BATTLE OF MERRY GO ROUND


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第十二話≪BATTLE OF MERRY GO ROUND≫

エリアG-7に存在する遊園地。
ジェットコースター、コーヒーカップ、ゴーカート、
メリーゴーラウンド、お化け屋敷といった、
様々なアトラクションが用意された大規模な娯楽施設だが、
今遊園地内に響いているのは家族連れやカップルの楽しそうな声では無く、
乾いた二種類の銃声だった。

メリーゴーランドの柱の陰に隠れながら、
俺は自分の拳銃――九四式拳銃に予備のマガジンを装填していた。
この殺し合いが始まった直後、俺は赤い身体の竜人に銃撃された。
俺は銃撃をかわしながら自分のデイパックを漁り、
拳銃らしき物を見つけ応戦した。
しかし何だこの拳銃、妙な形だしやたらと引き金は重いし……。
まあとにかく、今俺はメリーゴーラウンドの柱の陰に隠れている。
相手の赤い竜人の男はどうやら十数メートル先にあるコーヒーカップの
カップの陰に隠れて俺の様子を窺っているようだ。

「おい! 俺はあんたと戦うつもりは無いぞ!」

俺は赤竜人に向かって大声で戦う意思は無い事を告げた。

「うるせぇ! そっちには無くたってこっちにはあるんだ!」

しかし赤竜人は戦う気でいるようだ。
声の感じからしてかなり精神状態が不安定になっているように思える。

「なぜだ! こんな理不尽な殺人ゲームに乗るっていうのか!?
どうかしてるぞ!」
「うるせえよ! 最後の一人になんなきゃ生きて帰れないんだろ!?
しかも首には逆らったり逃げたら爆発する首輪はめられてんだぞ!!
だったらやるしかねーだろうが!!」
「馬鹿な、そんな事したら連中の思う壷だぞ!
いいか、聞いてくれ! 俺に考えがある! 仲間を集めて脱……」
「うるせえっつってんだろうが!! 死にやがれえええ!!」

ダァン!!

銃声と共に俺の左前方にある馬型座席の頭が砕け散った。
駄目か!? 説得出来そうに無い。
仕方が無い、不本意だが、ここで殺される訳にもいかない。
俺は柱から身を乗り出し、赤竜人のいる場所目掛けて拳銃を撃つ。
そしてすぐに柱に身を隠し、相手の銃撃をかわす。銃撃、かわす。繰り返し。
だがこれじゃ埒が明かない。いくら撃っても当たらなければ意味が無い。
弾は無限では無いのだ。
俺は思い切って柱の陰から飛び出し一気に距離を詰める事にした。
しかし、柱の陰から飛び出した直後、俺は自身の判断の甘さを知る。
赤竜人の男の方が先に距離を詰めていた。

「!! しまっ」

ダァン!!

俺の左肩に、衝撃と共に焼けるような痛みが走った。
衝撃で俺は銃を手放してしまい、後ろに思い切り倒れてしまった。
その際、後頭部を馬型座席に強かにぶつけてしまう。

「ぐあ……あ……」

撃たれた左肩を押さえながら、苦痛に呻き声をあげる俺。
ふと視線を前方に向けると、銃口を俺に向ける赤竜人の姿が。
その両目は血走っており、歪んだ笑みを浮かべていた。
落とした拳銃を拾うのも、立ち上がって逃げるのも、もう間に合わない。

(ここまでか……)

俺は覚悟を決め、目を固く閉じ、歯を固く食い縛った。
間も無く赤竜人の銃から放たれた銃弾が、俺の頭部を貫通するだろう。
最早どうする事も出来ない。こんな場所で終わるとは。無念だ。

ザシュッ!! ブシュウウウウウウ……。

……え?
何だ? 銃声では無く、何かが豪快に切断されたような音と、
噴水のような音が聞こえるのだが。
それに何か生温かい飛沫のような物が自分の身体にかかっている。
何だ? 何が起こった? 俺は恐る恐る目を開けた。

ドサ。

まず俺の視界に入った物は、ついさっきまで俺に銃口を向けていた
赤竜人――の身体が倒れる所。
身体? ああ身体だ。 首が無いんだよ。
首があった所から真っ赤な噴水が吹き出ている。
赤竜人の身体の手前に、歪んだ笑みを浮かべたままの
赤竜人の首が落ちている。

「おい」

突然男の声で話し掛けられた。直後、俺の鼻先に何かが突き付けられた。
それは刃が血に塗れた、木の伐採などに使われる手斧だった。
その手斧の持ち主は、首元にボタンの付いたTシャツと青いジーンズ姿の
人間の男だった。

