嵐の入口

19:嵐の入口

少女、宮崎眞由美は市役所を訪れていた。

「誰かいるかな」

いざと言う時に備え、支給されたレザーソーを右手に持ち、入口の扉を開ける。
開けた途端、息を呑む光景が目に入った。

「…!?」

一階カウンター奥のオフィスが荒れていた。壁には銃弾の痕らしき物が無数に出来ている。
机の上のパソコンや書類棚、更には天井にも空いていた。
そして――床に何かを引き摺ったような血の跡が、奥の方へ続いている。

「はぁ…はぁ…、!? ああ!?」
「!!」

奥から何か一仕事終えたような様子の、浴衣のような薄い着物一枚を着た狐獣人の青年が現れ、
たった今役場の中に入ってきた眞由美と鉢合わせになり互いに驚き身構えた。

「ま、待って下さい! 殺し合う気は無いんです」
「……そうなの、か?」
「……(コクリ)」
「…俺もだ。と言っても、こんなナリで、信じてくれるか?」
「何があったんですか?」

狐――糸賀昌明は数刻前の出来事を眞由美に話した。

「そうだったんですか…」
「…殺してしまったよ。人を…知らない少年を。その死体を今、奥にある倉庫に引き摺って行ったんだ」
「床の血の跡はそれで…でも、そうしなければ、えーと…」
「ああ、俺は糸賀昌明」
「私は宮崎眞由美です…えと、糸賀さん、が、死んでたかもしれないです、し…」
「……」

正当防衛だったかもしれないがそれでも見知らぬ少年を手に掛けたと言う事は、
糸賀青年の心に暗い影を落としていた。眞由美はとても適当な事を言って慰める気にもなれない。
そこまで器用な事は出来なかった。

「所で…眞由美ちゃんの武器は、それかい?」
「え? …はい。これだけです」

眞由美が手に持っているレザーソーを見て、昌明が言う。

「それなら…これ、あげるよ」
「…銃、ですか」
「反動弱いし…まあ男の俺が言うのもアレだけど…多分、眞由美ちゃんでも扱えると思う」

そう言いながら、先刻獅子獣人少年を殺害するのに使用した(ちなみにその事は眞由美に言っていない)、
QSZ-92-5.8自動拳銃とその予備マガジンを眞由美に手渡す。

「ありがとうございます。でも、糸賀さんは…」
「ああ、俺は拳銃もう一丁と、これがあるから…」
「うわ、凄い…」

昌明がデイパックから取り出した大型の銃――トンプソンM1921を見て眞由美が感嘆の声を漏らした。

「さっき話した少年…名簿見たら青木勝昭って言うらしいけど…が持っていたんだ」
「ああ、一階オフィスはそれで荒れていたんですか」
「そうだ…そう言えば、少年はこんな物も持っていたな」

昌明は獅子少年のもう一つの支給品を取り出し眞由美に見せる。
C4プラスチック爆薬と起爆信管、遠隔操作リモコンの、即席爆薬セットである。
壁ぐらいなら軽く破壊出来る量と説明書には書かれていた。

「これは俺が持っておくよ」
「そうですね…」
「…これからどうするかな。まだ余り決めていなかったんだけど」
「……首輪、何とかしないといけませんよね」

金属製の首輪に触れる眞由美。脱出を目指すなら首輪の解除は必要不可欠だと言う事は、
それ程深く考え無くても分かった。だがそれにはどうするべきか。

「私、内部構造さえ分かれば何とか出来るかも…です」
「え? 本当、に…?」

眞由美の発言に昌明が食いつく。眞由美はコクリと頷いた。

「結構、機械いじったりするの、好きなんです」
「……成程、ね……」

過度な期待はしない方が良いと思い昌明ははやる気持ちを自制した。

「首輪を分解出来れば良いんですけど、そんな事すれば爆発しますし……」
「…死んだ奴の首輪なら問題無いんじゃ」
「ああ、その手が……あ、いや、大丈夫じゃありません、問題があります」
「?」
「…あの、死体から首輪を手に入れるには……」
「……」

二人の間に沈黙が訪れる。死体から首輪を入手するには方法は一つしか無い。
そして丁度良く、この市役所には死体が一つある。

「……俺、行ってくるよ」
「……本当に、良いんですか?」
「…そうしないと、首輪は手に入らないから、ね。眞由美ちゃん、さっきのレザーソー、貸してくれるかな」
「……」

眞由美は震えながら昌明にレザーソーを手渡す。受け取る昌明の手も震えていた。

「それじゃ、ちょっと、行ってくる」

昌明は獅子少年の死体を置いた奥の倉庫へ歩いて行った。
その背中を申し訳無さそうな面持ちで、眞由美は見送った。


【早朝/F-1市役所一階】
【宮崎眞由美】
[状態]良好
[服装]中学校制服
[装備]QSZ-92-5.8(16/20)
[持物]基本支給品一式、QSZ-92-5.8予備マガジン(20×3)
[思考]
1:殺し合いからの脱出。首輪を解除したい。
2:糸賀さんと行動。
[備考]
※特に無し。

【糸賀昌明】
[状態]良好、青木勝昭の首を切断しに行く途中
[服装]裸の上に浴衣っぽい着物
[装備]レザーソー
[持物]基本支給品一式、トンプソンM1921(21/50)、トンプソンSMGドラムマガジン(50×2)、
ワルサーP99(15/15)、ワルサーP99予備マガジン(15×3)、即席爆薬セット(起爆信管、リモコン、C4爆薬)
[思考]
1:生き残る。出来る限り殺したくは無い。
2:……。
3:眞由美ちゃんと行動。
[備考]
※青木勝昭の支給品を回収しました。


※青木勝昭の死体は市役所一階奥の倉庫に安置されているようです。


≪オリキャラ紹介≫
【宮崎眞由美(みやざき まゆみ)】
15歳の人間の少女。中学三年。濃い茶色ロングで胸がかなり大きい。中学生とは思えないスタイルの良さ。
機械いじりが趣味で良く近所の人から家電製品の修理を頼まれたりする。
運動は余り得意では無く、特に鉄棒は駄目らしい。最近獣姦に興味があるとか。


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最終更新:2011年03月29日 22:10
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