混乱の予兆

「…おおおおおおおオオオオ!!」
周囲にとんでもない絶叫をまきちらしながら、新八は走る。
今新八がここまで速く走れるのは、日々の鍛錬もあったがひとえについ先ほどまで命を狙われていたという恐怖心とそれによって起こった所謂火事場の馬鹿力によるものであった。
しかし、このように冷静さを欠いた状態で暴走すれば見えるものも見えなくなってしまう。
そう、今新八が暴走している先には結構な段数の下り階段が……
「…嘘オオオオオオ??!!」
落石のように、ド派手な音をまきちらしながら志村新八は盛大に階段を転げ落ちた。



一方同じころ、みゆきとのび太の二人は大声の主に接触すべく、みゆきの支給品である探知機を頼りに移動していた。
みゆきは二つある光点(相馬光子と蒼葉梢、当然二人がどんな人物であるかは知らない)から逃げるように物凄い速度で移動する一つの光点こそが大声の主だと察知し、それと接触しようとのび太に提案した。
そしてのび太もそれを承諾していた。
そしてその光点を追って二人で歩いていたのだが。
「あ」
「どうしたんですかみゆきさん?」
「動いていた目標が止まりました。」
探知機のディスプレイを見ると、先ほどまでものすごい勢いで動いていた光点は今はもう動いていない。
そしてその光点の傍に、もう一つ光点がある。
「…そう言えば声、聞こえなくなりましたね。」
「どうしたんでしょうか?」
みゆきは思案する。
この探知機が察知するのはあくまで『首輪』だ。
つまりそれはどういうことか?
――その首輪の主の生死にかかわらず、この探知機は『首輪』にのみ反応する可能性がある。
自分で立てたその仮説に、みゆきの背に嫌な汗が流れた。

「…みゆきさん?」
「え?何ですか?のび太さん。」
「方向はこっちであってますよね?」
「え、あ、はい。」
固まりそうになるみゆきの脚は、のび太の声でまた動きだす。
まだ小学生ながらも冷静なのび太の姿勢に、みゆきは若干複雑な心中であった。



ライゲンは娘であるシェリーを探すと言う目標こそ掲げてはいたものの、どのように動くか、どのようなスタンスを貫くかまだ決めかねていた。
シェリーを見つけ保護するのは大前提であるとして、そこからどうするかだ。
自分もそうであるように、この場にいる70名全員の首には首輪という枷が巻かれている。
その首輪の破壊力は先ほどこの目で見た。
なるべく早いうちにこの首輪をはずさない事には、安心できやしない。
だが、どうやって外せばいい?
ライゲンには外す手立ては思いつかなかったし、シェリーやヨイチと言った仲間にも恐らく外すことはできないだろう。
ならばどうすればいいのか。

ライゲンに支給されたもの、それは一振りの小太刀と一冊の本だった。
小太刀の方はともかく、本――『にんたまの友』と表紙に書かれていたその本に書かれてあった事はライゲンの知的好奇心を刺激した。
その内容は、ライゲンの知らない世界についての情報が数多く記されていた。
それに名簿に書かれてあった多くの見知らぬ名前から、ライゲンはこの世界がエンディアのような多くの異なる世界から人や物が集められた世界なのではないか、と予想した。
だとすれば、希望もそこには存在する。
それと同時に注意すべき事も存在する。
異なる世界には、西郷隆盛やガリーノのように野心を抱いていたり、岡田以蔵のような戦闘狂もいる可能性がある。というか高い。
一層慎重に動くことが要求される。
そう、慎重に……


「銀さあああああああああああああん!!!!!!!!!神楽ちゃああああああああああああああああん!!!!!!!長谷川さああああああああああああああああん!!!!!!!どこにいるんですかああああああああああああああ!!!!!!」


思考をまとめかけた頭に突然突き刺さる、慎重とは対極に存在するようなバカでかい声。
その声の大きさには、流石のライゲンも驚愕を隠せなかった。



港の傍にあるとある空き家の一室で、彼女は眼を覚ました。
目覚める前は穏やかそうだったその眼はキッとつり上がり、その瞳にぎらぎらとした怒りが満ち溢れていた。
腰まで伸びていた髪をキュッと後ろで一本に束ねると、彼女は立ちあがった。

「…許せねえ。」

清楚そうな外見とは似つかわしくない言葉が、その口から漏れた。
「殺し合いだぁ?ふざけた真似しやがって……!」
『彼女』の名は赤坂早紀。
蒼葉梢の中に存在する多重人格の一人である。
非常に攻撃的で荒っぽい性格ではあるが、正義感は人一倍強い彼女はこの現状に激怒していた。
「桃……仇はとってやるからな…!」
鳴滝荘の住人で、よく一緒に宴会を楽しんだ桃乃の死。
早紀がそれを許すわけなど微塵もなかった。
早紀は眼にうっすらと浮かんだ涙を振り払うと、拳を握りしめた。

「白鳥、珠、朝美、沙夜…あいつら大丈夫か?まぁ珠なら心配いらねえと思うが……」
彼女は純粋に、鳴滝荘の仲間を心配していた。
特に彼女が心配していたのは恋人でもある白鳥隆士の事。
「白鳥…あいつマジで大丈夫か?…死んだりしてねえだろうな……?」
白鳥隆士は優しい人間だ。
そんな彼が殺し合いに乗るなんてとても思えない。
むしろ逆に殺されてしまうかもしれない。
不意に浮かんだ嫌な考えに、先は狼狽しそうになる。
「…死ぬんじゃねえぞ……死んだら絶対許さねえからな、白鳥…」
握りしめた拳にもう一度力を込め、早紀はデイパックの中身を確認し始めた。