「あんたは殺し合いに乗っているのか?」
「何?」

男は手斧の先端を俺の鼻先に突き付けながら俺を問い質す。
狼獣人である俺の鋭敏な嗅覚が、漂う血の臭いを更に強く感じさせた。

「質問に答えろ。あんたは殺し合いに乗っているのか?」
「い、いや、乗っていない」
「本当だな?」
「本当だ!」
「……そうか、ならいい。すまなかった」

男は手斧を下ろし、表情を柔らかくした。

「一応言っておくけど、この赤竜人を殺したのは仕方が無かったんだ。
それは分かるな?」
「あ、ああ……いや、助かった。命の恩人だよ。ありがとう」

俺はゆっくりと立ち上がり、血溜まりの中に横たわる首と胴が
泣き別れになった赤竜人の男の死体を見下ろした。
出来る事なら説得したかったが、ほとんど半狂乱になっていたし、
あそこでこの男がこの赤竜人を殺さなかったら、
間違い無く俺は殺されていただろう。仕方が無かった。
そう思うしか無いな……。

「立てるか? ここは人目に付きやすいから、
この遊園地のスタッフルームに行こう。とりあえず身を隠すべきだ。
あんたの傷も応急手当した方がいい」
「ああ……」

俺は左肩の傷の痛みを我慢し、
自分のデイパックと落とした拳銃を拾い上げた。
男は赤竜人の持っていたデイパックと拳銃を拾い上げる。




スタッフルームに着いた俺はまず配備されていた救急箱を使い、
傷の応急手当を済ませた。男にも手伝って貰ったが。
幸い弾丸は貫通したようだ。盲貫銃創だったら厄介だった。
本当はもっときちんとした治療を施すべきなのだが、
この状況で贅沢は言っていられない。

「大丈夫か?」
「ああ、一応これなら何とかなる」

ソファーに座りながら俺は答える。

「そうか……そう言えば自己紹介がまだだったな。
俺は大崎年光(おおさき・としみつ)だ。武器店を経営してるんだ」
「俺は北原大和(きたはら・やまと)。陸軍に所属する兵士だ。
よろしく、大崎さん」

互いに自己紹介する。しかしよく見ればこの大崎年光と言う男、
自分と同年代ぐらいと思っていたが、
30代前半ぐらい……か? 俺よりも年上みたいだ。

「聞くまでも無いとは思うが……大崎さんは殺し合いには乗ってないよな?」
「乗っていない。乗っているならあの時点であんたも殺してる」
「確かにそうだ」

本当に聞くまでも無かった質問をしてしまったな。
大崎さんの言う通り、殺し合いに乗っているなら俺を助けるはずが無い。
あの時点で俺も一緒に殺しているはずだ。

「ところで北原さん、あんたさっき『仲間を集めて』どうたらとか言ってたな」

大崎さんが室内に置かれていたタオルで
手斧の刃に付いた血を拭き取りながら言った。
そうだ、俺は……。

「ああ、そうだ。仲間を集めてこんなゲームから脱出するんだ!
だっておかしいだろ……いきなり呼ばれて殺し合えだなんて……。
頼む、協力してくれ!」

俺は自分がこれからしようとしている事を大崎さんに告げた。

「ふーん、いいけど……でも、北原さん、
この殺し合いに知り合いとか呼ばれてるのか?
ちなみに俺は一人もいないが」
「ん? い、いや、俺も誰一人呼ばれていないが……」

この殺し合いに俺の知り合いは誰一人として呼ばれていない。
あの教室で一通り確認したのだから、間違い無い。

「見ず知らずの連中ばかりで、しかも殺し合いっていう状況で
仲間集めるのは難儀だな……俺以外はみんな殺し合いに
乗ってるかもしれないぞ」
「うっ……」

確かに、見ず知らずの他人ばかりの状況で
信頼出来る仲間を作るというのは非常に難しい事だ。
親しい知り合いがいたとしても、だ。

「それにこの首輪」

大崎さんは自分の首にはめられた首輪に触れる。
同じ首輪が自分の首にもはめられている。

「この首輪をどうにかしないといけないな。
教室の時の男みたいに死ぬのはごめんだ。
脱出しようって言うのならまずこの首輪を外さないと無理だろうな」
「むう……」

あの教室での惨劇が頭の中に蘇る。
この首輪は主催側が俺達参加者の行動や位置を把握するための
監視装置であると同時に、逃げようとしたり反逆を企てる者を
無慈悲に殺害する処刑装置でもあるのだ。
名簿を見る限り参加者は俺達二人を含め全部で50人もいるらしい。
この50人の中に首輪を解除出来る知識と技術を持った人物がいるのだろうか。
いるかもしれない。いや、それはただの希望的観測だ。
もしかしたらいないのかもしれない。

