いい湯です~狼娘とシスターと子猫~

第二十話≪いい湯です~狼娘とシスターと子猫~≫

「い~い湯~だ~なっ、と」

温泉旅館の露天風呂で、湯に漬かりながら上機嫌に歌を歌う狼の少女、藤堂リフィア。
実に心地の良い温泉である。首にはめられている首輪さえなければ、
普通に温泉旅行に来ている気分だった。

温泉から上がり、脱衣所で濡れた身体をタオルで拭く。
銀と白の毛並みが濡れて輝いていた。
身体を動かすたび、豊満な乳房が揺れ動く。

「この首輪さえ無ければなー。ただの温泉旅行みたいなんだけど」

鏡を覗きながら自分の首元の首輪を触るリフィア。

「何とか外せないものかねー」

言いながらロッカーにしまっていた自分の衣服を着始める。
元々着ていた制服姿になると、脱衣所入り口付近にあった冷蔵ケースから牛乳を一瓶取り出し、
蓋を開けて口の中へ流し込む。
本来ならば100円を支払わなければいけないのだが、
誰もいないし一応非常事態なので大丈夫だろう、と彼女は判断した。
温泉を堪能し、リフィアは自分が拠点にしている客間に向かった。




ほぼ同刻、リフィアがいる温泉旅館を目指す二人の人影があった。
一人は紺色の修道着に身を包んだ清楚な印象を受ける若いシスターの女性。
もう一人は赤い襟が付いたセーラー服姿の活発そうな小柄の猫獣人の少女だった。
シスター――岸部淑子(きしべ・としこ)の方は丸腰のようだったが、
アメリカンショートヘア種の猫獣人少女――長谷堂愛(はせどう・あい)は、
抜き身の鋭利な日本刀を持っていた。

「あう~。疲れたよ~岸部さ~ん」
「もう少しですから頑張って下さい愛さん。あそこに旅館らしきものがありますから、
あそこで休みましょう。あと、日本刀振り回しちゃ駄目ですって危ないから」
「分かった~」

木の枝でも振り回すように日本刀を振り回し周囲の草木を切り刻んでいる愛。
勿論本人は木の枝を振り回している感じなのだろうが危険極まりない。
現に淑子のスカート部分が若干切れていた。知らない内に刃が当たったのだろう。
振り回すのはやめるよう淑子は愛に注意した。

「でもこんな山奥に旅館なんて儲かるのかな?」
「うーんどうでしょうね……」

こんな山奥に旅館がある事に疑問を抱きつつ、
二人は旅館へと歩みを進めた。

しばらくして、淑子と愛の二人は旅館入口に辿り着いた。
純和風の佇まいの玄関が二人を出迎える。
玄関の引き戸などに「旅館 西田屋」と屋号が書かれている。
誰かいないかと警戒しつつ、受付のいないカウンターと売店を通り過ぎ、
旅館の奥へ足を進める二人。
そして、とある客間の扉が少し開いている事に気付いた。
二人は声を出さず、ジェスチャーとアイコンタクトで会話を取り、あの客間に入ってみる事にした。
淑子が扉のノブに手を掛け、ゆっくりと押し開く。
すぐ手前に下駄箱、小さな浴室へと続く扉、そしてごく短い通路の先に庭園が見える和室がある。
息を殺して、和室へ進む二人。
そして淑子が通路から頭だけを出したその時だった。

「動かないで」

静かな少女の声がしたと同時に、淑子の左のこめかみに何かが押し当てられた。

「後ろにいる子もこっちに来て。変な真似したら撃つよ」

少女の声の様子からして、本気だと判断した二人は、素直に従った。
両手を上げながら二人は壁を背にして並んで立たされる。
二人の目の前には、険しい表情で睨みつる高校生と思しき狼獣人の少女。
ライフルを構え、銃口を二人に向けていた。

「と、藤堂リフィアさん?」

淑子が狼少女に向かって名前を言う。
狼少女――藤堂リフィアは「えっ?」と驚いた様子だった。
リフィアは二人――岸部淑子と長谷堂愛の事など全く知らない赤の他人のはずだった。
なのになぜこのシスター風の若い人間の女性は自分の名前を知っているのか?

