黒い獣の温もり

23話 黒い獣の温もり

黒い毛皮を持ち、血のように赤い瞳をした巨躯の狼、レックスは、
可愛い人間の女性を捜して市街地を歩いて回っていた。
殺し合いにいきなり呼ばれ、意気消沈していた時に、
銀髪の小柄の少女を発見し、生来彼が持っていた性癖が呼び覚まされた。
そして銀髪の少女を捕らえ、路地裏に連れ込み、食べた。
勿論性的な意味で、である。そしてレックスの行動方針は決まった。

即ち、どうせ死ぬのなら、思う存分、欲望のままに若くて綺麗な女――特に人間の女性優先――を、
性的な意味で襲って襲って、襲いまくり、食べて、味わってやろう、と。

次の獲物に対する仕打ちの方法を妄想し、ニヤケ顔になるレックス。
しかし、妄想に耽るレックスの心に一つの暗い思考がよぎる。

――散々好きな事をして、その先はどうするのか?

「……」

ついさっきまでのニヤケ顔も消え、神妙な表情へと変わる黒い狼。
レックス自身は進んで殺し合いをする気もなければ死にたくもない。
だがこの殺し合いは一人しか生きて帰る事はできないという。
どんなに好き勝手できて、どんなに気持ちよくなれても最終的には、死が待つのみ。
誰かに殺されるのか、自分で自分の命を絶つ事になるのか、
はたまた、主催者が言っていた時間切れで死ぬのかは分からないが。
そんな現実が、レックスは甘い空想から一時的とは言え引き戻した。

ぶるぶる、と首を大きく横に振るレックス。

「やめよ……その時はその時だよ」

こんな状況だからこそ、明るく物事を考えようと、レックスは自分に言い聞かせる。
それがいわゆる「現実逃避」だとしても。

「ん」

と、ここでレックスはある物の匂いを嗅ぎ付ける。
意識を鼻に集中しその匂いの正体を思考し、易々と探り当てた。
鋭い白い牙がよく見える程口元を歪め笑みを浮かべた黒い狼は、
匂いの元があると思われる場所へと向かった。



赤みがかった艶やかな髪を持ったグラマーな女性、稲垣葉月は、
月明かりが照らす空き地の、重ねられた土管の上に座り支給品を確認していた。
そして出てきた物はAK-47という、葉月にとってはかなり大型の銃器。
それとAK-47の予備のマガジンが10個だった。
銃器に疎いAV女優である葉月もAK-47の事は多少知っていた。
構造が単純で子供にも戦闘を可能にしたと言われる程、使い勝手が良い上に、
故障が少なく、威力、火力も抜群という、突撃銃のベストセラー。
確かどこかの大名の保有軍で制式採用されていたはず、と葉月は思い出す。

非常にアタリの武器だが、葉月は嬉しい反面、怖くもあった。
確かに強力な武器が手元にあるのは心強いし安心もするがこれでいざ人を撃つのは、
とてもではないが、できそうになかった。
使うならあくまで威嚇用に使いたいが実際その局面になったらどうなるか分からない。

「どうしよう…何でこんな事に」

なぜ自分のような戦闘員でも何でもないただのAV女優がこんな血みどろの殺し合いに参加させられるのか。
いくら考えても答えなど出るはずもなく、また出してくれる者がいるはずもなく、
葉月はただひたすら途方に暮れるのみ。

「!!」

どこから微かに銃声らしき音が響いたのを聞き、葉月は身体を強張らせる。

「怖い…怖いよ…もう誰でもいいから一緒にいてくれる人が欲しい。
何でもするから…お願い、誰か一緒にいてよ…」

膝を抱えて蹲り震える葉月。
一人では不安で、恐怖に押し潰されそうだった。
誰か一緒にいてくれる人が、今の彼女にとって一番欲しい物だった。

「それなら、俺がいてやるよ」
「え?」

突然聞こえた青年の声に驚き葉月が顔を上げる。
目と鼻の先に、黒い大きな狼――レックスがちょこんと座っていた。

「え、あの……」
「……誰でもいいから一緒にいてほしいって。言ってたよね。
俺じゃ、駄目かな? 俺、レックスって言うんだけど」
「レックス、さん? わ、私は稲垣葉月」
「ハヅキ、か。いい名前だね。そんで、駄目かな……俺じゃ。俺みたいな獣で良ければ」
「あなたは…殺し合いには乗っていないの?」
「おいおい、そんなんなら話し掛けずにさっさと君の喉噛み千切ってるよ」
「……」

