ゆとり乙

夜の闇の下、ぽっかりと広がる原っぱの真ん中に美希はポツンと座りこみ、支給品の説明書を読んで首を傾げた。
彼女の支給品は一見単なる携帯電話にしか見えない。だが、説明書によるとこの支給品は携帯電話ではなく、
【禁止エリア指定機】らしい。読んで字の如く、次の放送で宣言される禁止エリアの場所をこちらから指定できるようだ。
一回の放送で指定できる禁止エリアの数はたった一つだけ。計三回使えるようだから、
全て使い切るつもりであれば三個まで自分の好きな位置を禁止エリアにする事が出来る。

でも、見た目は完全に携帯電話だ。というより、【禁止エリア指定機】という名前以外は携帯そのものである。
携帯本来の機能は使えないのだろうか。美希は電源を入れてみる。
一通り美希が思いつく限り番号をプッシュし続けてみたが、どこにもかからなかった。

「むうう……携帯の機能は使えないみたいなの」
がっかりする美希。もしかしたら、とほんの少しだけ期待を抱いてしまった事を後悔する。

それにしてもどうしようかなあ……

美希は再び首を傾げた。禁止エリア指定機と言われても、正直これが何の役に立つのかいまいち分からない。
役に立つどころか、侵入すると首輪が爆発して死んでしまう禁止エリアを増やすなど、
美希にはむしろ悪い事のように思える。

「こんなのより……もっと使えるものの方が良かったの……」

乗るつもりはないが、何か武器のようなものの方が良かった。
ケツホルデスからゲームの説明を聞いた時は、テレビか何かの企画だと早とちりし、
それならばやる気を出して頑張ろうと思っていたのだが、そんな気持ちはやる美という少女が
吹き飛ぶ光景を目の当たりにした瞬間、跡形もなく消え去った。これは企画などではない。
本物の死のゲームだと、理解出来たからだ。

今は、ただただ不安なだけだ。こんな暗い原っぱに突然放り出されて、爆弾入りの首輪を巻かれて、
24時間以内に最低一人を殺さなければいけない殺し合いを強いられる。
これから先自分がどうなってしまうのか、考えるとどうしようもなく気が滅入ってくる。

今は、ただただ不安なだけだ。こんな暗い原っぱに突然放り出されて、爆弾入りの首輪を巻かれて、
24時間以内に最低一人を殺さなければいけない殺し合いを強いられる。
これから先自分がどうなってしまうのか、考えるとどうしようもなく気が滅入ってくる。

「うう……私は人殺しになるなんて嫌なの……一人しか生きられないなんて嫌なの……
 でも、だからといって、やっぱり死にたくもない……」

美希は手の内にある携帯に目を落とした。こんなもので、どうやって生き残れというんだ。
無理だ。無理に決まっている。とにかく、まずは仲間になってくれる人を探さなければならない。
全てはそれからだ。幸いな事に、ここには事務所の友達が何人もいるらしい。

ううん、良く考えたら別に幸いな事にじゃないの。
皆まで参加させられているなんて、とってもとっても不幸な事なの……

【一日目/深夜/G-8 原っぱ】
【星井美希@アイドルマスター】
[状態]:健康
[装備]:携帯電話(禁止エリア指定機)
[所持品]:基本支給品一式(パン残り2個)
[思考・行動]
基本方針:人殺しになるのは嫌だけど、死ぬのも嫌
1:頼りになる人を探す

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最終更新:2010年02月19日 21:53
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