もしもムシャが修羅になったら

11話 もしもムシャが修羅になったら








エターなった










めでてぇwwww














「めでたくねーよ! 今から始まるんだよ!!」

おっと失礼。えーと…ム……何とかさん。

「ムシャだ!」

あーそんな名前だったね。ごめんごめん、じゃ改めて…。






深夜の森の中に、周囲を古いレンガの壁で囲まれた広場があった。
ただの広場ではない、様々な「器具」が置かれていた。
首を固定し大きな刃を落として首を切断する器具。
縄を首にかけぶら下げる器具。
仰向けに固定し生きたまま臓物を取り除くための台――。

ここは処刑場。
その名の通り重罪人を死に至らしめるための刑具が数多く設置された場所。
刑具はいずれもかなり使い込まれた形跡があり、赤黒い染みが付着している物も多い。
心なしか、血の臭いや腐臭が広場には漂っていた。

純和風の鎧に身を包んだ男、ムシャは断頭台の傍で自分のデイパックの中身を確認していた。
そして取り出したのは鍔のない真っ直ぐな刀身を持った刀――直刀。
鞘から抜き出し月明かりに刀身を照らせば、ぎらりと光を跳ね返す。
剣術を得意とするムシャにとっては適性のある支給品であった。

次にムシャは名簿を取り出し中身に目を通す。

「アレックスにその仲間…ドラゴナスと死神五世もいるのか。あと…デスシープか」

名簿の中に7人、敵対する勇者とその仲間、自分と同じ魔王軍四天王の二人と魔王軍の中ボス級キャラの名前を発見する。
特にドラゴナスと死神五世は、空気扱いを受ける事も多かったが平時は実に仲良く付き合っていた。
名簿を閉じてデイパックに戻し、しばしムシャは考え込む。

殺し合い――リリア・ミスティーズと名乗る異様な雰囲気の女が開催する狂気の殺戮ゲーム。
いつものように鍛錬の後、就寝したはずが気がつけばこの状況だ。
首には爆弾内蔵の首枷がはめられ、誰も死なない状態が丸一日続けば全員死刑。
生きて帰れるのは最後まで生き残ったたった一人だけ。
否応なしに他者との殺し合いを強要される、まさに生き地獄。

ムシャは考える。
この殺し合いで自分はどうするべきか。
同じ四天王であり大切な仲間であるドラゴナス、死神五世、
そして魔王軍の一員で面識もあるデスシープ。
この三人を手に掛ける事など、まず無理。
勇者であるアレックスと、その仲間であるブライアン、ヘレン、ゴメスは、
いざとなれば始末する事など容易いし何の躊躇もない。
それは他の見ず知らずの参加者も同じ事。

それならば――。




源しずかは不気味な器具が幾つも設置されている広場に一人ぼっちにされ、涙目になっていた。
ただ、涙目になっている理由はそれだけではない。
彼女の大切な友達――ドラえもんが、首輪を爆破され殺された光景を目の当たりにしたためだ。

「ドラちゃん……どうして、あんな酷い事を……!
何でこんな事するの…!?」

殺し合いという恐ろしいゲームを人々に強制するリリアと名乗った女性に怒りがわく。
と同時に、この殺し合いに呼ばれている自分の友人達、
野比のび太、剛田武、骨川スネ夫の事が心配になった。
特にのび太はドラえもんとは強い絆で結ばれていた。今どうしているだろうか。
開催式での彼の悲痛の叫びはしずかの耳にも届いていた。

「のび太さん…武さんにスネ夫さん。早くみんなと会いたい。
…それにしても、ここ、何なの…?」

ギロチンや首吊り台など数々の処刑器具の展示場のような処刑場。
日本の東京で平穏に小学生として暮らしていたしずかにとって、
この場所は異界にも等しい場所であった。
さらに時刻は深夜、月明かりのみが刑場を照らしているという雰囲気が、
彼女の心細さをさらに増幅させる。
兎にも角にも一刻も早くこの場所から離れたかった。
しずかは出口を探して刑場を歩いて回った。

「……え?」

ふと、妙な音を耳にし、しずかの足が止まる。
ガチャ、ガチャ、という、今までの人生の中でも聞いた事のない音。
そしてその音はどんどん近付いてくる。前方からだ。

「な、何…?」

そしてその音の正体が明らかになる。
しずかの前方数メートルに、しずかにとっては
歴史の教科書や図書室の本の挿絵などでしか見た事ないような、
鎧武者の男が立っていたのだ。
手には月明かりを反射しぎらりと光る刀。
男は顔に面らしきものを被り表情は窺い知れないが、
明らかに尋常ならざる殺気を放っていた。
直感的にしずかは危険を察知し、踵を返して走って逃げようとした――が。

ザシュゥッ!!

ゴトリ。

ドサ。

それはまさに刹那の出来事。
しずかの首が地面に落ち、次に切断面から血の噴水を噴き上げながら胴体が倒れた。

「……やっちまった」

鎧武者――ムシャはたった今殺した見知らぬ少女の亡骸を横目に見る。
よく見てみれば、恐らくまだ小学生くらいの子供のようだ。
こんな小さな子供を何の躊躇もなく殺したと同じ四天王のドラゴナスや死神五世に知られれば、
きっと自分は激怒されるだろう。失望されるだろう。

「だけど…俺はもう決めたんだ。
ドラゴナス、五世、デスシープ。お前らを生かすために、
俺はこのゲームに乗る…ッ!」

ムシャの決意は既に固まっていた。
修羅になるという決意。
仲間のために、血ぬられた道を行く決意を。



【源しずか@ドラえもん  死亡確認】
【残り43人】



【一日目深夜/D-6処刑場】

【ムシャ@VIPRPG】
[状態]:健康、決意
[装備]:直刀(血痕付着)
[持物]:基本支給品一式
[思考]:
0:魔王軍の仲間を生き残らせる。それ以外は容赦なく殺す。
1:魔王軍の仲間とはできれば遭遇したくない。



≪支給品紹介≫
【直刀】
鍔のない、真っ直ぐな刀身を持った刀。




不意討ちは時々高難易度 時系列順 海賊と竜、反対の思考
不意討ちは時々高難易度 投下順 海賊と竜、反対の思考

GAME START ムシャ 主のため、自分のため、仲間のため
GAME START 源しずか 死亡

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2010年04月29日 21:46
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。