向かう。放送を行った者を殺す。
2:可愛い子(女の子優先)がいたら…フフフ。
※参戦時期は本編死亡後です。
※名簿に書かれた主催者と同姓の二人が気になっています。


【一日目黎明/E-3森:廃車内】

【永倉萌@オリキャラ】
[状態]:健康
[装備]:木刀、ハーフキャップヘルメット
[持物]:基本支給品一式
[思考]:
0:殺し合いはしたくない。死にたくない。
1:しばらく廃車の中に隠れる。
※野比のび太による放送は断片的にしか聞き取れていません。
内容も理解できないので放置しておく事にしたようです。


【一日目黎明/E-2平野】

【死神五世@VIPRPG】
[状態]:健康、E-1座礁客船へ移動中
[装備]:脇差、マカロフ(7/8)
[持物]:基本支給品一式、ノートパソコン、マカロフのリロードマガジン(8×5)、島崎隆博の水と食糧
[思考]:
0:仲間と共に殺し合いからの脱出。
1:E-1座礁客船に向かう。放送を行った者を保護する。
2:ドラゴナス、ムシャ、デスシープの三人を捜す。勇者(アレックス)達はとりあえず放置。
3:襲われたら戦う。できる事なら説得してみる。
※能力に制限がかかっている事に気づきました。
※女体化から元に戻れません。





光は希望とは限らない 時系列順 脳筋+うっかり獣人+GOMES
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大切な息子を切り裂いた女 ミーウ そして狐は忍び込む
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最終更新:2010年05月18日 23:56
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