サムライとハリセンと少女

F-3に存在する役所のとある一室に、その男は座っていた。
年輪のごとく刻まれた顔の皺は、彼が生きてきた年数を物語る。
来ている衣服の隙間からのぞく肌からは、その年齢を感じさせない逞しさが覗く。
無精髭に覆われた口は一文字に結ばれている。
その鋭い眼光は、一目で誰もが只者ではないと感じさせるものがあった。

彼の名は空蝉。
剣術の達人にて、鳴鏡の守護神。
その姿はまさに『サムライ』であった。


して、その彼は現状に対し困惑していた。
内部抗争により弱体化した鳴鏡を滅ぼさんと捨陰党が攻めてきた。
その決戦に愛弟子辰美が参戦すると聞き、自らも参戦しようと剣を持つ決意をしたところまでは覚えている。
だがその先の記憶が曖昧だ。
気付くと見たこともない大広間にいて、そこにいたメガネの男に殺し合いをしろ、と言われた。
そしてそれに反抗した若い女性が死んだ――その首に巻かれた首輪を爆破されて。
「…気に食わねえ……」
空蝉自身、人を斬るのには慣れていた。
襲ってくる相手に対して容赦しない事は出来る。
だが、今この場に集められた人間はどうだ。
空蝉は、ここにいる人間の大半は殺しとは無縁な位置にいた人間だと確信していた。
その理由は、大広間での女性の首輪が爆破された直後の反応だ。
あの時、周囲の人間はパニックを起こしかけていた。
暗転がもう少し遅かったら、もっと大変な事になっていただろう。
恐らく、というか確実に死に対して『慣れて』いない。
そう言う人間を集めて殺し合わせようとするメガネのあの男。
とても許せたものではない。

空蝉は、剣に関しては相当の実力を誇る。
そのため、支給品には何でもいいから刀剣の類が支給されていれば良い、とそう思っていた。
しかし、出てきたものは――
「何だこりゃ?」
それは、一本のハリセンだった。
どうやら手作りのようで、ところどころに補修された跡が見受けられる。
いくら空蝉が剣の達人とはいえ、これで人を斬る事なんざできない。
他にも何かないか探したが、お守りが出て来た以外は特に何もなかった。
「…仕方ねえ、無いよりマシか。」
そう呟きハリセンを手に取ったその時、扉が開かれた。
そこには緑髪のポニーテールの、やや小さい少女が立っていた。
何と声をかけようか、そう思おうとした瞬間、少女が突然叫んだ。

「あーっ!!あたしのハリセン!!」



「…するってぇと雫、このハリセンはお前さんの私物でお前さんは『ひょーま』って友達を探してる。そしてここがどこなのかは分からないしあのメガネの男は許せない、とそう言いたいんだな。」
「うん。」
その少女――環樹雫はハリセンを見るや空蝉に飛びつき、機関銃のごとく一方的に話しまくった。
流石の空蝉もこれには閉口したが、何とか落ち着かせ今に至る。
「そだ空蝉さん、空蝉さんはなんであたしのハリセン持ってたの?」
「…それしか武器になりそうなものが無かったからだよ。」
今、空蝉は丸腰である。
持っていたハリセンは元の持ち主である雫に返した…というか強引にもって行かれた。
徒手でもある程度動く事は出来るが、やはり丸腰では不安だ。
「それならさ空蝉さん、あたしに支給されたものあげるよ。」
「良いのか?」
「良いよ良いよ、ハリセンのお礼もあるしあたしにはちょっと重すぎるから。」
そう言って雫がバッグから取り出したのは大きな剣――ブロードソードだった。
空蝉と同じ鳴鏡の剣豪、風閂が最も得意とする武器。
空蝉もその武器を使う事は出来るが、正直野太刀や打刀の方が得意である彼にはやや不得意な武器であった。
だが贅沢も言ってはいられない。
空蝉は有り難く受け取る事にした。

「さて、これからどうする雫?」
「ひょーまを探すよ。ひょーまがいればきっとなんとかなる!」
「…そうか、んじゃ俺も手伝わせてもらうぜ。」
「良いの?」
「剣もらった礼だ。それにこんな危険な場所女の子の一人歩きは危ねえだろ。」
「ありがとー!!」



二人のもとに何が来ようとしているのか、当の二人はまだ知らない。





【F-3役所のとある一室/1日目朝】
【空蝉@ブシドーブレード弐】
[状態]:健康
[装備]:ブロードソード@ブシドーブレード弐
[道具]:基本支給品一式、ミコシサマ@クロックタワーゴーストヘッド
[思考]1:雫と共に『ひょーま』を探す。
   2:殺し合いに乗った相手には容赦しない
   3:保護すべき人は保護する。
[備考]:名簿を確認していません

【環樹雫@カオスウォーズ】
[状態]:健康
[装備]:雫のハリセン@カオスウォーズ
[道具]:基本支給品一式(アイテム確認済み)
[思考]1:空蝉と一緒に兵真を探す。
   2:メガネの男(日野)はぶっ飛ばす。
[備考]:第9章、ライゲンとの最終決戦直前からの参戦。どの技を装備しているかは不明。




【支給品情報】

【雫のハリセン@カオスウォーズ】
空蝉に支給。
環樹雫が常に持っているハリセン。
主な用途はツッコミ。たまに壊れるようでそのたび修理しているらしい。

【ミコシサマ@クロックタワーゴーストヘッド】
空蝉に支給。
御堂島優の父、御堂島崇が娘のために与えたお守り。
これがある事で優の中に存在する凶暴な人格『翔』を封じる事が出来るが、実際は普通のお守り。

【ブロードソード@ブシドーブレード弐】
環樹雫に支給。
全長115センチ、刃長85センチ、重量3.5キロを誇る大剣。
他の刀剣に比べはるかに重く、鋭さもそれほどないため斬ると言うより叩きつけるように攻撃する武器。
鳴鏡の風閂が最も得意とする武器である。




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最終更新:2011年08月05日 10:00
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