Princess and Knight

ぽたぽたと、少しずつではあるが血は傷口から溢れていく。
先程シェリーは見知らぬ男子高校生の襲撃を受けたものの、これを撃退した。
だがその時負った傷を治療する道具も知識も、シェリーは持ち合わせてはいなかった。
「ハァ…つ、疲れましたわ……」
元より体を動かす事はあまり好きではなかったシェリーだったが、なんとか南へ南へと歩いていた。
そして歩き続けた彼女の目の前に広がっていたものは、大きな湖だった。
シェリーは重い脚をなんとか動かすと、湖のほとりにある小屋までたどり着き、ドアを開けた。

そして、そこでシェリーの意識は闇に閉ざされた。



滝口優一郎は困惑していた。
自分はプログラムに巻き込まれていたのは覚えている。
クラスメイトの旗上忠勝と共に行動していたのも、相馬光子に出会ったのも覚えている。
そこで相馬光子と言葉を交わし、見張りを旗上と交代し仮眠をとって……

眼を覚ますと、そこは見知らぬ大広間。
そしてそこでまたもや、殺し合いをしてもらう、と見ず知らずのメガネの男に言われて、それに反抗した桃色の髪の女の人の首輪が爆発した。
そしてあれよあれよと言う間に目の前が真っ暗になり――
気づいたら今度は見たこともない掘立小屋の中にいた。
考えれば考えるほど、何もかもが分からない。
滝口優一郎という少年に、今の状況を理解しろというのは酷な話だった。

そうして滝口がまとまらない思考を繰り広げている時、ドアが開かれた。
滝口の目の前に現れたその少女は、滝口に気付くこと無く、ばったりと倒れた。



「…はっ?」
「あ、気がついた?」
シェリーが目を覚ますと、そこには見た事のない少年が心配そうな顔でいた。
いつの間にか、傷を負っていた自分の右腕には不格好ながら包帯が巻かれていた。
さっきまで感じていた痛みも、結構引いている。
「…あなたは誰ですの?」
「僕は滝口優一郎。城岩中学校の生徒だよ……大丈夫、僕は殺し合いに乗ってないから。」
当初はシェリーも警戒していたのだが、目の前の滝口という少年は本当に殺し合いに乗っているとは思えなかった。
彼のデイバックから出てきたのはごく普通の救急箱――治療に使ったのだろうか、一部包帯や薬が足りなかった――と、週刊少年ジャンプという分厚い漫画雑誌だった。
なるほど、これで殺し合いに乗ると言うのも無茶がある。
「で、滝口?あなたは何故私を助けたんですの?」
「なんでって……僕は殺し合いには乗っていないし、君は怪我をしていた。それに僕の支給品がこの救急箱だったってことは…助けないわけにはいかないよ。」
「……」

滝口の言葉の一つ一つに、嘘や偽りは一切なかった。
それだけではない。
滝口の言葉の端々、表情、シェリーの傷に施された処置から、シェリーは滝口優一郎という少年の優しさを感じていた。
だがそれは同時に、甘くもある。
この場は殺し合いの場なのだ。
シェリーは先程、見ず知らずの男子高校生に襲われた。
幸い武器があったため撃退には成功したのだが、それゆえに慎重に動いていたのは確かだった。
そんな際に出会った、滝口優一郎という少年。
彼の優しさは、シェリーの心を打っていた。


「シェリーちゃん?」
「…な、なんですの?」
「傷が痛むの?」
シェリーの顔を覗き込む、心配そうな表情にシェリーはふ、と小さく微笑んだ。
「…まだちょっと動くのは大変ですけど、大丈夫ですわ。心配してくれてありがとう。」
「いや…そんな」
小動物のように眼をそらした滝口を、シェリーは一瞬可愛いと思ってしまった。

――そうだ。

シェリーの頭に一つの考えが、浮かんだ。



「滝口、ところであなたはこれからどうするつもりなのですの?」
「え……えっと、どうしようかなあ。」
「もしすることが決まっていないのでしたら、私と一緒にお父様を探して頂けません?」
「お父…様?」
滝口も、口ではどうしようかと言ったものの、実際本心では七原や杉村と言った信頼のおける友人や、言葉をかわしたクラスメイトである相馬光子を探したいと思っていた。
だが、目の前のけがをした少女の頼みを断ることは滝口にはできなかった。

「…うん、分かったシェリーちゃん。一緒にお父さんを探そう。」
「ありがとう!それじゃあ…」
そう言い立ち上がろうとしたシェリーだったが、やはりまだ血を失って間もない彼女は立ちくらみを起こしよろけた。
それを滝口は慌てて支えてしまっていた。
「あ、そ、その……」
「……」
滝口の顔が熟したトマトのように赤く染まっていく。
その様に、シェリーは軽く微笑むと、そっと滝口の手をとった。

「…おんぶして頂けません?」



姫は騎士を伴い、父を探す。
父はどこにいるのか、騎士は頼れるのか、全ては姫には分からない。
だが、姫は迷わない。
父の作ろうとしている『楽園』へと向かうために。
小さな姫と、彼女に見込まれた騎士は、戦場を歩く。





【E-6湖/1日目午前】
【シェルトラン・ボルティアーノ@カオスウォーズ】
[状態]:左腕に軽い銃創(応急処置済み)、SP消費(小)、滝口におんぶされている。
[装備]:ハッピースタッフ@カオスウォーズ
[道具]:基本支給品一式(アイテム確認済み、武器になりそうなものはありませんでした。)
[思考]1:お父様はどこですの?
   2:滝口に興味。

【滝口優一郎@BATTLE ROYALE】
[状態]:健康、胸がどきどき、シェリーをおんぶしている。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、救急箱@忍たま乱太郎、週刊少年ジャンプ@銀魂
[思考]1:シェリーのお父さんを探す。
   2:本当は七原、杉村、相馬光子を探したい。
   3:い、意外とやわらかい……



【支給品情報】

【救急箱@忍たま乱太郎】
滝口優一郎に支給。
保健室に常備されているごく普通の救急箱だが、時代が時代なので現代チックな薬とかはそんなにないと思われる。

【週刊少年ジャンプ@銀魂】
滝口優一郎に支給。
坂田銀時の愛読している漫画雑誌。
結構分厚い。



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最終更新:2011年07月24日 02:05
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