心霊少年の受難

幽霊の存在をあなたは信じるだろうか?そう質問された場合、多くの人の答えは否だろう。 では何故か?実際には見えないから、科学ではその存在を証明できないから、等が主な理由である。
しかし、本当にそれだけで幽霊の存在を否定する事はできるのだろうか?答えは否である。 目に見えないというのなら、電気や空気も目には見えないが、それらの存在を否定する者はまずいないだろう。 科学で証明できないから存在を否定するのも少々横暴と言える。現在の科学では、地球にどうやって最初の生命が誕生したのかすら解明できていないのである。
幽霊が存在するかどうか、現段階で判断を下すのは難しい。確かに存在を証明できる材料は無いが、存在を否定できる材料もまた存在しないのだ。
現代科学で解明できない奇怪な存在や現象を幽霊、または心霊現象と呼ぶ、というのが現段階における最も適切な答えだろう。
これは、そんな奇怪な存在…幽霊に関わった一人の少年の物語である。

「はぁ…はぁっ… く…狂ってる…一体何なんだ!?」
ひどく混乱、疲労した様子で、肩で呼吸をする一人の少年。
少年の名は鬼形 礼。彼はある日まで、どこにでも居るごく普通の中学生だった。 彼の人生が狂い始めたのは、彼の家に「恐怖新聞」と書かれた一枚の新聞が届いた日からである。 恐怖新聞には幽霊に関する記事や、近い未来について書かれた記事が載っており、その記事に書かれた事は必ず現実に起こってしまうのである。 だが、恐怖新聞の怪奇はこれだけでは無かった。恐怖新聞にはポルターガイストと呼ばれる霊が乗り移っている。
その影響で、恐怖新聞を読んだ者は、一回読むごとに寿命が100日ずつ縮まってしまうのだ。
しかもポルターガイストの目的は、恐怖新聞で宿主を死に至らしめることであり、毎晩零時になる度に新聞が送られてくるのだから、正に恐怖新聞である。
鬼形もまた、この狂気の殺し合いに参加させられた者の一人だ。なぜ彼はこれほど混乱しているのか。
その理由を知るには、20分ほど時間を遡る必要がある。


20分前。彼が送り飛ばされたのは海浜公園だった。
この時点でも彼は混乱していた。幽霊に取り憑かれるとはいえ、それまでは中学生としての日常を送ってきたのだ。 いきなりこんな状況に放り出されて、混乱するなという方が無理だろう。だが、5分もすると彼の気持ちは落ち着いていた。

(どうせあの鬼達はポルターガイストの仲間だろう…今度は僕ばかりか、あんなに大勢の無関係な人達まで巻き込んで殺し合いをさせる気か…)
そう考えると、次第に鬼に対する怒りの気持ちが混乱を上回っていった。何としても自分がこの殺し合いを止めなければ。 元々正義感の強い性格の彼は、そう考えをまとめ、ベンチに座り自分のディバックの確認をし始めた。
その時だった。彼を現在の混乱に陥れた原因が現れたのは。

「きみ…ちょっといいかな?名前を聞かせてほしいんだけど・・・」
そう鬼形に話しかけてきたのは、腰まで伸びた深緑の長髪が特徴的な一人の少女だった。

「…僕は鬼形 礼。あなたは?」
「私は八重野 撫子。…鬼形くん、きみの知っている事を話してくるかな?」
その後二人は鬼や、他の参加者に関する情報を話し合った。
二人とも鬼に関する情報は一切得られなかったが、参加者の中に「秋姫 すもも」と「結城 ノナ」という撫子の友人が二人居る事が分かった。
特に、すももとは幼い頃からの親友らしい。

「そうですか…秋姫さんは本当に仲のいい友達なんですね」
「ああ。私にとって、かけがえの無い親友だ。すももには傷付いて欲しくない。もうこれ以上すももが嫌な思いをするのを見たくないんだ…
「八重野さん…」
「だから…私はすももの為だったら何だってやる」
『何だってやる』その言葉を聴いた瞬間、鬼形は嫌な予感がした。その言葉を放った直後、撫子の目の色が変わったからだ。
「鬼形くん…ひとつお願いがある。鬼形くんには本当にすまないと思っている。けど…これしか方法が無いんだ…」
次の瞬間、鬼形の予感は最悪の結果で的中した。

