危険好きの誰かのふりをする小心者共

29話 危険好きの誰かのふりをする小心者共

不快な言葉使いの主催の男の放送が終わる。
碑文谷直紀、東儀由利恵の二人は学校に向かったコンスタンツェ、色部義徳が、
少なくともまだ生きている事を確認する。

「あの二人はまだ生きているみたいだな」
「うん」
「しかしもう13人も死んでんのか…パーヴェルって奴もまだ生きているみてぇだし」
「……」
「大丈夫か? 由利恵」
「うん、もう平気」

先刻、襲撃者に強姦された由利恵の心の傷はまだ癒えきっていなかったが、
本人は直紀に心配をかけさせまいと、気丈に振舞う。
しかしそれが直紀を更に悲しい気持ちにさせた。

(…今度は、絶対守らないと…)

そう、直紀は心に決める。

「……大丈夫だろうな、あの二人」
「コンスタンツェさんに、色部君?」
「…ここ守るって言ったけど…今行ったら多分、入れ違いになるよな」
「……」

学校へ向かった二人の事が心配になってくる直紀と由利恵。
しかし拠点にしているこの民家を守備すると宣言した以上簡単に出歩く訳には行かない。

……

「…人の気配」

放送後、街を歩いていたマクシミリアンはとある民家――原田と表札が掛かっている――の中から、
人の気配を感じた。人間より鋭敏な聴覚が微かに原田家の中から聞こえる声を感じ取る。

「…これを使ってみようか」

デイパックから、先刻殺害した参加者から奪ったある物を取り出す。

それの導火線に、調達した100円ライターで火を点け、
原田家の玄関先に投げ込んだ。

……

バチバチバチバチバチッ!!

「! 何だ!?」
「玄関の方から…」

突然玄関方向から響く花火のような音に、直紀と由利恵は玄関の方へ向かう。

玄関扉を開けると、火薬の臭いと煙が漂っていた。

「これは…爆竹?」

直紀が足元の燃えカスを見て言う。
爆竹だとしたら、誰が何のために――――そこまで考えた時、直紀は背筋に悪寒が走るのを感じた。

「由利恵、戻っ」

そこまで直紀が叫んだ直後、門の陰から飛び出す茶色の毛皮の竜。
ニヤリと笑みを浮かべながら、手にしたCZE Vz25短機関銃を二人に向けて乱射する。

ダダダダダダダダダッ!!

放たれた無数の9㎜パラベラム弾は、狼獣人の少年と金髪ツインテールの美少女の身体を、
容赦無く穿ち、引き裂き、奇妙なダンスを強制的に踊らせる。
やがてVz25が空になると、直紀と由利恵は血塗れで原田家の玄関先に横たわった。

「…こんな簡単な陽動に引っ掛かるとは、甘いな…」

茶色の竜、マクシミリアンは嘲るように言いながら、
死体となった二人に近付く。持っている武装を回収するために。

しかし、マクシミリアンもまた、詰めが甘かった。

由利恵が、持っていたルガーP08拳銃の銃口をマクシミリアンに向けた。

彼女はまだ生きていた。

「……甘いのはあなたも一緒だよ」

ダァン!

一発の銃声が住宅地に響く。
放たれた銃弾はマクシミリアンの首輪の中央部分に命中し、
その衝撃で、マクシミリアンの首輪は炸裂した。
喉笛に大きな穴が空き、血液を噴き出し、撒き散らし、傷口を押さえてもがき苦しみながら、
マクシミリアンは原田家の門前辺りで崩れ落ち、ピクピクと痙攣した後、血溜まりの中で静止した。

そして間も無く、由利恵も静止する。永遠に。

住宅地が再び静かになった。


【碑文谷直紀:死亡】
【マクシミリアン:死亡】
【東儀由利恵:死亡】
【残り14人】


もっとEX俺オリロワ第一回放送 目次順 動く者、動かない者

女の防衛戦 碑文谷直紀 GAME OVER
女の防衛戦 東儀由利恵 GAME OVER
いばらのみち マクシミリアン GAME OVER

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最終更新:2011年05月28日 23:42
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