今そこにある危機

29:今そこにある危機

ショッピングモール内を一通り身回り中央ホールへと戻ってきた高村秀徳と新井宏音。
道中、彼らに新たに二人の仲間が加わる事となった。

「宜しくな、ええと…日宮高延に、千葉望だったっけな」
「…ああ」
「宜しくー」

どこか無愛想な大きな雄狐とは対照的に巨乳ムチムチボディの狐獣人の女性は明るめに挨拶する。
雄狐――妖狐・日宮高延が無愛想だったのは愛する主人の姿が未だ見付からない事に起因していた。

(まどかはまだ見付からない…大丈夫なのか、まどか…)

高延としては一刻も早く主人である日宮まどかの事を捜したかったが、
同行者がいる手前余り勝手な真似は出来ない。ここに来て、単独行動の方が良かったと後悔する高延。
今更嘆いても仕方無いのも重々理解してはいたが。

「さてと、このショッピングモールの中を見るだけ見て回った。武器屋は勿論あったぞ。
だが、もぬけの空だ。銃も弾薬も刃物も何もありゃしなかった。まあ予想はしていたが…多分、
運営してる奴らが片付けたんだろうな」
「日用品売り場とかに包丁とかはあったけど、一応銃あるから無理に貰う必要も無いと思って」
「そうかい」
「そうなんだ…でも、良かった。私達の他にも殺し合いに乗っていない人達がいて。ねぇ? 高延」
「そうだな」
「……(高延、何か、機嫌悪いな…まどかさん見付からないからか…)」

明らかに不機嫌になりつつある――苛立ちを隠せなくなっていると言った方が正しいだろうか――妖狐を
心配する望。気持ちは分からなくは無い。本人の話を聞く限りでは日宮まどかと言う女性は、
高延にとって非常に大切な存在らしい。この殺し合いの中において生死が分からなくなっていると言うのは、
想像を絶する不安、恐怖を高延に与えているのだろう。苛立ちはその反動なのだ。

「…高村秀徳に、新井宏音だったか」
「ん? あ、ああ」
「何…?」

高延が秀徳と宏音の二人に話し掛ける。
二人は何故目の前の妖狐が不機嫌なのか理由が良く分からないため少し戸惑っていた。

「銀髪の女見てないか。日宮まどかって言うんだ…俺の…主人、だ」
「……いや、見てないな」
「ごめん、見てない」
「……分かった」

それだけ言うと、高延はホールに設置されているベンチの上に乗り寝そべった。
そしてそれっきり、そっぽを向いたまま無言になってしまう。

「…悪く思わないでね」

このままでは高延の印象が悪くなる一方だと思った望は本人は望んでいないものの、フォローに回る。
彼には探し人がおり、どうしても見付けられず、生きているかどうか不安と苛立ちを隠せないでいるのだと。
ただ、本人に聞こえると逆に怒られると思い望は小声で二人に説明した。

「そうか…確かに、大切な人が殺し合いに呼ばれてるって言うのは、きついよな」
「なるべく、刺激しないようにしようか」
「そうしてくれる…?」

しかし望の気遣いも空しく、聴力が鋭敏な高延には望が自分の事を二人に話しているのが聞こえてしまっていた。
だが、あえて知らぬ振りをしていた。

(ちっ…望の奴、余計な事しやがって……くそっ、放送も近いから下手に動けねぇし……。
こんな事なら…最初から一人でいりゃ良かったんだ…まどか…まどか…)

心の中で愚痴をこぼし続ける高延。その尻尾は苛立ちを表すかの如く激しく揺れていた。

◆◆◆

ショッピングモール一階中央付近に集まっている四人はまだ気付いていない。
自分達以外に三人、ショッピングモール内に侵入している参加者がいる事を。
そして、その三人がいずれも殺し合いに「乗り気」でいる事を。
東より兎獣人の少女、月宮奈緒子。

