考える伯父

9話 考える伯父

黒い毛皮を持った人狼――の姿をした青年、レオン・ミスティーズは、
エリアB-1の海が見える平野に立ち尽くしていた。
そしてついさっきまでの一連の出来事を思い出す。

「……リリア……」

この殺し合いの主催者であり自分の姪にあたるリリアの名を呟き、
手を顔に当て渋い顔をして溜息をつく。

「…まさかこんな事になるとは…」

あの監獄城を脱出した後、正式に王位に就いたリリアだったが、ある日突然失踪してしまった。
国民や家臣、一緒に脱出したティアやバンは心配していたが、
リリアの実兄であるクリスから、レオンは大体の真相は告げられていた。
リリアは日々の政務に嫌気が差し城の地下にある自分専用の特別室に引き籠ってしまったと言うのである。
元々、自由奔放かつ唯我独尊なリリアの性格を考えればある意味無理もない事なのだろうが、
とにかくこのままでは国民に合わせる顔がない上に政治が成り立たなくなるので、
日々、クリスやレオン、一部の重臣達による説得が続けられた。
だが監獄城の一件で、生来の常人離れした身体能力に加え魔王としての力まで身に付けたリリアの説得は困難を極めた。
一体何度生死の境を彷徨ったか、何度三途の川や花畑を見たか、何度リハビリに苦しんだか分からない。
それでも決死の説得を続けた結果、遂にリリアは政務に復帰してくれた。

――と思っていたのだが。

首にはめられた金属製の首輪を触ると、冷たく無機質な感触が毛皮に覆われた指先から伝わってきた。
あのオープニングの時に誰かは分からなかったが、この首輪を爆破されて殺された。

――実を言うとリリアの姿もよく見えなかったのだが、あの落ち着いた物腰を感じさせながらも、
底冷えするような冷酷さを感じさせる女性の声は聞き間違えるはずがない。

首輪を爆破された者の親しい知り合いと思しき少年の悲痛な叫びと慟哭は今でもはっきりと覚えている。
この首輪はつまりこの殺し合いを確実に成立させるための枷であるらしい。
今自分は二足歩行の狼の姿だから、ある意味首輪はお似合いかもしれないと自嘲しつつ、
尻尾を大きく横に振りながら、これからの事をレオンは考える。

無論、彼に殺し合いに乗り、積極的に殺人を犯そうという思考はない。
いくら自分の姿は獣そのものだとは言え、心まで獣に染まってはない。
いやそれより、主催者の伯父として、明らかに理不尽なこの殺し合いを止めるべきだと考えた。
そしてリリアになぜこのような馬鹿げた事をしたのか問い質す必要がある。
更に、全員が全員殺し合いに乗るとは考えにくい、恐らく殺し合いを拒否する者や怯えて隠れる者もいるだろう。
そういった者を保護、あるいは仲間にしたい。

おおよその行動方針が決まった所でレオンは自身の支給品の確認に移る。
デイパックを開け、中からまず名簿を取り出して開いて見てみる。

「! クリスもいるのか…」

名簿には自分の甥でありリリアの実兄、クリスの名前も記されていた。

「だが…あいつもできた男、そして兄だ。恐らく殺し合いには乗らないだろう」

名簿をしまい、次に地図とコンパスを取り出し、現在位置を割り出す。
周囲の地形や方角から察するに、自分が今いる場所は恐らくエリアB-1。
すぐ近くには明かりがぽつぽつ灯る道路、そして道路の先には街並みが見える。
おおよその現在位置は割り当てたので今度は不定支給品の確認に移る。

「? これは何だ…?」

出てきた物はレオンには全く馴染みのない物だった。
シグザウアーSP2340――.40S&W弾を使用する扱いやすい部類に入る自動拳銃である。
当たり武器だがレオンは銃など見た事がないので、手に取りあちこちを観察する。
説明書が添付されていたので、開いて目を通す。

「むぅ……これは武器なのか……成程……」

一通りの使い方は分かったので、SP2340を改めて手に取り、セーフティーロックを外し、
スライドを引いて初弾を装弾、そして海に向けて両手で構え、トリガーを引いた。

パァン!

乾いた音と同時にSP2340の銃口から火が噴き、
レオンの両手から肩に軽い反動が伝わった。

「成程な、上手く使えればかなり威力を発揮しそうだ」

初めての射撃を体験したレオンは、SP2340を右手に持ったまま市街地目指して歩き始めた。
現在、レオンは何も着ていないため、ズボンにP2340を差し込んで携行するという事ができない。
かと言ってデイパックの中に一々入れるといざという時取り出すのが面倒なためだ。

「……」

道路を歩いている途中、レオンの中に一つの心配事が生まれた。
自分とクリスは主催者と同姓で、名簿にもしっかり記載されている。
主催者と同姓の者が参加者の中にいれば、普通は主催者と何らかの関わりがあるのではと思われるだろう。
悪ければ主催側からの回し者と誤解され、厄介な事になるかもしれない。
これから仲間を集めていこうとするレオン、そしてどこかにいるクリスにとって余り良い展開になるとは思えない。
だがしかし、だからと言って諦めてしまいう訳にもいかない。

「何とか説得して信じて貰うしかないな」

誰かと遭遇した時、主催者と同姓である事を質問された時の事を考え、
少し頭を痛くしながらレオンは歩き続けた。


【一日目深夜/B-1平野:幹線道路】

【レオン・ミスティーズ@ムーンライトラビリンス改造版】
[状態]:健康
[装備]:シグザウアーSP2340(12/12)
[持物]:基本支給品一式、シグザウアーSP2340のリロードマガジン(12×5)
[思考]:
0:殺し合いを止め、リリアと会う。
1:クリスを捜しつつ、仲間を集める。
2:首輪を外す手段も探したい。
3:襲われたらそれなりに対処はする。
※参戦時期は本編終了後です。
※拳銃の使い方を一通り覚えました。


※B-1一帯に銃声が響きました。


≪支給品紹介≫
【シグザウアーSP2340】
シグザウアーが開発したポリマーフレーム(プラスチック)製の自動拳銃。
使用弾薬:.40S&W弾 装弾数:12発



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最終更新:2010年04月19日 02:16
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