大人はつらいよ

第1話 大人はつらいよ
「クソッ…なんてこった…何で俺がこんな目に…!」
土砂で汚れた作業服を着た中年…黒沢は送り飛ばされた無人のデパートで一人嘆いていた。
思えばこの40年余、彼の人生にはロクな事が無かった。
特にここ数ヶ月、彼の周りではあまりにも多くの事件が起きすぎた。
赤ん坊の誘拐犯と間違われ、不良に半殺しにされ、今度はその不良と決闘になり、さらにはそのリーダーの仲根との決闘。
かと思えば今度は不登校の中学生の問題に巻きこまれ、和解した仲根からは見習いプロレスラー共との揉め事に巻き込まれ、
職場の小野からは「親分」と訳の分からぬまま尊敬され、挙句の果てには地域一帯の不良共から獲物として狙われ…
それでもこれらの事件は、全て日常の延長線上にあった。だが…今の状況はあまりにも異常すぎる。
気がついたら鬼に誘拐され、殺し合いを強要させられるなど、考えたことも無い。
最初はあまりに現実ばなれした光景に、悪い夢を見ているのかとも思った。だが、兜を着た大男の首が飛んだ時の、あの異様な空気。そして夢にしてはリアルすぎる、鉄ような血の匂い。 そう…認めたくは無いが…これは現実なのだ。

「一体どうすりゃあいいんだよ…」
彼はとりあえず考え込んでみる事にした。

「…ダメだ、一人でいると、どんどんマイナス思考になっちまう。とにかく、まずは仲根と合流して…」
「すいません!そこに誰かいるんですか!?」

黒沢が立ち上がろうとした時、デパートの2階へ続く階段から突如声が聞こえてきた。 その方向を見ると、スーツを着込んだ20代半ばと思われる若い男がいた。髪はまるで毬栗のごとくツンツンしている。男は駆け足で、黒沢の前まで降りてきた。

「…アンタは?」
「あ、スイマン、俺は石田 虎侍ってモンです。室江高校で教師をやってます」
(教師か…いいよなあ…俺もそんな尊敬されるような職に就きたかったよ…
 仲根や小野みたいな、あんな訳の分からん尊敬じゃなくてさ…)
「あの…どうかしたんスか?」
「…ん?ああ、スマン、ちょっと考え事しててな。俺は黒沢だ」



二人はその後しばらく話合い、お互いに殺し合いに乗る気は無い事を確認した。
「教師生活存続の危機か…お前も大変だな」
「いやあ、黒沢さんこそ色々と苦労なさってるようで…」
そうして会話を重ねていくうちに、二人は次第に意気投合し始めた。
お互いに苦労人である二人の気が合うのは、ある意味当然なのかも知れない。

「あ、そういえば黒沢さん、バックの中身は確認したんスか?俺はまだなのでよかったら一緒に…」
「そうか。そういえば忘れてたな。見てみるか」

この異常な状況に放り込まれたパニックですっかり忘れていたが、黒沢と石田は、いつの間にか それぞれ大きなデイバックを持たされていた。恐らく他の参加者にも渡せれているのだろう。
二人は、バックから最初に出てきた参加者名簿に目を通す事にした。

「キリノ…!タマ…!あいつらも参加させられているのか!?」
「お前の知り合いか?」
「ええ…俺の高校の教え子です」

黒沢は仲根がいる事は知っていたので、名簿を見ても驚きはなかったが、石田はかなり驚いているようだった。 石田の話によると、二人は石田が顧問を務める剣道部の女子らしい。

「そうか…なら最初の目的は決まったな。そのキリノとタマって子を探すぞ」
「でも黒沢さんにも知り合いがいるんじゃ…」
「仲根の事だ。そう簡単には死にはしねーよ…それに男が女を…それも教え子をほっとくなんて最悪だ」
「すいません、俺の為に…」
「なーに、気にする事…ん?」
気にする事はない、そう言おうとしていた黒沢は、デイバックから取り出した物を見て首を傾げた。それは、虎の紋章が刻まれた青いケースだった。
「何だコレ?」
「ライダーデッキの使用方法…?」
頭に「?」マークを浮かべる黒沢に対し、石田は、ケースと一緒に入っていた紙に目を通した。

ライダーデッキの使用方法
鏡やガラスなど、光が反射する物にデッキを向けることで、その反射面からベルトが飛び出します。「変身」と言いながらベルトの中央にデッキをセットすることで仮面ライダーに変身します。

「「ハァ?」」
二人は思わず同時に叫んだ。その後に書かれていた事も、ミラーワールドだの、モンスターだの、まるでTV特撮のような内容である。

「…とりえずコレは置いておこう…」
「そうッスね…」
正直ハズレにしか思えなかったが、現在の状況からしてすでに非現実的である。 鬼がいるのだから、鏡の怪物がいてもおかしくない、そんな気さえしてくる。だが二人はこれ以上考えても混乱するだけと判断し、保留する事にした。

「…これは?」
「キャシャーンのヘルメットか?」
続いて石田がデイバックに手を入れると、珠姫が好きな「バトルヒーローシリーズ」に登場しそうなヒーローのヘルメットが出てきた。 二人が物珍しそうにヘルメットを眺めていると…
「君たちは一体…?」
「うわっ!?」
「コイツ喋ったぞ!」
「驚かせてすまない。私の名は…相棒からはポンコツと呼ばれている」
ポンコツと名乗った彼は、定光という少年と知り合いらしい。そういえば名簿に「椿 定光」という名前があった気がする。 だが、その後彼が語った「流刑体」「平行宇宙」等の話が複雑すぎて、そんな事は二人の頭の中からすっかり忘れられてしまった。

「だーっ!訳わかんねー!石田、キリノとタマを探しにいくぞ!」
「あ、待ってください、黒沢さん!」
「二人とも私の話はまだ終わって…」
「いいから行くぞポンコツ!」
黒沢は、難しい話をさっさと切り上げ、二人の捜索を開始する事にした。
ポンコツは講義しようとしたが、石田に無理やりディバックに押し込まれた事で、黙るしかなくなった。
こうして3人の…いや、2人と1台(?)の物語は始まったのだった。

【一日目/深夜/B-4/デパート
【黒沢@最強伝説黒沢】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、タイガのデッキ@ 仮面ライダー龍騎
[思考]
1:キリノとタマを探す。
2;仲根を探す。

【石田 虎侍@BAMBOO BLADE】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ポンコツ@破壊魔定光(やよいに改造された第2期型)
[思考]
1:キリノとタマを探す。
2;仲根を探す。

備考:二人ともルールブックには目を通していません。


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最終更新:2010年03月05日 03:11
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