「でもまあ、あんたの考えに俺は賛同するぜ」
「え?」

俺は大崎さんの方へ顔を向けた。

「確かにいきなり連れてこられて『殺し合え』は無ぇよな。
どこの馬の骨とも分からないような奴の言いなりになる気は俺だって無いさ。
まあ言いなりになってしまった奴も相当数いるだろうけど。
でも少なくとも俺はあんたに賛同する。50人も参加者がいるのなら、
きっと俺達と同じ考えの奴だっているはずだ。
三人寄れば文殊の知恵、じゃないけど、みんなで考えりゃ、
何か打開策が開くかもしれないだろ?」
「大崎さん、じゃあ……」

大崎さんは笑みを浮かべながら、手斧を少し高く掲げた。

「せっかくだしな、あんたと一緒に仲間探ししてやるよ」
「!! ……あ、ありがとうございます!」

非常に喜ばしい大崎さんの申し出に、俺は思わず敬語になって礼を言った。

「まあでも、下手に動くと危ないから、もう少しここにいよう。
あんたの怪我もまだ全快じゃないだろ?」
「そうだな……」

俺は包帯を巻いた左肩を見た。全く動かせない訳では無いが、
あまり酷使は出来ない。

「それと、あんたさっき使ってた銃、あれ使いにくかったろ?」
「えっ? どうしてそれを……」

図星の事を言われて俺は驚いた。

「これ使えよ。さっきの赤竜人が持っていた銃だ。
予備の弾はこの赤竜人のデイパックに入ってるからな。
右腕使えるなら銃は大丈夫だろ? その代わりあんたの銃と交換してくれ」

そう言って大崎さんはテーブルの上にリボルバー拳銃と
血塗れのデイパックを置いた。
リボルバー拳銃を手に取って眺める。これは確か、
コルトパイソンという強力な銃だ。
何度か同僚が私物として持っていた物を撃たせて貰った事がある。
これは扱いやすい。

「おお、これはありがたい。だが大崎さんは? こんな銃でいいのか?」
「一応、この手斧もあるからな。まあ何とかなるだろう」

そう言って大崎さんは俺が持っていた九四式拳銃と
予備のマガジンを自分のデイパックにしまい込む。
本当に大丈夫だろうか? もし相手も銃を持っていたら
大崎さんの手斧では不意討ちでもしない限り勝ち目は薄いだろう。
あの九四式拳銃は引き金がやたらと重く撃ちずらい。
いざという時不安が残る代物なのだが。

「とにかく、後2、30分ぐらいしたら別の所へ移動するとしよう」
「そうだな……目的地をその間に決めておこう」

俺と大崎さんはスタッフルームにもうしばらく留まる事にした。




高い志を持った狼君だな。こういう奴は滅多にいないぞ多分。
仲間を集めてこの殺し合いから脱出か……
確かに正論だが、下手すりゃただの画餅、画に描いた餅になっちまう。
だが、そういう志と理想を持って殺し合いから脱出しようとする奴を
放っておく事も出来ないよな。
あんな声しか聞こえない得体の知れない男の言いなりになるよりは
ずっとマシだ。
生き残れるかどうかは別として、この男をサポートするのも悪くは無い。
その餅、つくの手伝ってやるよ。北原大和君。


【一日目/明朝/G-7遊園地スタッフルーム】

【北原大和】
[状態]:左肩に銃創(応急処置済)、返り血(中)
[装備]:コルトパイソン(6/6)
[所持品]:基本支給品一式、357マグナム弾(47)、
織田信治の水と食糧(水一本と食糧半分)
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。そのためにも仲間を集める。
1:大崎さんと行動を共にする。
2:襲い掛かってきた者はまず説得し、無理なら戦闘もやむを得ない。
3:次に向かう目的地を決めないと……。

【大崎年光】
[状態]:健康
[装備]:手斧
[所持品]:基本支給品一式、九四式拳銃(2/6)、九四式拳銃の予備マガジン(6×6)、織田信治の水と食糧(水一本と食糧半分)
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。そのためにも仲間を集める。
1:北原さんと行動を共にする。
2:襲い掛かってきた者はまず説得。駄目なら殺す。
3:次の目的地を決める。


【織田信治  死亡】
【残り44人】


※G-7一帯に銃声が響きました。
※G-7遊園地メリーゴーラウンドに織田信治の死体が放置されています。
※織田信治のデイパックは大崎年光が回収し、現在スタッフルームに置かれています。





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