逃げない、投げない、諦めない

8話 逃げない、投げない、諦めない

ジンは激怒した。必ず、このふざけた殺し合いを潰し、脱出してやると心に誓った。
彼は異世界ヴァルハラにて、親友であるアキラと共にデビルチルドレンとして、
ヴァルハラ支配を目論む帝国軍とその皇帝と戦い、勝利し、ヴァルハラに平和をもたらした後、
アキラともう一人の仲間、レナと三人で元の自分の世界に帰還したはずだった。
だが、気が付けば首に冷たい首輪をはめられ、リリア・ミスティーズと名乗る女性から、
「殺し合いをしてもらう」と宣告されたのだ。

首輪の威力を見せてやると、黒と赤の毛皮を持ったガルムに似た獣人と、
赤いブレザーを着た女子高生と思しき少女に運ばれてきたのは柱に拘束された青いタヌキのような生き物。
口にガムテープを張られ、首には自分達のと同じ首輪がはめられていた。
知り合いらしい自分と同年代の眼鏡を掛けた少年が駆け寄ろうとしたがバリアのようなものに阻まれてしまった。
そしてドラえもん(少年がそう呼んでいた)の首輪は爆破された。
暗闇のホールに響く少年の慟哭。
それを聞いてジンの怒りの炎は更に燃えあがった。


「…俺は殺し合いなんかしない! こんなのおかしいだろ!」

E-3の森の中で、赤を基調とした服を着た少年、ジンは怒気が籠った口調で言う。
元々正義感が強く、曲がった事が嫌いな彼にとってこの殺し合いは受け入れられるはずもない。

「俺も協力するよ、ジン」
「おう! 頑張ろう昭武!」

そしてジンの傍にいるのは灰色のブレザーを着た青い狼獣人の青年、石川昭武。
ゲーム開始後程なくして遭遇した二人は互いに殺し合いに乗っていない事が分かるとすぐに仲間になった。

「そういえば、まだ互いに支給品見せてなかったよな。
これから一緒に行動するんだし隠し事はナシにしようぜ」

昭武の提案によりお互いの支給品を見せ合う事になった。
ジンがデイパックから取り出したのは刺突用短剣であるスティレットと、
強烈な閃光を放ち対象を無力化させるスタングレネード3発。
そして昭武の方はリボルバー拳銃、エンフィールドNo.2とその予備弾30発であった。

「一応、どっちも当たりって感じだな」
「つっても俺銃なんて扱った事ないしなぁ…説明書読めば何とかなるか」
「支給品の確認は終わったけど、昭武はこの殺し合いに知り合いはいるか?」
「え? どれどれ…」

ジンに言われ名簿を開き確認する昭武。
しばらく名簿に書かれた名前を黙読していたが、少し安心したような表情を浮かべ名簿を閉じた。

「知らない名前ばかりだ。どうやら俺一人だけらしい」
「そうか…俺は……な、何!?」
「どうしたジン」

名簿を見ていたジンが声を上げる。
自分と同じくデビルチルドレンとして共に戦った、そして大親友でもあるアキラ、
時の塔の巫女である亜美、帝国軍のデビルであるガーゴイルとガルム。
その四人の名前が名簿には記載されていた。

「知り合いがいるのか」
「ああ…アキラに亜美、それと帝国軍の奴らも…」
「帝国軍?」
「ああそうか、昭武は知らないんだよな。えーと…」

ジンは自分がこの殺し合いに参加させられる前の出来事を昭武に話した。
異世界ヴァルハラの事、パートナーであるランドの事、
帝国軍との戦いの事、様々な出会いや別れ……。

「ふぅん…そんな事がねぇ」
「それで…ヴァルハラを平和にして、アキラ達と元の世界に戻ったと思ったら、
殺し合いに参加させられていたんだ」
「その…アキラと亜美と、ガーゴイル、ガルムだったっけ?
どういう奴なんだ? 疑うようで悪いけど信用できるのか?」