「鬼形くん…すももの為に…」




「死んでくれないか」

そういった直後、撫子はデイバックを手に取り、中から何か取り出した。それは刃渡り30cmほどの刃物だった。 そして、迷いを断ち切るように首を横に激しく振ると、刃物を全力で鬼形に向かって振りかざす。
「うわぁっ!?…ま、待った!落ち着くんだ八重野さん!」
彼女は普段、薙刀の訓練を受けている。薙刀の感触に慣れている八重野にとって、短い刃物の扱いには慣れていなかった為か、鬼形は辛うじて攻撃をかわす事に成功した。

「うるさい!君に何が分かる?すももがこの半年間、どれだけ苦労したと思ってるんだ?やっとの思いで石蕗と結ばれたんだ! それなのに、こんな訳の分からない殺し合いのせいですももが死ぬなんて、私には耐えられないんだ!!」
「待つんだ!奴らが大男の首を爆破するのを、君も見ただろう!?仮に秋姫さんが生き残ったとしても、そんな奴らが素直に帰してくれるとは…わぁっ!?」
「じゃあ、君は他に方法を知ってるのか!?何も分からないくせに無責任な事を言わないでくれ!!」

今のところ鬼形にとって、撫子が薙刀の訓練を受けている事がかえって幸いし、攻撃をかわせている。 だが、日常的に訓練を積んでいる撫子と、特別に何か運動をしている訳でもない鬼形では、先に鬼形の体力が尽きるのは時間の問題だろう。
(何とかして逃げなければ…でもどうすれば…そうだ、あれが使えるかもしれない!)

鬼形は近くに設置してあったゴミ箱を、撫子に向かって思い切り蹴飛ばした。中に入っていた空き缶や空き瓶が派手に散乱し、それに驚いた撫子が一瞬動きを止める。
鬼形はその一瞬の隙に、デイバックから細く平たい何かを取り出し、撫子に向かって投げつけ、全速力で逃げ出した。
「あっ、待っ…」
撫子が鬼形を追いかけようとした瞬間、鬼形の投げた物がバチバチと激しい音と共に空中で爆発した。鬼形に支給された物、それは玩具店などで売られている花火セットだった。鬼形はデイバックの中で、その中の爆竹にライターで火を付け、撫子に投げつけたのだった。
驚いた撫子の動きが止まっている隙に、鬼形は自分でも信じられない程のスピードで逃げ続ける。人間は追い詰められると、驚異的な力を発揮するというのは本当らしい。
撫子が何か言っているが、構ってなどいられない。鬼形は方向も気にせず、とにかく逃げ続けた。

【一日目/深夜/E-6/海浜公園】
【八重野 撫子@ななついろ★ドロップス】
[状態]健康
[装備]ヴォルケンの剣@マイティーハート
[道具]基本支給品一式、ヴォルケンの剣@マイティーハート
[思考]
基本:すももを生き残らせる
1:すもも以外の参加者を殺す
2:結城とは出来れば戦いたくないが・・・



それから何分走り続けたのだろう。気づいた時には、鬼形は現在いる病院の前に立っていた。
「ハァ・・・ハァ・・・ちょうどいい・・・少し休もう。このままじゃ体が持たない」
鬼形は呼吸を整えた後病院に入り、目に付いた病室のドアを開けると、ベッドの上に寝ころんだ。
走り続けたことによる肉体的疲労、いきなり見ず知らずの少女に襲われたことによる精神的疲労、ベッドの心地よさから来る安心感から、鬼形に睡魔が襲ってきた。

