ジャイアニズムの終焉

18話 ジャイアニズムの終焉


エリアE-5の森の中。青い髪をツインテールに纏めた、
半竜人の美しい少女が一人歩いていた。
いや、厳密に言うと彼女は今でこそ女性の姿、肉体であるが、
実際は「彼」、雄の飛竜なのだ。

名前をドラゴナス。魔王軍四天王の一角にして相応の実力を誇るが、
天然かつ子煩悩な性格である。
現在の「彼女」は半竜人の、ほとんど全裸の少女の姿、「女体化」の姿だった。

「殺し合いか…とんでもない事になったなぁ。
アレックスやムシャとかもいるみたいだし、これからどうしようか」

最後の一人しか生きて帰る事はできないというバトルロワイアル。
自分以外にも敵対している勇者アレックスとその仲間数人、
そして大切な友人かつ仲間である、自分と同じ四天王のムシャ、死神五世。
魔王軍のモンスターのデスシープがこの殺し合いに参加させられている事実に、ドラゴナスは溜息をつく。
溜息の理由はそれだけではない。


「技とか全部使えなくなってるなんて…ねーよ。
っていうか何で女体化してんの俺。戻れないし」

主催者であるリリア・ミスティーズが言っていた通り、魔法や特殊能力の類が全く使えない。
発動しようとしても何か見えない力に阻まれてしまう。
爪や牙を使った格闘系の技なら使えるようだが。
こうなると「もしもの力」や、アレックスが使っているような復活系魔法も駄目であろう。
今までは死んだりしても魔法やギャグ補正などで復活できたが、今回はそれもできないようだ。
それに、女体化したままで元の飛竜の姿に戻る事もできない。
翼は健在なので空を飛ぶ事はできるし筋力もそのままなので特に困る事はないが、
恐らくこれも主催側の工作によるものだろうとドラゴナスは考える。

ドラゴナスの右手には黒塗りの刃を持ったコンバットナイフが握られている。
これと、デイパックの中に入っている一升瓶に入った焼酎が彼女の支給品だった。
ドラゴナス自身は殺し合いに乗る気はなかったが、
襲われた時のために身を守る武器は欲しかったのでナイフは嬉しく感じていた。

ガサガサッ。

「! 誰かいるのか?」

茂みから物音が聞こえ、ドラゴナスが物音のした方向を向く。
明らかに人の気配を感じ、奥にいるであろう人物に声をかけてみる。

「誰かいるなら出てきてくれ。俺は殺し合いには乗っていない」
「……」

茂みをかき分けて出てきたのは、がっしりとした体型の少年だった。
少年は警戒している様子でドラゴナスの方を見ながら口を開く。

「ほ、本当に殺し合いに乗ってないのか?」
「ああ。乗ってないよ。安心しろ」

とりあえず少年を安心させようとするドラゴナス。
その甲斐あってか少年は警戒を解き表情を柔らかくした。
そして互いに自己紹介を始める。

「俺はドラゴナスってんだ」
「俺は剛田武、ジャイアンって呼ばれてるぜ」
「ジャイアンね。まあよろしく――」

握手でもしようとドラゴナスが手を差し出そうとしたその時、背後から殺気を感じた。
次の瞬間、ドラゴナスは上空に飛び立っていた。そして。

ダダダダダダダダダッ!

「がっ、う、ぐがっ、あが、がっ、がっ」

機関銃の銃声と共に剛田武少年が奇妙なダンスを踊り始めた。
身体中に小さな穴が空き鮮血を噴き出し剛田武は強制的に踊り続ける。
そして銃声が止み、計32発の9㎜パラベラム弾を全身まんべんなく受けた剛田武は、
ただの大きな血肉の塊と化し、地面に崩れ落ち血溜まりを作って二度と動かなかった。

