彼の者は、賢者である。
彼の者は魔法使いより賢く、僧侶よりも賢い。
彼の者は、様々な武器を使いこなす。
彼の者は、おのれの全てに自信と誇りを持っていた。
勇者より与えられた、「うおのめ」という名前以外には。
賢者うおのめは、物憂げな表情を浮かべていた。
「殺し合いねえ……。なんでこんなことになったんだか。
まあ、すでに始まってしまったことを嘆いても仕方ない。
今は、いかにこの状況から脱出できるかを考えるか」
多少落ち込んではいるものの、うおのめは冷静であった。
賢者とはすなわち、悟りを開いた者。そう簡単に心を動かすことはないのだ。
「あの少女に逆らうには……。まずはこのやっかいな首輪を外すことからしなくちゃならないか……。
魔力は感じないが、逆にそれがやっかいだな。僕の専門分野じゃないってことになる。
僕一人で無理ならば、他人の力を借りるしかないか。
他の人たちも望んでこの場にいるわけじゃなく、僕と同じように無理矢理連れてこられたはずだ。
だったら殺し合いに消極的な人も少なくないはず。協力してくれる可能性は、そんなに悪いものじゃない」
あくまで冷静におのれのやるべきことを見いだすと、うおのめは迷いのない足取りで歩き始めた。
◇ ◇ ◇
数分後、順調に移動を続けていたうおのめの耳に、他者の声が届く。
それは、女性の甲高い悲鳴だった。
「むっ、誰か襲われているのか!」
表情を引き締め、うおのめは悲鳴が聞こえてきた方向へ一直線に走り出す。
程なくして、彼の目に倒れた少女の姿が飛び込んできた。
最初は何者かに襲撃されたものと考えたうおのめだったが、状況を見るにどうやらこの暗闇で足下が見えず転んでしまったらしい。
背中のカバンがちゃんとしまっていなかったようで、中身が周囲に散乱している。
「大丈夫ですか、お嬢さん」
「は、はい。ありがとうございます」
少女に近寄り、紳士的に手を差し出すうおのめ。少女は素直にその手を取り、立ち上がる。
「あ、あの、私は朝比奈みくるといいます。よろしければ、そちらのお名前も聞かせてもらえないでしょうか」
「いえ、名乗るほどの者ではありませんよ」
みくると名乗った少女の要望を、うおのめはやんわりと拒否する。
もちろん、自分の恥ずかしい名前を知られたくないからである。
「それより、荷物が散乱してしまっていますね。
あまりゆっくりしていられる状況でもありませんし、早く片づけてしまいましょう。
もちろん、僕も手伝います」
「すいません、何から何まで。本当にありがとうございます」
「いえ、いいんですよ」
申し訳なさそうなみくるに笑顔で答えると、うおのめはさっそく散乱したみくるの荷物を拾い集め始めた。
「ん? これは……」
そんな中、うおのめはある物体に目を留める。
「ただの紙切れ? なんでこんなものが……」
「ああ、それですか? 私もさっき見たんですけど、意味のわからない言葉が書いてあるだけで……。
ひょっとしたら、何かの暗号なのかも知れません」
「暗号か……どれどれ」
うおのめは紙を開き、そこに書かれていた言葉を声に出して読み上げる。
「メガンテ」
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【一日目・深夜/F-4・森】
【朝比奈みくる@涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 死亡】
【うおのめ@ドラゴンクエスト4コマ漫画劇場 死亡】
※二人の支給品は、メガンテの爆発で消滅しました
最終更新:2010年07月26日 17:12