ケンカとは先に手を出した方の負けである


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 淡い緑色の光が周囲を包み込んでいた。
 装備もなく大気圏に突入しているというのに、不思議と熱は感じない。
 寧ろ想い人の懐に包まれているかのような心地良い暖かさが其処にはあった。

『そうか、しかしこの暖かさを持った人間が地球さえ破壊するんだ! それを分かるんだよ、アムロ』

 心地よさの中で、苛立ちにまみれた宿敵の声が響く。
 その言葉はまるで我が儘を云う駄々っ子のもののようであった。
 理解を求め、でも受け入れられない。
 何故受け入れられないのかが分からない。
 分からないからこそ、苛立ちが増していくのだろう。

『ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ! そのララァを殺したお前に言えたことか!』

 聞こえてきた言葉はおそらく本心なのだろう。
 追い詰められて、追い詰められてしまったが故に噴き出した言葉。
 母になってくれるかもしれない女性。
 やはり、分からない。
 いや、何となく共感はあったのかもしれない。
 だが、否定する。
 彼女は死んだ。もういない。
 人類の革新した姿とされるニュータイプであっても、死から解放される事はない。
 生ける者には死が存在する。
 それが世界の理だ。
 だから、捕らわれてはいけない。
 死者に捕らわれては、いけない。
 だからこそ、止める。
 これ以上死者に捕らわれる者を増やさない為にも、
 人類に希望を見せるにも、
 この石ころを止めてみせる。
 ガンダムは、νガンダムは、伊達ではない。



 ―――第二次ネオ・ジオン戦争。

 ―――地球連邦軍独立部隊ロンド・ベルの活躍によりアクシズ落下は阻止される。

 ―――この戦いにより地球連邦軍パイロット『アムロ・レイ』、ネオ・ジオン総帥『シャア・アズナブル』の行方は不明。

 ―――死亡した者と扱い、此処に記録を残す。






「殺し合えだと……くそっ、ふざけた事を……!」

 暗い暗い世界の真ん中で、アムロは顔をしかめて言葉を吐いた。
 唐突に開始されたバトルロワイアルという名の殺し合い。
 不条理に殺害された富竹という男。
 愉悦に満ちた兵藤の高笑いに、富竹の死に愕然とする圭一という名の少年。
 憤りを感じずにはいられなかった。
 アムロは其処まで正義感が強い訳ではない。
 戦争の最中では何十という敵機を葬ってきたし、今更そこに躊躇いは覚えない。
 戦争を無くそうなどとも考えてはいない。
 戦場に於いては、一人のパイロットとして出来る限りの事をするだけであった。
 だが、今回の場合は余りに話が違う。
 富竹という男も、圭一という少年も、覚悟を持って戦場に立っている兵士とは違う。
 戦場の事など何も知らない一般人だった筈だ。
 そんな一般人を戦場へと拉致し、殺し合いを強制させる。
 まさに悪魔の所業。
 少なくともアムロにはそうとしか思えなかった。

(まずはこの首輪をどうにかしなくては……)

 しかしながら、現状は最悪と言えた。
 爆薬の詰まった首輪に何処だかも分からない謎の場所。
 そして、拉致された何十人という人間。
 どう考えても状況は悪い。絶望的といっても過言ではなかった。

(ひとまずは首輪の解除だ。何処か首輪を解析できるような場所があれば良いが)

 それでもアムロは打開策を考えていく。
 諦めはしない。
 数多の戦乱を生き抜いてきたアムロは、この程度の窮地で諦観してしまうような人間ではない。

(現在地は森林か、近場に首輪を解析できるような施設があれば良いが……)

 アムロは、パイロットとしてだけでなく、技術屋としても一流とされていた。
 MSの設計から愛玩用ロボットペットの作製までをも行える。
 最低限の工具と綿密な解析さえできれば首輪の解除も可能だと、アムロは考えていた。

(……施設を見て回り、工具を探すか。そう簡単に解除はできないだろうが……やるしかない)

