孤独な傭兵

ホールが光に包まれた直後、俺が立っていたのは夜の港だった。
どうやらここが殺人ゲームの会場らしい。いったいどういう原理でここに飛ばされたのか、見当もつかない。

(殺し合いか・・・)

三年前、俺は家出同然の形で家を、日本を飛び出し、フランス外人部隊・レジョンへと入隊した。
だが、戦闘で人間の命を奪う事に嫌気がさした俺は、またしても逃げ出し、日本へと戻ってきたのだ。
いまさら家出した実家に戻れるはずもなく、途方に暮れていた俺は公園で眠りにつき・・・目が覚めた時にはあのホールにいた。
殺し合いに嫌気がさして逃げ出したというのに、またしても殺し合いに巻き込まれるとは、不幸としか言いようがない。
しかも、ここは俺がレジョンにいた頃に経験した戦場とはわけが違う。
仲間は一人もいない。周りは全員敵。文字通りの「殺し合い」なのだ。

(これから・・・どうするか)

当然殺し合いに乗るつもりはない。かといって、殺し合いを潰すような殊勝な心掛けは持ち合わせていない。
やる事もなく、とりあえず地図を広げながら考え込んでいた俺の元に


ソイツは現れた。


コンテナの裏から姿を現した男。鍛え上げられた肉体は、遠目で見ても俺より二回り以上大きい。
スキンヘッドが目を引く頭部には、漢字で何か表記してあった。

(・・・渺茫?)

渺茫。遠く、広く果てしない様子を表す言葉。
この男は何を考えてそんな文字を頭に刻んでいるのか。


「おいアンタ、名前は?」
「・・・」

返事がない。日本語が通じないのだろうか。

「・・・アンタはこの殺し合いに乗っているのか?」
「俺は・・・」

ようやく男が口を重い口を開いた。どうやら日本語は通じるらしい。


「俺はこの拳を全力で振るえる相手を探している」


言葉の通りに解釈すれば、殺し合いに乗ってるとも取れる言葉だ。
だが、何故か俺には、この男が無差別に殺人を犯す男だとはどうしても思えなかった。
男の眼が、哀愁を帯びているように見えて仕方なかったのだ。

「なぁ、だったら俺と勝負してみないか」
「お前が・・・?いいだろう」

俺は何だか男が哀れに見えて、勝負を申し込んだ。
どうせやる事もないんだ。少しぐらい付き合ってやろう。




「ぐっ・・・」
男の放った拳に吹き飛ばされ、俺は倉庫のシャッターに叩きつけられた。
なんなんだこの男の強さは。ガキの頃から鍛えた武術も、レジョンで鍛えた格闘術もまるで通用しない。
こんな人間が存在していいのか。まるで人の皮をかぶった鬼だ。
俺はフラつく足に力を込め、立ち上がろうと

「やめてください!その人怪我してるじゃないですか!」

した瞬間、どこからか幼い声が聞こえた。振り返ると、俺の背後から一人のガキが走ってくる。
外見からして、歳は13,4といったところか。
ガキは俺に駆け寄り、再び叫んだ。

「これ以上やったら死んじゃいますよ!」
「・・・」

男は突然の乱入に興ざめしたのか、黙って振り向くとそのままいずこかへ去って行った。

1日目・深夜・D-1・港

【渺茫@エアマスター】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品(確認済み)
[思考]
基本:強者と戦う
1:人の集まりそうな場所に向かう
2:ゲームに勝ち残りこと自体には、さほど興味なし
参戦時期は、ジョンス・リーに敗北した直後です

男が見えなくなるのを確認すると、ガキは俺に話しかけてきた。

「あの、大丈夫ですか?」
「まぁ、なんとかな」

本当は、体中の筋肉がはち切れそうなほど痛かったが、ガキにそんなことを言っても仕方ないので黙っていることにした。

「これ、薬草です。よかったら食べてください」
「薬草?」

見たこともない種類だ。もしかしたら、いい奴を装って俺に毒草を飲ませようとする罠かもしれない。
もしそうだったとしても、後悔はしない。生き残っても、俺に帰る場所はないんだ。
こんなガキに殺されるのも、滑稽でいいかもしれない。俺はガキに渡された薬草を口に含んだ。

「・・・ん?ん?」
どういう事だ。薬草を飲み込んだ瞬間、全身の痛みが嘘のように引いていった。
この薬草の効果か?そんなバカな。ゲームじゃあるまいし、そんな即効性の薬草なんて・・・

