「いい夜だな、お嬢ちゃん」
そう言って高町なのはに声をかけてきたのは、赤いコートを着た男だった。
「そう…ですね。こんな事態になっていなければ、すごくいい夜だと思います」
男の問いかけに、嘘偽りなく答えるなのは。
そう。殺し合いさえなければ、月のよく見えるいい夜だっただろう。
「こんな事態…か。違うな、お嬢ちゃん。こんな事態だからこそ、だ」
「え?」
何を言ってるのか聞き返す暇はなかった。
気づいた時には、男の手刀が目前まで迫っていたのだから。
「っ!?」
なのはは咄嗟に飛行魔法を発動し、後方へ飛び手刀をかわす。
「ほう」
男はそれを面白そうに眺める。
「面白い能力(ちから)を使うじゃないか。どうやら、法術の類ではなさそうだが…」
「どうしてですか…」
なのはにはわからなかった。否、わかりたくなかった。
「どうして、殺し合いなんかに乗るんですか…!」
人を簡単に傷つけ、殺す考えを、なのはは理解したくなかった。
「生き残れるのが一人だけって言われたからですか!願いがかなうって聞かされたからですか!それとも―」
「いいや、違うね。それは違うぞお嬢ちゃん」
なのはの言うことを、男は否定する。
「俺はあの老人の言うことなんか信じちゃいないし、言うことを聞くつもりもない」
「だったらなんで―」
「それでもだ」
男がゴキリ、と腕を鳴らす。
「それを差し引いてもなお、私にとって闘争とは自然であり、快楽」
なのはは理解した。理解してしまった。
この男は人間とは違う。
正真正銘の化け物だ。
「我が名はアーカード。さあ、お前は狗か人間か、それとも化け物か。見定めてやろう」
アーカードは再びなのはへと向かってくる。
なのははバリアジャケットを展開し、飛行魔法とシールド魔法を駆使して、アーカードの手刀をかわしていく。
「どうした!よけてばかりではジリ貧だぞ!」
アーカードの言うとおり、このままではいずれかわせなくなるだろう。
だから、ここで仕掛ける。
「アクセルシューター!シュート!」
横に避けた瞬間に叩き込んだアクセルシューター。普通ならこれだけで昏倒間違いなしだ。
そう、相手が普通の人間ならば。
「そうだ!生きたいなら私を打ち倒してみせろ!」
アーカードは昏倒どころか、ひるみさえせずなのはへと向かってくる。
しかし、そんなことはなのはも予測済みだ。手刀の一撃をギリギリで躱すと、足元に向かってアクセルシューターを撃ち込んだ。
「むっ!?」
さすがに予想外だったのか、アーカードは一瞬バランスを崩す。
その隙をなのはが逃すはずもなく、バインドをかけ一気に距離を置く。
「ちいっ!」
拘束され、思うように動けないアーカード。
その間に、なのははチャージを完了させていた。
「ディバイーン…」
放つのは、現在使える中で最も強力な一撃。
「バスター!!」
桜色の光線が、アーカードを飲み込んだ。
「はあ…はあ…」
恐らくは、今の一撃で気絶しただろう。
そう思うと、一気に体から力が抜けてしまった。
攻撃も機動力も桁違いの相手。
そんな相手をを制限下で、しかもデバイスなしで戦ったのだ。
はっきり言って、ギリギリの攻防だった。
「目が覚めたら、お話だね…」
まずは、気絶したアーカードをバインドで拘束して―そこまで考えた時だった。
「―それだけか?」
「っ!?」
アーカードは気絶していなかった。
怒りと失望を込めた視線で、なのはをじっと見ている。
「攻撃は痛みを与えるだけ。破壊もなければ切断もなし。そんなもので私を倒せると思っていたのか人間(ヒューマン)!!」
憤怒の表情でなのはへと怒鳴り散らす。
「破壊できる攻撃をしろ!できなければ素手で殴り掛かれ!さあ早く(ハリー)!早く(ハリー)!」
なのはは動けない。動くことができない。
自分が、井の中の蛙だったと自覚する。
「もういい…興ざめだ」
アーカードはなのはへと一跳びで迫る。
半能が遅れたなのはは咄嗟にシールド魔法を展開するも、
「お前では、私は殺せない」
アーカードの手刀はシールドを砕き、なのはの胸を貫通した。
「あ…」
目の前が暗転する。記憶が、仲間の姿がフラッシュバックする。
「ごめ…んね…」
最後の言葉はだれに対してだったのか。
それを知るすべは、もはやない。
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS、死亡】
「つまらんな」
冷たくなっていくなのはの体を見ながら、アーカードは呟いた。
「しかし、ここにはいるはずだ。私の夢を終わらせることのできる存在が」
そうでなくては、殺し合いの意味がないのだから。
「なあ…宿敵」
アーカードの頭に浮かぶのは、同じくこの場にいるカトリック神父の姿だった。
【I-3・森/一日目・深夜】
【アーカード@HELLSING】
[状態]ダメージ(大)
[装備]なし
[道具]基本支給品×2、ランダム支給品2~6
[思考]基本:闘争を楽しむ
1:アンデルセンと決着をつける
2:他にも自分を倒せそうな相手を探す
3:最終的には(自分が優勝したら)、大ショッカーを潰す
※参戦時期は原作五巻、リップバーン戦の後
最終更新:2011年04月26日 10:40