 ある程度の目的を決定し、アムロは行動を開始する。
 デイバックの中身を確認し、中にあった武器を装備。
 アムロにとっては馴染みのない刀という武器であったが、愚痴は言っていられない。
 武器が入っていた事を僥倖と思う他ないだろう。
 歩き出すアムロ。
 その脳裏には、ある光景が蘇ってきていた。
 殺し合いに呼ばれる直前の記憶。
 寸前までの記憶は鮮明であった。
 因縁の宿敵との戦いの末に地球へと落下を始めた小惑星アクシズ。
 アクシズの落下を阻止する為にνガンダムを駆り、押し出そうと取り付いた。
 その結果は分からないが、寸前まで宿敵と交わした言葉の数々は鮮明に記憶へと残っている。
 大義名分も、上辺を誤魔化す言葉もない、混じりっ気なしの本音。
 宿敵は最期まで捕らえられたままであった。 十年前に出会い、そして永遠の離別をした少女に。
 とはいえ、自分も人の事を言えた義理でもない。
 宿敵程とまではいかねど、自分も彼女に魂を引かれている。
 当時から十年以上の時が経過しているというのに、夢を見るのだ。
 彼女の、夢を。

「……ダメだな、今は殺し合いの最中だ。集中しなくては」

 アムロは小さく首を振り、思考を打ち切る。
 ニュータイプもモビルスーツから降りれば只の人だ。
 それはアムロも理解している。
 だからこそ、最大限の警戒を持ち得なければならないのだ。

「―――誰か……いるな」

 と、僅かに警戒心を引き上げたその時、アムロの直感が走った。
 近くに誰かがいる。
 まだ視界に入っていないが、確実に。
 幾度となく感じてきた、幾度となくアムロの命を救ってきた感覚。
 『ニュータイプ』の察知能力。
 理論で説明できるものではないが、アムロには感じ取れるのだ。
 其処に居る人の存在を。
 そして、直感通りに人は現れた。
 木々の間から降り注ぐ月光を浴びて現れた男の姿を見て、アムロは思わず息を飲む。
 灰色を基調とした軍服のような服に身を包む男。
 鮮やかな金髪は首元まで伸びている。
 そして、何より目を引くのは―――その顔の半分以上を覆う仮面であった。
 十年以上前、出会ったばかりの宿敵を連想させるその仮面。
 瞬間、アムロの中に直感が走った。

「すまない、驚かせてしまったかな」

 仮面の男は無防備にも両手を上げてアムロの前に立つ。
 男の口元には柔和な笑みが浮かんでいて、まるで此方の警戒心を解きほぐすかのようであった。
 まるで無防備な男の様子にアムロは困惑を覚える。
 自分の直感が告げる内容と、眼前の男の様子とが余りにかけ離れているのだ。
 刀に手を掛け、仮面の男を睨むアムロ。
 その警戒は未だ解ける様子を見せない。


「私の名はラウ・ル・クルーゼ。ザフトで士官をやらせて貰っている。私も余りの事態に些か混乱していてね、少し情報を教えて欲しいんだ」

 クルーゼと名乗った男は両手を上げたまま立ち止まり、アムロへと話し掛けた。
 距離にして凡そ5メートル程。
 アムロは刀を抜き、その剣先を男に突き付ける。

「クルーゼ。悪いが、俺はお前を信用できない。情報の交換はこの距離を維持したまま行おう」
「ふむ、まあこの殺し合いの中だ。それ位の警戒は当然だろう。了解した、情報を交換しよう」
「協力に感謝する。俺は……エド。エドワード・エルリックだ」

 アムロは殆ど反射的に偽名を名乗っていた。
 眼前の男を信用できないからだ。
 その不信には、彼なりの理由がある。
 自身の直感が告げている。
 この男は信用できないと、告げている。
 男の底に眠る『悪意』がうっすらと感じ取れるのだ。
 ドロドロに歪み、凝縮に凝縮を重ねた悪意を感じるのだ。
 誰を恨んでいるという訳ではなく、世界そのものを恨んでいる。
 その悪意は、これまでの人生でアムロが感じてきたどんな悪意よりも強大であった。
 何故、此処までの悪意をこの仮面の男が抱いているのかは分からない。
 だが、その危険性は察知できる。
 この男は危険だと、頭の中で警告灯が鳴り響いていた。

「エドはここがどこだか分かるかな?」
「いや、分からない。空を見る限り、コロニーではなさそうだが」
「では、あの兵頭という男、私たちを拘束していた光の原理やワープについては何か分かるか?」
「君と同じさ。さっぱり分からない」
「そうか……協力に感謝する、エドワード。では、此処で別れる事としよう。君がこの殺し合いを生き延びれるよう願っているよ」

