欲望に忠実になってた結果がこれだよ!

第二十八話≪欲望に忠実になってた結果がこれだよ!≫

ピンク色の髪の可愛いおにゃのこを謎の襲撃者によって取り逃がした俺、富山醇一は、
新たな女を探し市街地を歩き回っていた。
何のためにかって? ムフフフ、俺、童貞なんだ。童貞のまま死にたくないんだよ。
ここまで言えば、もう分かるだろォ?
しかしピンク色の髪のおにゃのこと会ってからと言うもの、
別の女どころか他参加者に誰一人として会っていない。
遠くから微かに悲鳴のようなものや銃声は聞こえるからいるにはいるんだろうけど。
運が良いのか悪いのか……。

しかし、誰もいない住宅地っていうのがこうも不気味だとは思わなかった。
いつも住宅地とか歩く時には誰かしら歩行者はいたもんなぁ。
犬の散歩をしているおじいさんとか、幼い娘を連れて買い物に行く母親とか、
友達同士で遊びに行く小学生とか。
でも、そういった歩行者達の(特に女性の)俺に対する視線はまさに、
汚い物でも見るような、嫌悪に満ち溢れた目ばかりだったな。
ま、原因は分かってるけどねッ! 反省なんかしないけどッ!
……お? 向こうから白い髪を持った狐獣人の女が歩いてくるじゃねぇか。
向こうはまだ俺に気付いていないようだな。
フフフフフ、やっと出会えたぜ別の女に!
そうと来れば、早速路地裏に隠れて……。


私、霧島弥生は閑静な住宅街の道路を歩いていた。
あの馬鹿なお巡りさんを殺した後、山を下り、この住宅街にやって来たんだけど。
スカートに差し込んだ、お巡りさんから奪った登山ナイフが今の私の武器。
私自身の支給品はブーメランと和英辞典で戦いには全く役に立ちそうに無い。
出来ればもっとマシな武器が欲しかった。
私には正面から戦って武器を奪うなんて器用な真似は無理。
そんな戦闘力持ち合わせていない。
だから、他参加者に上手く取り入り、油断させ、隙を見て武器を奪い、殺す。
それが私のやり方。別に良いよね? だってこのゲーム、反則無しなんでしょ?
そんな事を考えていたその時、突然後ろから誰かに羽交い絞めにされ、マズルを掴まれた。

「!!? !?」

突然の出来事に動揺する私。
私の耳元で、男の荒い息遣いが聞こえた。

「うひひひひひひひ、やっと見付けたよぉ~」

変態っぽい笑い声をあげながら、男は左手で私のマズルを掴んだまま、
右手で大振りの鋭利そうなナイフを私の喉元に当てる。

(こ、殺される!?)

私は死を覚悟したが、どうやら男の目的は違う所にあったようだ。
男は私を路地裏の地面の上に仰向けに押し倒した。
私の視界に、ロン毛でニキビだらけの超絶不細工なデブメガネの男が入ってきた。
何と言う事でしょう、私は20年生きてきましたが、こんな不細工は見た事ありません。
ちょっと、これ特殊メイクじゃないの? と思うくらい酷い。
そう思っている間に、男は私の衣服を無理矢理脱がし始める。
……ああ、成程。こいつの目的分かったわ。成程ね。

「ちょ、ちょっと待って……こんな場所じゃ嫌よ」
「えっ?」

男が動かしていた手を止め、拍子抜けした声を上げる。
どうやら私が”それ”に同意するような発言をするとは思っていなかったらしい。
まあ何故私が”それ”に同意するような言葉を発したのかと言いますと、
男の持っているナイフ――それが目的なのよね。
私が持っている登山ナイフより遥かに強力そうだし、
出来れば遠距離攻撃の出来る銃が欲しいけど、無い物ねだってもしょうがないわ。

「そ、そこの家の中で……ね?」
「え? マジ? マジでいいの?」

案の定、男は食い付いてきた。
多分、童貞ねこいつ。そりゃこんな容姿じゃ春は来ないわ……。

「うひゃひゃひゃひゃ!! よっしゃ~可愛がってやるぜ~」
「いや~ん、優しくしてぇ~」

男は私をお姫様抱っこしながら、喜び勇んですぐ近くの民家に入っていく。
ふふふ……馬鹿な男。


数十分後。
私はシャワーを浴び終え、民家のリビングに戻ってきた。
そして家の中を漁って見付けた女物の下着とYシャツ、青いタイトスカートを身にまとい、
ソファーに座って人心地付く。
二階の寝室には、さっきの変態男の死体が転がっている。
あの男が絶頂を迎えたのと同時ぐらいに、背中に思い切り登山ナイフを突き刺してやったわ。
男は突然の激痛に思い切り悲鳴をあげてのたうち回り、
次第に白目を剥いて動かなくなった。
それで男の持っていたナイフ、男のデイパックの中に入っていた閃光弾3個、水と食糧を頂戴した後、
身体に付いた色んな汚れを洗い落とすためにシャワーを浴びたって訳。
丁度お風呂に入りたかったし、返り血の付いた服を着替えたかったからね。
しかし、自分に合いそうな服が置いてあって良かったわ。
尻尾のための穴が空いていたから、この家には獣人が住んでいたのかな。

「ちょろいわね~ホント男って馬鹿」

しかし今まで何人もの男と経験を持ってきたけど、さっきの男は一番酷かった。
もう完全に「自分だけ気持ち良くなればいい」みたいな感じで。

「まあいいんだけど、さて……これからどうしようかな」

冷蔵庫の中に入っていたオレンジジュースをコップに入れて飲みながら、
次にどうするか考える。
二階に不細工デブメガネの男の死体がある家に隠れているのも嫌だし。
隣の家でも調べてみようかな……。
私は自分のデイパックを拾い上げ、腰の両脇にホルスター入りの登山ナイフと、
男から奪ったハンティングナイフを吊り下げる。
玄関から出ると人目に付き易いから、台所にある裏口から外に出る事にした。

裏口を抜けると、目の前には1メートル弱の石造りの塀。
民家は家の周りを塀で囲まれている。
ふと右手方向を見ると、壊れた石油ストーブが置かれていた。
このストーブを踏み台にすれば、隣の民家の敷地内に入れそうだ。
私はストーブの上部に足を掛け、塀に上り、隣の民家の敷地に飛び降りた。

「この民家でも調べようか」

私は裏口から民家内部に侵入した……。


【一日目/午前/F-3住宅街大島家】

【霧島弥生】
[状態]:健康
[装備]:登山ナイフ、ハンティングナイフ
[所持品]:基本支給品一式、ブーメラン、和英辞典、閃光弾(3)
[思考・行動]
基本:優勝を目指す。
1:基本的に正面から戦うというより、不意を突いて殺すという手段を取る。
2:民家(大島家)の探索。
3:銃器が欲しい。
[備考]
※服を着替えました。元々着ていた服はF-3住宅街伊藤家内に捨てられています。


【富山醇一  死亡】
【残り38人】


※F-3住宅街伊藤家二階寝室に富山醇一の全裸死体、富山醇一のデイパック
(水と食糧抜きの基本支給品一式)が放置されています。





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最終更新:2009年09月27日 21:37
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