SAD GIRL SO BAD


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23:SAD GIRL SO BAD

緑色の十字がある白い建物――病院だと、虎獣人の少女中元梓紗はその建物を見た時思った。
地図にエリアF-3に病院とあったので、ここがそうなのだろう。

「…誰かいんのかな」

元気の無い声でそう呟く梓紗。
先刻、自分を殺そうと襲い掛かってきた人間の少女を殺してしまったためだ。
もっとも殺さなければ自分が殺されていただろう。しかしそれでも、他人の命を奪ってしまったと言う罪悪感は、
梓紗の心をきつく締め付ける。

傷心のまま、病院の中に足を踏み入れる梓紗。
静かだった。病院とは元々静かなものだが状況が状況だけに更に静謐に感じられる。
受付カウンターにも、待合用の長椅子にも誰もいない。
右手に鹵獲した回転式拳銃S&WM10を装備し、奥へと進む。

同じ頃、虎獣人の少年紫前武尊は、峰打ちを食らった箇所を擦りながら一階への階段を下りていた。
つい先程気絶から目覚めた所である。

「…いてぇ…まだ頭がボーッとするな……くそっ…」

おぼつかない足取りで階段を下りる。そして一階に下り廊下に出た。

「額賀甲子太郎…とても、俺が敵うような相手じゃねぇ…今度会ったら逃げるか…。
…これ使っても勝てそうな気がしない…」

ズボンに差し込んだもう一つの支給品、自動拳銃スタームルガー.22ピストルに触れる武尊。
威力が弱い弾を使う競技用或いは狩猟用の自動拳銃だが、それでも殺傷能力は十分にある。
しかし拳銃を使っても、あの老人には勝てないだろうと武尊は思う。

「…?」
「!!」

と、一階のある部屋から出てきた、自分と同じ虎獣人種の同年代の少女と数メートルの距離を置いて鉢合わせとなった。

「あ、あっ……」

少女、中元梓紗は少し戸惑う。予想はしていたが実際に遭遇するといくら心構えをしていても焦る。

「な、なあ、あんた、そのっ、この、殺し合いにっ……」

心を落ち着かせながら梓紗は相手の虎少年に話し掛けた。だが、まともな返事は返ってこなかった。
虎少年武尊は腰に差していた.22ピストルを左手で抜き、銃口を梓紗に向け、引き金を引いた。

ダンッ ダンッ

「う、ぐあ!!」

二発の銃弾が放たれ、一発が梓紗の腹に命中し血が噴き出す。
致命傷では無いが激痛と衝撃に梓紗がよろめき持っていた銃を落とした。
そして武尊は苗刀を構え梓紗に向かって突進する。

(こいつなら勝てるだろ…!)

心の中で武尊はそう思っていた。
梓紗は苦痛に霞む視界の中、刀を抜き自分に向かって突進してくる虎少年の姿を認め、絶望していた。
この虎少年も殺し合いに乗っているのだろうか、先刻自分が殺してしまった少女のように。

(何でだ、よ…何でどいつもこいつも、こんな馬鹿なゲームに乗るんだ…? 訳分かんねぇよ…!
畜生…痛ぇ…痛ぇよ…死にたく、ねぇ…!)

自分は殺し合う気は無い。どうにかして脱出しようと思っているのに。
なのになぜ、殺し合うのだろうか。自分以外に殺し合いに抗おうとする者などいないのだろうか。
武尊が大きく刀を振り上げる。間も無くあれが振り下ろされ自分は殺される。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。
梓紗はそう思った。
死にたくないなら、どうすれば良い?

――先に殺してしまえ。

「ああああぁぁあああああぁああああ!!!!」
「いっ!?」

絶叫と同時に梓紗が武尊の腹に体当たりを仕掛けた。
思わぬ一撃を食らった武尊はひっくり返り、背中から固い床に叩きつけられ、持っていた苗刀を落とした。

「ぎゃはっ…あ、この、あ、!?」
「ああああああああああああ」

狂ったように叫びながら、梓紗は特殊警棒を取り出し、武尊に馬乗りになって頭を殴り付けた。
ただ一心不乱に、殴打を続ける。
何度も。何度も。何度も。何度も。

「ア……ぁ……!」

武尊はどうにかして殴打をやめさせようとした。このままでは間違い無く殺される。
だが、絶え間無く襲い掛かる頭部への衝撃がそれを阻んだ。
視界が赤く染まる。思考が定まらない。意識が朦朧としてきた。それでもなお打撃は止まず。