 情報交換は一分と満たない短い時間で終わった。
 余計な言葉のない、本当に情報を交換するだけの会話。
 だというのにクルーゼは最後まで紳士的な態度であった。
 その一貫したクルーゼの態度に、自分の直感が外れたのか、と思わずアムロも当惑を覚えてしまう。
 が、その直後―――、



 ―――アムロは刀に備えられていた引き金を引いていた。



 鍔に仕込まれていた火薬が爆発し、刃が音速に迫る勢いで撃ち放たれる。
 クルーゼは抵抗をするどころか、声を発することすらできない。
 飛来する刃にピクリとも反応できず、直撃してしまう。
 刃が刺さった箇所は、その右の脇腹。
 刃は胴体を貫通し、その中にあった内臓をズタズタに斬り裂く。
 鮮血が口から溢れ、クルーゼの身体を支えていた力が途端に抜ける。
 膝から崩れ落ち、クルーゼは横倒しに倒れた。
 脇腹の傷から染み出した鮮血が地面を染めていた。


「……何故……分かった……?」

 そう言うクルーゼの手元は腰のベルトに触れていた。
 キラリと光るベルト。
 アムロが知る由はないだろうが、それはとある世界のテロメイドが暗器として使用していたベルト。
 仕掛けを起こす事により、ベルトのバックルから小口径の弾丸が発射される武装であった。
 その暗器を使用しようとした直前に、クルーゼはアムロに腹を貫かれた。
 クルーゼは納得できない。
 人を騙くらかすのは得手中の得手であった。
 心中の悪意をひた隠して、ナチュラルだという事もひた隠して、人生の半分をコーディネーターの軍属として過ごしてきたのだ。
 今更、誰かに真意を読み取られる事など有り得ない。
 それは驕りではない、事実。
 結局クルーゼは、最期の瞬間までも仲間内から疑惑をもたれる事はなかったのだ。
 一種の才能といっても良いのかもしれない。
 ラウ・ル・クルーゼをラウ・ル・クルーゼたらしめる才能が、誰にも疑われる事のなかった演技力である。
 それが、その演技が、初対面の人間に易々と暴かれた。
 情報を収集し、不意をついて参加者を減らしていくという行動が、読まれた。
 その事実に、クルーゼは納得する事ができない。

「……貴様の悪意は余りに強く、純粋だ。だから攻撃の瞬間が、手に取るように分かったんだ」

 アムロの回答は、クルーゼに納得を与えるものではなかった。
 漠然とした回答。
 それもそうだろう。
 アムロ本人ですら、ニュータイプの力を理解しきれていないのだ。
 その感覚を説明できる訳がない。
 強いて言葉にするなら『分かったから』……そうとしか言いようがなかった。
 そして、説明にならない説明を終えると同時に、アムロはクルーゼに背を向けて歩き出す。
 その歩調に迷いや後悔はない。

「……そうか……貴様も生まれもって力を持つ者か……」

 アムロの背中にクルーゼは声を飛ばす。
 膨れ上がる悪意をアムロは感じていた。
 混じり気のない、圧倒的な悪夢。
 引き寄せられる、とアムロは僅かな焦燥を覚える。

「……ふ……ふふ……世界は欲しがるだろうな、君の力を……欲しがり、そして妬むのさ……その、力を……!」

 何故だか、クルーゼの言葉は的を得ているように思えた。
 そして、死にかけの男のソレとは思えぬ程に強さがあった。
 立ち止まるな、耳を傾けるな、と自らに言い聞かせながらアムロはクルーゼから離れていく。

「……それは……これからの殺し合いでも……同じ、さ……人々の欲求と……嫉妬が……君を待つ、の……だ……はは……ハハハハハハハハハ……」

 言葉は笑い声となり、だがしかし笑い声は直ぐに小さくなっていく。
 徐々に声が細くなり、遂には呻きのようなものになって消えた。
 その声はクルーゼの命が潰え掛けている事を示していた。
 アムロは何も語らず、振り向きもせずに、その場から離れていく。
 潰える命とは裏腹に、その悪意は信じられぬ程に膨張していく。
 その悪意の強大さに、アムロはただ戦慄を覚えていた。



