「なんだってんだ、こりゃ」
暗闇に包まれた森林にて一人の男がぼやいた。
緑色の髪に黒染めのズボンとブーツ。
その黒に対比するかの様な真っ白なシャツに緑色の腹巻き。
どうにもアンバランスな服装な男――ロロノア・ゾロはいきなり起きた事態に訳が分からずにいた。
昨晩はいつも通りムサい男部屋で眠りについた筈だ。
なのに目を覚ませば訳の分からない部屋にいて、見知らぬジジィの訳の分からない演説を聞いた後、知らない男が殺された。
自らの首元に触れ、指先に伝わる冷たい感触に小さく舌打ちをする。
眼鏡の男を殺した鉄の輪がゾロの首にも着けられていた。
「さて、どうするか……」
正直言って面白そうではある。
あの部屋には相当強そうな奴らもいたし、修行には持って来いかもしれない。
ゾロの顔に野獣を思わせる笑みが浮かぶ。
元々、彼自身は非常に好戦的な性格だ。
喧嘩を売られれば買うし、襲われれば命を奪う覚悟もある。
だが――。
「……取り敢えずはあいつらを探すか」
あの場には殺し合いなどとは縁が無さそうな子供もいた。
襲ってくるのなら別だが、無力な子供を殺すほど、ロロノア・ゾロという人間は腐っていない。
――それに、どうにも嫌な予感がする。
ルフィ、コック、ロビン、フランキー、ブルックの五人がそう簡単に死ぬとは思えないが、残りの三人は実力的に危ういところがある。
早めに合流しといて損は無いだろう。
「で、だ」
このゲームに置ける行動方針は決まった。
後は適当に歩き回り、殺し合いに乗った奴らと戦いながら仲間を探せばいいだが、一つだけ気掛かりな事がある。
それは。
「何で刀が無い?」
何時も腰に刺さっていた三本の刀。
相棒とも言える刀達は影も形も見せずに、目下行方不明中。
右に、左に、首を回すも当然刀達は落ちていない。
試しに、何時の間にか肩に掛けられていたデイバックを漁るが――あった。
バックから手を出すと、そこには一振りの刀。
しかもその刀はゾロが持っていた三本の内の一本。
だが――おかしい。
「なんで雪走が……」
そうそれは、確かにあの時――エニエスロビーの戦闘で死んでしまった筈の刀『雪走』。
試しに鞘から抜いてみると、新品と見紛うばかりの光沢を放つ綺麗な直刃があった。
『偉大なる海路』にて、様々な冒険を共に潜り抜けて来た相棒だ、見間違えるはずがない。
目の前の刀は、正真正銘本物の『雪走』であった。
(あのジジィが修復した……?いや、無理だな。直せる傷じゃあなかった)
不可思議な状況に首を傾げつつ、雪走を腰に差すゾロ。
しっくりとくるその感触に頬を弛ませながらゾロは立ち上がった。
色々と疑問はあるがまずは後回し、仲間と合流すべく動こう。
歩き始めようと足を上げた瞬間――――ゾロの動きが止まった。
刀へと手を掛け、後方の闇を向く。
「ほう、気付いたか。なかなか鋭い……」
温和そうな印象を与える口調の言葉と共に、一人の男が闇の中から現れる。
柔和な微笑みと威厳を感じさせる顔付き。
その片方の眼は、漆黒の眼帯が覆っている。
服は青を基調とされていて、雰囲気から見るに恐らく軍服であろう。
「誰だ、あんたは?」
油断無く雪走を構え、ゾロが問う。
対する男は優しげな微笑みを浮かべたままゾロに一歩近付き、口を開いた。
「ちょっと聞きたい事があるんだが」
「……なんだ?」
「エドワード・エルリックという少年と、アルフォンス・エルリックという鎧姿の男を見なかったか?」
「見てねぇな……ここに飛ばされて人に会ったのはあんたが初めてだ」
「ふむ、そうか……」
ゾロの答えに男は、顎を抑え何かを考え始める。