いきなり現れ、一緒にいてくれるという、レックスと名乗る黒い狼を、
葉月は信じてもいいものかどうか悩んだ。
漆黒とも言える毛皮、フサフサのタテガミ、血のような赤い瞳、
前足後足の鋭い爪、そして鋭い牙。見た目はまさに魔物。言葉を発するという事は妖狼或いは魔狼の種族なのだろう。
しかしその外見とは裏腹に、話口調から察するに割と軽めの性格のようだ。
もしかしたら演技をしているという可能性も否めなかったが、何より、
今この状況で孤独なのを避けたい葉月にとっては、偽物でも良い、
レックスの優しい言葉が、とても嬉しかった。

「え?」

気が付けば、葉月はレックスの身体に抱き付いていた。

「嬉しい…ありがとう、レックスさん」
「い、いや…いいんだよ。あのさ、ハヅキ……」
「ん? 何?」

次の瞬間、葉月はレックスの下に組敷かれていた。
一瞬の早業。葉月は何が起こったか理解が遅れ戸惑っていたが、
すぐ目の前で舌と涎を垂らしながら、自分の顔を覗き込むレックスの顔を見て全てを悟る。

「ま、まさか」
「さっき『何でもする』みたいな事も言っていたよね?
じゃあさ、俺と異種か……じゃない、異種族プロレスごっこしよ♪」
「つ、つまり獣姦、って事よね?」
「そうとも言う」
「そうとしか言わんわ!」

口では抵抗する葉月だったが、内心では喜んでいた。
職業柄、性の営みに対する抵抗感は少なく、また、多少ではあるが、
その手のAVの撮影にも臨んだ事はあったので、獣との体験自体は葉月にとっては何ら拒否反応はない。
何であれ、共に行動してくれる者がいるという事が、彼女は嬉しかった。
黒狼が垂らす涎が葉月の顔や髪にかかり、生臭い息が吹き付けられるが、
葉月は特に気にする事もなく、レックスの顔を両手で挟み込んだ。

「こ、ここじゃ危ないからどこか建物の中で…ね?」
「ハッ、ハッ、そ、そうだねぇ…」



とある民家の和室。畳8畳分の広さのその部屋の中央に敷かれた布団。
その上で、掛け布団の中、息を荒げている一匹の黒い雄の狼と、
赤みがかった髪の女性がいた。

狼、レックスは布団に仰向けになっている女性、葉月の上に覆い被さり、
息を荒げてぐったりと葉月に体重を預け、その瞳はどこか虚ろだった。
一方の葉月も同じく肩で呼吸をし、身体中汗まみれになり、
半分開かれた目はぼーっと天井を見詰めていた。

「悪い……ハヅキ………しばらく離れられないや………完全に膨らんでるから……」
「いいよ………下手に動くより…ここで……じっと…………熱い………」
「ハヅキ…………」

葉月の顔を愛おしそうに舐めるレックス。
ザラついた狼の舌にくすぐったさを覚えながらも、葉月もレックスの頭を撫でた。



【一日目深夜/G-6市街地:垣内家二階和室】

【レックス@オリキャラ】
[状態]:肉体的疲労(大)、脱力感、稲垣葉月と離れられない状態、
稲垣葉月に対する特殊な感情
[装備]:不明
[持物]:基本支給品一式、不明支給品(1~2)
[思考]:
0:とりあえず死にたくはない。
1:……ハヅキ……。
2:女性(人間の女の子優先)を手当たり次第に(性的な意味で)襲う?
3:最悪の場合、自害する。
※稲垣葉月と訳あって1時間弱程離れる事ができません。また、稲垣葉月に対し特殊な感情が芽生え始めているようです。

【稲垣葉月@俺オリロワリピーター組】
[状態]:肉体的疲労(大)、全裸、脱力感、レックスと離れられない状態、
レックスに対する特殊な感情
[装備]:なし
[持物]:基本支給品一式、AK-47(30/30)、AK-47のリロードマガジン(30×10)
[思考]:
0:死にたくない。
1:……レックス……。
2:襲われたらどうする……?
※レックスと訳あって1時間弱程離れる事ができません。また、レックスに対し特殊な感情が芽生え始めているようです。
※衣服は和室内に脱ぎ捨ててあります。




≪支給品紹介≫
【AK-47】
1946年に旧ソ連のミハイル・カラシニコフ技師が設計した突撃銃。
構造が単純でどんな悪条件下でも稼働する堅牢さを誇り、更に操作も簡単。
登場から60年以上経った現在でも現役で、多くの国でコピーが生産され、
「小さな大量破壊兵器」とも呼ばれている。
使用弾薬:7.62㎜×39弾 装弾数:30発






死神も大変なんだ 時系列順 The unexpectedness and it are fatal.
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みきらはうばわれました レックス 殺し合いそっちのけで何やってんだ
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最終更新:2010年05月02日 22:50
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