ガシャァァァァァン

「な、何だ!?」
しかし、その眠気は玄関の方向から聞こえた轟音により吹き飛ぶことになる。鬼形は急いでベッドから飛び上がり、玄関に向かって走る。
病室の中でやりすごすという考えもあった。だが、じっとしているだけでは、またさっきのように襲われるかもしれない。ならばこちらから仕掛けるまで。
殺し合いに乗る気はないが、黙って殺されるほどお人よしでもない。そう考えながら、玄関に到着した彼が目にしたのは驚くべき物だった。
「な・・・これは一体!?」
鬼形は、先程の轟音から、相手は爆発物を所持している人物だと思っていた。だが、そこにいたのは爆弾魔などでは無かった。 いや、それは人間ですらなかった。玄関に立っていたのは、全身を鋼鉄で覆われた2足歩行のサイ。それは、とある世界でアイアンライノスと呼ばれている凶暴な魔物だった。
「化け物・・・!?」
鬼形の存在に気づいたアイアンライノスは、荒い鼻息を噴出しながら、鬼形めがけて突進を開始した。
「うわっぁあ!?」
突進をかわされ、鬼形を仕留め損ねたアイアンライノスは、そのまま壁に激突し壁に大穴を空けた。
コースが単純な直進だったために何とかかわせたが、あれ程のスピードの突進をもう一度かわすのは無理だろう。
「こ・・・殺される・・・!」
鬼形が死を覚悟したその時、玄関からいきなり声が聞こえてきた。

「君、早く逃げて!コイツは俺が何とかする!」
玄関に目を向けると、水色のダウンジャケットを着た20代半ば程の男が立っていた。
一撃でコンクリートの壁を破壊するような化け物相手にいったい何をする気なのだろう。
鬼形がそう思っていると、男はデイバックから取り出した黒いケースを、アイアンライノスが破壊したドアのガラス片へと向けた。
すると、ガラス片から突然ベルトのような物が飛び出し、男の腰に装着された。
「変身ッ!」
男がそう叫びケースをベルトの中央に装着すると、今度は男の体に二つの影が重なり、男の姿を龍の影を纏う赤き戦士 仮面ライダー龍騎へと変えた。
呆気に取られている鬼形をよそに、龍騎が腰のケースから一枚のカードを取り出し、左腕に装備された龍の顔を模した装飾に挿入する。

――SWORD VENT――

「ッシャア!」
一帯に機械的な音声が流れたかと思うと、次の瞬間どこからともなく青龍刀が現れ、それを手にした龍騎が短い叫びと共にアイアンライノスに斬りかかっていった。
龍騎が振りかざす青龍刀がアイアンライノスの身体に触れる度に、激しく火花が飛び散り、屈強な魔物が悲痛な声をあげる。
「ダァッ!」
龍騎の繰り出した一際強力な青龍刀の一撃を受けたアイアンライノスが、2mほど後方に吹き飛ばされ、そのまま壁に叩きつけられた。

――ADVENT――

「こ・・・今度は何なんだ!?」
もはや鬼形は自分の目の前で起きている現象が理解できなかった。先程と同じように、龍騎がカードを左腕の装飾に挿入する。
すると今度現れたのは真紅の体躯を持つ巨大な龍であった。その名を無双龍ドラグレッダーという。
ドラグレッターは龍騎に向かって突進してくるアイアンライノスを、その強靭な尻尾を叩きつけて吹き飛ばす。

――STRIKE VENT――

再び龍騎がカードを挿入すると、龍の頭部を模した手甲が右腕に装着された。
「ハァァァァァ・・・ダァァァッ!!」
そしてその右腕をアイアンライノスに向けて突き出すと、それに合わせたかのようにドラグレッダーの口から灼熱の火球が吐き出された。
なんとか立ち上がったアイアンライノスは火球をかわそうとするが、あまりにも気づくのが遅すぎた。
火球がアイアンライノスに命中した直後大爆発が発生。炎が治まった時には、アイアンライノスの鋼鉄の巨体は跡形も無く消えていた。
戦いを終えたドラグレッターはガラス片の中へと姿を消し、龍騎もまた変身を解除し、元の青年の姿に戻っていた。

「大丈夫?怪我はなかっ・・・」
「く、来るな!騙そうとしたって、そうはいかないぞ!」
青年は人のよさそうな笑みを浮かべながら鬼形に話しかけてくるが、信用はできない。
先程の撫子のような、どこにでもいそうな少女ですら、殺し合いに乗っていたのだ。訳の分からない鎧を身に纏い、更にはあんな化け物を操る男の言う事など、信用できるものか。