そして、数秒後、顔を上げ真っ直ぐにゾロを見つめた。
「それではすまないが、死んでくれ」
その言葉を放った瞬間、男の瞳から温かみが消失。
まるで猛禽類の如く鋭い眼光がゾロを貫いた。
「はっ、猫被りはもう止めんのか」
だが、その視線にもゾロは怯まない。
むしろ、楽しそうに笑みを浮かべる。
「……良い瞳だ。力強く、誇りに満ちている」
「ありがとよ、ちょび髭」
ゾロの不遜な物言いに苦笑するかの様に、笑みを浮かべる男。
だが、それも一瞬。
眼光は鋭さを取り戻し、デイバックから出した得物を構える。
と、男が取り出した得物を見てゾロの表情が変化した。
「……それは」
「なかなかの業物らしくてな、良い刀だろう?」
「ああ、確かに……流石は俺の剣だ」
瞬間、ゾロが踏み込んだ。
月光に照らされた刃が、白銀の線を描き、男へと迫る。
「返してもらうぞ」
驚異的な速さの一閃。
常人だったら反応すら出来ないであろう一撃。
だが、眼帯の男は、事もなげにその一撃を受け止めた。
刃と刃が火花を散らし、鍔迫り合いの状態に変化。
二人の剣士の力を真っ正面から受け、二本の業物が激しい金属音を上げた。
「へぇ、やるじゃねぇか」
余裕の笑みで語り掛けるはロロノア・ゾロ。
対する男の表情は苦々しく歪んでいる。
(……なんという力だ)
全体重を刀に乗せ、何とか鍔迫り合いの状態を保ってはいるが、直ぐに崩れ去りそうなほど危うい。
「いくぜ」
――瞬間、男の体が宙に浮いた。
それは単純な剛力。
海賊狩り時代、そして海賊となってから経験してきた様々な戦闘、馬鹿とも言える様な過酷な特訓。
それにより培った人間離れした剛力。
「くっ……!」
空中で姿勢を整えるも、膝をついてしまう。
顔を上げた時には、緑髪の男が迫っていた。
一瞬の間に何十と繰り返される剣戟。
振るわれた白刃を自らの白刃で受け止めるが、やはり圧し負ける。
(正面からは不利か……)
一筋の汗と共に、タン、と後ろに下がる男。
それは逃げとも言える行動。
一流の剣士に対し退くという事、それは敗北と同意義。
「一刀流居合――」
瞬間、ゾロの姿が欠き消える。
いや、消えたと思える程の速度で男に接近。
文字通り目にも止まらぬ早さで抜刀、一閃。
「――獅子歌歌!!」
技名を叫んだ時には、既にロロノア・ゾロは剣を鞘に収めていた。
そして――ゾロの右肩から左脇に掛けてを真紅の線が走った。
「な……!?」
自らの身体に現れた傷を信じられない様な表情で見詰めるゾロ。
灼けるような痛み。
流れ出す血液。
ゾロの意識は、急速に霞の中へと消失した。
――それは、一瞬の攻防。
全身刀の殺し屋、政府直属の暗躍機関に属する剣士ですら、避ける事が叶わなかった一撃を易々と回避した男は、カウンターの斬撃をロロノア・ゾロへと叩き込んだ。
その一撃は、幾多の死線を潜り抜けてきたゾロですら、知覚不能。
麦わら海賊団『海賊狩りのゾロ』は異世界の剣士に――敗れた。
□
「人間とは思えない戦闘力……。力、スピードだけで言えば私よりも上……だが剣術のレベルはそう高く無い」
ゾロが倒れたのを確認し、男――キング・ブラッドレイが小さく呟いた。
それと同時に刀――和道一文字を振るい、纏わりつく血液を落とす。
(さて……これからどうするか。
眼が覚めたらこの様な訳の分からない殺し合い。しかもエルリック兄弟、ロイ・マスタングまで参加している)
ブラッドレイは冷静に思考する。
父の目的には必要不可欠な人柱、または人柱に成りうる男達。
彼等は、殺すには惜しい人材だ。
出来れば彼等を殺さずに脱出をしたい、だがそれは可能なのか?
