山頂殺戮劇場

第三十八話≪山頂殺戮劇場≫

エリアD-5の山頂。周囲、360度、会場となっている島を一望出来る。
元々展望台のような役割を果たしていたのか、木製の古びたベンチが幾つか設置されている。
標高が高めなせいか、気持ちの良い風が吹くこの山頂部に、三人の男女が到達した。

「やっと着いたな……何と眺めのいい場所だ。
こんな状況で無ければゆっくりしていきたい所だな」

長大な偃月刀を携えた軍服姿の大柄な白虎獣人、筑紫晴景が下界を眺めながら言う。

「殺し合いが行われている会場とは、思えないな」
「そうですね……本当に綺麗な場所」

青竜の村上政高と、政高に負ぶさっている赤みがかった髪の女性、稲垣葉月も同意する。
政高は古びたベンチに葉月をゆっくりと座らせた。
そして、葉月のデイパックから拡声器を取り出し、それを晴景に渡した。

「それでは……やるぞ」
「ああ」

晴景は偃月刀を地面に置き、拡声器を持ったまま、
島の南方、市街地や灯台がある方角に向き、拡声器を口に近付け、スイッチを押した。

『皆、どうか俺の話を聞いて欲しい!
殺し合いなどやめるんだ! 皆で力を合わせて、この狂ったゲームから脱出する方法を考えよう!!』

拡声器によって何倍にも音量が増幅された晴景の声が、会場に響く。
その様子を、政高と葉月が息を呑んで見守る。
三人が山頂目指して進んでいた理由はこれだったのだ。
葉月の支給品である拡声器を使い、他参加者に和平を呼び掛けようという考えである。

『皆、殺し合いなどしたくは無いはずだ! 正体の分からない男の言いなりになるなど馬鹿げている!
そうだろう! 今、俺の所には志を同じくする仲間が二人いる!
同じ考えを持つという者は、山頂まで集まってくれ!』

晴景は思いが伝わるようにしっかりと、はっきりとした口調で叫び続ける。

『どうか、俺達を信じてくれ! 同じ考えを持つ者は――』

ダダダダダダダダダダダッ

「がっ……はっ……!?」

晴景の必死の叫びは、突然の銃声と共に途絶えた。
晴景の身体を無数の弾丸が貫き、白い毛皮を赤く染め、晴景はその場に崩れ落ちた。
直後、晴景が立っていた場所の前方の茂みから、セーラー服を着た狐耳の眼鏡少女が現れた。
その手には、銃口から煙を吹くサブマシンガンが握られている。

「!! 葉月さ――」
「あ……?」

ダダダダダダダダダダダッ

サブマシンガン――イングラムM11A1から放たれた無数の45ACP弾が、
青竜と赤髪の女性の身体を容赦無く貫く。
竜族である政高は、45ACPクラスの拳銃弾では致命傷こそ受けなかったが、
それでも動く事が困難な程のダメージを受けていた。
葉月は――地面に仰向けに倒れ、身体中に穴が空き、そこから大量の血が溢れ、
虚ろな瞳はもう光を宿していなかった。
セーラー服の少女はイングラムのマガジンを交換すると、それをデイパックにしまい、
代わりにショットガン――レミントンM31を取り出した。
地面に蹲り、呻き声をあげる白虎獣人の後頭部に、レミントンM31の銃口を押し当てる。

「あ……が……ま、待て……!」
「嫌です」

ドォン!!

12ゲージショットシェルの散弾が至近距離で炸裂し、晴景の獰猛そうな白虎の頭は、
まるでスイカ割りを終えた後のスイカのようになってしまった。
緑色だった草むらや茂みに真っ赤なペイントを施し、
脳漿や頭蓋骨の破片が飛散するという、凄惨極まりない状態である。
狐耳少女はそんな事には意も介さず、レミントンM31の先台をスライドさせ、
次弾が発射可能な状態にする。
そして最後に生き残った、白い髪を持った青竜に近付く。

「ゼェ、ゼェ、な、なぜ、だ……なぜ、こんな……!?」
「なぜ? 愚問ですね。決まっているでしょう」

そう言いながら、狐耳少女は青竜――政高の鼻先に、レミントンM31の銃口を突き付ける。

「生き残るためですよ」

ドォン!!

