悪狼はじっくりと牙を研ぐ

第四十六話≪悪狼はじっくりと牙を研ぐ≫

F-2に多く存在する民家の一つ「浜田」という表札が掲げられた二階建ての住宅。
浜田家二階の寝室兼書斎の部屋で、革張りのアームチェアに座りながら、
机の上に置かれていた煙草で一服しているのは、不良狼警官・須牙襲禅である。
この浜田家は彼が拠点として身を潜めている家だった。

「もう昼の12時か。早ぇなぁ」

気付けば今時刻は午前11時54分。
運営側からの放送が行われるまで、後6分を切った。
この6時間で、何人が脱落し、今生き残っているのは何人だろうか。

「あいつ、まだ生きてっかな? もしかしたらもう死んでるかもしれねーな」

襲禅が考えているのは、自分と同じくこの殺し合いに呼ばれた、
知人の女性・新藤真紀の安否。
普段一緒に食事に行ったり(真紀に奢らせるのがほとんど)、
銃の使い方を教えたり(なぜか真紀はちゃんと聞いていた)、
暇な時に身体を重ねさせて貰ったり(ゴムを付けないと絶対にさせてくれない)。
そんな仲である。
こんな殺し合いの中、彼女はどのように行動しているのだろうか。
もしかしたらもう殺されているかもしれない。

「んー、まあ、心配なんじゃねぇけどな。
あいつ死ぬと色々、欲求不満になった時とかに発散しにくくなるし……。
しっかしあいつ、絶ッッ対、生で入れさせてくれねーんだから。
口や手でやってもらう時はゴム付けなくてもいいんだけどよ。
警戒し過ぎだっつーの。たまには生でヤらせろっつーの。
一回中に出したぐれーでガキなんか出来やしねーって……」

とても警官の制服を着ている人物が言う内容とは思えない愚痴を零しながら、
不機嫌そうに煙草を吹かす襲禅。

「まあ、そいつぁさておき……」

襲禅は机の上に置かれた三丁の自動拳銃に目をやる。
ベレッタM92、トカレフTT-33、コルト
ベレッタはまさにハンドガンのベストセラーとも言うべき名銃。
9㎜×19㎜という、最もポピュラーな弾薬を使用し、世界各国に流通している。
国内でも生産され、警察機関や地方守備軍、民間の護身用など、幅広く親しまれている。
トカレフは7.62㎜×25という貫通力の強い弾薬を使う。
安全装置が無いのが最大の特徴と言うべきか。
この拳銃は国内では生産されておらず、国内に出回るのは、密輸品がほとんどだ。
ギャングや盗賊が好んで使用しており、国内では悪い意味で有名である。
コルトM1900。自動拳銃の完成形と言われるコルトM1911(通称ガバメント)の始祖とも言える銃。
M1911は大口径の45ACPだが、このM1900はそれよりも小口径の38ACPを使用する。
ハイパワーガンが好みな彼はトカレフの方が気に入っているようであった。

そして再び時計に目をやる襲禅。放送まで残り3分。
デイパックから地図と名簿、メモ帳と筆記用具を取り出し、机の上に置く。
放送で発表されるのは、その時刻までの新たな死者の名前と人数、
それと、侵入すると首輪が作動し、最悪爆発するという禁止エリアの場所。
前者はあと何人残っているか把握するのに必要、後者は自分の命に関わる重要な事。
特に後者は聞き逃すと、後々面倒な事になってしまう。

「ちゃんと聞いておかなきゃあな……」

襲禅はそう言いながら短くなった煙草を灰皿に押し付け、
台所の冷蔵庫内に入っていた缶ビールを空け、口の中に流し込む。
炭酸と仄かな苦みが、襲禅の咥内に広がった。

放送まで、残り1分。
死者の氏名と人数、そして禁止エリアが発表される。
ゲーム開始以後、初めての運営側からのリアクションである放送を耳にして、
生存者達は何を感じ、何を思うのか。
また、これからの行動方針に影響を及ぼすのだろうか。
その答えは、後40秒後に始まる第一回放送が終わってからでなければ、分からない。


【一日目/昼前/F-2/浜田家二階 書斎兼寝室】

【須牙襲禅】
[状態]:健康
[装備]:トカレフTT-33(6/8)
[所持品]:基本支給品一式、ベレッタM92(15/15)、ベレッタM92の予備マガジン(15×9)、
トカレフTT-33の予備マガジン(8×9)、コルトM1900(7/7)、コルトM1900の予備マガジン(7×9)、
石井剛夫の水と食糧、瀬山はるかの水と食糧
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗る。人を撃つのを楽しむ。
1:放送を待つ。
2:真紀の奴は……まあ、ほっとくか。
3:女憲兵(松宮深澄)は次に会ったら確実に仕留める。




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最終更新:2009年10月10日 19:43
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