「チッ…一人逃がしたか」

銃口から煙を噴く短機関銃、IMIウージーを携えながら、
頭に迷彩模様のバンダナを巻いた紫色の毛皮を持った獣足の犬獣人が現れる。

「まぁいい、一人仕留められたからな」

空になったウージーのマガジンを交換しながら犬獣人――ガルムはニヤリと笑う。
彼は異世界ヴァルハラの帝国軍に所属するデビルであった。
とあるダムの守備に当たっていたのだが、デビルチルドレンの手によって倒され、
魂を封印された――はずだったが、気がつけばこの殺し合いに参加させられていた。
射殺した少年の荷物を漁り、中からリボルバー拳銃、コルト トルーパーとその予備弾、
更に水と食糧を取り出し、自分のデイパックの中に押し込む。

「見た事ない武器だが、中々使えるじゃないか」

そう言いながらガルムは手にしたウージーを眺める。
彼の世界、ヴァルハラに銃器の類は存在しないのだが添付されていた説明書を読み、
おおよその扱い方は理解した。

「デビルチルドレンの二人と時の塔の巫女もいるようだ…。
丁度いい、今度こそ仕留めてやろう、ククク、フハハハ」

笑い声を上げながらガルムは移動を始めた。



上空では難を逃れたドラゴナスがどこへ行くともなく翼を羽ばたかせていた。

「危ない所だった…だけど…」

ドラゴナスの心に罪悪感と後悔の念が浮かぶ。
会ったばかりとは言え、剛田武と名乗った少年を見殺しにしてしまった。
先程の音は機関銃、剛田少年は蜂の巣にされてしまったと見て間違いないだろう。
なぜ少年を連れて逃げる事ができなかったのか、
咄嗟の事だったので仕方ない、と言えばそうかもしれないが、
それでも助けられたかもしれないのに、助けなかったのは事実だ。

「……」

胸を締め付けられるような思いを感じながら、
ドラゴナスは空を飛び続けた。



【剛田武@ドラえもん   死亡確認】
【残り41人】




【一日目深夜/会場上空(E-5周辺)】

【ドラゴナス@VIPRPG】
[状態]:健康、女体化、飛行中、罪悪感
[装備]:コンバットナイフ
[持物]:基本支給品一式、焼酎
[思考]:
0:殺し合いからの脱出。首輪の解除。
1:魔王軍の仲間を探す。
2:アレックスとその仲間に会ったらその場その場で対応。
3:襲われたら戦う。
4:どこへ行こうか。
※どこへ向かっているかは不明です。
※能力に制限がかかっている事に気づきました。
※女体化から元に戻れません。


【一日目深夜/E-5森】

【ガルム@真・女神転生デビルチルドレンライト&ダーク】
[状態]:健康
[装備]:IMIウージー(32/32)
[持物]:基本支給品一式、IMIウージーのリロードマガジン(32×9)、
コルト トルーパー(6/6)、.357マグナム弾(30)、剛田武の水と食糧
[思考]:
0:殺し合いに乗る。
1:デビルチルドレン(ジン、アキラ)と時の塔の巫女(亜美)は見つけたら必ず殺す。
2:目についた他参加者を殺していく。
※参戦時期はアニメ7話で封印された後です。



※E-5一帯に銃声が響きました。
※E-5森に剛田武の死体とデイパック(水と食糧抜きの基本支給品一式入り)が放置されています。



≪支給品紹介≫
【コンバットナイフ】
戦闘用ナイフ。頑丈な作りで切れ味も鋭い。

【焼酎】
一升瓶に入った焼酎。ラベルが貼られていないので銘柄は不明だが、
安物らしく飲むと悪酔いする可能性有。

【IMIウージー】
1951年に開発された堅牢な短機関銃。
部品の多くがプレス加工を多用して生産性を高めると共に、
分解・整備が容易なよう設計されている。
金属製の折り畳みストック付き。
使用弾薬:9㎜×19弾 装弾数:32発

【コルト トルーパー】
1953年に開発されたコルト社発の.357マグナムリボルバー。
同じ357マグナムの傑作リボルバー・パイソンが登場したことで、
やや影の薄い存在となってしまった。
使用弾薬:.357マグナム弾 装弾数:6発



BAD POLICE RETURNS 時系列順 悪魔と共に
BAD POLICE RETURNS 投下順 悪魔と共に

GAME START ドラゴナス 覚められない悪夢
GAME START 剛田武 死亡
GAME START ガルム It is a nightmare inside even if awaking.

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最終更新:2010年05月03日 03:05
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