14話 のらりくらりと罪深き
青い髪を持つ高校生の少年、宮崎賢也は住宅街をぶらぶらと歩いていた。
手にはサバイバルナイフが握られている。
見た目は危ない高校生そのものである。
「どうしようかな…」
「ねぇ、そこの君」
「ん? ……」
制服姿の狼獣人の少女に声を掛けられる。
(俺の学校の制服だけど、見た事ねぇな…そもそも同じ学年かどうか)
「その制服、私と同じだよね?」
「そうだな」
「私、三年の中丸優って言うんだけど」
「三年? じゃあ先輩ですか…俺、二年の宮崎賢也っす」
「そうなんだ…」
同じ学校に通う二人だったが学年が違うためか面識は全く無かった。
「…所で中丸さん、こんな殺し合いの中、何で普通に話し掛けてきたんですか?」
「え? あ、いや、私と同じ学校の男子制服だったからつい」
「…殺し合いに乗ってるかどうか聞かないんすか」
「……乗っているの?」
少し表情を引き攣らせながら優が賢也に尋ねる。
ここに来て優は自分の軽率さを後悔した。
今は殺し合いの場にいるのだ。誰が襲い掛かってくるか分からない状況で、自分と同じ学校の生徒だったからと言って、
無警戒に声を掛けてしまうのは自殺行為だ。
「……」
賢也は後頭部を掻きながらしばし考えると答えを出した。
ヒュッ
「!!」
ナイフによる斬撃と言う答えの仕方で。
寸での所で優は両手で賢也の両手を押さえナイフが刺さるのを防いだ。
振り払い距離を取る。
「…何でこんな殺し合いに!?」
「…何でって言われてもですね…それがこのゲームのルールなんでしょ? 俺はそれに則ってるだけですよ」
「馬鹿な事を…!」
自分に支給された武器をスカートの腰の部分から取り出す優。
それは大型軍用自動拳銃コルト M1911、通称コルト.45オートであった。
両手で構え銃口を賢也に向ける。
「おっと、銃持ってたんですか」
「止まって! 下手な事したら引き金を引くわ」
「むぅ」
流石に銃を向けられては下手な行動に出る事は出来ない。
賢也は動きを止めた。
「悪い事言わないから殺し合いなんて止めて」
「…じゃあどうするんですか?」
「殺し合いに乗ってない人集めて、何とか、脱出出来る手段を探すのよ」
「…本気で言ってるんですか? 首に爆弾付きの絶対外せない首輪あるんですよ?」
「でも…だからって」
「はぁ…話の分からない人だ」
賢也は優の一瞬の隙を突き、サバイバルナイフを優に向かって投げ付けた。
ドスッ
「あ゛っ!?」
綺麗に、優の腹にサバイバルナイフの刃が刺さる。
その時の衝撃で優は思わずM1911の引き金を引いてしまう。
ダァン!
「おっと!」
しかしそれを予測していた賢也は身体を横に跳ばし難なく銃弾を回避した。
優はM1911を路上に落としサバイバルナイフが刺さった腹を押さえ悲鳴を上げる。
「ああぁああ! い、痛い…! 痛いよぉ!」
「痛いですか? 大丈夫です、すぐ楽にしてあげますよ」
賢也は優の落としたM1911を拾い、銃口を優に向けた。
「さようなら」
数発の銃声が響いた。
……
「銃が手に入ったのは良かったな。さて次行こうか…」
【中丸優:死亡】
【残り24人】
【早朝/C-5住宅街】
【宮崎賢也】
[状態]健康
[装備]コルト M1911(3/7)
[道具]基本支給品一式、コルト M1911予備マガジン(3)、サバイバルナイフ
[思考]
1:面白そうなので殺し合いに乗る。特に優勝したい訳では無いが。
2:次の獲物を探す。
[備考]
※特に無し。
※C-5住宅街路上に中丸優の死体及びデイパック(基本支給品一式)が放置されています。
≪キャラ紹介≫
【宮崎賢也(みやざき けんや)】 17歳/男/人間/高校二年/日本風異世界国家出身
青髪の少年。冷めたような目付き。殺人もののネット小説を良く読み漁る。
人当たりは良いが本心を誰にも見せない所があり親友と呼べるような人は少ない。
身体能力は高く、頭もかなり良い。中丸優は面識は無いが同じ学校の先輩。
【中丸優(なかまる ゆう)】 18歳/女/狼獣人/高校三年/日本風異世界国家出身
灰色と白の狼獣人。美乳。テニス部所属で強力なスマッシュが持ち味。
家が電気屋で家電製品の構造に詳しい。そのため友達から電気製品の修理を頼まれる事も多い。
料理が致命的に下手で、試食した友人から「路地裏味」「自分の中のもう一人の自分が拒否している」と酷評されている。
最終更新:2011年05月28日 18:16