八神はやての災難

「ほんまに…大変なことに巻き込まれてしもうたなあ…」
真っ暗な森の中で、八神はやてはぽつりと呟いた。
名簿を確認し、自分の親友兼部下とその教え子の名前を確認した彼女は、自らの方針について考えていた。
「五人の中で生き残れる可能性が一番低いのは私や。うん、これだけは言える」
はやての戦闘スタイルは遠方からの広域殲滅魔法による殲滅戦。規模的に近~中距離が主な戦闘になるであろうこの殺し合いでは、圧倒的に不利となる。
おまけに魔力の高速、並列処理も苦手だ。それでは魔法を使用する=狙ってくださいと言っているようなものだ。
「せやかて殴り合いなんてしたって勝てるはずもないし…あかん、完全に手詰まりや」
後は、支給品に頼るほかないだろう。しかし、
「こんなもん、どうやって振り回せっちゅうねん」
彼女の支給品、それは巨大な狼牙棒だった。
彼女の身の丈の軽く倍の長さはあるそれは、とても彼女の細腕では扱えそうになかった。
「スバルやったら振り回せるんやろうけど…はあ」
ちなみに、もう一つ支給品があったのだが、それはなんと刀身も鞘もない、柄だけの刀。
扱うどころか、使いようなど皆無だった。
「こんなもんで殺し合いなんかできるか。ほんまにさせる気あるんかいな」
結局のところ。
はやてが生き残るのに最も賢い手段は、戦わないことなのだ。
「他のみんなが戦っとるであろう状況で、力になれないなんて残念やなあ」
きっと、他の四人は大ショッカーを逮捕するため、もしくは弱者を守るため、戦っているのだろう。
普段と似ているが、それは全く違う意味を持つ。
戦わないのと、戦えないのでは、意味が違うのだ。
しかし、できないものを悔いても仕方がない。
「くよくよしてても何にもならん。部隊長はしっかりせんとな」
とりあえず、誰かと合流してから改めて自分にできることを考えよう、とはやては思う。
その時だった。

ガサリ

草の踏まれる音。はやてのものではない。
ならば、答えは一つ。
振り返ると、一人の青年が立っていた。
歳は、だいたいはやてと同じくらいだろう。十代終わりの顔立ちは、自分と似通った部分を感じる。
背丈は小柄で、下手をすればはやてと同じくらいだろう。
女性としてもかなり小柄なはやてと同じとなると、男性としてはちょっとした問題だ。
しかし、目を引くのはそこではなかった。
まず、顔には奇妙な模様の刺青がある。
さらには、右耳には三連ピアス、左耳にはなぜか携帯ストラップをぶら下げている。
髪は白髪まだらに染め、独特のファッション性を強調している。
そして、手には一本の細長い『何か』を持っている。
見るからに『怪しい』人物だった。
と、じっくり観察したのもつかの間。
青年が、はやてに向かって駆けた。
「なっ!?」
突然のことに驚くが、はやては目の前の青年を殺し合いに『乗った』人物として対処することにした。
青年が『何か』を一閃する。無駄のない、慣れた手つきだ。
しかし、はやても管理局員としてそれなりの訓練は積んでいる。大きく体をのけ反り、その一閃をかわす。

が、どうやらそれはブラフだったようだ。
青年ははやての足をかけ、バランスを崩させる。
「きゃあ!」
背中に柔らかい地面の感触を感じた時には、すでに青年ははやてに『何か』を突き刺そうとしていた。
(回避は間に合わへん!シールドでガードを!)
はっきり言って、それすら間に合うか微妙だが、はやては自分の全意識をシールドへと費やす。
思わず目をつむる。
シールドの展開が完了する。
そして…

(……?)
何時まで経っても、シールドと『何か』がぶつかる音がしない。
奇妙に思ったはやては、おそるおそる目をあけた。
するとそこには。
シールドの数センチ手前で止まった『何かの』姿があった。
いや、『何か』ではない。
それは、何の変哲もない木の棒だった。
「は?」
「かはは」
青年が、笑う。
「冗談だよ、ジョーダン。赤いアイツが半径十キロ圏内に確実にいるこんな場所で、殺しなんざしたくてもできねーっての」
「じょ、冗談やて!?」
殺されそうになったのに、それが冗談と知り驚愕するはやて。
しかし、青年のほうはそんなこと気にしていないようで。
「俺は零崎ってんだ」
呑気に、自己紹介を始めた。
「零崎人識。で、お前は誰よ?」
侘びのつもりなのか、それとも単に握手のつもりなのか、人識ははやてに手を伸ばす。
「…両方の意味で受け取らせてもらうわ」
はやては、その手をしっかりと握った。

「で、人識君の知ってる名前は二つだけなんやね?」
「ああ、さっきもそう言ったろ?」
はやてと人識の情報交換は、比較的スムーズに進んだ。
今回の事件は、管理局でも把握できていない世界が複数絡んでいると読んだはやては、人識に管理局のすべてを人識に話した。
人識は適当な相づちを打ちながら話を聞いていたが、最終的には、
「傑作だな」
の一言で片づけた。
続いて人識の話だが、彼は名簿に知った名前が二つしかなく、しかもそのどちらとも会いたくないのだという。
「赤いアイツには次会ったら殺すって言われてっから死んでも会いたくねーし、あいつは別に会いたいわけじゃないしな」
というのが人識の弁だった。
はやても、殺すとまで言われている相手に会えとは言えず、それ以上は言及しないことにした。
「なあ人識君、私と一緒にしばらく行動せえへんか?」
「ああ?なんでお前と…いや、行動をともにすればそれだけ…かはは、悪い話じゃあ、ねえな」
「?どういうことや?」
「人数が増えれば、それだけ哀川潤と出会う確率が減るってことだ―書き手の力量的にな」
「意味わからへんけど、合意ってことやね」
「おう」
こうして、二人の交渉は成立した。
「で、どこに行くんだはやてちゃん?」
「とりあえずは、町の方。森よりは人に会えるやろうしな」
「ああ、俺もそっちがいいな。ナイフがほしい」
「見つけても、人識君には渡さへん」
「傑作だな」

【F-5・森/一日目・夜中】
【零崎人識@戯言シリーズ】
[状態]健康
[装備]木の棒@現地調達
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3(ナイフ類なし)
[思考]基本:哀川潤との約束は守る
1:はやてちゃんと行動をともにする
2:町へ向かう
3:ナイフがほしい
4:哀川潤には死んでも会いたくない
5:欠陥製品は会えても会えなくてもいい
※参戦時期は人間試験~ネコソギラジカルの間
※はやてと情報交換をしました
【八神はやて@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]服装に汚れ
[装備]なし
[道具]基本支給品、狼牙棒@めだかボックス、誠刀『銓』@刀語
[思考]基本:殺し合いの打倒
1:人識君と行動する
2:町へ向かう
3:知り合いを探す
4:デバイスがほしい
※人識と情報交換をしました

【木の棒@現地調達】
零崎人識が森で拾った木の棒。暗がりで見ればナイフに見えないこともない
【狼牙棒@めだかボックス】
八神はやてに支給。箱庭学園3年13組、宗像形の持つ暗器の一つ。もう一度言う、暗器の一つである。
通常の狼牙棒よりもかなりの大型
【誠刀『銓』@刀語】
八神はやてに支給。四季崎記紀の作りし完成形変体刀十二本の一本。柄しかない刀。

ドSは続くよ何処までも 投下順 怪盗は手癖が悪い
実験開始 零崎人識 [[]]
実験開始 八神はやて [[]]

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2011年05月03日 21:00
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。