時報(オープニング)


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肩にまで掛かる長髪、鋭角に尖った鼻と顎。
男――伊藤カイジは覚醒後、数瞬で自分が置かれている状況の異常さに気付いた。

(何だ……これは……?)

カイジを包むは闇。
清々しい太陽の光も、人工的だが温もりを感じる蛍光灯の光もない。
ただただ暗闇が周りを包んでいる。
事態を確認しようと立ち上がろうとするも、一つの光の輪が体と椅子とを繋ぎ止め不可能。

――バインド。

カイジは知る由も無いが、それは屈強な魔導師をも拘束する事が出来る魔法であった。

(な……なんなんだ!これはっ……!)

自分の知識の外に存在する拘束具、そして明らかに異常な事態にカイジの思考が荒れる。

灯りの一欠片も無い真っ暗な部屋。
自分を拘束する見知らぬ光の輪。
異常、異様、異質。

どす黒い恐怖が心を侵略し始める。

「だ、誰か居ないのかっ……!」

恐怖に押し負けたカイジが叫んだ瞬間、部屋の照明が一斉に灯った。
光に照らされ部屋の様子が、カイジの目に飛び込んでくる。

(教……室?)

いきなりの事態に恐怖心も吹き飛び、ゆっくりと自分が居る部屋を観察する。
それは、窓が無い事を除けば、一昔前の小学校や中学校の様な教室。
綺麗に並べられた椅子にカイジを含め、数十人の人が腰を下ろしている。
幼稚園生の様な金髪の児童や、中学生くらいの少年少女、赤いロングコートを羽織った不気味な男、と多種多様な人がカイジと同じ様に、光の輪で椅子に拘束されていた。
困惑した様子で辺りを伺っている者も居れば、何かを考え込んでいる者も居る。
中には楽しそうに笑みを浮かべている者まで居た。

(何でこんなに人が……)

目の前に広がる光景は、カイジを更に混乱させる。
何処にでも居そうな普通な奴から明らかに危険そうな奴まで居る。

と、そこで何人かの視線が自分へと集中している事にカイジは気付く。
先ほど叫んだ事で注目を集めているらしい。

途端に気恥ずかしくなったカイジは、顔を伏せる。
人々もそんなカイジから直ぐに興味を無くし、視線を外していった。

(なんだよ、なんだよ……ビビってたのは俺だけかよ……!)

胸の中で悪態を尽くと同時に、安心感が浮かんでくる。
自分以外にも人が居る事。
学校の教室という平和的な光景。
この不可思議な状況は全く変わっていないのにも関わらず、カイジの緊張感は解けていく。

そして、カイジがホッと息をついたその瞬間――教室の扉が勢い良く開いた。
その扉をくぐり教室へと入ってきたのは一人の老人。

「お、お前は……」

知らず知らずの内に声が漏れる。

――悪魔。
カイジがそう評する老人がそこには居た。






驚愕に染まるカイジを尻目に老人は歩を進め、教卓の前へと立つ。
そして、両手を教卓へと置き、愉悦に歪んだ口を開いた。

「おはよう……諸君!……何が何やら分からないという顔をしているの……。何、今日は諸君らにやってもらいたい事が一つあっての……」

グフ、グフ、と気味の悪い笑い声と共に語る老人。
教室に居る殆どが訝しげな目でそれを見ている。

「ああ、そうじゃ……大事な事を忘れていた……!私の名は兵藤和尊……このゲームの主催者の一人だ……」

だがそれらの視線を気にもせずに老人――兵藤は語り続ける。

「さて……諸君らにはこれから一つの『ゲーム』をしてもらう……なに、『ゲーム』といっても小難しいルールなど存在しない。
勝利の条件は一つ……!生き残る事だ……!何をしても良い!他人を蹴落とし、謀殺し、生き延びろ……! 最後の一人になるまでっ……!」

堪えきれなくなったのか兵藤が手を叩き、笑い始める。

「そう、ここまで言えばもう分かるだろうが、諸君らには殺し合いをしてもらう!
生還する方法は一つ……最後の一人となる事……!制限時間は72時間……!それまでに自分以外の全てを殺せっ……!力っ……能力っ……知力っ……その全てを使い殺しつくせっ……!」

途端にザワザワとざわめき立つ教室。

ある者は困惑。
ある者は畏怖。
ある者は歓喜。
各々が各々の感情を宿し、狂気に染まった老人に視線を送る。
兵藤は、それらの視線を受け、満足そうな笑みを浮かべる。

「……とは言え、ここに集まてもらった諸君は正義感溢れる者も多い……。そこでだ……ゲームを円滑に進行する為にある装置を付けさせてもらった……」

そこで言葉を切り、まだざわめき立っている教室を品定めをする様な目で一通り見回し、一人の男を指差す。


「そこの君立ち上がってくれるかの……」
「……僕かい?」

バインドが消失し、自由になった男は警戒の色を強くして立ち上がった。
その男は、良く鍛えてありそうな筋肉質な肉体を持ち、優しげな印象の顔をしている。
その顔にした眼鏡はこれ以上ないほど、男には似合っていた。

「と、富竹さん!」

知人だろうか。
慌てた様に一人の少年が声を上げる。
立ち上がろうともしているが、バインドのせいでそれは叶わない。

「僕なら大丈夫さ、圭一君」

富竹と呼ばれた男は、少年を安心させるように微笑みかけ、兵藤を睨む。

「さて、諸君。彼の首を見て欲しい……何かついておるじゃろ……?」

教室の全員が富竹の首に設置された銀色の首輪に注目する。
そして数秒後、数人の参加者が自分の首にも同様の首輪がついている事に気付く。

「ほほ……勘の良い者は気付いたようじゃの……?……お主らの首には同じ物がついている……!」

再び教室がざわめき立つ。

「それは、小型の爆弾じゃ……儂の思い通りに爆発させる事ができる……このように……!」

ボンッという音ともに僅かな閃光が教室を走り、それと同時に何かが床に転がった。

数瞬後、床に転がる何かの正体に気付いた人々が悲鳴を上げる。


生首。


緑色の帽子を被り眼鏡をかけた、一つの生首がそこには転がっていた。
そしてもう一つ、頭を無くした男――富竹がそこら中に血を撒き散らし、自身の血に染まる床へと倒れ伏した。

「……この通り、私に刃向かった者は死んでもらう……また定時放送にて発表される禁止エリアに侵入してもこうなる……」

止まぬざわめきの中、愉悦の顔で兵藤が語る。

「各々にはデイバックを一つずつ配布する……その中に地図、食料、ランタン、地図、コンパスなど生きる為に最低限なものが入っておる……!そしてもう一つ……デイバックの中には先に言った基本支給品の他にランダムにアイテムが入っておる……!それは武器かもしれないし全く役に立たない外れかもしれん……まぁそこは時の運という奴じゃ…………では、そろそろいいかの……」

未だ慌ただしく騒いでいる教室を一瞥し、兵藤は右腕を振り上げる。

「それでは……バトルロワイアルを開始するっ……!」


高らかな宣言と共に、教室に居た総勢82名の参加者が消える。

残されるは一人の老人。
老人は笑い続ける。
今から始まる至上のゲームに思いを馳せて。
狂った様に笑い続ける。




こうして狂気のゲームは始まった。



絶望にまみれた参加者達はどの様な行動をとるのか。



それはまだ、誰にも分からない。



【富竹ジロウ@ひぐらしのなく頃に:死亡】
【残り85名】



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富竹ジロウ
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