頑張るヘタレ狐

21話 頑張るヘタレ狐


「何でェェェェ! 有り得ないよ殺し合いなんて!
俺が何したって言うんだよ! そんな悪い事したか俺!
ああもう嫌だよ大学落っこってからロクな事ねぇよ。
バイト長続きしねぇし、親父や御袋とも上手くいかなくなってきたし!
殺せよォォォォ! 俺を殺せェェェェェェ!!
どうせ俺なんか生きてたって一生血みどろのロンドを踊り続けるんだよ!!
もうずっと苦しみの螺旋階段を延々登り続けるんだよ!!
もう全て終わりにしてくれーーーーッ!!!」
「た、たかはらさんおちついて。そんなにおおきなこえだしたらあぶないよ」

水面に月の光をきらきらと反射させ、美しい光景が広がる湖の畔で騒ぐ狐獣人の青年と、
それを慌てて制止しようとする学生服姿の少女がいた。

「ハァ……何でこんな事なっちまったんだよ……」

一通り大声を出し終え疲れたのか、狐の青年――高原正封は、
湖の畔の雑草の上に座り込みガクリと肩を落とす。
それを気遣うように少女――仲販遥が正封の傍に座る。
正封は少し申し訳無さそうな表情を浮かべ遥の方に顔を向ける。

「ごめんな遥ちゃん、殺し合いで初めて会った奴がこんなヘタレでさ……」
「ううん、あやまることないよ。だれだってこわいよ、こんなことになったら…」
「ん…ありがと……」

遥に元気付けられ、少し照れ臭そうに正封が顔を背けた。

二人は湖の畔で遭遇した。正封が畔の草むらに座り込み頭を抱えながら嘆いていると、
背後から遥に声をかけられた。驚いた正封は支給品である小型リボルバー拳銃、
ニューナンブM60を咄嗟に手に持ち銃口を声の主である遥に向けた。
だが、その銃口はすぐに下ろされる事になる。正封が遥の目に涙が浮かんでいるのを確認したためだ。
その他にも身体が小刻みに震え、自分と同じように恐怖に怯えている事が見て取れた。
自分がした事を後悔し、謝罪の言葉と共に遥に声を掛けた。

そして現在に至る。遥の支給品は手斧と手榴弾3個だった。
また、殺し合いの参加者の中に遥のクラスメイトが4人いる事が判明した。

「遥ちゃん……クラスメイトもいるのか……大変だね」
「うん、でも、みんなあまりはなしたことないひとたちばかりなんだ。
だけどクラスメイトとしていままですごしてきたんだもの、こんなころしあいに、
のるわけないって、おもいたい……」
「うん…気持ちは分かるよ」

正封自身はこの殺し合いに知り合いは一人も呼ばれていない。
それは寂しい事ではあるが、前向きに考えれば知り合いの安否を気にする必要がないという事だ。
だが遥は話を聞く限りでは余り親しくはないようだが、
それでも学校生活を共にしたクラスメイトがこの殺し合いに連れて来られている。
遥の心情は察して余りあるものがあった。

「だけど、これからどうしよう、たかはらさん」
「んー……いつまでも湖見ててもしょうがないからなぁ。
地図によりゃ東が北に行けば街に行けるっぽいから…行ってみようか。
下手に動き回るよりどこかに隠れていた方がいいでしょ」
「うん…」

正封と遥はそれぞれの武器を装備した後、デイパックを肩から提げ、
東か北かどちらに行くか話し合っていた時。

「おやおや、湖の畔で恋語らい? ロマンチックだね。
私もあったな~アインとそういう時期が」

突如聞こえたやや低めの女性の声。それに驚き二人は声のした方向を向く。
そこにはぎらりと光る刃を持った太刀を携えた、露出の多い格好の狼獣人の女性が立っていた。
鋭い眼光を宿した瞳が、一般人などではなく幾多の死線を掻い潜って来た猛者だと言う事を、
純粋な一般人である正封と遥の二人に告げた。

「まあ、突然会ったのに悪いんだけど――」

狼女性のその言葉に、正封はとても嫌な予感を感じた。
そしてその予感はすぐに現実となる。

「――死んで」
「遥ちゃん、走れ!!」

正封が遥の手を掴み東の方向の雑木林へ全速力で駆け出した。
次の瞬間、二人が数瞬前まで立っていた場所を狼女性の太刀による薙ぎ払いが通り抜けた。

「うあ゛ーーーーー遥ちゃん頑張って走れェェェェ!!」
「わ、わかったよたかはらさん!!」
「チッ、逃がさないよ。おい狐! 大人しく狼である私に食われちまいな!」
「性的な意味なら喜んで食われるけど絶対そういう事じゃないよね!?
お断りします! 時代は変わりました! 今や狐が狼を食う事もある時代です!」