この首に付けられた、まるで犬を連想させる無骨な首輪。
これが爆発したら、十中八九自分は死亡する。
自分以外の人造人間(ホムンクルス)ならばどうという事もないだろうが、自分は些か特殊な人造人間(ホムンクルス)。
普通の人間の場合も同様だ。
考えるまでもなく、死亡する。
それに此処に倒れている緑髪の男の様に、常人離れした戦闘力を持つ人間が他にも居たら、国家錬金術師といえど後れをとる可能性はある。
この殺し合いの場に於いて、死は誰にも平等に襲い掛かる――そう自分にも。
ブラッドレイは頬に走る一筋の線に触れた。
その傷からは久しく見ていない、真紅の液体が流れている。
相当に錬度の高い抜刀術であったが、本来なら十分に避けきれた一撃であった。
『最強の眼』は伊達ではない。
相手がどんな化け物であろうと、一対一である限り、自分に攻撃を当てるなどあり得ない筈だ。
だが、命中した。
何時もと何か勝手が違う。
『最強の眼』に映る世界が何時もと違う。
何時もよりも世界が早いのだ。
これはおそろく――
「――能力の低下か」
だが、あの狂った老人がそんな強力な能力を持ってるようには見えなかった。
ならば、この首輪によって制限されてる可能性が高い。
『最強の眼』が著しく制限されたこの状態。
そして、首には爆弾の仕込まれた首輪。
結局のところ、自分も鎖に繋がれた犬と変わらない。
尾を振り主人の御機嫌を取る醜悪な犬となるか、来る好機に向け心の中で牙を研ぐ狼となるか。
――人在らざる者、キング・ブラッドレイは選択する。
□
空に浮かぶ月が、漆黒の中に綺麗な円を描いている。
男はその月光の下、歩いていた。
手にはゾロから奪った二振りの業物、雪走と和道一文字。
男は選択した。
――この殺し合いに乗る事を。
――醜悪な犬として生き抜く事を。
ただ、主人に尾を振る事は無い。
ブラッドレイが尾を振るのは、自らを産み出してくれた父に対してのみ。
ブラッドレイが選択した道は『エドワード・エルリック』以外の人間を皆殺しにする事。
人柱にして、弟のアルフォンス・エルリックよりも実力を持った少年――今この場にいる人柱、人柱候補の中で、最も父に必要な人間。
彼を元の世界、父の元へと帰す為、ブラッドレイは犬となった。
【一日目/深夜/D-7・森林】
【キング・ブラッドレイ@鋼の錬金術師】
[状態]健康、頬に傷
[装備]和道一文字@ONEPIECE、雪走@ONEPIECE
[道具]基本支給品一式。
[思考]
基本:エドワード・エルリックを優勝させ、元の世界へ帰す。
1:参加者を探し見つけしだい殺害する。
2:武器を探す。
[備考]
※治癒力が制限されている事に気付きました。
□
――それはロロノア・ゾロとキング・ブラッドレイが戦闘している最中の事。
一人の少年が、その超人同士による現実離れした戦いに目を奪われていた。
「な、なんだよ、コレ……」
少年の名は前原圭一。
雛見沢という平凡な村に住む、平凡な少年だ。
圭一は、目の前で起こった、また現在進行形で起こっている出来事に混乱していた。
平和な生活を送っていた筈なのに、何時の間にか見知らぬ場所に連れてこられ――富竹さんが×された。
そして、その光景に茫然としていたら、今度は真っ暗な森の中。
急展開と言うのも生易しく感じる程、急激に移り変わっていく事態。
結果、前原圭一の精神は摩耗していった。
――誰でも良い、人に会いたい。
――自分と同じ様にあの教室に居たレナに、魅音に、会いたい。
その一心で森の中を歩き回り続け、その願い通り圭一は人を発見した。
異常な戦闘を繰り広げる二人を――。
「ほ、本当にあいつら人間かよ……」
知らず知らずの内に漏れた圭一の呟きは、誰にも聞こえる事なく、刀と刀がぶつかり合う音にかき消される。
「こんな化け物達を×せって言うのかよ……!」
無理だ。
例え自分が人を殺す覚悟を持ったとしても、もし銃がこの手にあっても、到底、勝てる気がしない。
――逃げよう。
こんな戦いをしてる奴等だ、殺し合いに乗ってるに違いない。
見つかったら殺される。
そう判断した圭一はゆっくりと後ろに下がる。
幸いな事に、二人共、戦闘に没頭していてコチラには全然気付いていない。
一歩、二歩、三歩、後退る。
そして一目散に逃げようとし――二人の内の一人が倒れた。
「あ……」
倒れた、と言う事は勝負がついたのだろう。
つまり――死んだのか?
さっきまで化け物みたいなスピードで動き回っていた男が、死んだのか?