「書店…あ、欲しかったラノベ…店員なんて居ないし今なら万引きしたって……いや、やめとこ」

西より狼獣人の青年、然堂正信。

「ソファー売り場か…お、良い座り心地だ」

北より黒髪の若い女性、田中正子。

「何、こ、こ…職員、用の、ああ……そ、そうか。迷う、ちゃう、な……ち、地図…無いかな」

たどたどしい口調でモール裏の職員用通路を通る彼女こそ、高延の最愛の女性を殺害した張本人であるが、
まさかその張本人が自分と同じ建物内にいるなど、高延は知る由も無いし、正子の方も、
先刻殺害した女性の縁者が侵入した大型ショッピングモールの中にいるとはまだ思ってもいない。
四人がモール内を回り中央ホールに戻った直後ぐらいに、ほぼ同時に三人がモール内に侵入した。

「放送…だな、そろそろ」

「あ、放送の時間が近いな…」

「ほ、ほう、そう、時間」

三人はそれぞれ、放送を聞く準備をするため動きを止める。

中央付近の四人と接触するのは時間の問題だったが、まだもう少し先になりそうだった。


【朝/B-3ショッピングモール一階】
【高村秀徳】
[状態]良好
[服装]私服
[装備]4式自動小銃(10/10)
[持物]基本支給品一式、7.7㎜×58弾(30)
[思考]
1:殺し合いからの脱出。首輪を解除したい。そのために首輪のサンプルを入手したい。
2:宏音、望、高延と行動。放送を待つ。
[備考]
※特に無し。

【新井宏音】
[状態]良好
[服装]露出の高い踊り子服
[装備]コルトM1991A1(7/7)
[持物]基本支給品一式、コルトM1991A1予備マガジン(7×3)
[思考]
1:死にたくない。
2:高村さん、千葉さん、日宮さんと行動。
[備考]
※特に無し。

【日宮高延】
[状態]良好、苛立ち、不安
[服装]無し
[装備]コンバットナイフ
[持物]基本支給品一式
[思考]
1:まどかを捜す。殺し合いをする気は今の所は無い。襲われたら戦う。
2:単独行動の方が良かったかもな…。
[備考]
※日宮まどかの死を知りません。

【千葉望】
[状態]良好
[服装]仕事用のスーツ
[装備]ベレッタM92FS(15/15)
[持物]基本支給品一式、ベレッタM92FS予備マガジン(15×3)
[思考]
1:殺し合いはしたく無い。脱出したい。
2:高延、高村さん、新井さんと行動。高延がちょっと心配。
[備考]
※特に無し。

【月宮奈緒子】
[状態]良好
[服装]高校制服
[装備]コルトパイソン(6/6)
[持物]基本支給品一式、.357マグナム弾(7)、焼夷手榴弾(1)
[思考]
1:殺し合いに乗る。優勝を目指す。
2:放送を待つ。
3:石田佳奈子に注意。
[備考]
※ショッピングモール一階東部書店付近にいます。

【然堂正信】
[状態]良好
[服装]私服
[装備]SMLEライフル(7/10)
[持物]基本支給品一式、.303ブリティッシュ弾(20)、 シグザウアーP226(15/15)、
シグザウアーP226予備マガジン(15×3)、ファイティングナイフ
[思考]
1:殺し合いに乗る。特に優勝したい訳でも無いが。
2:放送を待つ。
[備考]
※ショッピングモール一階西部の椅子・ソファー店にいます。

【田中正子】
[状態]貧血気味
[服装]私服
[装備]スプリングフィールドM1903A3(5/5)
[持物]基本支給品一式、7.62㎜×63弾(15)、ハリセン、栄養ドリンクセット(6/8)
[思考]
1:殺し合いに乗ってみる。
2:放送を待つ。貧血が辛い。
[備考]
※ショッピングモール一階北部の職員区画にいます。


撲殺天使ヒムロちゃん 時系列順 今そこにある危機
撲殺天使ヒムロちゃん 投下順 今そこにある危機
もっさりした人生送ってるのさ皆 高村秀徳 BRIGHTEST DARKNESS
もっさりした人生送ってるのさ皆 新井宏音 BRIGHTEST DARKNESS
愚奔舞狐 日宮高延 BRIGHTEST DARKNESS
愚奔舞狐 千葉望 BRIGHTEST DARKNESS
かる~くバトルinドラゴンと兎 月宮奈緒子 BRIGHTEST DARKNESS
愉快犯 然堂正信 BRIGHTEST DARKNESS
平凡な名前の全然平凡じゃない人 田中正子 BRIGHTEST DARKNESS

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2011年04月04日 21:44
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。