孤影

第三十一話≪孤影≫

エリアB-6の古城内にある寝室の一つ。
豪華な机、タンス、天蓋付きのベッドといった調度品が並ぶ部屋で、
緑髪の女性、新藤真紀は荷物の整理を行っていた。
まず現在持っている自分の武器は、
二六年式拳銃、長谷川俊治から鹵獲したラドムVIS-wz1935と手榴弾4個。
そしてこの古城内を探索して発見したサーベルの、以上四種類。
武装としては申し分無い。接近戦なら可能な限りサーベルを使い、遠距離戦ならば銃器を使えば良い。
手榴弾は非常に威力が高いが残り四つしか無いので、使い所はよく考えるべきだ。
但し、相手が自分を遥かに上回る戦闘能力を持っていたり、
連射可能な銃器――例えばサブマシンガンやアサルトライフルだ――を持っていた場合、
撤退する事も視野に入れなければならないだろう。
爆発の衝撃で狂っていた平衡感覚と聴覚もだいぶ回復してきた。
身体中の傷や打撲はまだ痛むが、行動に支障を来す程では無い。

長谷川俊治のデイパックに入っていたツナマヨネーズのサンドイッチを頬張る。
少し空腹を感じていたためだ。

「ん。おいしい」

サンドイッチを味わいながら、真紀はこの殺し合いに呼ばれている
自分の知人、須牙襲禅の事を考えていた。

「あいつ、今何やってるのかな。多分、まだ死んではいないと思うけど。
大好きな銃でもぶっ放しているのかしらね」

元々タフガイな襲禅の事だ、そう簡単には死にはしないだろう。
更に好きなだけ銃が撃ちまくれる環境に置かれているのだから、
さぞや喜んでいるのだろう、と思いながら、
銃を撃ってハイになっている襲禅の顔を思い浮かべながらくすっと笑う。

「……別に心配してる訳じゃないけどさ」

そう、決して心配な訳では無い。
そもそも心配に値する程良い人間(獣人)では無い、須牙襲禅と言う男は。
とにかく警官のくせに言動が粗野で自己中心的、
暴れる酔っ払いを鎮圧するために官給品のニューナンブを発砲したり、
暴走する二人乗りバイクを停止させるためパトカーで体当たりを食らわせたり、
押収品の違法な媚薬やら違法改造拳銃やらを勝手に私物化したりと、
おおよそ警官と言うより成人男性として信じられない暴挙の数々は枚挙に暇が無い。
実際、真紀自身も媚薬を飲まされたりと、中々の被害に遭っていた。
正直、絶対に再会したく無いとさえ思っている。

サンドイッチを食べ終えた真紀は、二六年式拳銃をスカートに差し込み、
サーベルを右手に持ち、デイパックを肩から提げた。
もう十分動けるようになった。行動しよう。
真紀は寝室を後にし、城の正面玄関へと向かった。
途中、自分が射殺した有名野球選手の男――長谷川俊治の死体に出くわした。
うつ伏せに倒れた俊治は、多くの細かい破片が飛び散った床の上に既に凝固し始めている
大きな血溜まりを作り、両目を開いたまま息絶えていた。
口からは大量に吐血をした跡がある。
きっと自分は何千といる彼のファンからの怨恨、憎悪、殺意を買う事になるだろう、
と思いながら、真紀は俊治の死体を通り過ぎる。
玄関ホールの階段を下り、真紀はホールの床に落ちている物に気が付いた。

「これは……野球帽?」

それは日除けの部分が大きく裂けた、黒い野球帽だった。

「長谷川投手の物ね……記念に持っていこうかな」

既に持ち主はこの世にいない、持って行っても誰も文句は言うまい。
真紀は俊治の野球帽を頭に被った。自分の頭には少し大きかった。
正面玄関の扉を開けると、潮風が真紀の緑色の艶やかな髪とスカートを揺らす。
前方には緑生い茂る山が木々を揺らし大きな合唱を奏でていた。

「さて……どこに行こう?」

【一日目/午前/B-6古城玄関】

【新藤真紀】
[状態]:身体中に掠り傷及び軽度の打撲(応急処置済)
[装備]:サーベル、長谷川俊治の野球帽
[所持品]:基本支給品一式、二六年式拳銃(6/6)、9㎜×22R弾(32)、
ラドムVIS-wz1934(5/8)、ラドムの予備マガジン(8×9)、マークⅡ手榴弾(4) 、長谷川俊治の水と食糧(食糧1/5消費)
[思考・行動]
基本:優勝を目指す。積極的に他参加者と戦う。
1:次の目的地は……。
2:知人(須牙襲禅)とは出来れば会いたくない。
3:狐の少女(葛葉美琴)はまた会ったら今度は必ず仕留める。

※長谷川俊治の野球帽を回収しました。



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最終更新:2009年10月03日 20:18
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