ななつぼし★ヴァンデル

第2話 ななつぼし★ヴァンデル

ヴァンデル。それは、全ての人間を滅ぼすべくして生を受けた恐怖の魔人。
国を滅ぼし、人の命を奪うヴァンデルを、戦う力を持たぬ無力な人々は恐れ、そして忌み嫌った。
そんな中、人間達からは言うに及ばず、他のヴァンデル達にすら忌み嫌われた一人のヴァンデルが居た。
彼の名はガロニュート。その巨体と、人間達からの攻撃を全く寄せ付けないその屈強さから、「不動巨人」の異名を持つ。 ガロニュートが嫌われていた理由は、彼の連れているモンスターにあった。通常ヴァンデルは、魔賓館と呼ばれる施設からモンスターを購入し、自身の部下とするが、ガロニュートが魔賓館でモンスターを購入する事は少なかった。 と言うのも、彼の連れているモンスターはその大半が他のヴァンデルから奪った物なのである。しかも、そうした悪事を働く事で他人が絶望したり、途方に暮れる様を見るのを楽しみにしているのだから始末が悪い。
だが…今は彼自身が途方に暮れていた。

「おかしい…ボクは確かにあの時死んだハズだった…それに…なんでアイツの名前が…!」
深夜の樹海。不動巨人ガロニュートは困惑していた。理由は二つある。
ひとつは、彼自身がこの場にいる事。気がついたら、いきなりこんな殺し合いの場に呼ばれたという意味も勿論あるが、それ以前に彼は一度死んだはずなのだ。
新人のヴァンデルバスター、ビィトとその仲間達との戦いに敗れた彼は、ヴァンデルの誇りである「星」と身体の大半を失い、絶命したはずだった。 いかにヴァンデルが強靭な生命力を持っていようと、一度死んだ者が蘇るなど本来あり得ない事だ。
そして、彼を悩ませているもう一つの理由は、参加者名簿に載っている、一人の男の名前であった。
その男の名はグリニデ。かつて「深緑の智将」そして「血塗られた獣」の異名で恐れられた、自分と同じ七ッ星ヴァンデル。彼もまた自分と同様、ビィト戦士団との戦いで命を落とした筈である。ヴァンデルの中には、自身の影武者として分身体を持つ者もいるが、グリニデが分身体を作っていたという話は聞いた事がない。

「おや、誰かと思えばガロニュート君じゃないか。まさかこんな所で君に出会えるとは光栄だよ」
「グ、グリニデ…!」
自身の背後から木々を掻き分けて誰かが接近する音が聞こえたので、振り返るとそこには当の本人が立っていた。これ以上自分で考えても埒が明かないと判断したガロニュートは、グリニデに対し自分の疑問をストレートにぶつけてみる事にしたのだが…

「驚いたな…キミは確かビィトとかいう子供に負けて死んだんじゃなかったのかい?」
「私が死んだ?しかもあのワンダーボーイに負けて?それは何の冗談かね?彼に殺されたのはベルトーゼの筈だが?」
どうも話が噛み合わない。この口振りからすると、本当に自分が死んだ事に気が付いていないのだろうか。 それとも…ガロニュートの脳内に、ひとつの突拍子もない考えが浮かんだ。

このグリニデは「死んだ記憶がない」以前に、元々生きている時間から連れてこられたのでは?


そう考えれば、グリニデの反応も説明がつく。だが時間を遡るなど、魔賓館はおろか古代ヴァンデル文明ですらそんな技術を持っていたなどいう記述はない。 それだけではない。彼が目覚めた薄暗い部屋には、見たことない格好をした人間や、人間ともヴァンデルともつかない連中が大勢いた。 あの殺し合いを強要した奴らもヴァンデルとは思えない。角こそ生えていたものの、ヴァンデルの誇りである星がひとつも見当たらなかった。
彼は、もう一度グリニデに疑問をぶつけてみる事にした。

「なあ、あの部屋に見たこともない連中が大勢いただろう?アイツらについてキミはどう思う?」
「フム…これはあくまで私の推測だが、我々の居た世界とは別の世界があり、彼等はそこから連れてこられたのではないだろうか?」
別の世界。その言葉を聞いた瞬間、彼の中の迷いは消え去った。そして迷いに代わり、彼の心を別の感情が支配した。

「フ…フフフ…アッハッハハハハハハ!!」
「どうかしたのかねガロニュート君?何か面白いことでもあったのかね?」
「だってそうだろう!?全然知らない世界から連れてこられた、見た事もない連中同士が殺し合う!こんな面白いゲームは滅多に…いや、もう永遠にないだろうね!
 ビィト争奪戦なんかよりずっと心踊らされるよ!」
「フフ、君のそういう性格は相変わらずだな」
「何とでも言うがいいさ。でもただ殺しあうだけじゃ面白くない。どうせやるなら楽しまなくっちゃね!」
そう言うと、彼は自分の体表を覆う小さなブロックのうち、4つを取り外した。 そして、左右の手に2個づつ握ったブロックを握りつぶすと、その内部から2種類のモンスターが2匹づつ現れた。
全身を鋼鉄の皮膚で覆われた、破壊活動を得意とするサイ型のモンスター、アイアンライノス。
民家並の巨体と、他の魔物をも捕食する獰猛さを併せ持つカブトムシ型モンスター、大甲虫。
いずれも他のヴァンデルから奪った物である事は、言うまでもない。
4匹のモンスター達は、咆哮を上げると、それぞれ別の方向に散って行った。

「奴らには、ボクの前にコイツ等と戦ってもらうよ。こんなモンスターも倒せないような雑魚じゃあ、話にならないからね」
「しかし、ゲームに乗るという事は私とも戦う気なのだろう?こんなに早くモンスターを消費していいのかね?」
「キミはメインディッシュさ。まずは前菜から食べないとね。それに、こんなモンスターをぶつけたくらいで君を倒せると思うほどボクは馬鹿じゃないよ。
 ところでキミはどうする気なんだい?」
「私は部下を集めてみようと思う。君や私を選んだほどの観察眼の持ち主だ。きっと他にも素晴らしい力を持つ者たちが集められているに違いない。彼らの力を借りて、私はヴァンデルの頂点に立つのだよ。まあ、あの閣下とか呼ばれた彼には、仲間にする前に私をこんな目に合わせた事を反省してもらうがね」
「フン、そう簡単にいくとは思えないけどね。まあせいぜい頑張るといいよ。それじゃあボクはそろそろ行くからね」
「君の方こそ、油断しすぎて足元をすくわれないようにな…」
そう言って二人の魔人は反対の方向を目指して歩き出した。
ヴァンデル達の夜はまだ始まったばかりだ。

【一日目/深夜/B-1/森林】

【ガロニュート@冒険王ビィト】
[状態]健康
[装備]モンスター入りブロック@冒険王ビィト(残り3つ)
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品
[思考]
基本:殺し合いに乗る。
1:強そうなやつと戦ってみたい。
2:グリニデは最後までとっておく。

【グリニデ@冒険王ビィト】
[状態]健康
[装備]無し
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品
[思考]
基本:仲間(部下)となる人材を探す。
1:戦闘能力の高い者を引き入れる
2:異世界の技術を持つ者と接触する。(戦闘における強弱は関係なし)
3:閣下と呼ばれた鬼に「教育的指導」を施す。

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GAME START グリニデ Next:赤いきつねと緑のバッファロー

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最終更新:2010年03月05日 03:21
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