「……、…………ッ、………。……………」

最後の一撃が振り下ろされる刹那、武尊が見た物は、涙を流し、歪んだ笑みを浮かべる、
虎獣人の少女の顔だった。


……

……


シェパード犬獣人の少女、杉原めぐみと、ハーフ猫獣人の女性、赤松裕理は病院を裏口から訪れた。

「お兄ちゃん、いるかな」
「大きな建物だし一人ぐらいはいそうね」

通路を奥に進む二人。心無しか消毒液の臭いが鼻を突つく。

「……?」
「どうしたの、めぐみちゃ……?」

二人の動きが止まる。
廊下の奥で、中高生ぐらいと思しき虎獣人の少女が背を向けて立っていた。
その向こうには、虎獣人の少年が頭から血を流して倒れている。折れ曲がった棒らしき物が落ちているのも見える。

「……しはころしあうきなんかないのに、ころしあいなんてしたくないのに……」

めぐみの耳には少女が何やらブツブツと呟いているのが聞こえていた。

「!!」

突然、虎少女がめぐみと裕理の方に振り向いた。
返り血で赤い斑点模様が顔や制服に付着し、その目からは涙が流れ、血走っていた。
明らかに尋常では無い。裕理が穏やかに話しかけた。

「あ、あの、あなた……」

ダァン!

一発の銃声と同時に、裕理の首から鮮血が噴き出す。直後、裕理は喉元を両手で押さえながら崩れ落ち、
しばらく悶えていたがすぐに動きが止まる。

「へ? あ、あ!?」
「うおおあああああぁあぁああああ!!!」

虎少女、中元梓紗は叫びながら手にしたスタームルガー.22ピストルを生き残っためぐみに向けて、
距離を詰めながら乱射した。めぐみは訳も分からぬまま踵を返し走り出した。

(何で!? 何でこんな…!?)

どうしてこんな事になったのか、虎少女は確かに「自分は殺し合いをしたくない」と言っていた。
だが現に今、自分は虎少女に撃ち殺されようとしている。赤松裕理はもう死んだだろう。助けたかったがどうしようも無い。
奥にあった虎の少年の死体からして自分達がこの病院に来る前に何かあった事は間違い無い。
あの虎少女が元から殺し合う気があったのか、何か理由があってあのような状態になってしまったのか。
気にはなったが、今は自分の命の方が優先される。

(死にたくない! お兄ちゃん、お兄ちゃんにまた会いたい…! 嫌! 嫌……!!)


……


気が付けば周囲は市街地。どこをどう走ってきたのかまるで思い出せないが、幸いにも杉原めぐみはまだ生きていた。
川が見える。太陽の光が水に反射し割と綺麗な光景になっていた。
適当な民家の敷地に入り玄関の戸に手を掛ける。開いた。家主には申し訳無いと思いつつ、
土足でその民家の中に入った。

茶の間と思しき部屋で腰を下ろし心を落ち着かせる。だが、手が、身体が震えていた。

「……っ……疲れた……ちょっと……休もう」

同行者を失い一人きりになり、また、殺され掛け、更に散々走り心も身体も疲弊していためぐみは、
座布団を枕にし、横になった。

「…お兄ちゃん…」

どこにいるのか分からない義理の兄を思い浮かべながら、めぐみの意識は沈んで行った。


……


追跡していたシェパード種犬獣人の少女の姿は見失った。

「はぁ…はぁ…ふっ、ふふふふっ……」

中元梓紗は笑う。何かがおかしいと言う訳では無い。

「良いよ、もう良いよ…殺される前に、殺してやるからさ……あはっ! ははははははっ!」

心が壊れてしまった虎の少女は、つい今しがた殺したハーフ猫獣人の女性が持っていた武装を回収するために、
病院へと戻り始めた。


【紫前武尊  死亡】
【赤松裕理  死亡】
【残り26人】


【朝/E-4市街地】
【中元梓紗】
[状態]腹部に銃創(命に別条無し)、発狂
[服装]高校制服(着崩している、返り血少量付着)
[装備]スタームルガー.22ピストル(0/10)
[持物]基本支給品一式、スタームルガー.22ピストル予備マガジン(10×3)、S&WM10ミリタリー&ポリス(6/6)、
.38SP弾(12)、苗刀、ゴルフボール(2)、
[思考]
1:皆殺してやる…。
[備考]
※安田愛はクラスメイトです。
※特殊警棒は破損し放棄したようです。

【朝/E-3川沿いの市街地(東)】
【杉原めぐみ】
[状態]肉体、精神共に憔悴、睡眠
[服装]中学校制服
[装備]サバイバルナイフ
[持物]基本支給品一式
[思考]
1:(睡眠中)
[備考]
※杉原豊和は義理の兄です。
※中元梓紗を危険人物と認識しました。



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