「……何で私の名前を知っているんですか?」
「え? えーと、これに書いてあったので……ちょっと、カバンから出してもいいですか?」
「……いいですよ」

リフィアの承諾を貰い、淑子は自分のデイパックの中から何かを取り出す。
その間もリフィアは銃口を二人に向け続ける。
愛は両手を上げたまま、恐怖に引きつった表情を浮かべていた。
そして淑子が取り出したのは白い表紙に「参加者詳細」と書かれた白い小冊子。
淑子はそれを恐る恐るリフィアに渡し、リフィアは左手でそれを受け取りその冊子を開く。
そこには全参加者の顔写真と名前、身体的特徴、年齢など詳細な情報が記されていた。
顔写真は証明写真風のものや明らかに隠し撮りされた物もある。
自分のページには、学生証に使った顔写真が印刷され、自分の名前や年齢、嗜好に至るまで
事細かに記されていた。
冊子を閉じ、それを淑子に返し、銃口を向け直した。

「単刀直入に聞きますけど、あなた方二人はこの殺し合いに乗っていますか?」

リフィアは淑子と愛に尋ねる。尋ねるというより、尋問と言った方が良いだろうか。

「の、乗っていません」
「乗ってないよ」

向けられた銃口に怯えながらも、二人は必死に否定の意を述べる。
次にリフィアは支給品を全て見せるよう命じた。
淑子は畳の上に先程の参加者詳細名簿と、玩具のピコピコハンマーを出す。
愛は日本刀を畳の上に置き、これ以外に支給品は無いと話した。
しばらく二人を交互に見ていたリフィアだったが、やがて銃を下げ、穏やかな表情になった。




「ふ~ん、愛ちゃんは陸上部なんだ。じゃあ足とか速いの?」
「そうだよー! もう中学校とかずっとリレーの選手だったんだから!」
「私は運動苦手だからな~羨ましいな」

さっきまでの緊迫した空気はどこへやら。
客間の中ではリフィアと愛が楽しそうに会話をしていた。
その様子を見て微笑む淑子。
三人の首にはまっている首輪、三つの黒いデイパック、リフィアの脇の小銃、愛の脇の日本刀が
無ければかなり微笑ましい光景なのだが。
愛とリフィアは年齢が近く学年は違えど同じ高校生である事から会話が弾んでいるようだ。

「リフィアさん、もし宜しければ、私達と一緒に行動して頂けませんか?」
「うーん……」
「行こうよリフィアちゃん! 一緒にいた方が楽しいよ!」
「それじゃあ、折角だし……一緒に行こうかな」

すっかり二人への疑念が晴れたリフィアは同行を承諾した。

「あ、この奥に温泉があるよ。結構気持ち良かったから、岸部さんと愛ちゃんも入ってきたら?」
「温泉……いいですね」

「温泉」という単語に淑子は興味を示した。
実を言えば長い事山道を歩いて身体が汗まみれになっていたので、洗い落としたい気持ちがあったのだ。

「温泉入ってみたいー! リフィアちゃんは?」

愛も入浴に賛同の意を示す。

「私はもう入ったから……ここで警戒してます」
「そうですか……分かりました。それでは一緒に入りましょうか、愛さん」
「入る入るー!」

淑子と愛は旅館奥に位置する温泉へと向かった。
リフィアは小銃――モシンナガンM1891と直刀を携え、警戒のため旅館玄関に向かった。


【一日目/明朝/E-6温泉旅館内部】

【藤堂リフィア】
[状態]:健康
[装備]:無し
[所持品]:基本支給品一式、モシンナガンM1891(5/5)、7.62㎜×54R弾(50)、直刀
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。頑張って生きてみる。
1:旅館玄関付近で周囲の警戒。
2:岸部さん、愛ちゃんと行動を共にする。
3:襲われたら戦う。黙って殺されはしない。
4:殺し合いに乗っていない人と出くわしたら仲間になってくれるようお願いする。
5:温泉気持ち良かったなぁ。
[備考]
※生命力が異常に高いです。頭部破壊、焼殺、首輪爆発以外で死ぬ事はまずありません。
但し一定以上のダメージが蓄積すると数十分~一時間ほど気絶します。
※温泉に入りました。

【岸部淑子】
[状態]:健康、E-6温泉旅館内温泉へ移動中
[装備]:無し
[所持品]:基本支給品一式、参加者詳細名簿、ピコピコハンマー
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らない。
1:温泉に入って身体の汚れを洗い落とす。
2:リフィアさん、愛さんと行動を共にする。
3:殺し合いに乗っていない人を集め、脱出手段を探す。
[備考]
※参加者詳細名簿により全参加者の容姿と特徴を大体把握しています。

【長谷堂愛】
[状態]:健康、ワクワク、E-6温泉旅館内温泉へ移動中
[装備]:日本刀
[所持品]:基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いには乗らない。
1:温泉に入る。
2:岸部さん、リフィアちゃんと行動を共にする。
3:殺し合いに乗っていない人を集め、脱出手段を探す。
[備考]
※参加者詳細名簿により全参加者の容姿と特徴を大体把握しています。




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