「お、良いの入ってるじゃねえか。」

デイパックから出てきた武器を装備すると、早紀は外に出た。



迂闊な事をした、と相馬光子は後悔していた。
先程取り逃がしたメガネの少年は、今思い出すとそんなに頭も良くなさそうに見えたし女性慣れしていない印象もあった。
ならばいきなり襲いかかったりせず、かつてクラスメートの一人、江藤恵を殺した時のように油断させて殺した方が良かったのではないか。
まぁ、それは今後気をつければいい。
今はひとまず参加者を探そう。
出来れば徒党を組んでいる参加者が狙いだ。
徒党を組んでいるのであれば殺し合いに乗っている可能性は低いし、自分のような一見乗っていないように見える女の子が助けを求めてきたら受け入れるであろう。
そうすればしめたものだ。
内部から徒党の不和を生み出すもよし、或いはかつてやったように自分の手で殺すもよし。
多少時間と手間はかかるが、楽に人数を減らす事が出来る。
相馬光子はほくそ笑むと、南へ向けて歩き出した。



ライゲンはひとまず大声の主の方へ歩いていた。
ライゲンが今一番欲しいものは情報。
シェリーを探すにせよ、自分一人で行動するだけでは限界が生じる。
それに首輪をはずすにも知識のある人を探したい――無論、大声の主がそうだとは思ってもいないが。
そのため、ライゲンは大声に近づくように歩いていた。
歩いていくにつれ、声はどんどん大きくなっていく。
そろそろか、と思った瞬間、目の前の階段からその声の主がド派手な音をあげながら転げ落ちてきた。

「…なんなんだこいつは。」



「あ、のび太さんちょっと待って下さい。」
「どうしたんですかみゆきさん?」
「二つあった光点のうち、一つがこっちに近づいています。」
見ると、確かにこちらに何ものかが近付いている事が分かる。
のび太はそっと持っている銃のグリップを握りなおしていた。
「…一応、話せるようなら話してみますか。」
「そう、ですね……」


志村新八、高良みゆき、野比のび太、ライゲン・ボルティアーノ、赤坂早紀、相馬光子。
この六人が接触する事によって何が生まれるのか。
それは、誰にも分からない。




【E-2住宅街/1日目朝】
【志村新八@銀魂】
[状態]:全身あちこちに打撲傷と擦過傷(命に別条はない)、気絶、声枯れ気味、精神の動揺(中)、肉体疲労(大)
[装備]:高性能拡声器@現実(電源オフ)
[道具]:基本支給品一式(アイテム確認済み)
[思考]1:気絶中
   2:銀時、神楽、長谷川と合流したい。
   3:…逃げなきゃ。

【ライゲン・ボルティアーノ@カオスウォーズ】
[状態]:健康、ちょっと耳が痛い
[装備]:小太刀@ブシドーブレード弐
[道具]:基本支給品一式、にんたまの友@忍たま乱太郎
[思考]1:シェリーを守る
   2:なんなんだこいつは?
   3:もし兵真と会ったら…?
   4:殺し合いから脱出したい、最悪手段は問わない。

【D-2住宅街/1日目朝】
【高良みゆき@らき☆すた】
[状態]:健康、若干耳が痛い
[装備]:首輪探知機@現実
[道具]:基本支給品一式、モデルガン@クロックタワーゴーストヘッド
[思考]1:近づいてくる者への警戒
   2:声の主のところに行く…?
   3:こなたと早く合流したい。

【野比のび太@のび太のBIOHAZARD】
[状態]:健康、若干耳が痛い
[装備]:旧型ガスガン@カオスウォーズ
[道具]:基本支給品一式(アイテム確認済み)
[思考]1:近づいて来る者への警戒
   2:みゆきと共に行動する。

【相馬光子@BATTLE ROYALE】
[状態]:健康
[装備]:手甲鉤@忍たま乱太郎
[道具]:基本支給品一式(アイテム確認済み)
[思考]1:『奪う側』にまわり、全員を殺す
   2:徒党を組んで行動しているグループがあったらそこに取り入る。

【C-1港/1日目朝】
【蒼葉梢@まほらば】
[状態]:健康、『赤坂早紀』の精神、激しい怒り
[装備]:不明(何か武器になるものであった事以外は不明です)
[道具]:基本支給品一式(アイテム確認済み)
[思考]1:メガネの男(日野)は絶対に許さない。
   2:鳴滝荘の住人は保護。白鳥最優先。
   3:殺し合いに乗った相手は誰であろうと容赦しない。
   4:殺し合いに乗っていない相手なら保護する。

[備考]:『蒼葉梢』の人格は眠っています。
参戦時期は原作8巻39話、白鳥に告白された後からの参戦。



【支給品情報】

【小太刀@ブシドーブレード弐】
ライゲン・ボルティアーノに支給。
元々は辰美のサブウェポンで、古武士が馬に乗るとき、太刀と一緒に携帯していた小型の太刀。
歴史的には脇差しの原型となった刀である。

【にんたまの友@忍たま乱太郎】
ライゲン・ボルティアーノに支給。
忍術学園にて使用されている教科書で、中には忍者としての知識や情報が細かく書かれている。



024:重くて非情な現実 投下順 026:何かが足りないパンドラの箱
024:重くて非情な現実 時系列順 026:何かが足りないパンドラの箱
015:パニックはろくな事を引き起こさない 志村新八
016:メガネの少年少女 高良みゆき
016:メガネの少年少女 野比のび太
011:Where is daughter? ライゲン・ボルティアーノ
015:パニックはろくな事を引き起こさない 蒼葉梢
015:パニックはろくな事を引き起こさない 相馬光子

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最終更新:2011年07月28日 20:12
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