【一日目/深夜/B-5・森林】
【アムロ・レイ@機動戦士ガンダム 逆襲のシャア】
[状態]健康
[装備]雷泥のブレード(柄のみ)@トライガン・マキシマム
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×0~2(武器になりそうな物はない)
[思考]
0:殺し合いの転覆、襲ってくる敵には容赦はしない
1:施設を回り、首輪を解析する
2:クルーゼに対する戦慄
[備考]
※原作終了後から参加しています



 そしてアムロが去り、クルーゼ一人が残される。
 残されたクルーゼは、自身の鮮血で汚れていく地面を見詰めて、自嘲の笑みを浮かべていた。
 全てに破壊を齎そうとしていた者の、哀れな末路。
 やはりこの世に救いなどはない。
 少なくとも自分の人生に救いなどなかった。
 出来損ないのクローンとして生み出され、異常な速度で亢進する老化現象に苦しみ、そして死ぬ。
 余りに無意味で、虚無しか存在しない人生。
 こんな世界などいらない。
 壊れてしまえば良い。
 心底からそう感じていた。
 心中を占める悪意を噛み締めながら、クルーゼは終焉へと迫り寄る。
 そんな彼に救いの手が差し伸べられたのは、彼の意識が消失する寸前であった。
 少女は、暖かい淡い光を持って現れた。

(……誰、だ……?)

 少女の手にはガラス瓶が握られており、その中には光輝く石ころが数個入っていた。
 石ころの一つを少女は取り出し、クルーゼの身体に触れさせる。
 ただそれだけでクルーゼの身体から痛覚が引いていき、流出する血液が止まる。
 何が起きたのか、と疑問を覚えながらクルーゼの意識は暗闇の中に沈没していった。


「ホントに、血が、止まった」

 少女はクルーゼの傍らにしゃがみ込みながら、手中の小石をクルーゼへと押し当てていた。
 『月の石』と説明書に書かれていた小石は、説明書に書かれていた通りの効果を示す。
 直接接触させただけで、『月の石』はクルーゼの傷を癒やし、出血を止めた。
 これには流石の少女も驚く。
 脱力感が占める瞳を驚きに僅かに開いて、少女はクルーゼを見詰める。
 少女の名前は滝壺理后。
 レベル4の大能力者『AIMストーカー』にして、学園都市が暗部組織『アイテム』の一員である。
 滝壺はクルーゼに『月の石』を握らせながら、その身体を引きずっていく。
 身体を貫通した刃に触れる事はできない。
 クルーゼは既に血を流し過ぎており、抜けば出血多量で失血死だろう。
 せめてあと一、二時間は『月の石』で体力を回復させてからでないと、危険であろう。
 そう決断して滝壺はクルーゼを、近場の木蔭へと引き摺っていった。
 まだ近くに殺人鬼はいる、と考えながら滝壺は地面に腰を降ろして警戒をする。
 滝壺はアムロを殺し合いに乗った参加者であると誤解していた。
 滝壺の視点からすれば、アムロの行動は殺人鬼のそれであった。
 無抵抗のクルーゼへと攻撃するアムロ。
 ニュータイプとしてのアムロの直感や、クローン人間としてのクルーゼの悪意など知る由もない滝壺は、当然のことながらアムロを危険人物として認識する。
 完全な第三者視点からすれば、アムロが加害者でクルーゼが被害者であった。
 アムロを殺人鬼だと断定した滝壺は、クルーゼの回復を待つ。
 眼前の男が持つどす黒い本性を知らずに、滝壺はその男の治癒を続けていく―――、



【一日目/深夜/B-5・森林】
【ラウ・ル・クルーゼ@機動戦士ガンダムSEED】
[状態]右わき腹に貫通傷、失血(中)
[装備]ロベルタのバックル型銃@BLACK LAGOON、月の石@金色のガッシュ!!
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考]
0:気絶中
1:世界を壊す

【滝壺理后@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]月の石(残り二個)@金色のガッシュ!!
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考]
0:殺し合いには乗らない。浜面と麦野と合流したい
1:クルーゼが治るまで隠れている
2:茶髪の天パ(アムロ)を警戒
3:『一方通行』、『未元物質』、『超電磁砲』については様子見
[備考]
原作22巻終了後から参加しています

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