「何言ってるんだよ!俺は心配して・・・」
「嘘だ!みんな僕を騙して殺す気なんだ!嫌だ・・・僕に近寄るなぁぁぁぁ!!」
「ちょ、ちょっと!」
男の制止も聞かず、鬼形は病院を飛び出した。
男は急いで鬼形の後を追いかけるが、病院の外に出た時、すでに鬼形の姿を見失っていた。

「参ったな…何とかしてあの子を探さないと・・・」
先程まで龍騎に変身していた青年、城戸 真司は頭をポリポリと掻きながら、そう呟いた。
名簿を確認したところ、真司の知人である秋山 蓮、北岡 秀一、浅倉 威の名を発見した彼にとって、あの少年を見つける事は最優先事項だった。
(蓮と北岡さんが殺し合いに乗っているかどうかは分からない・・・
 けど、浅倉にだけはあの子を近づけるわけにはいかない・・・浅倉だったら絶対にこの殺し合いに乗ってるだろうからな)
お人好しの仮面ライダーは、非力な少年を救出すべく走り出した。

【一日目/深夜/D-5/病院】
【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎(サバイブのカードは他の参加者が持ってます)
[状態]健康
[思考・行動]
基本:殺し合いを止める
1:さっきの子(鬼形)を探す。
2:仲間になる人を探す。

もう今日だけで何m走ったのだろう。真司から逃げるべく再び全速力で走り続けた鬼形は、体力を使い果たし、デパートの駐車場で大の字になっていた。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ お、おい!ポルターガイスト!出てこい!今日はお前に聞きたい事が山ほどあるんだ!」
鬼形が怒鳴りつけると、何もない空間から、青白い男の顔だけがゆっくりと浮かび上がった。
彼こそが恐怖新聞を送り続ける悪霊、ポルターガイストだ。彼は鬼形の言葉に、不機嫌そうな声で答えた。

「聞きたい事だって?それはこっちの台詞だ!ありゃ一体何なんだ!?
 あのサイの化け物は!?あの妙な鎧は!?極めつけはあの龍だ!!鏡に霊が宿るのは珍しい事じゃないが、あんな化け物が憑いた鏡なんて見た事がないぞ!!」
鬼形が聞こうとした事を、先に全部質問されてしまった。一体これはどういう事なのか。

「とぼけるな!この殺し合いは、お前があの鬼達と共謀して仕組んだ事なんだろう!?」
「何を言ってる!俺はあんな連中は知らんぞ!」

訳が分からなかった。ポルターガイストも知らないというのなら、奴等は果たして何者なのか。
「言いたい事はそれだけか?それじゃあ俺はもう消えるからな。
 おっと、それから言い忘れてたが、今日は何故か俺の力が弱まっているらしい。今日は恐怖新聞を届ける事はできない。分かったな」
「お、おい待て!ポルターガイスト!!」
ポルターガイストは鬼形の言葉を無視し、幻のように消えていった。
その後は何度呼びかけようと、ポルターガイストが返事を返す事はなかった。、

鬼形はだんだん自分が馬鹿らしくなってきた。何故自分ばかりがこんな不幸な目に合うのか。
見ず知らずの少女に襲われ、サイの化け物に襲われ、鎧の戦士に襲われそうになった。
ただでさえ、自分は恐怖新聞のせいで、毎日寿命が100日づつ縮まっているというのに。
ポルターガイストの企みだと思い込んでいた殺し合いが、奴とは無関係だった。
ならば、何も自分が殺し合いを止める必要など無いではないか。
今思い出せば、あの医者の格好の鬼は、生き残ればどんな願いも叶えると言っていた。ならば自分に憑いた悪霊を追い払ってもらうのもいいかも知れない。

「そうだ・・・なんでこんな事に気付かなかったんだ・・・僕が全員殺して願いをかなえる・・・それですべて解決するじゃないか」
そう呟き、立ち上がった鬼形の瞳には、狂気という名の悪霊が取り憑いていた。

【一日目/深夜/B-4/デパート】
【鬼形 礼@恐怖新聞】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、花火セット+ライター@現実(通常花火×36 ねずび花火×5 ロケット花火×3 爆竹×4)
[状態]健康、錯乱状態
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗る
1:他の参加者を殺して、強力な武器を手に入れる。
2:撫子、真司に対する恐怖感。

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最終更新:2009年10月18日 16:09
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