政高の上顎から上が消し飛んだ。否、無数の肉片と大量の血、それと得体の知れない
濁った液体を撒き散らし、政高の身体は地面に伏し、ピクピクと痙攣していた。

「こっちは……死んでるわね」

仰向けに倒れている葉月の身体を足で触り、その死を確認すると、
狐耳少女――志水セナはレミントンM31に弾を装填した。
そして三人のデイパックの中身を漁り、それぞれのデイパックから水と食糧を抜き取り、
自分のデイパックの中に入れた。
政高のデイパックの中にはスタンガンが入っていたが、
今持っている武装に比べると明らかに貧弱だったため、捨て置いた。
晴景の傍に落ちている偃月刀は余りに重く、セナには使いこなせそうにない。
同じく傍に落ちている拡声器も必要無い。

「まあ、水と食糧を大量に入手出来ただけでも良しとしようかな」

セナは、ずれていた眼鏡を掛け直し、デイパックを背負い直すと、
南西の方向に向かって山を下り始めた。

志水セナは、晴景、政高、葉月の三人よりも早くに山頂に到達していた。
しかし人っ子一人の姿も見えないので、しばらく山頂周辺を巡回する事にしたのだ。
しばらく巡回していると、山頂から男の大声が聞こえてきたので、
向かってみれば、そこには拡声器越しに何やら呼び掛けを行っている軍服姿の大柄な白虎獣人の男と、
白い髪を持った青い竜に、ベンチに座る赤みがかった髪の若い女性がいるではないか。
これ幸いと、セナは三人に襲い掛かったのだった。

「だけど、馬鹿でしょ。普通に考えて、あんな大声出してたら格好の的じゃない。
私みたいな奴に真っ先に狙われて、殺されるのがオチよ。
そこまで考えていなかったのなら、成功したとしても、結果はたかが知れてるわね」

危険を承知の上で、休戦を呼び掛けようとした三人の勇気を嘲りながら、
セナは木々生い茂る坂道を慎重に下っていった。
山頂には、頭部を破壊され見るも無残な白虎獣人と青竜の死体と、
全身を銃弾で抉られ、血溜まりの中に仰向けに倒れる女性の死体が残された。


【一日目/昼前/D-5山頂付近】

【志水セナ】
[状態]:健康、南西方面へ移動中
[装備]:レミントンM31(2/2)
[所持品]:基本支給品一式、イングラムM11A1(30/30)、イングラムの予備マガジン(30×8)、
12ゲージショットシェル(38) 、筑紫晴景の水と食糧、村上政高の水と食糧、稲垣葉月の水と食糧
[思考・行動]
基本:優勝を目指す。他参加者を積極的に殺していく。
1:南西方面へ向かう。
[備考]
※水色ショートヘアの少女(桂川八重)を殺したかどうか分かりかねています。



【稲垣葉月  死亡】
【筑紫晴景  死亡】
【村上政高  死亡】
【残り28人】



※D-5周辺広範囲に渡り、筑紫晴景の放送が響きました。
※D-5山頂に筑紫晴景、村上政高、稲垣葉月の三人の死体が放置されており、
それぞれの死体の脇には以下のアイテムが放置されています。
筑紫晴景=デイパック(基本支給品一式(水と食糧抜き))、偃月刀、拡声器
村上政高=デイパック(基本支給品一式(水と食糧抜き)、スタンガン)
稲垣葉月=デイパック(基本支給品一式(水と食糧抜き))
※D-5周辺に銃声が響きました。




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最終更新:2009年10月25日 13:35
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