桂川八重の異変

第四十四話≪桂川八重の異変≫

水色ショートヘアのセーラー服姿の少女、桂川八重は、
身体中の傷を手当するために、市街地に存在する病院を目指していた。
彼女の身体は今、満身創痍と言っても過言では無い。
山頂付近の鉄塔の下で襲撃に遭い、胸元と脇腹に被弾、
襲撃者から逃れようとして急斜面を滑落し、全身に擦り傷を負い、左足首も捻挫した。
更に衣服も血塗れ、土汚れだらけでしわくちゃである。

「ぐっ……!」

時折、力の入れ方を間違えて、銃創と捻挫した足首に激痛が走る。
それでも、歯を食い縛って一歩一歩進んで行く。
現在、八重はE-2の道路の上にいた。森林地帯からようやく文明圏へ足を踏み入れたのである。
拾った木の枝を杖代わりにして、アスファルトで舗装された道路を進んで行く。
この道路を辿って行けば、市街地に着く。そうすれば、病院はもうすぐそこだ。
しかし、ここに来て、八重の身体にある異変が起きていた。

「ゼェ……ゼェ……喉、乾いた……」

息を荒げながら、掠れた声で呟くと、八重はデイパックの中から水を取り出し、
ペットボトルの口から自分の咥内へ水を流し込む。
しかし、既に三分の一にまで減っていた中身の水は、すぐに全量八重の体内に注がれた。

「……ッ!」

空になったペットボトルを乱暴に投げ捨てる八重。
今飲んだ水が最後の水だった。もう八重は水を持ってはいない。
と言うのも、彼女は数分前から、以上に喉の渇きを感じるようになっていた。
しばらくは我慢していた八重だったが、次第にとても自分の意思でどうにか出来るレベルを超えてきた。
そして欲求の赴くまま、自分の基本支給品の水を飲み続けた結果、
ついに水が底を突いたのである。

「ハァ、ハァ、どうし、よう……何で? 何でこんなに喉が渇くの?」

なぜこうも異常な程、喉の渇きを感じるのか。
いや、渇きだけでは無い。悪寒もするし、熱っぽい。頭がはっきりしない。
傷口から雑菌が入り、感染症を起こし掛けているのだろうか。
もしそうならば、もはや事態は最悪を通り越している。

「冗談じゃ、無いわよ……! ただでさえ、怪我が痛くて、参ってるって、るのに……!」

苛立ちが籠った口調で八重が言う。
当人は気付くはずも無いが、今現在の八重の表情は鬼気迫る、と言うより鬼の形相そのものであった。
突然理不尽極まりない殺人ゲームに出場させられ、
何もしていないのに襲われて大怪我をし、更に謎の感染症の疑いあり。
これで自分の置かれている状況に怒りを覚えない方がおかしい。

「ハッ、ハァーーッ……み、水、水飲みたい……」

もはや八重の頭の中には「病院へ行く事」と「水を飲む事」の二つしか無かった。
とにかく、ひたすら病院に向かって突き進む八重。
杖を付きながら、一歩一歩、確実に歩みを進める。
しかし、周囲を警戒する心の余裕など、今の彼女には無かった。
そして彼女は気付く事は無かった。
自分がいるエリアのすぐ隣、エリアE-3に、豊富に水を湛えた貯水池があるという事に。
気付く事無く、八重はふらふらと市街地を目指す。


【一日目/昼前/E-2道路】

【桂川八重】
[状態]:胸元、脇腹に貫通銃創(命に別条無し)、身体中に擦り傷及び打撲、
左足捻挫、衣服が土汚れだらけ、悪寒、発熱、認識力低下、喉の渇き、G-2病院を目指し移動中
[装備]:無し
[所持品]:基本支給品一式(水を全て消費)、S&Wスコフィールド(1/6)、45LC弾(54)
[思考・行動]
基本:病院……水……。
1:病院、に……。
2:水……水が欲しい……。
[備考]
※襲撃者(志水セナ)の姿を確認していません。
※足を負傷しているため、移動速度は遅くなります。
※感染症の疑いがあります。適切な治療を受けなければ非常に危険です。




Back:043陽が昇る 時系列順で読む Next:045BROOKHAVEN HOSPITAL
Back:043陽が昇る 投下順で読む Next:045BROOKHAVEN HOSPITAL
Back:019何この火力差ふざけてるの? 桂川八重 Next:[[]]

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年10月10日 14:52
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。