「くそっ、どうなってやがる!」
乱暴に頭をかきむしりながら、その青年はストレートに苛立ちを吐き出す。
彼の名は曹操。三国天使界で屈指の実力を持つ戦天使であり、現在は北郷軍に身を置く武将である。
「百歩譲って、殺し合いはよしとしよう……。こっちは命がけの戦いなんて、とうに慣れてる。
だが……何でまたアレルヤになってるんだよぉぉぉぉぉ!!」
曹操が苛立っているのは、バトルロワイアルに参加させられたからだけではなかった。
その姿が本来の勇ましいものではなく、シンプルな顔立ちにひょろ長い体の青年に変えられていたのである。
それは、「アレルヤ」と呼ばれる姿だった。なお元ネタは本家「ガンダム00」ではなく、かつてニコニコ動画で流行した「ゲッダン」の手書きイラストである。
かつて「中の人が同じ別のキャラに外見が変化する」というお祭り回で、曹操はこの姿となった。
そしてなぜか彼だけは、次の回以降もしばらくこの姿のままだったのである。
そのため曹操にとって、アレルヤの姿は軽いトラウマとなっていた。
「はあ……はあ……。ま、まあいい。この姿になっても、俺の能力に変化はないはずだからな……。
……ないよな?」
しばらくしてようやく落ち着くと、曹操はその場に座り込んで思考を巡らし始める。
「考えてみれば、これはチャンスか……? ここ最近はすっかり一刀や呂布子とのなれ合いに慣れちまったが、もともと俺は三国天使界の覇者を目指してたんだ。
あの女の力がどれほどのものかはわからんが、少なくともあの中国から俺達を召喚できるだけの力は持っているはず……。
利用する価値は充分にある……」
曹操の瞳に、凶暴な光が宿る。
「やってやろうじゃねえか……。最後に勝つのは、この曹操様だ!」
「ほう、それは聞き捨てならんな」
その時、曹操の背後から声が響く。素早く彼が振り返ると、そこには髪をオールバックにした若い男が立っていた。
「この俺の背後をとるとは……できるじゃないか」
「当然だ。貴様とはくぐってきた修羅場の数が違う」
高圧的な男の言葉に、曹操は思わず眉間にしわを寄せる。その理由は不快感だけではない。
目の前の男が、その大口に見合うだけの実力を持っていると感じ取ったのだ。
「どうやら、いきなり大物に当たったようだな……。だがこの曹操、誰が相手であろうと退かぬ!
もう一度言おう、最後に勝つのはこの俺だ!」
「つまり、俺と戦うということでいいのか? ならば、全力でお前を排除する!
このドットーレ、自分の邪魔をする人間にかける情は持ち合わせていない!」
ドットーレと名乗った男はそう返すと、ポケットから漆黒のカードケースを取り出した。
それを見た曹操も同様に、似たような物体を取り出す。
そして二人は、ほぼ同じ動作で取り出した物を近くの建物につけられた窓ガラスにかざした。
『変身!』
ほぼ同時に、二人が叫ぶ。それと同時に、彼らの体を黒き甲冑が覆っていく。
やがて二人は、寸分違わず同じ姿となっていた。
「リュウガ」。そう呼ばれる戦士の姿に。
「なんだと……!?」
「こいつは面白いな。奇しくも同じ武装か」
動揺を隠せないドットーレに対し、曹操は不敵に笑う。
次の瞬間、曹操の蹴りが飛んだ。とっさに防御の構えを取ろうとするドットーレだが、間に合わない。
まともに蹴りを食らい、彼の体が大きく揺らいだ。
「この勝負、もらったぜ……」
仮面の下で、曹操は口元を大きく歪めた。
◇ ◇ ◇
「どうした? この勝負、もらったんじゃないのか?」
「ば、ばかな……」
数分後、形勢は曹操の思惑とは裏腹に、ドットーレに大きく傾いていた。
ドットーレもかなりのダメージを受けてはいるが、曹操の消耗はそれ以上に激しい。
「なぜだ! 俺の力量は、貴様に決して劣っていないはず……」
「そうかもしれんな。だが、この宝具は俺の仲間が使っているもの……。
俺は性能を熟知している。つまり、貴様などよりよっぽどリュウガの力を引き出せるということだ!」
「なんだと……!」
「さて、変身が保つ時間もあとわずかだ……。止めを刺してやろう」
唖然とする曹操を尻目に、ドットーレは一枚のカードを取り出して腕のバイザーにセットする。
『FINAL BENT』
機械音声が響くと同時に、近くの窓ガラスから黒き龍・ドラグブラッカーが出現。
ドットーレはそれを伴い、大空へ飛翔する。
「はああああ!」
背中にドラグブラッカーの炎を受け加速したドットーレは、急降下。
その右足で、曹操の肉体を粉砕した。
「なぜだ……! この俺が……こんなところでえええええ!!」
乱世の雄・曹操。彼は、決して弱くはなかった。
だが相手のもっとも得意とする土俵で戦ってしまったことが、彼の敗因であった。
◇ ◇ ◇
「ふう……」
戦いを終え、変身を解除したドットーレは大きく息を吐く。
「まずは勝てたか……。まあ俺なら当然のことだが……。
しかし、どういうことだ? リュウガがもう一つあるなど……」
ドットーレが所属する騎乗士の国は、「宝具」と呼ばれる強力な武装を多数所持している。
だが同じ種類の宝具は、基本的に一つしか存在しない。
彼の常識では、「リュウガ」が二つ存在するなどあり得ないのだ。
「まあいい。どんな宝具が出て来ようと、俺のやることは変わらん。
パーフェクトミッション、ただそれだけだ」
第一目標:同志である漆黒姫との合流。
第二目標:宝具「カイザ」の入手。
最終目標:自分を悪趣味な遊戯に巻き込んだ、主催者の抹殺。
今一度おのれに目標を言い聞かせると、歴戦の兵はその場を後にした。
【一日目・深夜/F-4・住宅地】
【傭兵将軍ドットーレ@パロロワ戦記】
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)
【装備】宝具「リュウガ」@パロロワ戦記
【道具】支給品一式
【思考】
基本:主催者の抹殺
1:漆黒姫との合流
2:宝具「カイザ」の入手。
【アレルヤ(呂布子曹操)@中華武将祭り 死亡】
※リュウガのデッキ@仮面ライダーディケイド、および曹操の支給品は爆散しました。
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最終更新:2011年04月12日 17:20