重くて非情な現実

茶ノ畑珠美は蒼葉梢を探していた。
桃乃恵の死と言う突然の惨劇。
その直後の突然の暗転、覚醒。
首に巻かれた無機質な金属が全てを物語っていた。
珠実は急いで親友であり大切な人である梢を探していた。
だが、その先で出会ったのは幼い女の子を嬉々として殺害する女子高生だった。
「今何をしたですか。」

気づいたら、珠実は女子高生の前に立っていた。
レイピアを持ったままの女子高生に、向き立つと女子高生はにっこりほほ笑んだ。
「あら、あんたも死にたいの?」
「質問を質問で返すなです、クソが。」
「うわあ、怖い顔…」
女子高生がレイピアの切っ先をこちらに向けた。
間違いない、この女子高生はこの殺し合いに乗っている。
それだけじゃない、彼女は――殺し慣れている。

「…なぜ殺したですか。」
「だって、死の瞬間を見るのが面白いんだもん。大丈夫だよ、すぐあなたの知り合いもみんなみ~んな殺してあげるから。」
そういうと女子高生は珠実に襲いかかった。

「……ふざけんじゃ、ない、ですよ………!!」



表には出さずとも珠実はかなり怒っていた。
鳴滝荘で共に暮らしてきた桃乃恵をあっさりと殺したメガネの男に。
梢の傍にいてやれない自分に。
何の罪もないであろう少女を惨殺した目の前の女子高生に。

そして何より

この少女は、梢をも殺すと言ったのだ。
それだけは、何を許しても許せるものではなかった。

レイピアの鋭い切っ先が、珠実のセーラー服の左袖を破く。
福沢は一発で仕留められなかった事に内心舌打ちをしたが、殺す時が少し伸びただけだから良いや、とも思っていた。

だが、次の瞬間、福沢の身体に衝撃が走った。
珠実の右足が、福沢の鳩尾に食い込んでいた。

「ガ、はっ……」
福沢の口から唾と胃液が混ざったものが飛び出す。
つんのめった福沢の側頭部に、今度は珠実の左足が直撃した。
福沢の軽い身体が、飛ばされた。
福沢の頭に、先ほどの蹴り以上の衝撃が走る。
後頭部を、墓石である御影石に打ち付けたのだ。
朦朧とする意識の中で、福沢は離してしまったレイピアを必死に探す。
せめて、せめてあの女を、あの女を……



だが、その手がつかんだのは土だけだった。

視界がどろどろに歪んでいく。
そして全てが赤く染まっていく。
ああ、もう私は死ぬんだ。
これが、死の瞬間なんだ。
まとめなきゃ
急いで、まとめて……




「…嘘……」

珠実は、呆然としていた。
確かに彼女が憎かった。
許せなかった。
だが、だからと言って殺したかったかと聞かれたら、答える事は出来ない。

目の前の女子高生は、もう息をしていない。
かち割れた頭からは脳漿と血液がドロドロとあふれ、異臭を放つ。

「……くっ」

珠実は急いでその場を後にした。
これ以上この場にいてはいけない、そう思ったからだった。

墓場には、死体が二つ残された。
その墓場に、一人の男が来ようとしていたのを、珠実は知らない。






【福沢玲子@学校であった怖い話 死亡】

【F-6墓場/1日目朝】
【茶ノ畑珠美@まほらば】
[状態]:健康、精神的ショック(中)
[装備]:レイピア@ブシドーブレード弐
[道具]:基本支給品一式(アイテム確認済み)、福沢の基本支給品一式、みかの基本支給品一式
[思考]1:梢を守る

[備考]何者かがF-6墓場に近づいています。



023:サムライとハリセンと少女 投下順 025:混乱の予兆
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008:墓場に流血とか縁起が悪すぎる 福沢玲子 GAME OVER
008:墓場に流血とか縁起が悪すぎる 茶ノ畑珠美 049:Lilium

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最終更新:2012年02月10日 22:38
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