刃と剣


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「こりゃあ酷いな」

 バトルロワイアルが開始されて一時間程が経過したその時、土御門元春はデパートの喫茶店コーナーに立っていた。
 その足元には強烈な悪臭を漂わせる死体が一つ。
 元は凄腕の船大工にして心優しきサイボーグだった男の、その亡骸である。
 土御門はサングラスの奥にある瞳を細めて死体を観察していた。
 その顔は真剣そのもので、普段のお調子者としての顔は影に隠れていた。
 学園都市の裏側にて暗躍するエージェントとしての表情が、今の彼を占めていた。

(やはり学園都市が関わってると見て間違いないか。くそっ、アレイスターの野郎、何を考えてやがる)

 その死体の様子は明確な異常を土御門へと伝えていた。
 ドロドロに溶解した皮膚に、通常の死体のものとは違う死臭。
 陰陽師として、魔術師として、学園都市のエージェントとして数多の死体を見てきた土御門ではあるが、ここまで惨たらしい死体は記憶に少ない。
 予想としては学園都市の新兵器、それか何らかの魔術。
 だが土御門とて、十六という若輩でありながら陰陽道を極めた天才魔術師。
 殺しの現場を見れば、魔術が関与しているかどうかの見極め位は判断が付く。
 結論からして魔術の可能性は0。
 科学側の兵器と断定して間違いないだろうと、土御門は結論付ける。

(この殺し合いもアレイスターの『プラン』の一端か? なら、上条当麻がこの殺し合いで死ぬ可能性はない筈だが。アイツの『プラン』とやらに上条当麻は必要不可欠のようだしな……)

 死体を見下ろしながら、土御門は思考を回す。
 バックの中にあった一枚の紙。
 そこには総勢73名にも及ぶ人々の名前が記されていた。
 そして、その中に上条当麻の名前があった。
 『幻想殺し』。
 土御門の親友にして、魔術サイドと科学サイドの両陣営から注視されている存在。
 数多の事件を拳一つで収め、そして敵であった存在さえも何やかんやで味方に引き込む結構スゴい男である。
 上条当麻を一言で表すならば、お人好しという言葉がピッタリであろう。
 他人の為に命を賭ける事ができ、命を狙われた敵であっても決して殺さない。
 言葉で説き伏せ、拳で止める。
 学園都市の裏や、魔術サイドの血生臭い歴史を知る土御門からすれば、何とも甘い解決法だと思う。
 だがしかし、馬鹿の一念岩をも通すとは良く言ったもので、上条当麻はその甘い解決法で結果を残してきた。
 それは魔術サイドの大勢力から危険人物と認定される程である。

(だが、上条当麻みたいなお人好しは、こういうゲームには向いてない……誰かしらに騙くらかされて背中から刺されるなんて事も充分ありうる)

 数多の争乱を生き抜いてきた上条であるが、この殺し合いの場でも生存せしめるかどうかと問われれば、可能性は薄いだろう。
 『幻想殺し』という特殊な力を持つものの、その戦闘力には大きなムラがある。
 第一位の超能力者に勝利する事もあれば、レベル0の土御門に一方的に敗北する事もある。
 異能に対してはスペック以上の実力を示す上条当麻は、その実、異能が関わらない単純な白兵戦には弱い。
 精々、路地裏の不良レベル。
 むしろ、何故それだけの実力しか持たない男が、異能力者を相手にするとあれ程の功績を示すのか疑問に思う程だ。
 そんな上条が、徒手空拳の達人などと遭遇し戦闘に陥ったらどうなるのか……想像しなくても分かる。
 加えて前述のお人好しな性格だ。
 知らぬ間に殺人鬼に騙さていた、何て事は多いに有り得る。
 客観的に見て上条当麻がこのバトルロワイアルを生存できる可能性は低く思えた。

(……ま、でも上やんなら心配しなくても大丈夫だろ。上やんがそう簡単に死ぬ訳ないにゃー。むしろ、この殺し合いの中でもフラグ建てまくってそうでムカつくぜい)

 しかし、土御門の主観を入り交えた答えとなると話は別である。
 あの男が死ぬ訳ない、というのが上条の悪友たる土御門元春の正直な見解だ。
 魔術および科学サイドの紛争を生き残り、五桁に及ぶ女性達とフラグを建てまくったた男。
 それが上条当麻だ。
 そんな男がこんな殺し合いなんかで死ぬ訳がない。

「あー、リア充爆発しないかにゃー」

 もはやエージェントとしての顔を止めた土御門は一言だけ呟きを零して、そして再度気を引き締める。
 上条当麻の心配はいらないものの、現状がとてもマズいという事に変わりはない。
 三日という時間制限もある。打開策を考えなければ全滅、そうじゃなくても殺し合いに乗る参加者だって居る筈だ。
 早めに、せめてこの首輪だけでも何とかしなければ完全に手詰まりとなる。

