長寿が故の苦悩、そして新たな旅立ち


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第十七話≪長寿が故の苦悩、そして新たな旅立ち≫

私が覚えている最初の記憶、それは、両親と兄、姉、弟と私、一家6人でピクニックに行った事。
私が10歳の頃だから、もう、137年も前。両親はもちろん、兄、姉、弟、みんな生きてはいない。
気が付いたら私は147歳になっていた。今は曾孫夫婦と暮らしている。
私の夫も、3人の子供も、私より先に亡くなった。5人いた孫も今は末の子一人しか生きていない。
曾孫夫婦はよく世話をしてくれるけど、感謝の意と共に、申し訳無い気持ちで一杯だった。
もう自分は目もよく見えないし、車椅子無しじゃほとんど歩く事も出来ない。曾孫夫婦には迷惑をかけっ放しだ。
私が世界最高齢の女性として記録されたと曾孫から伝えられ、
テレビや新聞、雑誌の取材も来た。取材を受けるのは147年生きてきて初めての事だった。
でも、嬉しいという気持ちは無かった。
もう私は十分過ぎる程生きた。これ以上生き続けても、曾孫夫婦を始め周りの人に迷惑になるだけだ。
だから、早く死にたいと思っていた。

私は今、森の中を歩いていた。自分の足で、しっかりと。
首には金属製の首輪がはめられ、肩から黒いバッグを提げ、
手にはバッグの中に入っていた猟銃――上下二連式散弾銃「ミロクSP-120」を携えながら。
私は今――殺し合いの場に立たされていた。
しかも、私の身体は10代後半の時の若く美しい身体に戻り、
若い時に着た記憶のある和服にブーツという服装になっていたのだ。
最初、全く信じられなかったが、自分のスタート地点付近に捨てられていた鏡を覗きこんだら、
そこには青い髪を赤いリボンで束ねた少女の顔が映り込んでいた。
間違い無く若い時の私の顔だった。
正直、少し嬉しかった。なぜこんな事になっているかは分からなかったが、
目がはっきり見え、自分の足で歩け、身体を自由に動かす事が出来るのはとても嬉しい。一体何年ぶりなのだろう。

だが、喜んでばかりもいられない。今自分は殺し合いの場にいる。
つまりいつ襲われるか分からない、いつ死ぬのか分からない状況なのだ。
147年も生きておいて今更死なんて怖くは無い、むしろ死にたいと思っていた自分だ。
だが今は動けないしわくちゃの老人では無い、しっかり自分の力で行動する事が出来る。
むざむざ殺されるのを待つ事も無い。色々出来る事があるはず。

「……この殺し合いの転覆」

そう、この殺し合いに乗っていない人も多いはず。ならばそういった人達と結託し、
この狂ったゲームを破壊しよう。
それが若い時の身体に戻った私の使命のような気がした。

「ん……」

前方から人が来る。俯いていて、とぼとぼと歩いているといった感じだ。
黄色のシャツに緑の半ズボンという比較的目立つ格好の、人間の青年だった。
向こうはまだ私に気付いてはいない。私は左手側に茂みに隠れた。




「はぁ……疲れた……もう、疲れた……」

俺、中山淳太は森の中の道を俯きながらとぼとぼと歩いていた。
長時間に渡り絶望感の余り叫び続けて喉が渇き、
デイパックの中に入っていた一本のペットボトルの水を半分程飲んだ。
あんだけ叫んで誰にも襲われなかったのは幸運と言う他無いな。
だが今俺が置かれている状況が好転した訳でも無い。今の俺は武器を持っていない丸腰の状態だ。
そんな状態で襲われて、逃げ切れる保証はどこにも無い。
早めに武器になる物が欲しかった。

「動かないで」

はい? 今、女の子の声が後ろから聞こえ――ちょ、背中に何か当てられてるんですけど。
反射的に両手を上げる俺。

「あなたは殺し合いに乗っていますか?」

女の子(声から判断)が俺に問いかける。
うんとね、ちょっと待ってね。多分、俺の背中に当てられてる物ってさあ……もう分かるわ。

「の、乗っていない」

こう答えるしかねぇよな? っていうかさ、こんな状態で「乗っている」って答える奴いないと思うんだけど。
俺は別に乗っていないのは事実だし。まあ、信じてくれるかどうかは別としてだよ。