昭武がジンに尋ねる。

「アキラは俺の親友で、いつも冷静な奴なんだ。
亜美はさっきも言った通りヴァルハラの時の塔の巫女で、優しいけど芯のある強い女の子さ。
どっちも殺し合いには乗らない、と思うけど、
ガーゴイルとガルムは……」

ガーゴイルは青い竜のような身体付きの、大きな翼を持ち空を自由に飛び回る事のできる、
帝国軍空挺兵団の主力デビル。氷系の魔法を得意としている。
ガルムは頭に布を巻いた獣足の狼(犬?)獣人の姿をしたデビルで、炎系の魔法を使っていた。
どちらも過去に戦った事のあるデビルである。

「うーん…こいつらは注意した方が良いかもなぁ」
「そうか……」

帝国軍は既に壊滅したはずだが、ガーゴイルとガルムは元々温厚とは言えない種族である。
主催者は魔法や特殊能力は一切使えないと言っていたが、
それでもガーゴイル、ガルムはそれを補って余りあるだけの身体能力は持っている。
生き残るためなら平気で他人を殺す可能性が非常に高い。
この二人と接触する場合は十分な注意が必要であるとジンは考えた。

「それでもって、これからどうするジン」
「まずはアキラ達を捜しながら、同じ考えの仲間を集めよう。
みんなで考えればこの首輪外す方法も見付かるかもしれないだろ?」

そう言いながらジンは首にはめられた首輪を指差す。
昭武も自分の首輪に触れ、溜息を漏らした。

「さてと、これからどこへ行くか…アキラや亜美がどこにいるかも分からないもんなぁ」
「おい、ジン。あれ見てみろよ」
「え?」

昭武が何かを発見し、ジンに見るよう促す。
それは満月の浮かぶ夜空に僅かに影が浮かび上がる鉄塔だった。

「鉄塔だな…あそこに行ってみよう」
「分かった」

ジンと昭武の二人は鉄塔が見える方向に向かって歩き始めた。




【一日目深夜/E-3森】

【ジン@真・女神転生デビルチルドレンライト&ダーク】
[状態]:健康、E-4鉄塔に移動中
[装備]:スティレット
[持物]:基本支給品一式、スタングレネード(3)
[思考]:
0:殺し合いはしない。アキラ達の捜索及び仲間集め。
1:石川昭武と行動する。鉄塔へ行ってみる。
2:ガーゴイル、ガルムには注意。
3:襲われたら戦う?
※参戦時期はレミエル打倒後、元の世界へ帰還した直後です。

【石川昭武@オリキャラ】
[状態]:健康、E-4鉄塔に移動中
[装備]:エンフィールドNo.2(6/6)
[持物]:基本支給品一式、.380エンフィールド弾(30)
[思考]:
0:殺し合いからの脱出。
1:ジンと行動する。鉄塔へ行ってみる。
2:首輪を何とかしたい。



≪支給品紹介≫
【スティレット】
刺突に特化した錐状の短剣。

【スタングレネード】
破片を飛散させずに大音響と閃光を発する手榴弾で、
主に室内にいる人間の視覚と聴覚を一時的に麻痺させる効果がある。

【エンフィールドNo.2】
1932年にイギリス軍制式となった中折れ式のリボルバー拳銃。
使用弾薬:.380エンフィールド弾 装弾数:6発


≪オリキャラ紹介≫
【名前】石川昭武(いしかわ・あきたけ)
【年齢】17
【性別】男
【職業】高校生、サッカー部所属
【性格】明るく何事も一生懸命取り組むタイプ、正義感が強い
【身体的特徴】濃い青色の狼獣人、引き締まった身体付き
【服装】灰色のブレザー、中に白いYシャツ、赤いネクタイ
【趣味】友人と遊びに行く事、TVゲーム
【特技】動体視力が良好
【経歴】平凡な家庭で育つ
【備考】日本風異世界国家出身



大切な息子を切り裂いた女 時系列順 考える伯父
大切な息子を切り裂いた女 投下順 考える伯父

GAME START ジン Triple axel
GAME START 石川昭武 Triple axel

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2010年04月29日 01:10
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。