錯綜する犠牲者

第三十九話≪錯綜する犠牲者≫

殺し合いという状況の中、山頂に登り、危険を顧みず、和平を呼び掛けを行った三人の参加者。
だが、皮肉にもその呼び掛けにより一人の襲撃者が来襲し、三人は無残にもその命を散らした。
彼らが行った呼び掛けは、確かに他の参加者にも届いていた――。


『皆、どうか俺の話を聞いて欲しい!
殺し合いなどやめるんだ! 皆で力を合わせて、この狂ったゲームから脱出する方法を考えよう!!』


E-6温泉旅館。旅館内で休息していた北原大和、大崎年光、山本良勝の三人。

「なんだ? 休戦を呼び掛けているのか?」
「拡声器か何かを使っているようじゃな」
「山頂からみてぇだが……」

三人は旅館の客間の窓から、木々の間から僅かに見える山頂の方を見つめた。

E-4森。岩室内に身を潜める朱雀麗雅、高原正封の二人。

「山頂の方から聞こえるみたいですけど……」
「……得策とは思えないわね。あれじゃ絶好の的になるわ」

麗雅、正封からかなり離れた場所のE-5林道にいる藤堂リフィア。
半ば放心状態だったが、呼び掛けは耳に入った。

「……山頂から、かな……休戦を呼び掛けてるんだ……でも、あんな事したら……」

E-3貯水池の畔。顔をグチャグチャに潰されて死んでいる女性の死体と、
頭から血を流して死んでいるガタイの良い鮫獣人の死体を発見していた
中松英子、鉤丸聖人の二人。

「!? な、何? どこから……」
「山頂からですね……どうやら殺し合いをやめるよう訴えているようです」

聖人は表面こそ穏やかに振舞っていたが、

(あいつ馬鹿か? あんな事したら格好の的だろうが。自殺志願者かよ)

と、呼び掛けを行っている男(声から判断)を嘲っていた。

C-6山小屋。今から山小屋を出発しようとしていた中山淳太、菊池やと、葛葉美琴の三人。

「ああ? 何か聞こえるぞ」
「山頂の方から、みたいですね……」
「えーと、殺し合いをやめろって言ってるみたい」

休戦の呼び掛けは、それなりに多くの参加者の耳には入っていた。


『皆、殺し合いなどしたくは無いはずだ! 正体の分からない男の言いなりになるなど馬鹿げている!
そうだろう! 今、俺の所には志を同じくする仲間が二人いる!
同じ考えを持つという者は、山頂まで集まってくれ!』

『どうか、俺達を信じてくれ! 同じ考えを持つ者は――』

ダダダダダダダダダダダッ……。

突然の銃声と共に、男の呼び掛けは途絶えた。

ダダダダダダダダダダダッ……。

ドオォォン……。

ドオォォン……。

……。

何発もの銃声が響き、もう何も聞こえなくなった。
それを聞いていた者達は、抱く感情こそ違えど、全員が共通の結論に達していた。

「呼び掛けを行っていた者達は殺された」と。

男が「仲間が二人いる」と言っていたので、少なくとも山頂には三人いると、
呼び掛けを聞いた者達は判断したのだ。
それとも少なくとももう一人、三人に襲い掛かった襲撃者の存在も認知していた。


E-6温泉旅館の北原大和、大崎年光、山本良勝の三人。

「!? 銃声が……!?」
「何という事じゃ……彼らの勇気は称賛に値するな」
「銃声からして……使われたのはサブマシンガンとショットガンって所か……」

大和と良勝は呼び掛けを行った者の勇気を称え、
年光は聞こえた銃声から使用された武器を大まかに当てていた。

E-4森の岩室内に身を潜める朱雀麗雅、高原正封の二人。

「……何も、聞こえなく、なった……?」
「……」

呆然とする正封、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる麗雅。

E-5林道にいる藤堂リフィア。

「嘘……また、殺されたの? 誰か……」

彼女はほんの十数分前、三人の死を見届けていた。
但しその内の一人は、自らが処刑を執行したのだが。
今また何人かの命が失われた事を悟り、ショックを隠し切れなかった。

E-3貯水池の畔の中松英子、鉤丸聖人の二人。

「……! そ、そんな……」

銃声と共に呼び掛けの声が途絶えたのを聞き、何が起きたか察しショックを受ける英子。
英子の後ろにいた聖人はそんな英子の様子を見て、これはチャンスだ、と思った。
聖人は持っていたアーミーナイフの刃を突出させ、背後から英子を羽交い絞めにし、
その喉にナイフの刃を突き立てた。
英子は声にならない呻き声を発し、喉から鮮血を噴き出しながら、その場に崩れ落ちた。

「はい、ご愁傷様~ってか? 意外と簡単だな、人殺すのって」

その口調からは殺人を犯した事に対する罪悪感など微塵も感じさせない。
聖人は英子の持っていた大型自動拳銃・AMオートマグを拾い上げ、
本物の銃を自分が持っているという事に高揚感を覚えた。
そして英子のデイパックからオートマグの予備マガジンと食糧を抜き取り、
自分のデイパックの中に入れる。
聖人はオートマグを右手に装備すると、英子の死体には一瞥もくれず、
南の市街地方面へ歩き始めた。