「よかった、効いたみたいですね」
「ああ、そうらしいい」
「これ、なおり草っていうみたいです。僕の支給品です」

なおり草・・・ふざけた名前の薬草だ。まぁ、今はそんな事はどうでもいい。
それより、俺には気になっている事があった。

「おい、お前」
「はい?」
「お前、よくあの男の間に割り込もうと思ったな。それに、俺が殺し合いに乗ってたらどうするつもりだったんだ?」

俺はずっとそれが気がかりだった。このガキ、どうみても体を鍛えているようには見えない。
元レジョンの俺でも敵わなかったあの男に、向かっていく気になったのだろう。

「・・・僕、幼いころに両親を亡くしてるんです」
「・・・」
「父は炭鉱の爆発に巻き込まれて・・・母は一人で残った僕たちの面倒を見て、体に無理をかけて・・・」
「そうか・・・」
「だから僕、もう自分の目の前で誰かが死ぬのを見たくなくて・・・あなたを見つけた時には夢中で走ってました。
 殺し合いに乗ってるかどうかなんて、考えもしませんでした」


そう言って、そいつは笑って見せた。この若さでここまで強い意志を持っているとは、少々驚いた。
・・・単に向う見ずなだけかも知れんが。


「それで、これからお前はどうするつもりだ?」
「はい、僕の仲間を探そうと思います。デントン先生とウィルっていうんですけど、二人ならきっと殺し合いを止めるのに協力してくれると思います」
「そうか・・・なら、俺も一緒に行こう」
「えっ?いいんですか?」
「薬草の礼だ。それに、この殺しあいの場をお前一人で行かせるのも不安だしな」
「は、はい!ありがとうございます!」

こいつの話を聞いていたら、3年前に別れた家族のことを思い出し、他人事とは思えなかった。
家族、特に親父には反抗してばかりで、親孝行など何一つしてこなかった。
ならばせめて、俺を助けてくれたこいつの為に命を捨てるのも悪くないだろう。

「僕、ジョセフ・カーター・ジョーンズっていいます。あなたの名前を教えてくれますか?」
「俺の名前は・・・」

1日目・深夜・D-1・港

【高峰 隆士@街 ー運命の交差点ー】
[状態]全身に打撲(痛みは無し)、疲労(小)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品(確認済み)
[思考]
基本;ジョーイについていく
1:デントンとウィルを探す
参戦時期は、1日目に公園で眠りについた直後です

【ジョセフ・カーター・ジョーンズ@HEROMAN】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、なおり草@ライブ・ア・ライブ、ランダム支給品②(確認済み)
[思考]
基本:殺し合いを止める
1:デントンとウィルを探す
2:ゴゴールが生きていることに疑問
参戦時期は、10話冒頭(スクラッグ壊滅から3ヶ月後)です

■参加者紹介
【高峰 隆士】
本編の主人公の一人。3年前に父親と喧嘩し、家出。
その後、フランス外人部隊・レジョンへと入隊した。
親しい相手以外との交流はあまり好まず、ケンカっぱやい性格。
薄汚れたコートを羽織っている。

【渺茫】
最強のストリートファイターを決めるランキング、深道ランキングの1位であり、リーに敗れるまでその座は不動だった。
深道ランキングとは、元々この男を倒すのが目的で作られた。
渺茫とは、その時代の“最強”を代々引き継いできた男たちの総称で、現在の渺茫は15代目。
単体でも十分な強さを誇るが、歴代渺茫が憑依し、十五漢渺茫となることでさらに強くなる。

【ジョセフ・カーター・ジョーンズ】
本編の主人公。彼が通う中学の教師が宇宙に発信した信号をキャッチし、
侵略宇宙人スクラッグが地球に襲来してしまう。
彼は ある日拾ったロボットのおもちゃが雷に打たれ、
生まれ変わったヒーローマンと共に、スクラッグと戦うことを決意する。
女の子のような愛らしい容姿だが、しっかりとした強い信念を持つ。

■支給品紹介
【なおり草】
ルクレチア王国に群生する植物で、中世編の回復アイテム。
本ロワでは、痛みや疲労を回復するだけで、外傷の治癒はできない。

食えねーよ!! 投下順 ふたりはスカーフェイス
GAME START 高峰 隆士 [[]]
GAME START 渺茫 [[]]
GAME START ジョセフ・カーター・ジョーンズ [[]]

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最終更新:2011年07月21日 18:39
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