間近で見た人の死に、先程、首を吹き飛ばされて死んだ富竹の姿――必死に思い出さないよう努めていたその無惨な姿が、頭に思い描かれた。
瞬間、圭一を襲う強烈な吐き気。
喉の奥、胃の底から甘酸っぱい何かが込み上げてくる。
圭一は口を抑え、その場に膝を付く。
「うっ……エ゛ェッ」
そして恥も外見も無く、圭一はその場に膝わ付き、胃の中身を吐き出した。
「レナ……魅音……」
粗方胃の中身を吐き出した後、圭一がポツリとつぶやいた。
それは、掛け替えのない親友達の名前。
あの二人も富竹さんの様に、倒れた男の様に、殺されてしまうのか。
胸を抑え立ち上がると、そこには誰も居ない。
あるのは緑髪の男の死体のみ。
再度込み上げる吐き気に耐えながら、圭一はその死体へと近付いていく。
死体はうつ伏せの状態で倒れていた。
先程までこの男が持っていた、刀らしき武器は何処にも無い。
勝負に勝った男が持っていたのだろう。
「…………」
圭一は黙って男の傍らに落ちているデイバックに手を伸ばした。
死人から物を奪う事に気が引けるが、この様な異常事態だ、仕方がない。
圭一はバックを拾い上げ、チラリと死体に目を向ける。
「ごめん……生き延びる為なんだ……本当にごめん」
最後にそう言い、立ち去ろうとした時――圭一はある事に気付いた。
(い、生きてる……?)
死体の背中がリズム良く上下している。
まるで、呼吸をしているかの様に、生きているかの様に。
――ヤバい。
即座にデイバックを肩に掛け、逃げ出そうとする圭一。
このまま此処に居たら、デイバックを奪うところを見られたら、×される。
あんな戦闘をする化け物だ。
自分の様な子供など、素手でも楽に×せるだろう。
――そうだ!俺みたいな普通の人間なんて、直ぐに×されちまうんだ!
レナも、魅音も、みんな!
その時、稲妻のような衝撃が圭一の脳内に走った。
――ちょっと待て、前原圭一。
今、この瞬間なら、この化け物も倒せるんじゃないか……?
いくら強くたってこの男は気を失っているんだ。
ほら、良く見ろよ。全然、隙だらけじゃないか。
あのマリモみたいな頭に、金属バットか鉈でも振り下ろせば、この化け物は死ぬ。
……そうすれば誰も死なない。
レナも魅音も、少なくとも、この化け物に殺される事はなくなる。
そうだ殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ――――何を考えてるんだ、俺は。
大事な事を忘れている。
トドメを刺す為の武器が無い。
素手で殺すか?
無理だ。
殺し屋じゃあるまいし、ただの学生に素手で人を殺す力なんて無い。
絞め殺すという方法もあるが、この男が目覚めてしまったら終了だ。
逆に絞め殺されてしまう。
どうする、やっぱり逃げるか――?
呼吸を荒く一歩後退した。その時、圭一はある事に気付いた。
――デイバック。
そうだ、あの爺さんが言っていた。
ランダムに武器になりうる支給品が支給されてる、と。
落ち着け、クールになれ。
倒れ伏すゾロを警戒しつつ、圭一はバックを漁る。
瞬間、何かが手に吸いつくのを感じた。
圭一は迷う事なくそれをバックから引き抜く。
圭一の右手に握られた物、それは――
「これは……」
――何処か見覚えのある金属バット。
様々な世界で圭一に使用される事となる金属バットが圭一の手の中にあった。
「殺せる……」
この金属バットを男の頭目掛けて振り下ろせば、この化け物のような実力を持つ男を、自分が殺せる。
見逃せば他の誰か――レナや魅音を襲うかもしれない。
殺せ、殺すんだ。
今まで経験した事のない、いや考えた事すらない、平穏からはかけ離れた思考――人を殺すか、否か。
呼吸は荒くなり、汗が噴き出す。
一瞬、だが圭一にとっては何時間と感じる思考ののち――
「殺す、んだ。此処でこの化け物を殺さないと、レナ達が……殺されちまう!」
――圭一は選択した。
目の前の男を殺す、その道を。
もし圭一が本当に冷静であったのなら、選ぶはずのない選択肢を、選択した。
バットを握り締め、倒れ伏している男へと近付く圭一。
(殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ――殺すんだ!)