C-6山小屋の中山淳太、菊池やと、葛葉美琴の三人。

「ま……マジかよ……」
「何て事……」
「……」

三人共、呼び掛けを行っていた者が何者かに殺されたという事実に、
大きなショックを受けていた。

山頂の三人が命を懸けて行った休戦の呼び掛けは、多くの参加者の耳に届いていた。
決して無駄な事では無かったと信じたいが、
その呼び掛けの直後に、また一人の命が失われたのは、皮肉な事である。


【一日目/昼前/E-6温泉旅館】

【北原大和】
[状態]:左肩に銃創(応急処置済)、返り血(中)、呆然
[装備]:コルトパイソン(6/6)
[所持品]:基本支給品一式、357マグナム弾(47)、織田信治の水と食糧(水一本と食糧半分)
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。そのためにも仲間を集める。
1:何て事だ……。
2:山を迂回し市街地を目指す。
3:大崎さん、山本さんと行動を共にする。
4:襲い掛かってきた者はまず説得し、無理なら戦闘もやむを得ない。

【山本良勝】
[状態]:全身に軽度の打撲、擦り傷、呆然
[装備]:古びた金属バット
[所持品]:基本支給品一式、双眼鏡
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。
1:彼らの死は無駄にはできん……。
2:北原さん、大崎さんと行動を共にする。
3:仲間を集める。
4:首輪を外す方法を探す。

【大崎年光】
[状態]:健康
[装備]:手斧
[所持品]:基本支給品一式、九四式拳銃(2/6)、九四式拳銃の予備マガジン(6×6)、
織田信治の水と食糧(水一本と食糧半分) 、織田信治の首輪
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。そのためにも仲間を集める。
1:こりゃ、大変だな……。
2:山を迂回し市街地を目指す。
3:北原さん、山本さんと行動を共にする。
4:襲い掛かってきた者はまず説得。駄目なら殺す。


【一日目/昼前/E-4森 岩室内部】

【高原正封】
[状態]:健康、死への恐怖、呆然
[装備]:千枚通し
[所持品]:基本支給品一式、洗濯用の糊
[思考・行動]
基本:死にたくない。とにかく生き残る。
1:マジで……?
2:朱雀さんに守ってもらう。

【朱雀麗雅】
[状態]:健康、悔恨
[装備]:バタフライナイフ
[所持品]:基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らない。
1:何て事……。
2:自分と同じくこの殺し合いに呼ばれた知り合い(四宮勝憲、葛葉美琴)を探す。
3:高原さんと行動する。
4:脱出手段も探さないと……。


【一日目/昼前/E-5森】

【藤堂リフィア】
[状態]:首、胸元に貫通創(命に別条無し)、返り血(大)、口元が血塗れ、呆然
[装備]:無し
[所持品]:基本支給品一式(食糧1/5消費)、モシンナガンM1891(5/5)、7.62㎜×54R弾(50)、直刀
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。
1:また……死んだ……。
2:これから、どうしようかな……。
[備考]
※生命力が異常に高いです。頭部破壊、焼殺、首輪爆発以外で死ぬ事はまずありません。
但し一定以上のダメージが蓄積すると数十分~一時間ほど気絶します。


【一日目/昼前/E-3貯水池畔】

【鉤丸聖人】
[状態]:健康、市街地方面に移動中
[装備]:AM オートマグ(7/7)
[所持品]:基本支給品一式、AM オートマグの予備マガジン(7×10)、アーミーナイフ
中松英子の水と食糧。
[思考・行動]
基本:優勝を目指す。
1:殺し合いに乗っていないフリをして他参加者に近付き、隙を突いて殺す。
2:市街地へ向かう。


【一日目/昼前/C-6山小屋】

【中山淳太】
[状態]:精神的疲労(中) 、呆然
[装備]:S&W M36”チーフスペシャル”(5/5)
[所持品]:基本支給品一式(水半分消費)、38S&WSP弾(50)
[思考・行動]
基本:死にたくない。生き残りたい。
1:嘘だろ……洒落になんねぇよ……。
2:やとちゃん、美琴ちゃんと行動を共にする。
[備考]
※「菊池やと」という名前に心当たりがあるようですが、よく思い出せません。

【菊池やと】
[状態]:健康、呆然
[装備]:ミロクSP-120(2/2)
[所持品]:基本支給品一式、12ゲージショットシェル(50)
[思考・行動]
基本:殺し合いの転覆。或いは脱出。そのために仲間を集う。
1:何て事なの……。
1:中山さんと行動。葛葉さんと情報交換。
2:襲われたらまず説得、駄目なら戦うか逃げる。
3:首輪を外す方法も探す。
4:何で10代の頃の身体に戻ってるの……?

【葛葉美琴】
[状態]:左頬に掠り傷(治癒中)、呆然
[装備]:十三年式村田銃(1/1)
[所持品]:基本支給品一式、11.15㎜×60R弾(ポケットに24、デイパックに22)、出刃包丁
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。
1:そんな……。
2:首輪に盗聴器が内蔵されている事を他参加者に知らせる。
3:知人(四宮勝憲、朱雀麗雅)と合流したい。
4:襲われたら戦う。



【中松英子  死亡】
【残り27人】



※E-3貯水池畔、堀越辰夫と上田聖子の死体の近くに中松英子の死体と、
中松英子のデイパック(基本支給品(水と食糧抜き)入り)が放置されています。
※E-4森に岩室が点在しているようです。




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最終更新:2009年11月07日 15:11
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