「本当に?」
「本当! 本当! 本当だって!」
「……分かりました。ごめんなさい。手を下ろしてこちらを向いて下さい」

ふぅ、どうやら信じて貰えたらしいな。
言われた通り手を下ろして、女の子の方を振り向く。

「あ……?」

そこには和服にブーツという服装の、10代後半ぐらいの少女が立っていた。
青い髪の毛を束ねている赤いリボンが可愛らしい。
が、少女が持っていた物を見て俺は悪寒が走る。
少女が持っている――つまり、さっきまで俺の背中に突き付けていた物は、
可憐な和服少女にはどう見ても不釣り合いな長銃身の猟銃。
もしあの時「殺し合いに乗っている」と答えたら、と思うと寒気がした。

「すみません。いきなりこんな事をしてしまって。私は菊池やと(きくち・やと)と言います。
あなたの名前は?」
「ああ、俺は中山淳太って言うんだ」

少女が謝りながら自己紹介し、俺も自己紹介する。
よ、よく見ると、結構可愛い子だなぁ……。
ん? あれ? 菊池やと? どこかで聞いた事のあるような……まあいいか。

「殺し合いに乗っていないのでしたら、一緒に行動してくれませんか?」

やとちゃんが同行を求めてきた。これは……断る手は無いだろう。

「い、いいぜ。俺で良ければ……よろしく、やとちゃん、あ、ちゃん付けって慣れ慣れしいかな」
「いえ、大丈夫ですよ。ありがとうございます。ところで、中山さん、武器は持っていないんですか?」

やとちゃんに聞かれ、俺は思い出した。
そうだ、俺は丸腰だったのだ。俺の支給品は割り箸とタコ糸で、俺は勢いでそれを投げ捨ててしまったのだ。
いや、まあ、あんな物持っていたとしても武器になんてなり得なかっただろうが。

「俺の支給品、武器になりそうな物が無くて……捨てちまったんだよ」
「そうですか……あ、小さい拳銃がありますから、差し上げますよ」
「えっ、いいの?」

それは俺にとっては願っても無い事だった。
やとちゃんは自分のデイパックを開け、中からかなり小型のリボルバー拳銃と、
その予備弾の箱を数箱を取り出し、俺に手渡した。
玩具みたいな感じだが、持ってみると木製のグリップの感触と金属の重みが手から伝わる。
これが本物の拳銃か……護身用か何かなんだろうな、この小ささは。
しかし贅沢は言っていられない。これでも今の俺にとっては頼もしい武器だ。
でも正直言うと、やとちゃんの持っている猟銃の方が欲しいんだけど……まあいいや。

「ありがとうやとちゃん。丸腰は不安だったから、ちょっと安心したよ」
「いえいえ、どういたしまして」

礼儀正しい子だな~この子。俺の周りの女と言えば金に汚かったり裏表激しかったり、
ロクなのがいなかったから、こういった子は新鮮だわ。

「それじゃあ、行きましょう」

やとちゃんが歩き出す。俺もやとちゃんに続いて歩き出した。
猟銃を持った和服少女と一緒……何だかすごいシチュエーションだな、おい。




青年――中山淳太は気付いていない。気付く由も無いが。
今一緒に歩いている少女――菊池やとは、自分より126歳も年上の、
世界最高齢の女性が若返った姿だと言う事に。
もっとも、やと自身もそれを話さない。別に話す必要も無いと判断したためだ。
年について聞かれれば、話すかもしれないが。


【一日目/明朝/C-5森・山道】

【菊池やと】
[状態]:健康
[装備]:ミロクSP-120(2/2)
[所持品]:基本支給品一式、12ゲージショットシェル(50)
[思考・行動]
基本:殺し合いの転覆。或いは脱出。そのために仲間を集う。
1:中山さんと行動を共にする。
2:襲われたらまず説得、駄目なら戦うか逃げる。
3:首輪を外す方法も探す。
4:何で10代の頃の身体に戻ってるの……?

【中山淳太】
[状態]:精神的疲労(中)
[装備]:S&W M36”チーフスペシャル”(5/5)
[所持品]:基本支給品一式(水半分消費)、38S&Wスペシャル弾(50)
[思考・行動]
基本:死にたくない。生き残りたい。
1:やとちゃんと行動を共にする。
2:やっとまともな武器が手に入った……。
[備考]
※「菊池やと」という名前に心当たりがあるようですが、よく思い出せません。




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