(まずは誰かしらと手を組みたいところだな。ある程度の戦力と知力を集めて、殺し合いに乗った参加者の排除と首輪の解除を進める。それでもって更に他の参加者達と合流して、主催者達との対抗組織を造り地盤を固めていく)

 死体に背を向け土御門はその場から離れていく。
 その手には最初に支給された物とはまた別のデイバック。
 死体が背負っていたものを拝借させていただいたものだ。

(あの男を殺害した奴はよほど動揺してたんだろう。支給品の強奪は最低限だと思うがな)

 デパートを練り歩き、フロアの片隅に設置されたトイレの、更にその個室へと入っていく土御門。
 洋式の便座に腰をかけ、土御門は新たに入手したデイバックの中身を確認していく。
 拳銃の一つ位は手元に置いておきたい土御門であったが……、

「だ、堕天使エロメイド……しかも大精霊チラメイドに小悪魔ベタメイドまで……」

 無類のメイド好きである土御門からすれば、その支給品は確かに嬉しいには嬉しい。
 だがこの状況下ではさしもの土御門とはいえ手放しで喜べない。
 それにいじりの対象である神崎も居ないのだ、アイテムの意義は遥かに低下する。

(もう一つの支給品は……こりゃ海原の霊装か。確かアステカ系の霊装だったか? 俺には使えないが、まぁナイフ代わりにはなるだろ)

 黒曜石のナイフをズボンとベルトの間に差し込み、土御門はデイバックの中身をもう一つへのデイバックへと全て移す。
 最低限の武器は入手した。後は慎重に行動をしていくだけだ。
 便座から立ち上がる土御門。口元に軽い笑みを浮かべながら、行動を開始する。
 成すべき事は何時もと何も変わらない。
 排除すべき者は排除し、利用できるものは利用する。
 そこに感情は必要ない。
 冷酷に、淡々と、確実に成すべき事をこなす。
 ただそれだけの事であった。

(おっと早速発見か。さてコイツとの遭遇は吉と出るか、凶と出るか)

 デパートの中を歩くこと十数分、土御門は遂に生存している参加者と遭遇する。
 その参加者はやけに線が細く、どうにも頼りなさげな印象を受ける青年であった。
 年は土御門より一回りほど上であろうが、何故だが更に大人びて見える。
 何というか社会に対して諦観しているような、悪く言えば世捨て人のような印象を受ける。
 単純な一般人とは一線をがす、そんな青年であった。
 だが、土御門にそんな事は関係ない。
 相手が誰であろうと、成すべき事は変わらない。

「一つだけ質問する。お前は殺し合いに乗っているか?」

 土御門の存在に気付かぬその背中へと足音をたてずに接近し、首元に石造のナイフを突き付ける。
 放たれた言葉は単純にして明快なもの。
 Fallere825―――『背中を刺す刃』。
 その魔法名通りの働きをこなし、土御門は青年へと声を飛ばした。
 青年は驚愕に見開き、その瞳だけを首元のナイフへと向ける。

「……僕は乗ってない。誰も殺さないし、誰も死なせたくはない」

 儚げな外見とは裏腹に、芯のある言葉であった。
 嘘吐きを自称し、あらゆる人々を騙して生活を送る土御門には分かる。
 青年の言葉に嘘はない。本心から出たものであろう。

「そうか、物騒な事をして悪かったな。俺は土御門だ、お前は?」
「僕はキラ……キラ・ヤマトだよ。よろしく」

 これだけの事をされたというのに、青年―――キラ・ヤマトは柔和な微笑みを携えていた。
 場慣れしているな、と土御門は素直に感じる。
 それなりの経験があるのだろう。
 このような命のやり取りを行った経験が。

「キラ・ヤマト、お前はこの殺し合いをどうしたい?」
「……止めたいと思ってる。こんな殺し合いは間違ってるし、こんな殺し合いで人が死ぬなんて間違ってる。僕は、この殺し合いを止めたい」

 そう言うキラの瞳は力強いものだった。
 コレは掘り出し物かもな、と感じながら、土御門も自然と笑みを浮かべる。
 キラのものとは別種の、何かを企むような笑み。
 その笑みに、しかしキラは動じない。
 変わらぬ瞳で土御門を見詰めていた。

「奇遇だな、俺も同じだ」

 こうして二人の男が手を組んだ。
 土御門元春とキラ・ヤマト。
 目標を同じとする二人は手を組み、殺し合いの打開を目指していく。



【一日目/深夜/F-3・市街地・デパート】
【土御門元春@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]トラウィスカルパンテクウトリの槍@とある魔術の禁書目録
[道具]基本支給品一式、堕天使エロメイド@とある魔術の禁書目録、大精霊チラメイド@とある魔術の禁書目録、小悪魔ベタメイド@とある魔術の禁書目録、ランダム支給品×1~3(武器はない)
[思考]
0:殺し合いを止める
1:首輪の解除。他の参加者と会い、手を組む。
2:ひとまずはキラと行動。
3:一方通行、上条当麻と合流する。

【キラ・ヤマト@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1~3
[思考]
0:殺し合いを止める
1:土御門と行動する。


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