必死に走りながら背後を追走する狼女性に減らず口を叩く正封。
しかし焦りの余りか手に持っている拳銃の事をすっかり失念してしまっていた。
遥もまた然り、デイパックの中に入っている手榴弾の存在をすっかり忘れていた。
二人共近接武器を扱う狼女性を撃退できる術は持っていたが完全に忘れてしまっていたのである。



狼女性――シェリー・ラクソマーコスは市街地で青髪の剣士と一戦交えた後、
地図上に記載されていた自分の現在位置から近い所にある湖に向かった。
そのまま市街地で獲物探しを続けても良かったのだが、
発想を逆転させあえて文明圏以外で探してみる事にしたのだ。

そして湖の畔で、白いカッターシャツを着た狐獣人の青年と、
学生服姿の人間の少女を発見した。

明らかに一般人、楽勝だとたかをくくったシェリーは少し声を掛けてから襲い掛かった。
だが直前に察知され東方向の雑木林に逃げ込まれてしまう。
すぐに追撃を開始したが前方を走る二人――いや先頭を走る狐の青年に、
少女が半ば引き摺られているような形だが――は案外足が早く、
おまけに周囲の木々や深夜の暗い視界も相まって容易には追いつけそうにない。

「ふふ…悪いけど、こっちも伊達に長い事剣士やってる訳じゃないんだよ」

完全に獲物を補足したシェリーは、笑みを浮かべながら前方の二人を追走した。



三人が行く先にあるものは、現在、二匹の雄の狼が激しく絡み合っている、男娼館。
肉欲の男の園に向かう男一人に女二人。待ち受けるものとは?



【一日目深夜/C-6森】

【高原正封@俺オリロワリピーター組】
[状態]:健康、恐怖、焦燥、仲販遥の手を引っ張っている、シェリーから逃亡中
[装備]:ニューナンブM60(5/5)
[持物]:基本支給品一式、38sp弾(30)
[思考]:
0:殺し合いはしたくない。とにかく生き残る。
1:狼女性(シェリー)から逃げる。
2:仲販遥と行動する。
3:どこかに隠れたい。
※俺オリロワ開始前からの参戦です。
※仲販遥のクラスメイト(銀鏖院水晶、ケトル、鈴木正一郎、トマック)についての情報を多少得ました。

【仲販遥@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康、恐怖、焦燥、高原正封に手を引っ張られている、シェリーから逃亡中
[装備]:手斧
[持物]:基本支給品一式、手榴弾(3)
[思考]:
0:死にたくない。高原さんと一緒にいる。
1:狼女性(シェリー)から逃げる。
2:クラスメイトの皆については保留。
※本編開始前からの参戦です。

【シェリー・ラクソマーコス@FEDA】
[状態]:健康、高原正封、仲販遥の二人を追走中
[装備]:太刀
[持物]:基本支給品一式
[思考]:
0:面白そうなので殺し合いに乗る。
1:目の前の狐(高原正封)と少女(仲販遥)を追跡し、殺す。
2:とりあえず見付けた参加者から殺していく。
3:ドーラ・システィールについては保留。
※参戦時期は少なくともコバルトを倒した後です。
※クリス・ミスティーズの名前と容姿を記憶しました。



≪支給品紹介≫
【ニューナンブM60】
日本警察の拳銃として余りに有名な小型リボルバー拳銃。
1960年に開発、警察庁の制式採用されて以来、警察以外の公安系公的機関、
入国警備官や税関、海上保安庁などにも採用されており、刑務官の非常用装備にも指定されている。
使用弾薬:38sp弾 装弾数:5発

【手斧】
片手で扱える小型の斧。

【手榴弾】
手で投げて使う小型爆弾。安全ピンを外し目標に投げ付けて爆発させる。






どんな状況でも自分を高潔に保て 時系列順 死神も大変なんだ
どんな状況でも自分を高潔に保て 投下順 死神も大変なんだ

GAME START 高原正封 男達の花園
GAME START 仲販遥 男達の花園
兄の苦悩 シェリー・ラクソマーコス 男達の花園

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最終更新:2010年04月25日 23:31
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