バットを振り上げる。
それ程の重量を持たない筈のバットが異常に重く感じた。
そして、時間が止まったかのように、圭一の動きが止まる。
だがそれも一瞬。
「うぉぉぉぉおおおおお!」
獣のような咆哮と共に金属バットを振り下ろした。
(――殺った!)
金属バットを振り下ろす最中、圭一は確信する。
自分の全力、全体重を乗せての一撃。
確かにこの一撃が当たればロロノア・ゾロとはいえ、制限下に置かれた今なら死ぬ。
その緑色の頭から、漆黒の血液や薄黄色の脳髄を噴き出し、その生涯を閉じるだろう。
――当たれば、だが。
圭一の耳に届いた音は、頭蓋を叩き割る鈍い音ではなく、小気味よいパシッ、という音だった。
まるで固定されたかのように、ピクリとも動かないバット。
バットを掴む大きな手。
そして、肉食獣のような鋭い瞳で睨む男――気絶から覚醒している。
「……何やってんだ、テメェ」
「あ、ああ、あ……うわぁぁああああ!」
恐怖。
男の瞳に――本物の殺意が籠もった瞳を見た瞬間、圧倒的な恐怖が圭一の心を支配した。
ただひたすらに、恥も外見も、唯一の武器も振り捨て走り出す。
だが、相手は一億二千万の賞金を賭けられる剣士。
当然逃げられる訳もなく、
「逃げれると思ってんのか?」
その言葉が耳に届いたと同時に、圭一の意識は闇の奥へと消えていった。
□
「何なんだ、コイツは」
目を覚ましたと思えば、直ぐ目の前に迫る金属バット。
反射的に掴み止め持ち主を見ると、見知らぬ少年。
そして、まだガキとも言える見た目とは裏腹にその瞳が映し出していたものは、ドス黒い殺意。
面白い、そう思い睨み返してやると、脱兎の如く逃走。
反射的に当て身をして意識を飛ばした。
そして、今現在そのガキは自分の足元で気絶している。
「このまま放っておくってのもな……」
数秒の思考の後、圭一を肩に担ぎ歩き始めるゾロ。
その様子からは肩からの一閃に対するダメージは見受けられない。
――ロロノア・ゾロは生きていた。
流石にピンピンしているとは言えないが、行動に支障が出る程でもない。
それは圧倒的な耐久力。
元来の異常なタフネスに加え、麦わら海賊団に入団してからの様々な冒険。
何時しか、その耐久力は化け物と敬称されるまでになっていた。
それは、人造人間キング・ブラッドレイでさえ見誤る程に常人離れした耐久力であった。
雪走は無くなっていた。
おそらくあの眼帯が持っていたのだろう。
何で気絶していた自分に止めを刺さなかったのかは分からない。
だが、自分は確かに敗北した。
獅子歌歌を避けられ、返しの一撃で自分の意識は途絶えた。
眼帯が放った最後の一撃は反応する事も、知覚する事すら出来ない程に早かった。
貧弱な力とは裏腹の圧倒的な技量。
剣士に対する二度目の敗北。
だが、自分は生きている。
ならば、何度でも挑戦しよう。
奴に勝った時、自分は今の自分より遥か高みに居るのだから。
最強の剣士に一歩近付く事ができるのだから。
「俺を生かして置いた事を後悔するんだな、眼帯チョビ髭……!」
決意を新たに剣士は歩く。
その背に危うげな少年を背負いながら。
【一日目/深夜/C-7・森林】
【ロロノア・ゾロ@ONEPIECE】
[状態]右肩から胸までの切り傷。
[装備]悟史のバット@ひぐらしのなく頃に
[道具]基本支給品一式×2
[思考]
基本:仲間を探す。
1:圭一が目を覚ますまで周辺を探索。
2:刀が欲しい。
3:三本の刀が揃ったらブラッドレイにリベンジ。
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]首に極軽度の打撲、錯乱気味
[装備]なし
[道具]なし
[思考]
基本:仲間と合流、仲間の為、殺し合いに乗ってる奴を殺す。
0:気絶中
1:レナ、魅音と合流したい。
2:他の殺し合いに乗っていない参加者とも会いたい。
最終更新:2010年07月22日 12:55